一色 みわ 0 Comments
アパレル製造・販売業界は、衣料品のデザイン、生産、そして市場への販売を担う業界です。技術の進歩と消費者の要求への即応がますます重要性を増しており、これらの要因がアパレル製造・販売業界の発展と持続可能性に大きく影響を与えることになるでしょう。 本記事では、アパレル製造・販売の定義をはじめ、取扱商品や主要プレイヤーの動向などを解説します。最後まで読めば、業界の将来のトレンドを理解できるはずです。 なお、BIZMAPSではアパレル製造・販売に関連する企業の情報を掲載中です。各企業の詳細は、【レディースアパレルメーカー】【メンズアパレルメーカー】からご確認いただけます!是非合わせてご覧ください。

アパレル製造・販売業界の定義

アパレル製造・販売業界は、衣料品の企画、製造、および販売を行う業界です。アパレル製造・販売業界には大きく分けて三つの主要な事業形態があります。 まず、商品の企画から生産までを行うアパレルメーカーがあります。これらの企業は、デザインの考案から素材の選定、製品の生産までを一手に担います。 次に、商品企画から販売までを一貫して手がけるSPA(製造小売業)です。SPAは「Specialty store retailer of Private label Apparel」の略で、専門的なプライベートブランド衣料品を扱う小売業者を指します。 これらの企業は、自社でデザインした商品を自社または契約工場で製造し、直営店やオンラインストアなど自らの販売チャネルを通じて消費者に直接販売します。ユニクロやZARAなどが代表例です。 最後に、小売を主体として展開するアパレル専門店です。これらの店舗は、さまざまなブランドやメーカーから商品を仕入れて販売することに特化しています。アパレル専門店は消費者のニーズに応じた幅広い選択肢を提供することが可能で、ショッピングモールや商店街などに位置していることが多いです。 アパレル製造・販売業界は、消費者のファッションに対する需要を満たすために、これらの異なる業態を通じて多様な商品とサービスを提供しています。それぞれの事業形態が連携しながら、効率的かつ効果的に市場に対応しているのが特徴です。

アパレル製造・販売業界の構造

アパレル製造・販売業界は、商品の企画から販売までを一手に担う広範囲な業界です。各段階は市場の動向と消費者の需要に密接に関連しています。アパレル製造・販売業界の主要なプロセスには、トレンド分析に基づく商品企画、高品質な原材料の調達、効率的な生産プロセス、商品を市場に配送する流通、そして多様な販売チャネルを通じた販売が含まれます。 特に、商品企画では創造性が重視され、原材料調達では持続可能な素材へのシフトが進んでいます。生産では品質管理が、流通ではオンラインチャネルへの適応が、販売では直接的な顧客体験がそれぞれの成功に直接影響を与えています。 アパレル製造・販売業界内では、「SPA型」、「アパレル専門店型」、「アパレルメーカー型」という伝統的な業態分類がありますが、境界は徐々に曖昧になっているのが現状です。 アパレル製造・販売業界では多くの企業が新しいビジネスモデルを採用して市場機会を捉えており、このような変化はアパレル業界全体の競争構造を変えていくでしょう。

アパレル製造・販売業界の取扱商品やサービスの特徴

アパレル製造・販売業界の取扱商品やサービスの特徴は、以下の3点です。
  • アパレル商品の分類
  • SPA型ビジネスモデルによる在庫リスクの効果的管理
  • ブランド価値と効率的なサプライチェーン
アパレル商品の分類は、消費者の日常的なニーズと特定の使用場面を基に展開されます。アパレル商品の分類は、商品がどのような状況で使用されるかによって異なり、幅広い選択肢を提供することで、消費者の多様な要望に応えることが可能です。

アパレル商品の分類

アパレル商品は、消費者の日常的なニーズと使用シーンに基づき分類されています。主に以下の三つのカテゴリーに分けられます。
  1. プライベート/カジュアル(普段着)
日常生活でのリラックスした状況に適した衣服で、家庭内でのリラクゼーションや友人とのカジュアルな集まりに着用される服が含まれます。女性、男性、子供向けと性別や年齢層によって細分化され、ドレス、カジュアルパンツ、ポロシャツなどがあります。
  1. ビジネス(仕事着)
職場でのプロフェッショナルな外見を要求される服装では、スーツやフォーマルシャツが一般的です。業界に応じて、制服や作業服が必要とされることもあり、例えば受付の制服や建設業の作業服などがこれに該当します。
  1. その他(下着、靴下、呉服など)
日常的な快適さを提供する基本的なアイテムであり、機能性やファッション性も重視されています。特別な場面で使用される呉服など、伝統的な衣服もこのカテゴリーに含まれます。

SPA型ビジネスモデルによる在庫リスクの効果的管理

アパレル製造・販売業界では季節性が高く多品種を取り扱うため、在庫リスクが常に存在しているのが特徴です。 従来のアパレル企業は年に二回のシーズンごとに在庫計画を立て、生産から販売までを一括で行っていましたが、市場の変動や消費トレンドの誤読により、しばしば不良在庫が蓄積し、最終的にはセールによる利益の減少や資金繰りの圧迫につながっていました。 SPA型ビジネスモデルでは、製造と販売のプロセスが統合されており、市場データをリアルタイムに取り込み、生産計画に迅速に反映することが可能です。 これにより、外部に在庫リスクを委ねることなく、自社で在庫を効率的に管理し、過剰在庫を最小限に抑えられます。このモデルは、製造と販売の距離を縮め、市場の反応を直接商品企画に反映させることで、在庫リスクを内部でコントロールしやすくする効果を持っています。

ブランド価値と効率的なサプライチェーン

アパレル製造・販売業界は「高粗利低速回転型」と「低粗利高速回転型」という二つのビジネスモデルに分かれています。高価な衣料品を扱う企業は、ブランドの確立と総合的なブランド戦略に注力し、商品の機能やデザインを強化し、一方安価な衣料品を提供する企業は、サプライチェーンの効率化とリードタイムの短縮により、リスクを分散させています。 特にSPAモデルを採用する企業は、中間流通を省略してコスト削減と在庫リスクを低減しており、迅速な市場対応が可能です。商品を定期的に更新し、消費者のニーズに柔軟に応えることが求められており、機能性やデザインの付加価値を重視する消費者の期待に応えることが競争力の鍵となっています。

アパレル製造・販売の市場規模とトレンド

アパレル製造・販売業界の市場規模は、日本の経済産業省の統計に基づいていますが、2020年のコロナ禍で衣料品の出荷額と卸売の販売額が大幅に落ち込みました。2021年には多少の回復が見られましたが、依然として以前の水準には達していません。 市場の縮小は、ファストファッションの流行や消費者の低価格志向の強化、そして国内生産労働人口の減少による生産コストの上昇が原因です。これにより、高品質だが高価格の製品の市場が圧迫されています。 また、商業動態統計によれば、衣服小売業の市場規模はコロナ前の約11兆円から2020年には8.6兆円まで減少し、2022年には若干増加しましたが、完全な回復はまだです。婦人服や男子服、呉服・服地小売業は減少していますが、高機能製品の下着類小売業は売上が伸びています。 インバウンド需要の消失と百貨店の販売不振も市場の縮小を加速させていますが、スマートフォンやタブレットの普及に伴い、インターネット販売が急速に成長し、多くの企業がECへのシフトを加速しています。

アパレル製造・販売の相関図

アパレル製造・販売業界は競争が非常に激しく、業界の構造は常に変動しているのが特徴です。特に近年、多くの企業がブランドの獲得やバリューチェーンの最適化を目的にしたM&A活動を積極的に行っており、この動きはアパレル業界全体の再編を加速させています。 百貨店を主力販売チャネルとしてきた伝統的なアパレルメーカーが経済的な厳しさに直面する中、新たな資本やパートナーシップのもとで事業再構築を迫られています。この過程で、一部のアパレルメーカーは国内外の投資ファンドや中国の繊維大手企業の傘下に入ることで生き残りを図っています。 ここでは、以下の3つ分類のアパレル関連企業を解説します。
  • プライベート(普段着)を取り扱うアパレル関連企業
  • ビジネス・オフィス(仕事着)を取り扱うアパレル関連企業
  • その他の製品を取り扱うアパレル関連企業

プライベート(普段着)を取り扱うアパレル関連企業

【百貨店が主力の企業】 【駅ビル・ショッピングセンターが主力の企業】 【専門店が主力の企業】

ビジネス・オフィス(仕事着)を取り扱うアパレル関連企業

【紳士服が主力の企業】 【作業服が主力の企業】 【制服が主力の企業】

その他の製品を取り扱うアパレル関連企業

【下着が主力の企業】 【靴下が主力の企業】 【和服が主力の企業】

アパレル製造・販売の主要プレイヤーの動向

アパレル製造・販売業界において、売上高上位の大手企業が市場シェアを拡大しています。特に、低価格衣料品を自社店舗で販売するファーストリテイリングやしまむらは好調を維持していますが、百貨店を主力販売先とする企業は売上高が縮小。営業利益率も多くの企業で低下しており、コロナ禍の影響で赤字に陥る企業が増えています。 ここでは、以下の3つについて解説します。
  • アダストリアの戦略
  • ストライプインターナショナルの革新
  • 中小企業の展望

アダストリアの戦略

アダストリアは「LOWRYS FARM」や「GLOBAL WORK」などのブランドを有する小売型SPA企業です。かつて仕入れ販売がメインだった同社は、2010年に生産機能を自社で持つ方針に転換し、SPA化を進め、競合他社との商品の同質化を防いでいます。 ただし、全てのブランドを内製化するのではなく、ベーシックなアイテムが多いブランドでは内製化を進めつつ、変化の速いトレンドを追うブランドでは商社からの機動的な仕入れを続けています。 EC売上も好調で、2020年度には前年比23.4%増となりました。また、ワイアードカフェなどを運営するカフェ・カンパニーと連携し、衣食住を含めたライフスタイルの提案を強化しています。

ストライプインターナショナルの革新

ストライプインターナショナルは「earth music&ecology」、「AMERICAN HOLIC」などの若い女性に人気のブランドを持っています。2015年には自社の洋服を簡単にレンタルできる「メチャカリ」というサービスを開始しました。 このサービスは新規会員の獲得に成功し、顧客の期待に応えるために新品の新作やスタイリストが組んだコーディネートを毎週提供しています。さらに、洋服の宅配クリーニングを展開する「Basket」を買収し、宅配クリーニングサービスも開始しました。

中小企業の展望

ファストファッションの浸透による環境への負荷が大きく、生産国における労働・人権問題が表面化している中、SDGsへの対応が求められています。 また、コロナ禍の影響で消費者の実店舗離れが進み、業界の販売チャネルのオンライン化が進んでいます。これらの環境の変化は生産方法や素材の厳選など中小規模生産者・販売者ならではのこだわりがより消費者に理解される土壌が醸成されており、EC化に伴う低コストでの顧客との接点の構築が可能になっています。

アパレル製造・販売の今後の業界展望

新型コロナウイルスの影響でアパレル製造・販売業界は実店舗販売からオンライン販売への転換を急速に進めています。特に、ユナイテッドアローズやワールドなどはECでの売上が大幅に成長し、D2C(直販)ブランドの成長も目立っています。 また、SNSを利用した販売促進やインフルエンサーマーケティングも拡大しており、ライブコマースなど新しい販売手法も導入。しかし、一方で老舗のレナウンが倒産するなど、休業や資金繰りの悪化が深刻な影響を与えています。 アパレル製造・販売業界の将来展望には、以下の3つの主要なシナリオが考えられます。
  1. SPAモデルの進化
現在のSPA(自社で衣料品の企画・生産・販売を行うモデル)がさらに発展し、自社で繊維・生地の生産まで手がけるようになるかもしれません。これにより、高付加価値商品へのニーズに対応します。
  1. スマート衣料の普及
健康意識の高まりと共に、生体情報を取得できるスマート衣料の普及が予想されます。これは、特に製造業や建設業などでの需要が見込まれます。
  1. オンライン発ブランドの増加と店舗の役割変化
インターネットの普及により、オンラインでの衣料品購入が増え、店舗は試着や体験の場としてのみ利用される「ショールーミング」が普及する可能性があります。 これらの変化は、国内の生産労働人口の減少とともに、アパレル業界の市場規模が中長期的に縮小する背景にあります。環境変化に適応し、新しいビジネスモデルや技術を取り入れることが業界の持続可能な成長には不可欠です。

アパレル製造・販売業界の消費者ニーズを把握しよう

アパレル製造・販売業界の未来は、デジタル化とサステナビリティへの注目が高まる中で、大きな変革期を迎えています。技術革新と消費者ニーズの迅速なキャッチアップがますます重要になり、これらの要素が業界の成長と持続可能性を左右することになるでしょう。 なおBIZMAPSでは、オリジナルタグを用いて多様なアプローチで企業情報を検索できます。国内200万社以上の企業の基本情報が無料で閲覧でき、売上や従業員数などの情報を基にターゲット企業を絞り込むことが可能です。 ▼その他のBIZMAPS掲載企業の特集はこちら! 【業界特集】生活サービス業界の市場規模や現状とは? 今後の動向も解説 教育業界とは?最新の動向を踏まえ徹底的に解説します! 旅行業界とは? 今後の動向から徹底的に解説します! 医療・介護業界の全貌を解明!最新トレンドや今後の重要ポイントを解説 広告業界を徹底解説!市場規模や最新動向、売上ランキング上位の主要企業一覧も 不動産業界の今後はどうなる?業界動向を左右するポイントを解説 運輸業界とは?現状や最新動向を紹介!TOP5企業もチェック!

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