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食品卸売とは、生産者などのメーカーと、スーパー・レストランといった小売店との間をつなぐパイプ役を担う事業者のことです。 生産者と小売店の間に生じる物流・在庫管理・決裁などさまざまな業務を一括して代行して、双方の人件費や物流費などのコストを下げ、食品流通をスムーズに、商品を効率的かつ安定的に供給をおこなっています。 そこで今回は、専門食品卸業界について徹底解説。業界構造、市場規模、トレンドに加えて、業界環境と今後の展望をご紹介します。 なおBIZMAPSに掲載されている食品卸関連の会社は、「食肉専門商社」「水産物食品専門商社」「農産物食品専門商社」からチェックしてみてください!

専門食品卸の業界構造

専門食品卸業界は、どのような構造になっているのでしょうか。ここでは、次の3つの観点から解説していきます。
  • バリューチェーン
  • 取り扱い商品・サービスの特徴
  • ビジネスモデル

バリューチェーン

専門食品卸業界のバリューチェーンは、食肉・水産物・農産物で一部異なる点はあるものの、大きくは「生産されたモノを仕入れ、加工食品メーカーや食肉問屋を通して小売へと届けるビジネス」といえます。 食肉の場合、生産者から家畜商などを通して、食肉処理されたうえで食肉卸が仕入れる構造です。また、農産物の場合は農家から直接仕入れる場合と、JAから共同出荷されたものを仕入れる場合があります。

取り扱い商品・サービスの特徴

取り扱い商品は、各専門商社によって異なります。専門食品卸業界において、食肉・水産物・農産物の品目を横断的に取り扱う卸事業者は存在しておらず、取り扱い商品は食肉卸、水産物卸、農産物卸によって完全に分かれています。 食肉卸は各種肉類、水産物卸は漁業と養殖業により漁獲された水産物、農産物卸は米麦、雑穀・豆類、野菜、果実を取り扱っています。

ビジネスモデル

専門食品卸業界は、売り手・買い手の交渉力が強いため、外部環境の影響を受けやすい構造です。その結果、国内人口の減少や消費者のニーズの多様化による影響が大きく、業界全体として成熟が進行しています。また市場外仕入の増加や食の安全・安心ニーズ への対応など課題は多くあり、難しい状況が続いています。 専門食品卸業界のKSF(キーサクセスファクター)は、商品調達力です。特に価格相場が大きく変動するため、複数商材を取り扱いポートフォリオを組むための商品調達力が重要となります。 例えば食肉卸であれば、牛肉がアメリカ産牛肉問題などにより落ち込んだ際に、それを補う形で豚肉の需要が伸びる傾向にあるため、牛肉と豚肉の両方を取り扱うことでリスクヘッジできます。 また米においては2013年産米の取引価格が収穫期より大きく下落し、持ち越された2012年産米は大幅な値引き販売を余儀なくされました。その際、別の商材を取り扱っていなかっ た企業は大きく利益を落としています。 さらに、商品調達力だけでなく、卸売としての他の機能を強化することも必要になります。例えば、今後重要となる機能のひとつが、高度なマーケティング力です。消費者ニーズや小売業態、飲食・サービス業、加工業者や加工方法の多様化など、食を取り巻く市場環境は急激に変化しています。こうした動きに対応するためには、市場情報の収集力、取引先への提案力といったマーケティングの力が重要です。 また企画開発力を強化してメーカー機能を高めたり、小売機能を高めたりすることで、サービスの幅を広げ、独自性を発揮することも重要でしょう。 近年の市場外仕入の増加は、卸売事業者にとって大きなリスクです。市場外仕入が増加している背景には、海外から加工品の輸入が増加していることに加えて、商社や大手加工会社が生産者と直接契約を結んでいることがあります。 商社や大手加工会社としては、卸売事業者の手数料など流通段階でかかるさまざまな費用をカットすることが狙いで、卸の中抜きを進める動きが進んでいます。専門食品卸事業者からすると、取り扱い量が確保できなくなるだけでなく、市場に安価な食品が出回るようになることも予測され、専門食品卸にとって、より厳しい環境になることが見込まれています。 また、専門食品卸業界においては、取り扱い食品に関わらず後継者の確保が問題となっています。最近の社会環境のもとでは後継者を育成しにくい状況にあるものの、後継者の育成は不可欠で、それができるかどうかが各社の将来にとって重要となっています。

専門食品卸業界の市場規模とトレンド

経済産業省の商業統計、商業販売統計、経済センサス、および経済構造動態調査によると、専門食品卸売事業者の商品販売額は長期的には減少基調です。集計方法に変更があった2019年以降は、米麦卸・雑穀・豆類卸売業以外の卸売業で減少。2016年までは、米麦卸・雑穀・豆類卸売業と食肉卸で変動が大きいのに対して、野菜・果実卸は比較的安定した推移となっています。 米麦卸売業では、米の消費量の減少に加え、取引価格の下落が影響しています。生鮮魚介卸は減少傾向が続き、消費者の魚離れが進行していることが背景にあるようです。 農林水産省「卸売市場データ集」によると、食品の総流通量は2019年度は30,878千トンと減少傾向が続いており、卸売市場経由率も年々低下している状況です。 経済産業省「商業動態統計」によると、専門食品卸売業者の商品販売額は減少傾向が続いており、統計の調整が行われた2020年以降はコロナ禍からの回復で需要が拡大し増加に転じています。 農水産物の取引構造・小売業態の変化や消費者ニーズの多様化により、卸売市場を経由しない取引が増加しており、専門食品卸業者は厳しい環境に置かれているのが現状です。 食肉卸売業の卸売市場経由率が低い理由は、全国に25カ所の食肉取引市場があるものの、飼育農家から食肉加工事業者までの取引ルートが固定化しており、大手小売事業者は食品加工業者から直接仕入れる傾向が高まっているためです。

専門食品卸の業界環境

専門食品卸界で最も重要な法律は、卸売市場法です。卸売市場法は卸売市場の整備を計画的に促進するために、卸売市場の開発および卸売市場における卸売その他の取引に関する規制などについて定めています。 卸売市場の整備を促進し、その適正かつ健全な運営を確保することで、生鮮食料品等の取引の適正化とその生産、流通の円滑化を図り、国民生活の安定に資することを目的としています。 2020年には卸売市場法が改正されたことで流通が活性化し、生産者にとっての販路が広がることが期待される一方で、卸売市場の公共性や社会インフラとしての機能が弱まるという懸念もあります。 また、個別の品目にも法律が存在します。例えば、野菜生産出荷安定法は、主要な野菜について一定の生産地域におけるその生産および出荷の近代化を計画的に推進するための措置を定めている法律です。 また、価格の著しい低下があった場合における生産者補給金の交付などの措置を定めることにより、主要な野菜についての当該生産地域における生産および出荷の安定等を図っています。これにより、野菜農業の健全な発展と国民消費生活の安定に資することを目的としているのです。 専門食品卸業界では、BSE、鳥インフルエンザなどの自然発生的な脅威のほか、毒物混入や産地偽装など、食の安全をめぐる問題が後を絶ちません。近年では、中国の期限切れの鶏肉問題や異物混入のトラブルが多発。消費者の食の安全に対する感度が高くなっています。

専門食品卸業界の今後の展望

新型コロナウイルス感染症の専門食品卸業者への影響の度合いは、卸先の状況によって異なります。スーパーや食品メーカーへの卸事業者の影響は小さいものの、デパートや飲食店、ホテル、学校給食へ卸している業者は需要が大きく減少しているため、厳しい状況となりました。 さらに、世界的な原料価格高騰や物流の混乱による調達コストの上昇は長期化するものとみられ、調達手段の多様化や物流改革といった対応は、引き続き重要です。 専門食品卸業界の市場規模は、国内人口減少・高齢者人口比率の増加による国内食品消費量減少というマイナス面があるものの、消費者の嗜好の多様化や相次ぐ食品トラブルに起因する食の安全・安心ニーズの高まりなどにより、単価が上昇するというプラス要素があります。そのため、トータルすると市場は横ばいから微減で推移すると予測されている状況です。 一方、食の安全・安心ニーズの高まりは市場外仕入の一層の増加につながり、市場外仕入拡大の流れに対抗するためには卸売事業者自身の経営革新が必要です。例えば、ローコストオペレーションシステムの確立、情報ネットワークシステムの整備などが、人材確保が難しい現状では必須となります。 また消費者に対する提案力を強化するためには、生産者との連携による一定水準以上で規格の揃った食肉の安定供給、衛生管理の強化による安全性確保が重要です。さらに新商品開発能力を向上するなど従来の流通業務の域を超えた取り組みも今後は求められるでしょう。 このような動きを各社が単独でおこなうには時間とコストがかかりすぎるため、提携やM&Aを通して、卸売事業者が連携しながら業界を活性化させることが望まれています。

食品卸関連会社の情報はBIZMAPSでチェック

私たちの食卓に安全・安心な食品が届くために、重要な役割を担っている食品卸業界。取り扱う商品によって現状や動向は異なるものの、業界全体としては食の安全に対する一層の取り組みが求められています。 慢性的な人手不足が続くなかで、コストカットと安全管理の両立をどのように実現していくのか、食品卸業界の今後に注目です。 BIZMAPSでは、取り扱い商品ごとに食品卸会社が検索できます。ぜひ便利な検索機能を活用して、食品卸関連会社の情報をチェックしてみてください! ▼法人営業ハックの業界特集はこちらから! フード業界とは?産業の全体像と重要ポイントについて解説! レジャー業界攻略ガイド:アミューズメント・観光・宿泊業界の魅力と成長 商社業界の現状や動向、今後の展望とは?売上ランキングTOP20もご紹介! アメリカで大人気?豆腐業界の現状と動向!主要な豆腐メーカーも紹介 アミューズメント機器業界の今!大阪IR事業への参入も徹底解説! ▼BIZMAPSのオリジナルタグを元にした企業特集はこちら! 外国人採用を積極的に企業が取り入れる意味は?企業ランキング15社紹介 中食ブームにて活況!弁当製造業者の市場動向を分析&売上TOP10 【法人営業担当必見】茨城県の人気ご当地スーパー7選!運営会社も紹介

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