一色 みわ 0 Comments
通販・訪問販売化粧品業界は、主に化粧品を消費者に直接販売するビジネスモデルを採用している業界です。販売方法は、通販と訪問販売に分けられます。 本記事では、通販・訪問販売化粧品業界の定義をはじめ、構造や市場規模、主要プレイヤーの動向に焦点を当てて解説します。 なお、BIZMAPSでは通販・訪問販売化粧品業界に関連する企業の情報を掲載中です。各企業の詳細は【日用品・化粧品専門商社】【化粧品販売】からご確認いただけます!是非合わせてご覧ください。

通販・訪問販売化粧品業界の定義

通販・訪問販売化粧品業界は、消費者が店舗に足を運ばずとも化粧品を購入できる便利なシステムを提供する業界です。通販・訪問販売化粧品業界には、通信販売と訪問販売の二つの主要な販売方法があります。 通信販売は、消費者がインターネットやカタログを通じて商品を選び、自宅に直接配送してもらう方式です。一方、訪問販売は、販売員が直接消費者の自宅や職場に訪れ、商品を紹介し販売する方式をとっています。 通販・訪問販売化粧品業界の大きな特徴は、対面での販売が少ないことによる消費者との距離の問題を、カスタマーサービスの質の向上や詳細な商品情報の提供によって克服している点です。 また、時間や場所を選ばないショッピングの利便性が、多忙な現代人にとって魅力的であるため市場は拡大しています。特に、オンラインショッピングの普及に伴い、通信販売は急速に成長を遂げています。 訪問販売では、個人的な接触により信頼関係を築けるため、高価格帯の製品や専門的なスキンケア製品の販売に適しているでしょう。 このように、通販および訪問販売化粧品業界は、それぞれの販売手法の特性を活かし、幅広い消費者のニーズに対応することで市場を拡大しています。

通販・訪問販売化粧品業界の構造

通販・訪問販売化粧品業界は、製品の企画から製造、そして販売までを一貫して行うSPA型の企業が多いことが特徴です。通販・訪問販売化粧品業界の主な販売チャネルには、Eコマース、テレビ通販、カタログショッピングといった通信販売と、直接消費者のもとへ訪れる訪問販売が含まれます。 化粧品メーカーは研究開発に基づいて製品を企画し、化学メーカーや香料メーカーから提供される原材料を使用して化粧品を製造します。製造は自社で行うこともあれば、OEMメーカーに委託することもあるでしょう。 通販・訪販化粧品メーカーは、サプライチェーンの効率化を図りながら、利益を出しやすいビジネスモデルを構築しています。直接的な消費者との接点を持つことで、顧客のニーズをリアルタイムに捉え、製品開発に反映させることが強みです。 通信販売では、Eコマースが特に成長を遂げており、化粧品に特化したECサイトも増加しています。流通在庫を抑えつつ迅速に消費者に製品を届けられるため、効率的な販促活動が可能です。ファンケルの無添加化粧品の成功例がこれを象徴しています。 一方、訪問販売は、販売員が直接消費者の自宅を訪問することで、商品の魅力を直接伝える機会を持てるため、個別のニーズに対応しやすいです。しかし、近年は女性の社会進出により在宅率が低下しており、市場は縮小傾向にあります。このため、エステを併設した店舗への集客など、新たな販売戦略に取り組んでいます。 化粧品のその他の流通チャネルとしては、路面店販売、制度品流通(百貨店や専門店での販売)、一般品流通(ドラッグストアやコンビニエンスストアでの販売)、業務用販売(理美容店・エステサロン・美容外科での販売)があります。これらのチャネルも化粧品メーカーにとって重要な販売ルートです。

通販・訪問販売化粧品業界の商品やサービスの特徴

通信販売の特徴は、主に二つです。まず、消費者が一般的に手に入れにくい、希少性の高い商品を取り扱っていることです。これには海外ブランドの化粧品、産地直送品、無添加化粧品などが含まれ、これらの商品は店舗では簡単には入手できないため、消費者からの強い支持を得ています。 次に、店頭で購入が難しい商品も扱っていることです。例えば女性用育毛剤のようにプライバシーを考慮したい商品も通信販売を通じて気軽に購入できるため、ヒット商品となることもあります。 訪問販売の独自の特徴も二つあります。一つは、商品の説明が必要な「説明型の商品」を取り扱うことです。訪問販売員が直接家庭や職場を訪れて商品の魅力を詳しく説明できるため、消費者に商品の価値を効果的に伝えられます。 もう一つの特徴は、多様なサービスを提供することです。女性の社会進出に伴い在宅率が低下している現状を踏まえ、プロのメークアップやエステを受けられるサロンの展開、美容セミナーや出張エステサービスなど、新たな顧客体験を提供しています。

通販・訪問販売化粧品業界の主要企業の財務指標分析

ポーラ・オルビスホールディングス、ファンケル、ノエビアホールディングスという3つの主要企業において、売上高総利益率は60%から80%と非常に高い水準にあります。しかし、これらの企業の営業利益率は約10%と比較的低く、この背景には販売管理費用の高さがあります。 具体的には、通信販売の場合、店頭で商品を手に取る機会がないため、広告や宣伝活動が非常に重要となり、これに伴う費用が多くかかります。また、訪問販売では、販売員の人件費も大きな負担です。 生産性の面では、3社ともに従業員あたりの売上高は増加傾向にありましたが、新型コロナウイルス感染症の影響により販売機会が減少し、売上高は低下しました。2022年度においても、その回復は弱い状況が見られます。 ROA(総資産利益率)に関しては、コロナ禍の影響で2020年度は利益率と資本回転率が低下し、3社ともに数値が悪化しました。その後、ポーラ・オルビスホールディングスとノエビアホールディングスは改善傾向にあるものの、ファンケルは広告宣伝費の負担が重く、まだ回復には至っていません。 さらに、公正取引委員会の「生産・出荷集中調査」におけるHHI指数からは、ファンデーション市場の業界集中度が高まっており、大手メーカーによる寡占が進んでいることが示されています。HHI指数が2,500を超えると、業界の寡占度が高いとされ、この数値の上昇は完全独占状態に近づくことを意味します。この結果から、業界内での競争が限られている状況が見受けられるでしょう。

通販・訪問販売化粧品業界の市場規模とトレンド

通販と訪問販売化粧品業界の市場規模とトレンドを、経済産業省の「商業動態統計」と日本訪問販売協会のデータを参考に詳しく見ていきましょう。 2022年度の医薬品および化粧品小売業界の総販売額は16.3兆円に達し、増加傾向を示しています。この中で、新型コロナウイルス感染予防のための衛生用品の売上が化粧品の落ち込みをカバーし、全体としては堅調に推移している状況です。 訪問販売化粧品の市場は2007年度から縮小傾向にあり、特にコロナ禍の影響で2020年度には2,951億円まで売上が落ち込み、2022年度にはさらに減少して2,766億円となりました。女性の社会進出による在宅率の減少がこの落ち込みに寄与しており、通販化粧品やプライベートブランドの台頭が訪問販売市場の縮小を加速させています。 一方で、化粧品と医薬品のEC市場は拡大を続けており、2022年には市場規模が9,191億円に達しました。EC化率は8.2%に上昇していますが、他の製品分野と比較して成長率は低めです。これは、化粧品が実際に手に取って試さなければ商品の特性がわからないという特性から、消費者がオンライン購入を躊躇する傾向があるためです。 2020年以降、新型コロナウイルスによる外出自粛の影響で化粧品市場は大きなダメージを受けました。しかし、実店舗からオンラインへのシフトが進んだ結果、通販化粧品業界の市場縮小は限定的でした。一方、訪問販売化粧品はイベントの中止などの影響を大きく受け、売上が大幅に落ち込む結果となりました。

通販・訪問販売化粧品業界の業界環境

通販・訪問販売化粧品業界における市場の動向と参入企業の利益に大きな影響を与える要因は主に二つあります。
  • 女性の社会進出の影響
女性の社会参加の増加に伴い、時短化粧品の需要が高まっています。インターネットとスマートフォンの普及により、通信販売が主要な販売チャネルとして台頭し、いつでもどこでも商品を簡単に注文し自宅に配送できるようになりました。しかし、女性の在宅時間の減少は訪問販売の効率を低下させ、市場の縮小を招いています。
  • 訪日外国人によるインバウンド需要の変化
訪日外国人の増加により化粧品市場が拡大し、2018年には外国人観光客の消費単価が約27,000円に達しました。しかし、2019年の中国の法改正で個人ブローカーの取り締まりが強化され、越境ECが優遇されるように変わり、消費者の購買行動がオンラインへと移行。2020年、新型コロナウイルスの影響で訪日外国人が減少しましたが、それが国内外のEC市場の需要をさらに高める結果となりました。

通販・訪問販売化粧品業界の相関図・業界地図

通販化粧品業界には多くの企業が参入していますが、その中でも主要なプレイヤーは以下の通りです。 通販化粧品業界には中堅や中小のメーカーも多く存在していますが、最近では資生堂のような大手企業もオンラインショップでの販売を行っています。通販専業の化粧品メーカーは、訪問販売を主とする企業に比べて創業からの年数が短いことが一般的です。 また訪問販売化粧品業界の主要プレイヤーは以下の企業です。 訪問販売は、かつて高価格商品の主要な販売チャネルであり、そのため訪問販売を行う化粧品企業の中には長い歴史を持つものが多くあります。

通販・訪問販売化粧品業界の主要プレイヤーの動向

通販化粧品業界の主要企業は、過去の経済危機や自然災害の影響を受けた時期もありましたが、コロナ禍前までは比較的安定した売上を維持していました。しかし、新型コロナウイルスの流行によって大きく需要が減少し、業績は一時的に低迷しましたが、近年では改善傾向にあります。 ポーラは通販・訪問販売化粧品業界最大手の一つで、スキンケア製品やメイクアップ商品、エステサービスを提供するサロン型ショップを展開。2018年と2020年には、自然派スキンケアブランド「JURLIQUE」の海外での業績不振や医薬品事業の譲渡による影響で収益が低下しました。 2022年度には、ECチャネルを通じたオンラインカウンセリングやライブコマースを強化し、高機能商品の販売が好調になり収益を改善しました。 ファンケルは、無添加化粧品の通信販売で成功を収めたパイオニアであり、小ロット・小容量での製品提供が特徴です。最近では、化粧品に加えて青汁やサプリメントなどの健康食品も扱うようになり、総合健康・美容メーカーとしての地位を築いています。積極的な広告宣伝により売上を増加させている一方で、海外事業への投資も拡大し、特に中国、ヨーロッパ、中近東での商品展開を強化しています。 2020年度以降は売上が減少傾向にありますが、デジタルカウンセリングサービスの強化など新たな取り組みを進めています。

通販・訪問販売化粧品業界の今後の業界展望

通販・訪問販売化粧品業界の今後の展望を理解することは、市場の変化に迅速に対応し、競合他社との競争優位性を確保するために重要です。また、新たなビジネスチャンスを発見し、消費者のニーズに適応した戦略を立てられます。 ここでは、以下の2点について詳しく解説します。
  • 新型コロナウイルスが化粧品業界に与えた影響
  • 通販化粧品市場の拡大と訪問販売市場の縮小

新型コロナウイルスが化粧品業界に与えた影響</h3>

新型コロナウイルスの影響により、化粧品市場は全体として大きな打撃を受けており、市場は縮小傾向にあります。特に、外出自粛やマスク着用の普及により、ファンデーションや口紅、リップなどの口元の化粧品の需要が顕著に減少しました。 対照的に、目元の化粧品やスキンケア製品など、家でも外出時でも使える基礎化粧品の需要の減少は比較的小さく、一部では安定しています。 販売チャネルについても変化が見られます。百貨店などの実店舗が休業や制限措置を余儀なくされた結果、多くの消費者が通販へと移行し、このセグメントの売上は伸びています。 一方で、訪問販売は新型コロナウイルスの影響で大きな打撃を受けることに。具体的には、新商品のプロモーションイベントや美容セミナーの中止、エステ施術や化粧品の試用といった直接的な顧客サービスの自粛が続いており、これが顧客との接点の減少や購入率の低下につながっています。 今後の展望としては、化粧品市場は段階的に回復する可能性がありますが、消費者の行動パターンや購買習慣の変化に応じた市場戦略の転換が必要とされるでしょう。特に、デジタルチャネルやオンラインサービスの一層の強化、安全性と利便性を重視した顧客体験の提供が求められます。

通販化粧品市場の拡大と訪問販売市場の縮小</h3>

女性のさらなる社会進出などの社会変化を背景に、通販化粧品市場の拡大が見込まれていますが、訪問販売化粧品市場は縮小すると予想されています。今後の通販・訪問販売化粧品業界で予測される動向は、特に以下の二つです。
  • オムニチャネルの進展
スマートフォンやタブレットの普及と電子決済の安全性向上により、Eコマース市場が拡大。これに伴い、多様で高機能な化粧品が増え、消費者が適切な製品を選ぶのが難しくなっています。そのため、通販、訪問販売、店舗販売を統合したオムニチャネル戦略が重要です。資生堂などはオンラインでのカウンセリングと情報提供を強化し、店舗への誘導と製品体験を通じて販売を活性化しています。
  • マーケティングの高度化
化粧品販売では、ECサイトでのカスタマイズされたマーケティングが重要です。ビッグデータ分析とAIにより、顧客個別のパーソナライズドレコメンデーションが実現しています。資生堂は「ワタシプラス」プラットフォームを通じて顧客データを管理し、リアルタイムでクーポン発行や製品推薦を行っており、これを店舗での接客にも活用する計画です。

通販・訪問販売化粧品業界

通販・訪問販売化粧品業界で成功するためには、顧客体験の向上、デジタルマーケティングの強化、持続可能性への取り組みなどが鍵です。これらの戦略を通じて、市場ニーズに応じた製品を開発することで、業界内での競争力を高められるでしょう。 なおBIZMAPSでは、オリジナルタグを用いて多様なアプローチで企業情報を検索できます。通販・訪問販売化粧品業界の企業はもちろん、国内200万社以上の企業の基本情報が無料で閲覧でき、売上や従業員数などの情報を基にターゲット企業を絞り込むことが可能です。 ▼法人営業ハックのその他の業界特集はこちら! 酒販店業界は免許が必要な規制業界!基礎知識や特性や最新動向を解説 外食業界とは? 絶えず進化する業界の全貌とその背景を詳しく解説! 加工食品業界(調味料、レトルト・冷凍食品)とは?その全貌を解説! 加工食品業界(製糖、製粉、製油)とは?主要三産業が形作る食品市場を解説 専門食品卸の業界分析!市場規模やトレンド、今後の動向をチェック 配合飼料業界とは?特性や市場規模、業界の2大企業をまとめて紹介します! 加工食品業界とは?食肉や乳業などの主要企業、最新の動向を解説します 化粧品業界の最新の動向をチェック!今後の展望を見据え解説します!

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