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化学品卸業界は、化学製品の供給チェーンにおいて重要な役割を果たしており、製品の流通、保管、配送、技術サポートなどのサービスを提供しています。企業最大プラットフォームの「BIZMAPS」で検索したところ、
【化学専門商社】は2,236社もありました。今後、化学品卸業界が、さらに発展するには主要企業の動向や最新のトレンドなどに目を向ける必要があります。
本記事では、化学品卸業界を解説するとともに、主要企業の動向や最新のトレンド、化学品卸業界の今後の展望に注目しました。化学品卸業界へ新規顧客開拓を考えている営業や、今後さらなる展望を望む経営者の方には最適な内容です。是非、チェックしてください。
化粧品卸業界の定義と特性

化学品卸業界は、化学製品や原材料をメーカーから購入し、さまざまな産業の企業に対して販売する事業を行う業界です。卸業者は、化学製品の供給チェーンにおいて重要な役割を果たし、製品の流通、保管、配送、技術サポートなどのサービスを提供します。化粧品卸業界の取り扱う製品には、基本的な化学品、特殊化学品、工業用化学品、農業用化学品、医薬品原料などが含まれます。
化学品卸業界は、広範な製品ラインナップとネットワーク、専門知識を活かし、多様な産業のニーズに対応する重要な役割を果たしています。デジタル化、環境配慮、グローバル化、カスタマイズサービスといったトレンドに適応しながら、持続可能な成長を目指しています。主要プレイヤーは、これらのトレンドを活用し、競争力を強化しています。
化粧品卸業界のバリューチェーン

化学品卸業界のバリューチェーンは、化学品の製造から最終的な消費者への供給までの一連のプロセスを指し、各段階で価値が付加されていきます。化学品卸業界の扱う化学品は、大きく素材型化学品と加工型化学品の2つに分けられます。両化学品は、原料から最終化学品までの製造および加工段階の中で、素材型化学品は上流側、加工型化学品は下流側と概ね別れ、それぞれ異なった流通構造を持ちます。
化学品卸業界の素材型化学品は、主に大規模な製造設備を使い大量生産される製品が多いです。そのため、原料調達から製品卸売まで全体の流通を、総合商社や大手化学品卸が担うことが多いです。化粧品卸業界の加工型化学品は、製品の種類が素材型化学品と比べて多く、加工度・専門性が高いのが特徴的です。そのため、基本的に化学品卸が流通を担っています。
化学品卸業界の化学品には、医薬品と化学肥料・農薬が挙げられ、多くは、医薬品卸と全農を通して販売されています。化学品卸業界の医薬品は、高度な商品知識・流通ノウハウが求められるのに対し、化学肥料・農薬は比較的容易に取り扱うことが可能なため、参入している化学品卸も存在しています。以下、化学品卸業界の主な構造を解説します。
主な業界構造と働き

化学品卸業界のバリューチェーンは、研究開発からアフターサービスまでの各段階で付加価値を創出しています。各プロセスでの効率性と品質管理が重要であり、これにより最終的な製品の競争力と顧客満足度が向上します。業界内の企業は、これらの各段階での強みを活かし、全体のバリューチェーンを最適化することで、市場での優位性を確保しています。
- 研究開発:新しい化学製品の開発、既存製品の改良、応用研究を行い、市場ニーズに応じた製品開発と技術革新を担っています。
- 調達:品質とコストをバランスさせた調達戦略を持ち、原材料の調達、サプライヤーの選定、価格交渉を行います。
- 製造:高い技術力と厳格な品質管理をし、原材料を化学製品に加工するプロセスを担っています。
- 流通・物流:効率的な物流システムと在庫管理のもと、製品の保管、輸送、配送を行います。
- マーケティングとセールス:製品のプロモーション、販売チャネルの開拓、販売戦略の策定をし、市場分析とターゲット設定に基づいた効果的なマーケティング活動を行います。
- 卸売:広範な販売ネットワークと強力なパートナーシップのもと、化学品を小売業者や他のビジネスパートナーに販売します。
- 小売:店舗販売、オンライン販売など、多様な小売チャネルを使い、最終消費者に対する化学品の販売を行います。
- アフターサービス:消費者との長期的な関係を構築し、製品の使用方法の説明、顧客サポート、フィードバックの収集を行います。
化学品卸業界の取り扱いサービスと主な商品

化学品卸業界は、幅広い化学製品と多様なサービスを提供することで、多くの産業のニーズに対応しています。製品の調達と供給、技術サポート、品質管理、物流、カスタマイズ、環境対応、トレーニングなど、各種サービスを通じて顧客に価値を提供しています。また、基本化学品から特殊化学品、工業用化学品、農業用化学品、医薬品原料、食品添加物、パーソナルケア原料、電子材料まで、取り扱う商品も多岐にわたります。
主要プレイヤーは、これらのサービスと製品を駆使して競争力を高め、持続可能な成長を目指しています。
化学品の分類とは
化学品卸業界が扱う化学品は商品が多彩にあるのが特徴的です。多くの化学品は、中間財として他業界の原料・部品になる商品です。そのため、化学品卸業界は、原料に近い製品で無機物・有機物ともに幅広い分野の製品を取り扱うだけではありません。最終的に製品の販売先については全業界を顧客としており、業界内の流通も多いことから、化学品卸業界は各製品を取り扱う必要があります。
多くの種類がある化学品ですが、化学品卸業界が扱う分類は、以下のように様々なものがあります。
- 製造段階分類:原料・中間原料・1次製品・最終製品
- 加工度分類:素材型化学品・加工型化学品・基礎化学品・機能性化学品
- 物性分類:有機化学工業製品・無機化学工業製品
これらの分類は、相互に関連していて、製造・加工の初期段階にあたる、中間原料は、素材型化学品・基礎化学品とみなされることが一般的です。製造段階が進んだ1次製品や最終製品は加工型化学品・機能性化学品に分類されることが多いです。ただし、有機化学工業製品・無機化学工業製品は、原料や中間原料の物性による分類に位置することから、加工度の低い素材型化学品や基礎化学品をさらに分けた内訳になっています。
素材型化学品と加工型化学品とは

化学品卸業界が取り扱う商品は、素材型化学品と加工型化学品で大きく異なります。まず、素材型化学品は、製造業において基礎的かつ重要な役割を果たします。ポリマー、セラミックス、金属、コンポジット材料など、さまざまな種類の素材型化学品が存在し、それぞれが特定のニーズに応じた特性と利点を提供します。しかし、取り扱う商品としての付加価値は比較的低く、販売時は価格の安さが重要視されがちです。
素材型化学品の性質から、取引先となるメーカーは大規模プラントで効率的に大量生産を行う大手企業が多いのが特徴的です。また、素材型化学品の原料調達においては、原料価格や為替の相場変動への適切な対処が必要です。加工型化学品は、製造プロセスにおいて不可欠な役割を果たす化学物質であり、製品の品質向上や製造効率の向上に寄与しています。
加工型化学品には、界面活性剤、触媒、溶剤、添加剤、染料、安定剤、粘結剤、脱泡剤など、多くの種類が存在し、食品産業、製薬業、化粧品産業、プラスチック産業、塗料およびコーティング産業、繊維産業など、多くの産業で使用されています。そのため、多様な業界が顧客となるため、顧客のニーズに合わせて適切な提案を行うことが重要です。専門性やカスタマイズされた提案が付加価値につながる他、顧客情報の重要性が高いのも特徴的です。
化学品卸業界のビジネスモデルを解説!

化学品卸業界のビジネスモデルは、効率的な供給チェーン管理、価値付加サービスの提供、および市場のニーズに応じた柔軟な対応を基盤としています。仕入れと調達、在庫管理と物流、販売とマーケティング、価値付加サービス、規制遵守と安全管理、イノベーションと持続可能性といった各要素が連携し、総合的な競争力を発揮します。化学品卸業界は商品の中間流通を担う立場です。
そのため、業績は商品の市場動向に依存し、上流・下流業界と板挟みになることも少なくはありません。また、化学品卸業界は売り手・買い手に対する交渉力の低さも特徴の一つです。特に売り手に対しては、素材型・加工型いずれにおいても交渉力が低い傾向にあります。なお、化学品卸業界の素材型化学品は、メーカーに大手企業が多く存在するため、企業規模の差が交渉力に反映されます。
そのため、製品の種類が多種多様な加工型化学品は、製品ごとに参入しているメーカーが別れることが多いため、特定の企業が強みを持つ場合は化学品卸業界の交渉力が低くなりがちです。このように、化学品卸業界は中間流通業者として売り手・買い手に対する交渉力が高くないことから、化学品の流通によっては安定的な利益を出すことに限界が生じます。そのため、化学品卸業界のKFSは、既存の事業以外の領域を拡大することです。
化学品卸業界の事業領域拡大の手段としては、上流・下流業界へ進出するための方向性を定めることが大切です。例えば、上流業界への進出を目指すなら、ユーザーのニーズを明確にとらえ、情報を活かしたプライベートブランドのような形で化学品の製造に参入するという方法が考えられます。下流業界は、商品に関する知識を活用して、買い手の役務を担うことで参入する方法が考えられます。
化学品卸業界の財務指標を分析しました

化学品卸業界における主要な財務指標は、企業の経営状況や業績を多角的に評価するための重要なツールです。売上高、売上総利益、営業利益、純利益、営業利益率、純利益率、流動比率、ROE、ROAなどの指標を用いて、企業の収益性、効率性、財務健全性を評価します。化学品卸業界の財務指標については、経済産業省の「企業活動基本調査」を参考にします。
化学品卸業界は、他の卸売業界と同じく、売上高に占める売上原価の割合が高いです。売上原価率が90%超えと、高い原価率で推移しているのが特徴的です。それに対し、化学品卸業界の営業利益率は1%前後と非常に低く、卸売業界全体の平均値である3%と比べても低調です。化学品卸業界の生産性は、従業員当たり売上高が2億超えと非常に大きいです。相対的に販管費の割合は低く抑えられているのが分かります。
化学品卸業界の固定資産比率は、他の卸売業と同じで低く、製造・加工を行わず、在庫・金融といった役割を果たす中間流通業者としての特徴が大きく表れています。尚、化学品卸業界のROAは、4%台で安定的に推移しています。総資本回転率は低下していますが、化学品卸業界は利益率の改善により好調を維持しています。
化学品卸業界の市場規模をチェック

化学品卸業界の市場規模は、化学製品の需要や供給、経済状況、産業活動の動向などに左右されます。化学品卸業界は、製造業や農業、医薬品、食品、エネルギー、建設など、さまざまな産業に化学製品を供給する重要な役割を果たしています。また、化学品卸業界の市場規模は、世界的に見ても巨大であり、北米、ヨーロッパ、アジア太平洋地域が主要市場です。日本市場も数兆円規模の重要な市場であり、安定した成長を続けています。
市場規模と今後の懸念事項
化学品卸業界の市場規模は、経済産業省の「商業動態統計調査」「工業統計調査」「経済センサス」「経済構造動態調査」および財務省「貿易統計」を参考にします。2022年の化学品卸業界の販売額は26.5兆円となっており、長期的に減少傾向で推移しています。コロナ禍からの需要回復は早く、2021年は大幅に増加が見られました。その後、2022年も堅調に拡大を続けています。
化学品卸業界の扱う化学品の出荷額は、2019年までは増加傾向にありました。しかし、2020年はコロナ禍の影響を受け、大幅に減少しました。化学品卸業界の化学品の多くは中間財としてさまざまな製品の製品原料や部品材料に使用されるためコストの削減の対象となりやすく、需要の回復も早い傾向にありました。今後は、卸売業者を通さない調達が増えることが懸念されています。
急速に進むグローバル化に注目
化学品卸業界の出荷額や卸売業の販売額の推移は、化学品の輸入量増加の影響を大きく受けてきました。貿易統計を参考にすると、化学製品の貿易額は、輸出入ともにコロナ禍においても増加傾向にありました。これは、化学品卸業界の増加の大部分が輸出増によるものだからです。化学品卸業界の国内需要は、輸入が増加しています。大手メーカーの販売部門や貿易商社による流通が増加し、結果、化学品卸業界の販売額が減少しています。
化学品卸業界は、2020年はコロナ禍による物流の停滞で若干の落ち込みを見せました。しかし、回復も早く、2021年、2022年は大幅に輸出入額が増加しています。こういった結果を見ても、化学品卸業界は経済規模の追求、事業ポートフォリオの補完、シナジー創出を目的としたグローバル化や業界再編が進んでいることが分かります。
実際に、2017年に米化学大手「Dow Chemical」と米「DuPont」が経営統合し、世界最大の総合化学グループ「DowDuPont」が発足されました。今後も、化学品卸業界では事業再編に伴う事業変化が予想されます。それに対し、化学品卸業界は柔軟な対応が求められています。
化学品卸業界の最新トレンド

化学品卸業界は、デジタル化と自動化、環境と持続可能性、規制とコンプライアンス、カスタマイズとパーソナライゼーション、グローバル化と新興市場、イノベーションと技術開発といったトレンドに対応しながら進化を続けています。これらのトレンドに適応することで、企業は効率性と競争力を高め、持続可能な成長を実現しています。化学品卸業界の最新トレンドに注目しました!
デジタル化と自動化が進んでいます
デジタル技術の進化により、化学品卸業界はデジタル化と自動化を進めています。オンラインマーケットプレイスやデジタルカタログを利用して、顧客との取引を迅速かつ効率的に行うデジタルプラットフォームや、統合されたエンタープライズリソースプランニング(ERP)システムを導入し、在庫管理、注文処理、物流の一元管理などを行っています。AIとビッグデータを活用して、需要予測や最適な供給チェーン管理を実現しています。
環境と持続可能性の強化が進んでいます
化学品卸業界は、環境意識の高まりと厳しい環境規制により、持続可能な製品とプロセスの開発が求められています。主に、環境に優しい化学反応やプロセスを開発し、持続可能なグリーンケミストリーの提供をしています。廃棄物の再利用やリサイクル技術の推進により、資源の有効活用と廃棄物削減するリサイクルと循環型経済が進んでいます。カーボンニュートラルとして炭素排出量を削減するための取り組みが進んでいます。
規制とコンプライアンスの重要化が進んでいます

化学品卸業界は、化学品の取り扱いや流通に関する規制が厳格化されており、コンプライアンスの重要性が増しています。欧州連合のREACH規制に対応し、化学物質の登録、評価、認可、および制限を管理し、国連のグローバル調和システム(GHS)に準拠した製品ラベルと安全データシート(SDS)の作成をしています。また、倫理的調達や透明性の確保を推進し、持続可能な供給チェーンを構築しています。
カスタマイズとパーソナライゼーションが求められています
化学品卸業界は、顧客の多様なニーズに応じたカスタマイズサービスの提供が求められています。顧客特化型ソリューションとして、特定の顧客要求に合わせた製品のカスタマイズや新製品を開発しています。また、顧客の需要に応じて柔軟に生産計画を変更し、小ロット生産に対応するオンデマンド製造も増えています。専門知識を持つスタッフが顧客に技術サポートやコンサルティングを提供しています。
グローバル化と新興市場が発展します
化学品卸業界は、グローバル市場の拡大と新興市場の成長が続いており、企業は国際展開を強化しています。国際取引の拡大を目的に、新興市場(特にアジア、中東、アフリカ)への進出と現地パートナーシップの構築が展開されています。また、地域特化戦略として、地域ごとの特性やニーズに応じた製品提供とサービスを展開しています。国際物流の効率化と信頼性向上を図るための物流ネットワークの最適化が進んでいます。
イノベーションと技術開発が進んでいます
化学品卸業界は、新技術や製品の開発が業界の競争力を強化する重要な要素となっています。主に、ナノスケールでの化学品開発により、製品性能を飛躍的に向上するナノテクノロジーや、再生可能な生物資源を原料とするバイオベース化学品の開発が注目されています。また、化学品卸業界は、環境変化に応じて性質を変える材料や高機能材料など、スマート材料の研究開発に力を入れています。
化学品卸業界のマクロ環境

化学品卸業界のマクロ環境は、経済環境、政治・法制度環境、社会環境、技術環境、環境要因、法規制と倫理といったさまざまな要因から成り立っています。これらの要因は業界の動向や企業の戦略に大きな影響を与えるため、企業はこれらの外部環境を常に監視し、適応する必要があります。特にデジタル化や持続可能性への対応、規制遵守といったトレンドが今後の業界の成長と競争力強化に重要な役割を果たします。
化学品卸業界に影響を与える外部要因は、国内外を含むマクロ経済の動向による影響が大きく、特に事業環境に市場の変化が直接影響を与えています。これは、国内の景気の動向によって、化学品の需要が変動するため、化学品卸業界の影響につながっています。また、市場規模により、買い手企業からの値下げ圧力が強まるリスクも高まります。また、海外市場・海外企業の成長により、輸出入が今後も増加する可能性が高まっています。
今後、海外需要が増えることにより、国内での流通を中心としている化学品卸業界の企業は、事業環境が厳しくなることが予想されます。これらのことから、今後、化学品卸業界が長期的に安定的な成長を実現するためには、新たな商材流通への参入や、輸出入品の取り扱いなど、事業の変革が重要となってきます。また、化学品卸業界では、市場規模だけではなく技術動向も大きなマクロ環境要因となっています。
化学品卸業界は、取り扱っている化学商品の種類が幅広いため、化学品卸業界の商社は商品に関する専門的な知識と、ユーザーニーズに関するリアルタイムな情報獲得の両方を充実させることが求められます。近年、インターネットの普及により、メーカー・ユーザーの両方からアクセス可能な情報が増加していると考えられます。
今後もさらにインターネットが発展すると考え、化学品卸業界は情報を充実させ、ITを積極的に活用しながら中間流通業者として付加価値を高める取り組みを進める必要があります。
化学品卸業界の業界地図に注目しました!

化学品卸業界の業界地図は、主要プレイヤー、サプライチェーンの構造、競争環境、規制、イノベーションと技術開発といった要素から成り立っています。主要プレイヤーはグローバル規模で活動し、多様な製品ラインナップと技術サポートを提供しています。これには、化学品卸業界が流通機能のみだけでは高い付加価値を出すことが困難であることが要因の一つとして上げられます。
化学品卸業界の各企業は、成長と競争力を維持するため、幅広い分野と多様な製品のラインナップ、技術サポートの提供が求められています。例として、長瀬産業、稲畑産業をはじめとする大手企業は、合成樹脂・電機・電子・建設材料・包装材料といった幅広い分野で、中間原料から最終製品まで多様な製品を手がけています。
このように、サプライチェーンは、原材料供給から製造、卸売、流通・物流、最終顧客までの各段階で構成されており、効率的な運営と高品質なサービスが求められます。化学品卸業界では、分野の広がりのほか、化学品の製造・加工における上流・下流業界への進出も大手企業の間では一般的となっています。特に、化学品卸業界の大手企業の多くは、化学品の製造・加工機能を子会社や関連会社に保有している場合が多いです。
また、化学品卸業界の商社系では、原料の採掘・生産・調達などを手掛ける企業やメーカーとのつながりを活用して電子機器受託製造に参入する企業もあります。化学品卸業界の海外への進出は、中国をはじめとするアジア諸国が多くみられます。近年の化学品卸業界の海外進出は、タイやベトナムといったASEAN諸国への展開が進んでいます。しかし、化学品卸業界の多くの企業は、海外事業を核とするまでに至っていないのが現状です。
欧米諸国を含む複数地域・複数国に広く進出しているのは、
長瀬産業、
稲畑産業、
森六ホールディングス、
CBC、
KISCOといった一部の企業に留まっています。今後、化学品卸業界は国内市場の成長減速を背景に、より積極的に海外展開が進むことが予想されます。化学品卸業界は、海外展開を視野に入れ、市場動向や規制に適応しながら、デジタル化や持続可能性、新興市場での成長を推進することが、業界全体の競争力を高める鍵となります。
化学品卸業界の主要企業の動向を解説

化学品卸業界の主要企業は、グローバルおよび地域市場で重要な役割を果たしています。Brenntag、Univar Solutions、IMCD Group、Azelis、HELM AGなどのグローバルプレイヤーは、多様な産業に製品を供給し、高度な技術サポートとグローバルなネットワークを持っています。一方、
三菱商事、
住友商事、
丸紅、
豊田通商、
伊藤忠商事などの日本の主要企業は、国内外での広範なネットワークと多様な製品ラインナップを活かし、持続可能性と環境への配慮を重視しています。これらの企業は、デジタル化、持続可能性、グローバル展開といったトレンドに対応しながら、競争力を高めています。
長瀬産業株式会社
長瀬産業株式会社は、1832年に設立された日本の大手化学品商社です。化学品や合成樹脂、電子材料、機能性材料など、多岐にわたる製品を取り扱っています。長瀬産業株式会社は、幅広い産業分野に対して、技術サポートやソリューション提供を行うことで、顧客の多様なニーズに応えています。
1832年に設立後、1900年以降は、CIBAの合成染料、Eastman Kodakのフィルム、Union Carbideの無機化学品、GE Plasticsのエンジニアリングプラスチックなど、海外大手企業の商品の輸入代理店となることで業績を拡大しました。1930年代からは、工場での製造を手掛けていましたが、2001年に主要製造子会社4社を合併した「ナガセケムテックス」を発足させました。
また、2011年には会社更生手続き中であったバイオ関連企業の林原を買収し、製造分野の強化を果たしました。1990年に研究開発センターを、2007年にはナガセアプリケーションワークショップを開設するなど、研究開発への投資も積極性が見られます。化学品卸業界の商社として蓄積した情報やノウハウを活用した化学品の製造は、商社機能とのシナジー効果もあり、長瀬産業株式会社の大きな収益源としても大きな役割を担っています。
化学品卸業界で注目されている海外展開にも積極的に挑戦しており、2018年には米国と中国で地域統括会社を設立し、2019年に米国大手食品素材会社の一つ、プリノバグループを買収しています。2022年度の海外売上比率は53.7%であり、中期経営計画ACE 2.0では、1DXの更なる加速、2サスティナビリティの推進、3コーポレート機能の強化を掲げ、収益構造の変革を図っています。
稲畑産業株式会社

稲畑産業株式会社は、1890年に設立された日本の総合商社です。化学品をはじめ、情報電子、合成樹脂、食品、生活産業など多岐にわたる製品を取り扱っています。稲畑産業は、2022年度の事業構成比は合成樹脂50%、情報電子32%、化学品12%、生活産業6%と幅広い分野で事業を手がけ、顧客の多様なニーズに応じたソリューションを提供しています。なお、化学品セグメントの売上は、2022年度に898億円となり近年増加傾向です。
化学品卸業界で染料・染織機械の輸入販売から事業展開を始めましたが、染織機械から発展して液晶画面材料などの電子材料を取り扱いを始め、合板用接着剤の販売から建材・家具、コーンスターチの販売から食品の販売を手がけるなど、既存顧客のニーズに合わせて柔軟に商材を増やし、事業拡大を成功させました。化学品卸業界で注目されている海外進出にも積極的に行っています。
アジアを中心にし、19ヶ国に約60の拠点を展開しています。特にASEAN諸国には10ヶ所の製造加工拠点を保有しています。2022年度の海外売上高比率は64%と高い数値を誇っています。全社の営業利益の半分以上は、海外事業から生み出されるなど化学品卸業界の一つとしてグローバル化に成功しています。
中期経営計画NC2023では、中国市場における液晶・有機ELビジネスの拡大、新世代FPDや周辺部材の拡販、コンパウンド事業を含めたグローバル展開をいかし自動車分野での合成樹脂ビジネスの拡大などが掲げられています。
中小企業の動向
化学品卸業界の中小企業は、化学品卸業界のトレンドとして売り手の交渉力が相対的に低いことが大きい特徴の一つです。そのため、化学品卸業界の大手や総合化学メーカー間でもM&Aを通じた合理化が進んでいます。化粧品業界の中小企業は、スケールメリットの追求として、販売チャネルの拡大や、取り扱い商品ラインナップの拡充を目的とした合理化も進んでいます。
化学品卸業界の今後の展望は?

化学品卸業界の今後の展望を見据えていきます。まず、化学品卸業界だけではなく、多くの業界で影響をもたらした新型コロナウイルスに注目します。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、国内だけではなく国外を含む世界中で、工場の稼働率が落ち込みました。その影響を受けて、化学品卸業界が扱う工場の稼働率が落ち込み化学品需要が低下しました。しかし、生産活動の再開と共に回復基調にあります。
世界的に大きな影響が出ている自動車製造に必要な素材は、半導体不足による生産制限の影響は受けているものの世界経済の復調と共に需要の戻りは早いです。また、化学品卸業界は、市場を国内から海外へ移動すること、化学品の高付加価値化の進行が、今後の将来動向に影響を与えるとみられています。今後の化学品卸業界の市場環境は、国内市場の成長減速と共に、海外市場の成長が継続する可能性が非常に高いです。
この環境の中で、国内の化学品卸業界メーカーは、海外展開の加速や取り扱う商材の拡大により、事業領域の拡大を志向することが予想されます。化学品卸業界の化学品や、ユーザーにおいてエレクトロニクスや電子部品業界との親和性が高いのが特徴的です。化学品卸業界は関係性を活かし、電子部品卸との連携が進むことも考えられます。また、技術革新や新興国の経済成長にともない、化学品卸業界の素材型化学品はコモディティ化が進みます。
その一方で、加工型化学品では多様化・高機能化が進むことが考えられます。化学品卸業界は事業の収益性向上が必要になる業界です。化学品卸業界の事業構造の転換や、一層の新規商材の開拓が今後の展望を左右するといっても過言ではありません。実験データをAI分析し、新素材探索の効率化を目指すなど、コスト削減だけではなく、高付加価値化の観点でも資本を持つ化学品卸業界の大手メーカーが優位になる業界構造になる可能性もあります。
化学品卸業界はグローバル化を視野に入れた戦略が必須です
化学品卸業界は、国内の化学品の出荷額が減少傾向にあることから、早期にグローバル化を視野に入れた展開が必要となります。現在、化学品卸業界の大手企業は海外展開を積極的に行い事業領域の拡大に取り組んでいます。また、ユーザーのニーズを取り入れた、新規商材の提供が重要となってきます。専門的な技術力だけではなく、ユーザーのニーズやトレンドに常に目を向けることも大切なポイントです。
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労務に携わるWebライターです。「良質な情報を、分かりやすく言語化して伝える」ことを心掛けています。犬とパンやお菓子作りが大好き!にぎやかで楽しい、3人の育児中です。
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