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トイレタリー業界とは
トイレタリー業界は、石けん、シャンプー、歯磨き粉を主として、他に紙おむつ・生理用品、住居用洗剤、業務用洗剤などの製造・販売を行っている業界です。いずれも消費者の生活に欠かすことができないもので、景気や時代に左右されることなく、常に安定した需要があります。 長く生活必需品を扱ってきたトイレタリー業界は成熟した市場となっており、大規模な生産設備を必要とした一部の大手企業中心の資本集約型業界といえます。トイレタリー業界を区分する「総合系」と「専業系」
トイレタリーメーカーは、様々な商品を製造・販売する「総合系」と特定の製品に絞って製造・販売する「専業系」に分けられます。幅広い商品を展開する総合計は大規模メーカーで構成され、専業系メーカーは総合系メーカーよりも規模が小さいのが一般的です。 花王やライオン、Procter & Gambleは総合系を代表する企業です。これらのメーカーは常にトイレタリー市場で大きなシェアを獲得しています。ただし、それぞれの会社は特定の商品セグメントで競争優位性を確立しています。例えば、花王はファブリックケア商品(特に衣類用洗剤)、ライオンはオーラルケア商品、Procter & Gambleはファブリックケア商品(特に柔軟剤)で競争優位性を持っています。 一方、専業系メーカーとしては、おむつ・生理用品で競争優位性を確立しているユニ・チャームや、ボディケア・ヘアケア商品で競争優位性を持っている資生堂、Unilever、アンファー、殺虫剤で競争優位性を持っているアース製薬、芳香剤・消臭剤で競争優位性を持っている小林製薬などが挙げられます。トイレタリー業界の商品は家庭用と業務用の2種に分けられる
トイレタリー業界の取り扱い商品は、大きく家庭用と業務用に分かれています。 家庭用商品とは、個人顧客をターゲットとした台所用洗剤や衣料用洗剤・柔軟剤、シャンプー・コンディショナー、石鹸、紙おむつ・生理用品、歯ブラシ・歯磨き粉、マスク、芳香剤・消臭剤、殺虫剤・防虫剤などです。 一方、法人顧客をターゲットとした業務用商品には、ヘアカラー剤・パーマネントウェーブ剤や業務用洗剤、業務用シャンプー・コンディショナー、歯ブラシ・歯磨き粉などがあります。トイレタリー業界の業界構造
通信販売・訪問販売 | ・インターネット通販とテレビ通販が主な形態 ・市場は拡大しており、直接消費者に届けられる |
百貨店・専門店 | ・大手メーカーは系列の販社を通じて商品を百貨店や専門店に卸し、店頭で販売 ・商慣習としてリベートがあり、掛け率は高め ・新製品と既存製品の入れ替えが激しいため、返品慣行も存在 |
小売チェーン店 | ・ドラッグストアやコンビニエンスストアなどで販売される商品は低価格から中価格帯のものが中心 ・店頭のPOPなどの広告宣伝が重要 ・リベートが存在し、掛け率は百貨店や専門店より低め ・百貨店、専門店同様に返品慣行も |
業務用販売 | ・理美容店やホテル、飲食店などの法人向けに販売 ・問屋や代理店を通じて流通 |
トイレタリー業界は主要な大手企業が市場のほとんどを占める
トイレタリー業界の特徴の1つが、大手企業が市場の多くを占めていることです。 ただし家庭用商品の市場においては、花王やProcter & Gambleなどのブランド力のある大手企業がシェアを高めていますが、中小事業者も幅広く存在しています。新規参入は一部の製品で見られますが、ブランド構築にはコストと時間がかかり、業界の構造を大きく変えることはないでしょう。 また、トイレタリー用品は生活必需品であり、業界全体の脅威となり得る代替品も存在しません。消費者のニーズは多様化しており、プライベートブランドなどの安価な商品や付加価値の高い商品のニーズが高まっています。 売り手としては、原材料メーカーや商社、OEMメーカーが挙げられますが、トイレタリーメーカーは大口顧客であり、原材料費が少ないため優位な立場にあり、買い手の交渉力が強い構造となっています。トイレタリー業界の主要企業
花王
花王は国内のトイレタリー業界を代表する大手企業です。2022年度の売上高は1兆5,511億円でした。新型コロナウイルス感染症の最盛期には家庭用のハンドソープや除菌スプレーなどの需要が高まりましたが、2022年以降は業務用商品の割合が増えています。 また花王の特徴は海外市場を積極的に開拓している点にあり、中国やインドネシアで紙おむつ、タイでは住宅用洗剤、欧米ではヘアケア商品や洗顔料などで好調な売り上げを維持しています。ライオン
ライオンは歯ブラシで国内トップクラスを誇るトイレタリーメーカーです。歯磨き粉・ライオン・ボディソープなどの幅広い商品ラインナップを展開しており、花王に並ぶブランド力を有しています。 また2022年度では花王の収益率が35.4%、ユニ・チャームの収益率が36.6%だったのに対して44.8%と高い収益性を維持していることも特徴です。3社の中で同社が最も収益性が高いという結果になったのは、2020年度から3年連続となっています。ユニ・チャーム
ユニ・チャームの強みは不織布や吸収体の高い開発技術です。ユニ・チャームの主力製品はベビー用品や生理用品で、現在は高齢化が進むアジア市場を中心として、大人用の紙おむつでも売上を伸ばしています。 ユニ・チャームは早くから海外進出を進めており、M&Aや事業提携によってアジア諸国での販路を獲得してきました。また同社は原料高が続く現在でも収益を維持しており、その理由として高価格帯への方針転換を以前から進めていたことが挙げられます。その他の注目すべき企業
現在は上記のような企業以外にも、トイレタリー業界で急速に成長する企業が増えています。そのうちの1つがアンファーです。 アンファーは男性たちも身だしなみや美容への意識を高めるようになった時代の流れをいち早くキャッチし、男性向けのアンチエイジング商品や化粧品で売上を伸ばしています。また男性向けシャンプー「スカルプD」は大学教授や医師と共に研究開発されていて、頭皮環境を整える機能で消費者から注目されています。トイレタリー業界の主要企業の財務状況
大手企業による寡占状態が続くトイレタリー業界では、主要企業の財務状況を分析することで業界全体の利益構造などを分析することができます。 ここでは家庭用トイレタリー製品を販売する花王、ライオン、ユニ・チャームの3社のデータから、利益率と販管費、収益と原材料価格、業界の上位集中といった業界の特徴を読み解いていきます。利益率と販管費
売上高総利益は3社とも40%前後で比較的高いですが、営業利益率は7-13%と低いです。 この低い利益率は、販管費が占める割合が高いためです。 日常使いの消耗品を扱うトイレタリー業界では、常に消費者に商品の名前を認知してもらい、売り場で選ばれ続けなくてはなりません。そのためにテレビCMやインターネット広告などに多額のマーケティングコストを投入していることが、販管費が増大する要因となっています。収益と原材料価格
トイレタリー業界の主要企業は、消費者の生活に欠かせない必需品を取り扱う強みから、コロナ禍でも安定した収益を維持してきました。しかし2022年度は原材料価格の高騰により各社ともに利益率が低下しています。 資材調達難や物流の混乱の後、原材料価格が高騰したことに対し価格への転嫁が難しかったため、ROA(総資産利益率)も低下しています。トイレタリー業界で成功するためには?
ターゲティング | ・顧客のニーズや購買行動を市場調査により適切に把握し、ターゲットに合った商品を提供 |
価格戦略 | ・商品の付加価値に応じて価格を設定 ・高機能高価格商品や廉価品への二極化が進んでいるため、研究開発を継続的に行い、付加価値の高い商品を提供すること |
ブランド構築 | ・広告宣伝を活用してブランド価値を育成・向上 ・TVCMなどを通じて商品を認知させ、ブランドロイヤリティを高め、リピーターを獲得 |
陳列棚の確保 | 種類が幅広く、単価も安いため、消費者に店頭で選ばれるように良い陳列棚で展示すること |
トイレタリー業界の市場規模
トイレタリー用品の市場規模は、2011年以降増加傾向を示しています。 2021年の出荷額は2.2兆円となり、コロナ禍でも堅調に推移しています。この成長の背景には、価格競争が激化する中で、高齢化対応商品などの付加価値が高い商品の開発・販売に注力したことが挙げられます。 また、コロナ禍においては石けんや清掃用品などの需要が高まり、「その他の家庭用合成洗剤」や「液状身体洗浄剤」、「漂白剤」などの売上も伸び、市場拡大に寄与しています。 2021年の品目別割合を見ると、最も大きいのは生理用品などからなる「その他の紙製衛生用品」で、4,928億円の売上があります。次いで、「シャンプー」「ヘアリンス」が2,186億円、「その他の頭髪用化粧品」が1,979億円、「その他の家庭用合成洗剤」が1,891億円となっています。 美容院専売品の市場規模も増加傾向にあり、2016年時点で約1,780億円となっています。 社会全体として消費者の健康や美容への意識は高まる傾向にあり、それが追い風となってトイレタリー業界は安定した成長を続けています。トイレタリー業界の現状
新型コロナウイルス特需
2020年の新型コロナウイルス感染症の流行は、トイレタリー業界に大きな需要をもたらしました。ハンドソープや消毒用品、マスクなどの感染症対策商品は供給が追いつかず、多くの小売店やECサイトで品切れ状態が続いたほどです。 新型コロナウイルス感染症が収束して、需要と供給のバランスは落ち着きを取り戻しましたが、消費者の清潔志向の高まりは、現在もトイレタリー業界の追い風となっています。少子高齢化が進む中で
多くの業界にとって少子高齢化は単純に国内市場の縮小を意味していますが、トイレタリー業界にとっては新たなニーズが生まれる要因ともなっています。 以前よりも若年層人口が減少し、中高年の人口が増加しました。これにより、中高年の消費者をターゲットとした育毛剤などのアンチエイジング商品を始めとして、付加価値が高いトイレタリー商品の需要が高まっています。鍵は新たなる技術の開発
消費者の嗜好やライフスタイルの変化に合わせて、トイレタリーメーカー各社は新素材や新技術の開発に注力しています。 洗浄用界面活性剤や高分子吸収剤を採用した商品が製造・販売されており、消臭や香りづけの効果を高めた柔軟剤も人気です。新しい世代の消費者のニーズをとらえ、より優れた製品を生み出すための開発競争が進んでいます。インバウンド需要の今
円安の影響による訪日外国人の増加は、トイレタリー業界に大きな需要をもたらしました。安価で高品質のトイレタリー商品を大量に買い求める外国人客が話題になり、「爆買い」という言葉も生まれました。特に人気だったのが紙おむつやソープ、シャンプーなどです。 新型コロナウイルス感染症の拡大によって訪日外国人の数が激減し、インバウンド需要は急速に落ち込みましたが、その後の規制緩和によって外国人客の数も増えてきており、需要がどこまで回復するか注目されています。トイレタリー業界の今後の展望
新型コロナウイルスが業界に及ぼした影響
新型コロナウイルスの流行により、マスクや消毒・除菌関連商品の需要が急増しました。特に緊急事態宣言前後では品薄状態が深刻でした。高機能なマスクの販売や代替品の使用が広まり、新型コロナウイルスの感染拡大は各社の商品開発力向上につながりました。 また消毒・除菌商品においては異業種の企業も参入し、業界の構造に今後変化をもたらす可能性もあります。消費者のライフスタイルの変化
新型コロナウイルスは消費者のライフスタイルにも影響を与えました。密を避けるために買い物の頻度を減らし、大容量の商品を購入したり、生活用品もオンラインで購入するというスタイルが定着しました。 またテレワークの普及に伴う在宅時間の増加により、衣料用・住居用洗剤などの需要も高まっています。さらに健康や美容に関心を持つ消費者が増加しており、今後は必需品だけでなく付加価値のある商品の開発が求められるでしょう。販売チャネルの多様化
現在では日用品であっても小売店だけでなく、主にオンラインで購入する消費者が増えています。Eコマース市場の拡大と並行して、各社には店舗販売の特性を活かしたオムニチャネル対応が求められています。 顧客に最適な方法で商品を提供するため、オンラインとオフラインの連携が重要です。特に、店舗での商品体験やアドバイスを活かした販売戦略が注目されています。海外市場への進出
時代を問わず必要とされるトイレタリー商品であっても、国内市場では今後大きな成長は見込めない状況です。そこで海外市場への進出がトイレタリー業界の重要な戦略となっています。 すでにユニ・チャームや資生堂などのメーカーは、アジア各国の販路獲得に成功しています。これら企業に続く形で、各社にはアジアの大都市を中心として発展途上国での事業展開や環境規制への対応が求められており、グローバル展開に向けた努力を続けています。トイレタリー業界は今後も安定して成長の見込み

人材サービス・求人広告などの営業を経て、現在Webライターとして活動中。文章の書き方や人材業界について、日経ビジネスで勉強しています。月30本観るレベルの映画好きで、感想ブログも始めました!(夕方からシネマ/https://yuugatakaracinema.blog)
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