一色 みわ 0 Comments
ベビー用品業界とは、乳幼児向けの商品を製造・販売する企業が集まる業界です。ベビー用品業界には、赤ちゃんの成長と安全をサポートするための様々な製品が含まれます。これらの商品は、親や保護者が育児を行う上で欠かせないものです。 本記事では、ベビー用品業界の定義をはじめ、業界構造や取扱商品の特性、主要プレイヤーの動向などを解説します。ベビー用品業界の今後の展望についても触れていますので、ぜひ参考にしてください。 なお、BIZMAPSではベビー用品業界に関連する企業の情報を掲載中です。各企業の詳細は、【業界名:玩具】【業界名:ベビー用品】からご確認いただけます!是非合わせてご覧ください。

ベビー用品業界とは育児支援産業

ベビー用品業界は、主に乳幼児向けの製品を製造、卸売、販売する企業が集まる業界です。この業界には、玩具や離乳食、ベビーフードといった育児に関連するさまざまな製品が含まれています。離乳食やベビーフードは、乳幼児が成長過程で必要とする栄養を補うための食品で、健康と安全性に特に配慮されています。 ベビー用品業界の企業の主なビジネスは、育児を支援するための製品を開発し、市場に提供することです。製品の設計から製造、物流、販売まで、赤ちゃんの快適さや安全性を最優先に考慮したビジネスモデルが求められます。また、消費者である保護者のニーズに応じて、品質や信頼性が重視されるのが特徴です。 なお、ゲーム機のように、主なターゲット層が乳幼児ではない製品を扱う企業(ゲーム機の製造・卸売・販売を行う企業など)は、このベビー用品業界には含まれません。

ベビー用品業界の業界構造

ベビー用品や玩具のビジネスは、メーカーがキャラクターや知的財産(IP)を持つ企業からライセンスを受けて製品を企画・製造することから始まります。例えば、人気キャラクターを使った商品を作る際には、そのキャラクターのライセンスを取得してから製品を企画し、下請けの工場と協力して生産を行います。 製品ができあがると、さまざまな販売ルートを通じて消費者に届けられます。ベビー用品業界の販売チャネルは、以下のとおりです。
  • ECサイト(ネット通販)
メーカーが自社サイトで直接販売する形です。
  • 専門店
玩具専門店やベビー用品専門店などがあり、大手ではメーカーが直接販売し、中小規模の店舗では卸業者を通して製品が流通します。
  • 家電量販店やドラッグストア
それぞれ玩具やベビー用品を取り扱う小売店の一部です。
  • 百貨店
玩具やベビー用品を販売する高級路線の小売店です。 具体的な企業例として、玩具メーカーには「バンダイナムコホールディングス」や「タカラトミー」があります。また、玩具の卸売業者としては「ハピネット」や「カワダ」、玩具専門店としては「日本トイザらス」や「キデイランド」などが有名です。 ベビー用品では、メーカーとして「ピジョン」や「コンビ」、卸売業者として「ベルニコ」や「ほりば」、専門店では「西松屋チェーン」や「赤ちゃん本舗」が代表的です。 近年では、大手小売チェーン(例:日本トイザらス、西松屋チェーン)では、卸業者を介さずにメーカーと直接取引を行い、プライベートブランド(PB)商品の開発にも力を入れています。特に「西松屋チェーン」は3,200点以上のPB商品を扱っており、これが海外展開の重要な柱となっています。 また、スマートフォンやタブレットの普及、電子決済の安全性向上により、ネット通販市場(EC市場)は拡大しています。その結果、メーカー自身が自社のECサイトで製品を直接販売する動きが加速しています。このため、従来の卸売を通じた専門店や量販店での販売は減少しつつあります。

ベビー用品業界の取扱商品の特性

ベビー用品業界で扱う玩具にはさまざまな種類があり、例えば次のような商品が含まれます。
  • 知育玩具
  • カードゲームやキャラクターグッズ
  • ドール(人形)やままごとセット
  • 乗り物玩具(三輪車など)
また、ベビー用品には、以下のような育児に必要なものが含まれます。
  • ベビーベッドやベビーカー
  • 粉ミルクや離乳食・ベビーフード
これらの商品の共通点として、対象年齢によって商品が細かく分かれていることと、商品のライフサイクル(販売期間)が比較的短いことが挙げられます。 つまり、子どもの成長やトレンドに応じて商品が頻繁に変わるため、低価格帯の商品のニーズが高い一方で、キャラクターや知育機能付きの高価格帯商品にも需要があります。特にギフト用としては高価格帯の商品も人気です。 また、玩具やベビー用品には季節性があります。たとえば、夏休みやクリスマス、入学・卒業シーズンに売れやすい傾向がありますが、最近では消費者が早めに購入するため、季節ごとの売上変動は減少傾向にあります。 ベビー用品では、子どもが成長するにつれてサイズや機能が変わるため、頻繁に買い替えが必要です。これに対して、最近はレンタルサービスが注目されています。 一方、玩具はヒット商品になるかどうかで売上が大きく変わり、在庫の管理が難しくなります。売れ残りのリスクや、在庫不足での機会損失を防ぐために、正確な需要予測が重要です。

ベビー用品業界の市場規模とトレンド

まず、玩具市場の規模を日本玩具協会のデータに基づいて見ると、市場は拡大傾向にあります。特に2022年度には9,520億円に達し、コロナ禍でも堅調に成長しました。過去の大きなヒット商品としては、2014年度の「妖怪ウォッチ」や「アナと雪の女王」があり、これらのキャラクター商品が市場拡大を支えました。 その後、2015年度以降は横ばいでしたが、2020年度・2021年度にはコロナ禍での巣ごもり需要によって再び成長しました。 特に、ジグソーパズルやボードゲーム、アーツクラフト、ブロックなどの家で楽しめる商品が人気を集め、さらに「鬼滅の刃」や「すみっコぐらし」といった幅広い年齢層に人気のあるキャラクター商品が市場の成長に大きく貢献しています。 2022年度には、カードゲームやトレーディングカード、プラモデル(ガンプラなど)、フィギュア、鉄道模型が特に好調で、市場拡大の原動力となりました。 一方、ベビーフード市場については、ベビーフード協議会のデータによると、少子化が進んでいるにもかかわらず、ベビー加工食品の生産額は増加しています。2022年度の生産額は459億円に達しており、これは主に女性の社会進出に伴い、簡単に調理できる離乳食のニーズが高まっているためです。 特に、レトルトタイプのベビーフードが人気で、手軽に準備できることが好評を得ています。 これらの市場は、リーマン・ショックのような経済危機でも縮小することがなく、非常に安定しているといえます。景気の影響を受けにくく、今後も安定した成長が期待される業界です。

ベビー用品業界のマクロ環境

ベビー用品・玩具市場について、以下の3つの要因が市場トレンドや企業の収益性に影響を与えています。
  • 少子化による子供の減少
  • 団塊世代の孫への消費拡大
  • Eコマース市場の拡大
ベビー用品・玩具市場においては、少子化の進行により子供の数が減少しているものの、1人当たりの支出額が増加しているため、市場全体としては金額ベースで堅調な成長を維持しています。 特に、祖父母世代(団塊世代)が孫に対するプレゼントやお祝いとして高付加価値の商品を購入する「三世代消費」が広がりを見せており、これが高価格帯商品の需要拡大に貢献しています。団塊世代は孫を喜ばせるため、特に質の高い商品を選ぶ傾向が強く、この消費行動が市場の成長を支える重要な要素となっているのです。 さらに、スマートフォンやタブレットの普及、電子決済の安全性向上に伴い、Eコマース市場が急速に拡大し、子育て世代を中心にネットでの玩具・ベビー用品の購入が増加しています。 忙しい親たちにとって、時間や手間を省けるネットショッピングは大きな魅力となっており、これに対応するために小売店はオムニチャネル化を進め、実店舗の利便性とオンラインの便利さを組み合わせたサービスを提供しています。 例えば、日本トイザらスでは、店舗内にタブレットを設置し、店頭にない商品をオンラインで注文し、他店舗や自宅へ配送できるシステムを導入。このように、少子化、世代消費、Eコマース拡大のトレンドに適応するため、企業は多様な販売戦略を展開しており、これが市場の収益性を支える要因となっています。

ベビー用品業界の相関図・業界地図

玩具メーカーでは、バンダイナムコホールディングスとタカラトミーが市場の大半を占めています。これらの企業は経営統合によって規模を拡大してきました。 例えば、バンダイとナムコの統合でバンダイナムコホールディングスが誕生し、タカラとトミーが合併してタカラトミーが設立されました。 また、M&A(買収・統合)にも積極的で、キャラクターIP(知的財産)を獲得し、商品企画の強化を図っています。 玩具専門店としては、日本トイザらスやキデイランドが主要プレイヤーです。特に日本トイザらスはメーカーとの直接取引で価格競争力を高め、大型店舗を都市部のショッピングセンターに展開してシェアを拡大しました。 業界再編も進んでおり、Toys”R”Usによる日本トイザらスのTOBや、タカラトミーによるキデイランドの買収が例として挙げられます。 ベビー用品メーカーでは、ピジョン(哺乳瓶や乳首)、コンビ(ベビーカー)、和光堂(粉ミルク・ベビーフード)などが大手として高いシェアを持っています。 ここでも業界再編が進み、ピープルがバンダイナムコホールディングスと提携したり、コンビがMBO(経営陣による買収)を実施するなどの動きが見られます。また、Amazonのプライベートブランド「Mama Bear」の参入も注目されています。 ベビー用品専門店としては、西松屋チェーンと赤ちゃん本舗が代表的です。赤ちゃん本舗は卸売から小売に転換し、現在はセブン&アイ・ホールディングスの傘下にあります。西松屋チェーンは、プライベートブランド(PB)商品に注力し、バリューチェーンの上流・下流へと事業領域を広げています。 このように、業界全体で大手企業のシェア拡大や再編が進み、競争力を強化するための統合や提携が活発化しています。

ベビー用品業界の主要プレイヤーの動向

業界の主要企業の動向を把握することは、業界の成長傾向や新たなビジネス機会を理解し、今後の市場予測や競争戦略を策定するために欠かせません。ベビー用品業界の主要プレイヤーの動向について、以下の2点に焦点を当てて詳しく解説します。
  • バンダイナムコ好調、ピジョンは海外強化
  • 米Toys”R”Us破綻、日本トイザらス苦戦

バンダイナムコ好調、ピジョンは海外強化

バンダイナムコホールディングスは、「機動戦士ガンダム」や「ドラゴンボール」など人気キャラクターのライセンスを活用し、玩具、ゲーム、アニメなど多岐にわたる事業を展開しています。 特に、家庭用ゲーム「ELDEN RING」や「テイルズ オブ アライズ」が好調で、デジタル事業とトイホビー事業の成長が収益を支えています。また、IP価値最大化を目指し、メタバースへの投資など新たな取り組みにも積極的です。 一方、ピジョンは、哺乳瓶などのベビー用品を主力としつつ、海外市場の拡大に注力。特に中国やシンガポールでの売上が伸び、EコマースやSNSを活用した顧客との直接的なコミュニケーション強化を図っています。ピープルは知育玩具の定番商品が好調で、米国市場での販売拡大により増収増益を続けています。

米Toys”R”Us破綻、日本トイザらス苦戦

2017年9月、米国のToys”R”Usは経営破綻を申請し、全米の店舗閉鎖と事業清算を裁判所に届け出ました。同社は米国で最大規模の玩具小売チェーンでしたが、Eコマースへの対応が遅れ、AmazonなどのECプラットフォームに顧客を奪われ、業績が悪化していました。 2018年には全735店舗が閉鎖され、2019年に元社員がブランドを引き継ぎ2店舗を再開しましたが、コロナ禍で再び閉鎖に追い込まれています。 一方、日本トイザらスは、Toys”R”Us Asiaの法人傘下にあったため、米国での経営破綻による直接的な影響は軽微でした。1991年に日本での1号店をオープンして以降、急速に店舗を増やしましたが、近年は店舗数を約160店に再編し、撤退や再配置を進めています。 店舗形態は「トイザらス」(玩具・子ども用品の総合専門店)、「ベビーザらス」(マタニティ・ベビー用品の専門店)、その両方を併設する「トイザらス・ベビーザらス」、そしてオンラインストアです。オンラインストアではネット通販の強化を図っていますが、近年は赤字決算が続いており、2022年度も減収と営業損失を計上しています。

ベビー用品業界の今後の業界展望

巣ごもり需要で玩具業界は堅調でしたが、サプライチェーンの混乱が課題となり、今後は少子化の中でIP創出やレンタルサービスの拡大が成長の鍵です。ここでは、業界の今後の業界展望について、以下の2点に焦点を当てて詳しく解説します。
  • 新型コロナウイルス感染症によるベビー用品業界への影響
  • 玩具・ベビー業界、IP創出とレンタルサービスが進展

新型コロナウイルス感染症によるベビー用品業界への影響

新型コロナウイルス感染症の拡大による外出自粛で、家庭で過ごす時間が増えたことから、世代を問わず玩具への需要が高まりました。特に、パズルやボードゲーム、家庭内で楽しめるデジタル玩具などが好調で、巣ごもり需要が全体的に業界を支えました。 コロナ禍による直接的な影響は限定的で、需要は堅調に推移していましたが、一部の企業は新たな課題に直面しました。 その一方で、中国の都市封鎖(ロックダウン)やサプライチェーンの分断によって、商品供給が滞り、生産や輸送に影響が出た企業も少なくありません。特に玩具業界では、原材料の調達や製品の生産が海外に依存しているケースが多く、サプライチェーンの混乱が重大な課題となりました。 これにより、商品が安定して市場に供給できないという問題が生じ、各社はこのリスクに対処するため、物流や在庫管理の見直しを迫られました。

玩具・ベビー業界、IP創出とレンタルサービスが進展

今後の玩具・ベビー用品業界は、少子化により市場が縮小することが予測されていますが、離乳食やベビーフードなど生活必需品に関しては引き続き堅調な成長が見込まれます。 今後のトレンドとして、各メーカーが自社でオリジナルIP(キャラクター)を創出し、IPを活用した商品の強化が進んでいくでしょう。また、スマート玩具やドローン技術を使ったハイテク玩具が成長分野として注目されています。 さらに、SPA(製造小売)モデルの拡大も予測され、プライベートブランド(PB)商品の展開が強化されるでしょう。日本トイザらスや西松屋がこの分野に注力しているほか、ファストファッション業界などもこの市場に進出する可能性があります。 また、ベビー用品のライフサイクルが短くなっていることから、レンタルサービスの需要が増加し、CtoC(個人間取引)による取引も活発化する見通しです。これにより、家計負担の軽減を図る動きが広がっていくと予想されます。

ベビー用品業界は少子化でも高機能商品で成長続く

ベビー用品業界は少子化の影響で市場規模が縮小する可能性があるものの、1人当たりの支出増加や高品質・高機能商品の需要が堅調です。さらに、女性の社会進出に伴い、利便性の高い商品やサービスへのニーズが高まっており、今後も成長が期待されます。 なおBIZMAPSでは、オリジナルタグを用いて多様なアプローチで企業情報を検索できます。ベビー用品業界の企業はもちろん、国内200万社以上の企業の基本情報が無料で閲覧でき、売上や従業員数などの情報を基にターゲット企業を絞り込むことが可能です。 ▼その他の企業特集はこちら! 家電業界の今後の展望は?最新の動向と共に業界を細部まで解説します 電子部品・半導体商社業界とは?製品流通を支える重要な産業を解説! 電子部品業界の今を徹底解説!めまぐるしく変化する業界構造を分析 電材卸業界とは?業界の基本知識や今後の展望をまとめました! 半導体業界とは?デジタル革新の核心を担う産業の今後を徹底解説! 家電量販業界とは?製品の多様性と市場の進化をリードするトレンドや動向 機械部品業界とは?最新の情報から主要企業の動向を解説します! OA機器商社業界とは?注目企業の動向や業界展望まで徹底解説! 百貨店・スーパー業界の現状とは?トレンドや今後の展望も考察

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