一色 みわ
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空運業界は高速輸送産業
空運業界とは、航空機を用いて人や貨物を国内外へ迅速に輸送する「旅客輸送」や「貨物輸送」を中心とする産業です。 これにより、ビジネスや観光目的での人の移動や、新鮮な食品、医薬品、工業製品といった重要な物資が、世界中に短時間で届けられています。この輸送を支えるために、空港施設や空港内のチェックインカウンター、保安検査、搭乗ゲートなどのインフラも欠かせません。 また、空運業界では、運航スケジュールや機体の保守整備を担うスタッフも安全で効率的な運航を支えています。一方で、空運業界には含まれないものとして、空中広告や農薬散布、空中写真測量といった特殊な航空機の利用があります。空運業界の業界構造
空運業界の取扱商品の特性
空運業界は、日本の産業分類で「航空運輸業」の「航空運送業」に該当し、飛行機を使って人や貨物を国内外に運ぶ事業を指しています。空運業界には、主に旅客や貨物を目的地に届ける航空会社の他に、観光飛行やエアタクシー業も含まれています。 観光飛行は、景観を楽しむために観光客向けに運航されるものです。エアタクシーは小型機を使用した短距離の移動手段で、公共の交通機関や長距離の航空便では対応できない、手軽で柔軟な輸送方法を提供しています。 さらに、航空運輸業には「航空機使用業」も含まれています。航空機使用業は、旅客や貨物の輸送ではなく、航空機を使って特定の目的を果たす業務で、具体的には農薬や肥料の散布、広告バナーを掲げた飛行、魚群の探知、空中からの写真測量などがこれに該当します。 こうしたサービスは、農業、広告業、漁業、地理調査など幅広い分野で利用されており、飛行機の特殊な活用方法として注目されています。空運業界のビジネスモデル
空運業界における主要企業の財務指標分析
主要な空運業界の企業には、航空会社大手のANAホールディングスと日本航空、そして羽田空港の国内線旅客ターミナルビルを運営する日本航空ビルデングがあります。これらの企業は、2020年から2021年にかけてのコロナ禍で大きな収益悪化を経験しました。 特に営業利益率が大幅に低下しましたが、2022年度には回復傾向が見え始めています。ただし、燃油価格の高騰や人件費といった固定費と変動費の負担が大きく、収益はまだ十分に改善されていません。 ANAホールディングスと日本航空では、日本航空が経営再建の際に機種を減らしたり、採算の取れない路線から撤退したりすることでコスト削減を徹底。ANAホールディングスが日本航空に比べて多くの借入金を抱えていることが、利益率の差に影響しています。 安全性指標である自己資本比率については、20〜30%を維持しており、少し低下はしているものの安定した水準を保っています。また、資産を売上に対してどれだけ効率的に活用できているかを示すATO(総資産回転率)は低めですが、コロナ禍の収束とともに改善が期待されています。空運業界の市場規模とトレンド
空運業界におけるマクロ環境
空運業界は公共性が高く、国や自治体の影響を受けやすい業界です。2014年に施行された「民活空港運営法」により、空港運営が民間委託できるようになり、民営化が進みました。仙台空港や高松空港、福岡空港のように民営化された空港は、着陸料の引き下げやLCC(格安航空会社)の就航増加といった施策により経営効率化を図っています。 2020年には新千歳を含む北海道内7空港も民営化され、今後も全国で民営化が進むと見込まれています。 技術面でも空運業界は進化しており、燃費向上や騒音削減といった環境技術の開発に加え、システム面でも進展が見られます。航空会社が導入したマイレージや予約システムは、他業界にも広がり、現在では予約業務が拡張され、旅行やレンタカーまで一括で管理できるシステムに成長しました。 また、顔認証ゲートや清掃ロボットの導入など、AI技術の活用による効率化も進んでいます。 コロナ禍によって空運業界は大打撃を受けましたが、国内観光を支援する「Go To トラベルキャンペーン」などの施策により、国内旅行需要が一時的に回復しました。2022年以降は海外からの訪日客が戻りつつあり、空運業界には今後さらなる需要増加が期待されていますが、依然として先行きは不透明です。空運業界の相関図・業界地図
空運業界の主要プレイヤーの動向
- ANAホールディングスの事業再構築と成長戦略
- 日本航空の回復と貨物事業の成長
ANAホールディングスの事業再構築と成長戦略
ANAホールディングスは国内トップの売上を誇る航空会社です。コロナ禍前から効率化のために中堅航空会社への出資やLCC・貨物事業の拡大を進めていました。コロナ禍では大幅な売上減と巨額の営業損失を経験し、財務基盤の強化に注力しつつ運航規模やコスト削減を実施。 2021年度には国内線の回復が進み、2022年度には黒字転換を果たしました。今後の計画として、ANA、Peach、AirJapanの3ブランドでシェア拡大を目指し、貨物事業の効率化と取扱商品を増やすことで利益拡大を図っています。日本航空の回復と貨物事業の成長
日本航空(JAL)は、2010年に経営再建を経て2012年に再上場し、その後は収益を改善し、安定的に高い営業利益率を達成してきました。しかし、コロナ禍で業績が大きく悪化し、2020年度には大幅な売上減と損失を記録。2021年度から旅客需要が徐々に回復し、2022年度には旅行支援策もあって観光需要が伸び、コロナ禍前の9割近くまで戻りました。 貨物事業は、国際便を活用してアジア-北米間の需要を中心に好調で、売上を大きく伸ばしています。LCC事業のZIPAIRは黒字転換に成功しましたが、中国向けのスプリング・ジャパンや国内中心のジェットスター・ジャパンは引き続き苦戦しています。空運業界の今後の業界展望
- 新型コロナウイルス感染症による業界への影響
- 国内外戦略の展開とパイロット不足の課題
新型コロナウイルス感染症による業界への影響
新型コロナウイルス感染症により、各国で外出や渡航の制限が行われた結果、世界中の航空会社は運航が大幅に減少しました。 日本航空では、2020年4月から7月の旅客数が前年の1〜2%ほどにまで落ち込み、貨物輸送も60%前後で推移しましたが、大きな回復は見られませんでした。しかし、その後は回復基調にあります。2024年3月期の連結業績では、売上収益が1兆6,518億円(前年比約1.2倍)、EBIT(営業利益)は1,452億円(同約2.2倍)と大幅な増収増益を達成しました。(参照:JALグループ 2024年3月期 連結業績|プレスリリース|JAL企業サイト) また、エアアジア・ジャパンは2020年12月に日本から撤退し、特に経営基盤の弱い格安航空会社(LCC)には厳しい状況が続いています。 世界では、オーストラリアのヴァージン・オーストラリアや中南米最大手のLATAM(ラタム)航空、タイ航空など、多くの大手航空会社が経営破綻や破産申請に追い込まれています。2021年に入っても、フィリピン航空が破産申請を行うなど、空運業界は依然として厳しい状況です。 国内では、「Go To キャンペーン」などの観光需要を刺激する施策も実施されていますが、国際的な渡航制限が完全に解除されるには時間がかかると予想されます。 そのため、空運業界では旅客輸送の回復が不透明な中で、貨物輸送が再建の鍵とされています。大型貨物などこれまで飛行機で運ばれていなかった品目の輸送にも対応することで、需要を積極的に取り込む動きが進んでいます。国内外戦略の展開とパイロット不足の課題
空運業界は、金融危機や震災の影響を経て旅客と貨物輸送が回復してきましたが、今後は国内の人口減少により国内線の大幅な成長は期待しにくいとされています。一方で、海外、特に新興国の成長が見込まれており、空運業界の今後の成長には海外需要の取り込みが重要です。 そのため、ANAや日本航空などの大手は国際アライアンス(スターアライアンス、ワンワールド、スカイチーム)を戦略的に活用し、乗り継ぎの利便性やマイレージサービスの共有といったアライアンスの価値をさらに活用することが求められます。 また、LCCの成長も目覚ましい一方で、パイロット不足が大きな課題です。世界的に航空需要が拡大し、2030年には必要なパイロット数が2010年の2倍に達すると見込まれ、日本でも多くのパイロットが退職期を迎えるため、特にLCCには厳しい状況が予測されています。 LCCは大手と異なり、パイロット養成に多額の投資が難しく、人件費が経営を圧迫するため、今後も低価格を維持するためには効率的な人員確保が不可欠です。空運業界は国際展開とコスト管理が成功の鍵
空運業界が成長していくためには、国内の安定した収益を確保しつつ、人口減少を見据えた海外市場の取り込みが重要です。 成長が期待される貨物輸送の需要を取り込むために、新しい貨物品目の取り扱いや効率化を進め、LCCにおいてはパイロット不足に備えた効率的な人材確保と運営コストの管理が不可欠になるでしょう。 なおBIZMAPSでは、オリジナルタグを用いて多様なアプローチで企業情報を検索できます。空運業界の企業はもちろん、国内200万社以上の企業の基本情報が無料で閲覧でき、売上や従業員数などの情報を基にターゲット企業を絞り込むことが可能です。 ▼その他の法人営業ハックの業界企業の特集はこちら! 電気・ガス業界を徹底解説!日常生活を支えるエネルギー供給の全貌とは 石油業界の最新の動向を公開!今後の展望も見据えて解説します! 石炭業界が抱える課題とは?転換期を迎えた業界の現状を徹底解説 文具・事務用品業界を解説!総合通販大手との競合や海外展開の現状も 生活雑貨業界の今後を探る!業界構造から市場規模まで徹底解説 メガネ・レンズ業界の最新トレンドとは?主要企業の動向についても エンターテインメント業界の最新の動向から導き出す今後の展望は? ノンバンク業界とは?再編と技術革新で進化する金融モデルを徹底解説 銀行業界とは?経済全体を支える基盤産業のトレンドや動向を徹底解説
「場所や時間にとらわれない自由な働き方」がモットーの転勤族ママライターです。読み手に寄り添った分かりやすい文章を心がけています。転職・副業・旅行ジャンルなどが得意。旅行とカメラと甘いもの(とくにチーズケーキ)が大好きで、毎日のお茶タイムは欠かせません。元気すぎる2人の子どもを育てながらのんびりと活動しています。
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