へたれぱんだ
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目次
トラック輸送業界とは
トラック輸送業界の業界構造
トラック輸送業界の市場規模
国土交通省の「自動車輸送統計年報」によると、2022年度の国内輸送量は2,269億トンキロで、近年は増加傾向にあります。トンキロとは、輸送された貨物の重量と距離を掛け合わせたもので、経済活動としての輸送量を示す指標です。 2007年度までは増加を続けていたものの、2009年の金融危機で大幅に減少。その後の景気低迷の影響が反映されていますが、最近では再び回復しています。 品目別では、低温物流が必要な食料品の輸送量が長期的には減少しています。しかし、2015年度以降は冷凍食品市場やコンビニ業界の成長により一時的に増加しましたが、コロナ禍で再び減少しました。 宅配便の取扱状況については、2022年度の宅配便取扱個数は90億個に達し、特にトラックによる宅配便は堅調に推移しています。ヤマト運輸がクロネコメール便を廃止した影響もあり、メール便の取扱個数が減少しましたが、その分がトラック輸送にシフトしています。 EC市場の拡大と、引越し業界の動向 EC市場の拡大もトラック輸送業界に大きな影響を与えています。経済産業省の「電子商取引実態調査」によれば、2021年度のBtoC-EC市場規模は前年度比7.35%増の20.7兆円となっています。今後もEC市場の拡大が見込まれており、それに伴うトラック輸送の需要増加も期待されます。 また、引越しにおけるトラック輸送の市場規模は、法人需要の拡大により成長しています。一般消費者の引越し需要は横ばいから縮小傾向にありますが、新規オフィスビルへの移転など企業の引越し需要が高まっています。また、引越し業者の受注抑制や料金の上昇により、引越し難民問題も深刻化しています。トラック輸送業界をリードする大手企業2社
ヤマトホールディングス
ヤマトホールディングスは新サービスにより増収が続いており、先進的な取り組みと同時にガバナンス強化を図っています。2015年4月に宅配事業において「宅急便コンパクト」や「ネコポス」を導入し、フリマサイトとの連携で利用が拡大しました。 これにより宅急便の取扱数量が増加し、増収が続いています。また、成長分野として海外企業と協業し、国際物流を拡大することに注力しています。さらに、コロナ禍で急増する電子商取引(EC)の影響で荷物量が増加し、JALと航空貨物での提携を発表しました。 一方で、ヤマトホールディングスは2017年に宅配ドライバーの残業代未払い問題が発覚し、2018年には引っ越しを担う子会社の代金過大請求が明らかになり、コンプライアンスを強化しています。また、米国の輸送機製造大手と無人輸送機(空飛ぶトラック)の共同開発に乗り出し、2020年には宅配用の小型EVトラックを導入することを発表しています。ハマキョウレックス
ハマキョウレックスはアパレル・食品会社向けに注力することで高い利益率を達成しています。2022年度の売上構成比は、フードが31%、アパレルが20%となっており、2品目で5割以上を占めています。 近年は物流センター事業の稼働率向上や貨物自動車運送事業での積載率の向上、輸送コストの抑制などで利益率を伸ばしています。2021年10月に大一運送(株)を子会社化し、さらに業務効率を高めています。トラック輸送業界が抱えるリスクと、成功の鍵
トラック輸送業界では、車両や労働力の確保が最も重要な課題です。大手事業者は、下請け運送業者への交渉力を持っていますが、外注比率が高まると、人材と車両を持つ下請け側の交渉力が増す可能性があります。また、燃料油価格の高騰は荷主との交渉により輸送運賃に転嫁できる場合もありますが、依然として大きな影響を受けます。 インターネットの普及により、荷主が事業者の見積もりを比較できるようになったことで競争環境が激化していますが、一方で、効率化を図るために事業者間での提携も進んでいます。 荷主である買い手の業界動向にも左右されるため、物流量が多い時期には運送事業者が仕事を選ぶことができますが、物流量が少ない時期にはトラックの稼働率を高めるために不採算でも受注するケースも多いです。 また、ドライバー不足も大きなリスクです。ドライバーの確保が難しくなることで、多くの企業で稼働できないトラックが増加し、納期遅延や企業の信頼性低下に繋がっています。高齢化も進んでおり、若者のドライバー確保が難しい現状もあるため、労働環境の改善や自動運転技術の導入などが求められています。 再配送の増加も重要な課題です。受取人が不在のために再配送が増加し、燃料費や外注費の増加、ドライバーの仕事量の増加に繋がっています。ヤマト運輸のLINEアカウントを通じた再配達の依頼システムや、日本郵便の「ゆうパック」の再配達抑制策など、各社は対策に取り組んでいます。 トラック輸送業界で成功するには、車両の稼働率・積載率の向上と、人件費・燃料費のコントロールが重要です。固定費の多い業界であるため、車両の稼働率・積載率を向上させ収益を確保することが求められます。 人件費については、需要の変動を吸収するために外注や業務委託を利用し、固定費から変動費にシフトする流れが進んでいます。燃料費の変動に対しては、荷主に運賃転嫁できるかが鍵となりますが、多くの企業が燃料費の高騰分を運賃に転嫁できていない現状があります。トラック輸送業界を取り巻く現状
トラック輸送業界は、法規制による大きな影響を受ける業界です。1990年に施行された物流二法(「貨物自動車運送事業法」と「貨物利用運送事業法」)により、経済的規制の緩和と社会的規制の強化が行われました。 具体的には、参入が免許制から許可制に、運賃も認可制から事後届出制に変更されました。これにより市場競争が促進されましたが、運賃の低下も招いています。また、環境規制の強化に伴うコスト負担や、道路交通法改正による配達コストの上昇など、法規制の影響が大きいです。 2022年1月のパートを含む自動車運転者の有効求人倍率は2.17倍(全産業平均は1.04)となっており、人材不足が深刻化しています。国土交通省は2020年4月にトラック運送業の標準的運賃表(タリフ)を21年ぶりに告示し、トラック運転手の待遇改善を狙っていますが、新型コロナウイルスの影響で荷主にとっても厳しい状況が続いています。2024年問題に揺れるトラック輸送業界
さらに、2024年問題も懸念されています。2024年4月1日以降、「自動車運転の業務」に対し、年間の時間外労働時間の上限が960時間に制限されることにより、業務量の減少や売上・利益の悪化が懸念されています。労働時間の制限により減少するドライバーの収入を賃金アップで補うことが難しく、労働者の離職に繋がる恐れがあります。 食品の安全性や消費者の選択権に対する関心が高まる中で、トラック輸送業界にもトレーサビリティシステムの導入が求められています。これにより、物流の流通経路を追跡できるようになり、温度管理の可視化も進んでいます。 経営効率化のためには、求荷・求車情報ネットワーク「WebKIT」を利用する事業者も増加しており、これにより空車率の削減や物流センターの在庫管理の効率化が図られています。 トラック輸送業界は、法規制や人材不足など多くの課題に直面していますが、技術の導入や効率化の取り組みを進めることで、これらの課題に対処しています。トラック輸送業界の今後の展望とは?
宅配業界の成長
宅配業界はEC市場の成長に伴い、引き続き拡大が見込まれます。野村総合研究所によると、国内のBtoC-EC市場は2021年に26兆円に達すると予測されており、スマートフォンの普及や消費者のEC利用増加が成長を支えています。 しかし、時間指定や即日発送などのサービス提供により、宅配業者への負担も増加しています。引越し業界の成熟
引越し業界では、ファミリー層の減少や簡易な引越しが普及したことにより一般消費者の需要が減少している一方で、法人向けの需要が拡大しています。 企業の新オフィスへの移転需要が増える一方、国内人口の減少により市場全体の成長は鈍化する見込みです。高齢者向けの引越しや荷造り・荷解き支援などの差別化サービスが重要となります。ICT化の進展
人手不足の深刻化に対応するため、トラック輸送業界ではICT化が進展しています。ドライバーの労働環境を改善するために、ITデバイスを活用したアルコールチェックや点呼作業などの取り組みが行われています。また、ETC2.0サービスの普及により、物流の効率化や安全性の向上が実現できるかも注目です。 より働きやすい環境が整備されることで、人手不足が解消されて業界全体のさらなる成長に期待がかかります。トラック輸送業界の新たな展開から目が離せない!

人材サービス・求人広告などの営業を経て、現在Webライターとして活動中。文章の書き方や人材業界について、日経ビジネスで勉強しています。月30本観るレベルの映画好きで、感想ブログも始めました!(夕方からシネマ/https://yuugatakaracinema.blog)
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