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国内の物流を支えるトラック輸送業界は、現在2024年問題という深刻な課題に直面しています。ドライバーの時間外労働が制限されるために人手を確保することが難しくなり、顧客のニーズに応えきれないという状況が起きているのです。一方でEC市場が拡大したことによる取り扱う宅配個数の増加、サービスの拡充にも迫られています。 本記事ではトラック輸送業界の市場規模の推移や人手不足などの課題、今注目すべき業界の最新動向について解説していきます。 またトラック輸送業界の中から、業界を代表する大手企業の動向なども紹介しており、それ以外のトラック輸送業界の企業情報は「一般貨物輸送」から確認できます。 登録企業数200万社以上の企業検索サービス「BIZMAPS」に掲載されている、トラック輸送を含めた一般貨物輸送業界の企業や団体は、全部で17,779社です。法人営業でトラック輸送業界にアプローチを検討中の皆さんは、ぜひ営業戦略立案の参考にしてください。

トラック輸送業界とは

トラック輸送業界とは、荷主である個人や法人から荷物を預かり、倉庫へ運んで荷受人に届けることを主な業務としています。荷主から荷物を集めることを「集荷」、荷受人に荷物を配達することを「配荷」といいます。 一般的に、工場から物流拠点や工場間などの長距離大量輸送を「輸送」、拠点から卸売問屋や小売店への近距離小口の移動を「配送」と呼びます。 この業界は、荷主であるメーカーや小売業の動向に大きく影響を受けます。かつては自社でトラックや作業人員を確保し、安定的な物流体制を維持する企業が多かったものの、物流コストの見直しから物流部門のアウトソーシングが進んでいます。 また、生産・販売ともに多品種少量化が進展し、ジャスト・イン・タイムの輸送ニーズが高まる中、運送会社に求められるサービスの質も向上しています。 トラック輸送業界は労働集約型の産業であり、トラック運転手や倉庫作業員の確保が重要な課題です。原価に占める人件費の比率は他業界と比べて高く、燃料費の割合も高いため、燃料価格の変動が直接影響します。 引越業界においては、3月や4月に需要が集中し、人員配置の調整が重要な課題となります。繁忙期には非正規労働者を大量に確保することが一般的ですが、これによる作業品質の低下や顧客からのクレームが問題となります。さらに、インターネットの普及により価格比較が容易になり、競争が激化し、単価の下落を招いています。

トラック輸送業界の業界構造

トラック輸送業界のプレイヤーは、得意とする事業領域が異なります。例えば、セイノーホールディングス傘下の西濃運輸福山通運は、地域ごとに仕分け拠点を設け、定期的な運送便に貨物をまとめて運ぶ「路線便」に強みを持ちます。 一方、ヤマトホールディングスSGホールディングスは、比較的小さな荷物を各家庭に配送する「宅配便」で優れたサービスを提供しています。20°C以下の冷凍、冷蔵、常温を含む「低温物流」では、キユーソー流通システムニチレイニチレイロジグループ)が主要プレイヤーとなっています。 また、企業の物流機能の一部または全体を第三者として受託する「3PL(サード・パーティー・ロジスティクス)」も増加しており、Lマネジメントやセンコーが大手として活躍しています。 引越し業界もトラック輸送業界に含まれ、サカイ引越センターアート引越センターが引越し専業として有名であり、日本通運などの大手運送事業者も引越しサービスを展開しています。 大手の運送事業者は、中小の運送事業者を下請けとして活用し、ドライバーや車両を確保しています。この構造は一次下請けだけでなく、二次、三次下請けまで続く多層的なピラミッド型となっており、業界全体を見れば、従業員が300人以下の中小事業者が大多数を占めています。 これにより、トラック輸送業界は多様なプレイヤーがそれぞれの強みを活かしつつ、複雑なサプライチェーンを構築しています。

トラック輸送業界の市場規模

国土交通省の「自動車輸送統計年報」によると、2022年度の国内輸送量は2,269億トンキロで、近年は増加傾向にあります。トンキロとは、輸送された貨物の重量と距離を掛け合わせたもので、経済活動としての輸送量を示す指標です。 2007年度までは増加を続けていたものの、2009年の金融危機で大幅に減少。その後の景気低迷の影響が反映されていますが、最近では再び回復しています。 品目別では、低温物流が必要な食料品の輸送量が長期的には減少しています。しかし、2015年度以降は冷凍食品市場やコンビニ業界の成長により一時的に増加しましたが、コロナ禍で再び減少しました。 宅配便の取扱状況については、2022年度の宅配便取扱個数は90億個に達し、特にトラックによる宅配便は堅調に推移しています。ヤマト運輸がクロネコメール便を廃止した影響もあり、メール便の取扱個数が減少しましたが、その分がトラック輸送にシフトしています。 EC市場の拡大と、引越し業界の動向 EC市場の拡大もトラック輸送業界に大きな影響を与えています。経済産業省の「電子商取引実態調査」によれば、2021年度のBtoC-EC市場規模は前年度比7.35%増の20.7兆円となっています。今後もEC市場の拡大が見込まれており、それに伴うトラック輸送の需要増加も期待されます。 また、引越しにおけるトラック輸送の市場規模は、法人需要の拡大により成長しています。一般消費者の引越し需要は横ばいから縮小傾向にありますが、新規オフィスビルへの移転など企業の引越し需要が高まっています。また、引越し業者の受注抑制や料金の上昇により、引越し難民問題も深刻化しています。

トラック輸送業界をリードする大手企業2社

トラック輸送業界においては事業者数の9割を占めるのが中小企業ですが、ピラミッド構造の業界のために、これらの中小企業もごく少数の大手の動向に大きな影響を受けることになります。 ここではトラック輸送業界を代表する2社、ヤマトホールディングスとハマキョウレックスの最新動向について解説します。

ヤマトホールディングス

ヤマトホールディングスは新サービスにより増収が続いており、先進的な取り組みと同時にガバナンス強化を図っています。2015年4月に宅配事業において「宅急便コンパクト」や「ネコポス」を導入し、フリマサイトとの連携で利用が拡大しました。 これにより宅急便の取扱数量が増加し、増収が続いています。また、成長分野として海外企業と協業し、国際物流を拡大することに注力しています。さらに、コロナ禍で急増する電子商取引(EC)の影響で荷物量が増加し、JALと航空貨物での提携を発表しました。 一方で、ヤマトホールディングスは2017年に宅配ドライバーの残業代未払い問題が発覚し、2018年には引っ越しを担う子会社の代金過大請求が明らかになり、コンプライアンスを強化しています。また、米国の輸送機製造大手と無人輸送機(空飛ぶトラック)の共同開発に乗り出し、2020年には宅配用の小型EVトラックを導入することを発表しています。

ハマキョウレックス

ハマキョウレックスはアパレル・食品会社向けに注力することで高い利益率を達成しています。2022年度の売上構成比は、フードが31%、アパレルが20%となっており、2品目で5割以上を占めています。 近年は物流センター事業の稼働率向上や貨物自動車運送事業での積載率の向上、輸送コストの抑制などで利益率を伸ばしています。2021年10月に大一運送(株)を子会社化し、さらに業務効率を高めています。

トラック輸送業界が抱えるリスクと、成功の鍵

トラック輸送業界では、車両や労働力の確保が最も重要な課題です。大手事業者は、下請け運送業者への交渉力を持っていますが、外注比率が高まると、人材と車両を持つ下請け側の交渉力が増す可能性があります。また、燃料油価格の高騰は荷主との交渉により輸送運賃に転嫁できる場合もありますが、依然として大きな影響を受けます。 インターネットの普及により、荷主が事業者の見積もりを比較できるようになったことで競争環境が激化していますが、一方で、効率化を図るために事業者間での提携も進んでいます。 荷主である買い手の業界動向にも左右されるため、物流量が多い時期には運送事業者が仕事を選ぶことができますが、物流量が少ない時期にはトラックの稼働率を高めるために不採算でも受注するケースも多いです。 また、ドライバー不足も大きなリスクです。ドライバーの確保が難しくなることで、多くの企業で稼働できないトラックが増加し、納期遅延や企業の信頼性低下に繋がっています。高齢化も進んでおり、若者のドライバー確保が難しい現状もあるため、労働環境の改善や自動運転技術の導入などが求められています。 再配送の増加も重要な課題です。受取人が不在のために再配送が増加し、燃料費や外注費の増加、ドライバーの仕事量の増加に繋がっています。ヤマト運輸のLINEアカウントを通じた再配達の依頼システムや、日本郵便の「ゆうパック」の再配達抑制策など、各社は対策に取り組んでいます。 トラック輸送業界で成功するには、車両の稼働率・積載率の向上と、人件費・燃料費のコントロールが重要です。固定費の多い業界であるため、車両の稼働率・積載率を向上させ収益を確保することが求められます。 人件費については、需要の変動を吸収するために外注や業務委託を利用し、固定費から変動費にシフトする流れが進んでいます。燃料費の変動に対しては、荷主に運賃転嫁できるかが鍵となりますが、多くの企業が燃料費の高騰分を運賃に転嫁できていない現状があります。

トラック輸送業界を取り巻く現状

トラック輸送業界は、法規制による大きな影響を受ける業界です。1990年に施行された物流二法(「貨物自動車運送事業法」と「貨物利用運送事業法」)により、経済的規制の緩和と社会的規制の強化が行われました。 具体的には、参入が免許制から許可制に、運賃も認可制から事後届出制に変更されました。これにより市場競争が促進されましたが、運賃の低下も招いています。また、環境規制の強化に伴うコスト負担や、道路交通法改正による配達コストの上昇など、法規制の影響が大きいです。 2022年1月のパートを含む自動車運転者の有効求人倍率は2.17倍(全産業平均は1.04)となっており、人材不足が深刻化しています。国土交通省は2020年4月にトラック運送業の標準的運賃表(タリフ)を21年ぶりに告示し、トラック運転手の待遇改善を狙っていますが、新型コロナウイルスの影響で荷主にとっても厳しい状況が続いています。

2024年問題に揺れるトラック輸送業界

さらに、2024年問題も懸念されています。2024年4月1日以降、「自動車運転の業務」に対し、年間の時間外労働時間の上限が960時間に制限されることにより、業務量の減少や売上・利益の悪化が懸念されています。労働時間の制限により減少するドライバーの収入を賃金アップで補うことが難しく、労働者の離職に繋がる恐れがあります。 食品の安全性や消費者の選択権に対する関心が高まる中で、トラック輸送業界にもトレーサビリティシステムの導入が求められています。これにより、物流の流通経路を追跡できるようになり、温度管理の可視化も進んでいます。 経営効率化のためには、求荷・求車情報ネットワーク「WebKIT」を利用する事業者も増加しており、これにより空車率の削減や物流センターの在庫管理の効率化が図られています。 トラック輸送業界は、法規制や人材不足など多くの課題に直面していますが、技術の導入や効率化の取り組みを進めることで、これらの課題に対処しています。

トラック輸送業界の今後の展望とは?

トラック輸送業界は、人材確保のコスト増や燃料価格の高騰に直面し、経営が困難な企業が増加すると予測されています。 特に中小企業は、高度な物流ニーズに応えるための設備投資が難しく、業界からの撤退やM&Aによる再編が進むと見られます。大手企業同士の提携やノウハウ獲得のためのM&Aが増加するでしょう。 トラック輸送業界には他にもいくつかの注目すべき事象があります。

宅配業界の成長

宅配業界はEC市場の成長に伴い、引き続き拡大が見込まれます。野村総合研究所によると、国内のBtoC-EC市場は2021年に26兆円に達すると予測されており、スマートフォンの普及や消費者のEC利用増加が成長を支えています。 しかし、時間指定や即日発送などのサービス提供により、宅配業者への負担も増加しています。

引越し業界の成熟

引越し業界では、ファミリー層の減少や簡易な引越しが普及したことにより一般消費者の需要が減少している一方で、法人向けの需要が拡大しています。 企業の新オフィスへの移転需要が増える一方、国内人口の減少により市場全体の成長は鈍化する見込みです。高齢者向けの引越しや荷造り・荷解き支援などの差別化サービスが重要となります。

ICT化の進展

人手不足の深刻化に対応するため、トラック輸送業界ではICT化が進展しています。ドライバーの労働環境を改善するために、ITデバイスを活用したアルコールチェックや点呼作業などの取り組みが行われています。また、ETC2.0サービスの普及により、物流の効率化や安全性の向上が実現できるかも注目です。 より働きやすい環境が整備されることで、人手不足が解消されて業界全体のさらなる成長に期待がかかります。

トラック輸送業界の新たな展開から目が離せない!

今回の記事では、トラック輸送業界の直面する人手不足の課題や、価格競争、M&Aなどにおける戦略について解説してきました。 トラック輸送業界では現在企業の物流部門を丸ごと請け負うというケースも多く、求められるサービスは高度化する一方、十分なドライバーが確保できないという苦境に立たされています。 しかしその状況をバネにして高度なICT化が進み、ドライバーの安全確保の施策によって、新しい人材を呼び込む取り組みが行われています。新たな局面を迎えたトラック輸送業界から、今後も目を離すことができません。 法人営業の皆様は、本記事で紹介したトラック輸送業界の現状や課題などを参考にして、効果的な営業戦略を構築してください。また、無料で毎月100社まで法人データをダウンロードできるBIZMAPSを利用すれば、さまざまな属性や条件で企業を検索できます。営業戦略の立案にぜひご活用ください。 ▼関連記事はこちらから! 自動車業界とは?現在の動向から今後の展望について解説します! 運輸業界とは?現状や最新動向を紹介!TOP5企業もチェック! 運送会社の近年の動向と課題!売上高ランキング一覧TOP30も発表 トラック整備・修理業界の現状と課題とは?主な整備・修理会社も紹介 ▼そのほかの業界特集はこちらから! 石油業界の最新の動向を公開!今後の展望も見据えて解説します! エンターテインメント業界の最新の動向から導き出す今後の展望は? ベビー用品業界とは?市場規模や注目企業の動向について徹底解説

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