一色 みわ 0 Comments
ホームセンター業界は、DIYや園芸用品、住まい関連商品を中心に幅広い商品を提供する小売業界で、日本の暮らしを支える重要な存在です。 本記事では、ホームセンター業界の定義をはじめ、業界構造や取扱商品の特性、主要プレイヤーの動向などを解説します。ホームセンター業界の将来についても触れていますので、ぜひ参考にしてください。 なお、BIZMAPSではホームセンター業界に関連する企業の情報を掲載中です。ホームセンター業界における各企業の詳細は、【業界名:その他小売り】からご確認いただけます!是非合わせてご覧ください。

ホームセンター業界は住関連産業

ホームセンター業界とは、「住まい」や「暮らし」に関連するさまざまな商品を販売する小売業を営む企業群のことを指します。具体的には以下のような商品を取り扱っています。
  • DIY用品(Do It Yourself:自分で作ったり修理したりするための道具や材料)
  • 日曜大工品(簡単な家具作りや家の修理に使うアイテム)
  • 園芸用品(花や植物を育てるための土、肥料、鉢、ガーデニングツールなど)
  • 生活雑貨(日常生活に必要な掃除道具、キッチン用品、収納グッズなど)
  • 自動車関連用品(車のメンテナンスに必要なオイルや部品、カバーなど)
  • 家具(組み立て式の家具や収納家具など)
これらの商品は、日常生活をより便利にしたり、快適にしたりするために利用されます。特にホームセンターは、手頃な価格で多様な商品を提供することが特徴で、DIYやガーデニングが趣味の人、家の修繕を自分で行う人々にとって便利な存在です。 ホームセンターは広い店舗面積を持つことが多く、ワンストップでさまざまなものが揃う「暮らしの便利店」としても親しまれています。

ホームセンター業界の業界構造

ホームセンターは、広い売り場面積を持つ大型店舗で、多種多様な商品を販売する小売業態です。具体的には、DIY商品や園芸用品だけでなく、食料品や日用雑貨、家電製品といった日常生活に密接に関連する商品も取り扱っています。 この幅広い商品ラインアップにより、顧客が一度の来店でさまざまなニーズを満たせる利便性が、ホームセンターの大きな特徴です。 ホームセンターはまた、二次卸を介さずにメーカーやメーカー代理店から直接大量に商品を仕入れる仕組みを採用しています。この仕入れ体制により、商品を安価で仕入れ、それを低価格で顧客に提供することを可能にしています。 さらに、多くのホームセンターでは、海外メーカーを中心にOEM(委託製造)を利用したプライベートブランド(PB)商品の展開にも力を入れており、独自性を高めながらコストを抑える工夫を行っています。 顧客層は幅広く、一般消費者だけでなく、建設業の職人や多能工、農業従事者、自営業者といったプロフェッショナル層も含まれます。そのため、一部のホームセンターでは、こうしたプロフェッショナルのニーズに応じた専門的な売り場づくりを進めており、他の小売業態との差別化を図っています。 ホームセンターは日常生活を支えるだけでなく、プロの仕事を効率化する場としても重要な役割を果たしているのです。

ホームセンター業界の取扱商品の特性

ホームセンターは、DIY用具や素材、園芸用品、家庭日用品を中心に、家電製品や家具、カー用品、食料品など多種多様な商品を幅広く取り揃えています。これらの商品は比較的低価格で提供され、一般家庭のニーズだけでなく、専門的な用途を持つ顧客にも対応しています。 特にDIY関連商品や園芸用品は、他の小売業態と比べてホームセンターが強みを持つ分野です。この商品群は粗利率が高く、例えば業界大手のコメリでは工具・金物・作業用品で40%以上の利益率を確保しています。 また、各社は独自のプライベートブランド(PB)商品を多く展開しており、これらの商品の多くは海外メーカーとの提携によってコストを抑え、利益率の向上を図っています。 ホームセンターは商品の販売だけでなく、さまざまな付加価値の高いサービスも提供しています。たとえば、リフォームサービス、宅配サービス、顧客が自由に使える工房の貸し出し、さらには大型商品の持ち運びを支援するトラックのレンタルなどがあります。これにより、商品だけでなく「暮らしを便利にする場所」としての役割を果たしています。 店舗スタイルに関しては、広い売り場面積と大型商品の販売に対応するため、郊外のロードサイドに駐車場を備えた大型店舗が主流でした。しかし、近年では都市部にも対応するため、500〜1,000㎡程度の中小型店舗の出店が増えています。 一方で、年間商品販売額では、3,000㎡以上の大型店舗が総販売額の63.2%を占めるなど、売上面では依然として大型店舗が主軸となっています。また、大型店舗ではセルフサービス形式が一般的で、顧客が自由に商品を選びやすい環境を整えています。

ホームセンター業界の市場規模とトレンド

ホームセンター業界の年間総売上高は、2022年に4兆150億円を記録しました。この市場規模は、東日本大震災直後の特需や2014年の消費増税前の駆け込み需要による一時的な増加を除けば、2011年以降ほぼ横ばいで推移しています。 特に、新型コロナウイルス感染症拡大による在宅率の上昇に伴い、DIY用品や生活必需品の需要が高まった2020年には市場が拡大しましたが、その後は特需が落ち着き、2022年も4兆円規模を維持しています。 一方で、店舗数は増加を続けており、2022年末には4,920店舗に到達。この背景には、飽和状態に近づく市場の中で、各社が従来型の大型店舗だけでなく、品揃えを絞り高利益率商品に特化した小型店舗を積極的に展開していることがあります。また、都市部での新規出店も増加傾向にあり、DIY需要の高まりを見越した都市部市場の開拓が進んでいます。 このように、ホームセンター業界は安定した市場規模を維持しつつ、店舗形態の多様化や都市部進出を通じて、新たな成長の可能性を模索しているのが現状です。

ホームセンター業界の相関図・業界地図

ホームセンター業界は、DCMホールディングスが再編の中心的存在となっています。DCMは、2006年にホーマック、カーマ、ダイキが経営統合して誕生し、その後も積極的に買収を進めてきました。2015年にはサンワドーやくろがねやを買収し、2017年には関東地域での基盤強化を目的にケーヨーを関連会社化しています。 これにより、全国展開を進める主要プレイヤーとして業界のリーダー的存在となっています。 また、イオンドン・キホーテといった大手小売企業もホームセンター分野に参入し、競争が激化しています。一方、LIXILグループはプロ向けの「建デポ」を運営し、建設業者や専門職向けのホームセンター市場でリーダーシップを発揮しています。この店舗は会員制を採用し、リフォーム需要や建材流通の効率化を狙った戦略的な展開が特徴です。 このように、ホームセンター業界は全国展開を進める大手企業、プロ向け特化型事業を進める企業、多業種からの参入企業が競い合う多様な競争構造を持っています。業界は今後も再編や新規参入が進み、競争がさらに激しくなることが予想されます。

ホームセンター業界の主要プレイヤーの動向

ここでは、ホームセンター業界の主要プレイヤーの動向について、以下の3点に焦点を当てて詳しく解説します。
  • 【DCMホールディングス】業界最大手による効率化
  • 【カインズ】豊富なPB商品で業界最大手を確立
  • 【ハンズマン】九州最大のホームセンター

【DCMホールディングス】業界最大手による効率化

DCMホールディングスは、2006年にホーマック、カーマ、ダイキの経営統合によって設立されたホームセンター業界の最大手企業です。その後も積極的なM&Aを続け、規模の拡大を図るとともに、仕入れや店舗運営の効率化を進めてきました。また、他社に比べて低かったプライベートブランド(PB)商品の開発を強化し、独自商品の充実を目指しています。 統合当初は各子会社間でのシナジー(相乗効果)が発揮されにくい状況が続きましたが、2014年以降、「DCM」の冠を全店舗で統一し、マーケティングや棚割り、仕入れ体制の標準化を進めました。2021年には主要な事業会社を統合し、「DCM」として一本化。これにより、全国規模での事業展開をさらに強化しています。 新型コロナウイルス感染症の流行中には、マスクや消毒液など感染対策商品の需要増加や在宅勤務の普及に伴い、キッチン用品やデスクなどの売上が好調となり、2020年度には売上が前年比で8%増加しました。2021年度は特需が落ち着き減収となりましたが、2022年度にはガーデニング需要の拡大や節電・節約商品、環境配慮型商品の展開により再び増収に転じています。 現在、DCMはPB商品の開発やオムニチャネル化(店舗とオンラインを連携した販売)に注力しており、さらなる効率化と収益拡大を目指して事業基盤の強化を進めています。

【カインズ】豊富なPB商品で業界最大手を確立

カインズは、2022年度に売上高5,158億円を記録し、全国に234店舗を展開するホームセンターチェーンです。もともと大手流通企業であるベイシアグループに属しており、グループ全体の売上高は2020年に1兆円を超えています。カインズは2018年にDCMホールディングスを抜き、単独チェーンとして業界最大手の地位を確立しました。 カインズの商品構成はDIYやリフォーム商品を中心としつつ、日用品、プロ向けの資材、ペット用品など幅広い分野に分かれています。その中でも自社開発商品の比率が高く、生活者目線のデザインや利便性を重視した商品展開が特徴です。実際、グッドデザイン賞を受賞する商品も多く、独自の商品力で他社との差別化を図っています。 また、地域特性を考慮した柔軟な出店戦略を採用しており、従来型のホームセンターだけでなく、スーパーセンターや大型ショッピングモール、小規模テナント店舗など多様な形態で展開しています。2020年には建築プロ向けの会員制ショップや、園芸、リカー、サイクルパークなど専門性の高い店舗もオープンさせています。 生産面では中国や東南アジアを中心とした国々で商品を製造し、国内外に物流網を整備。ITを活用して販売状況に応じたジャストインタイムの供給を実現するなど、効率的な運営を行っています。このように、PB商品の開発力や物流網を活用したスケールメリットで、カインズは業界トップの地位を維持しています。

【ハンズマン】九州最大のホームセンター

ハンズマンは九州最大のホームセンターで、11店舗を展開しています。その最大の特徴は、23万点もの豊富な品揃えと、DIYに特化した手厚い接客サービスです。食品やスポーツ用品などは扱わず、住まい関連の商品に絞ることで専門性を追求しています。 棚割りにも独自の工夫があり、商品陳列を優先してから建物の設計を行うという徹底した姿勢が評価されています。 また、400名以上のDIYアドバイザーを登録しており、一店舗あたりの人数は業界トップです。これにより、専門的なアドバイスや親身な接客を提供し、多くのリピーターを生み出しています。お客様の声を積極的に反映した商品展開も特徴で、在庫の多さを「販促コスト」と捉えることで、幅広い顧客ニーズに応えています。 2020年度にはコロナ禍による在宅需要の高まりでDIY用品やガーデニング用品の売上が大幅に増加しましたが、2021年度はコロナ禍特需の反動や資源価格の高騰、円安の影響で減収となりました。それでも、DIYに特化した戦略と手厚いサービスは、競争の激しいホームセンター業界において差別化の要となっています。

ホームセンター業界の今後の業界展望

新型コロナウイルス感染症の拡大は、多くの業界に影響を与えましたが、ホームセンター業界では特に消費者の購買行動やニーズの変化が顕著に現れました。以下では、コロナ禍における業界への影響や、今後の成長に向けた課題と展望について解説します。
  • 新型コロナウイルス感染症による業界への影響
  • ホームセンター市場の課題と対応策

新型コロナウイルス感染症による業界への影響

新型コロナウイルス感染症の影響で外出自粛が続く中、DIYや園芸、ペット飼育を楽しむ人が増え、関連用品の需要が大きく高まりました。 ホームセンターは生活必需品を扱う施設として、休業や入店制限の対象外となっていたため、一部では来店者が増え、感染リスクが懸念される状況もありました。この際、多くの企業が自主的に入場制限や一時休業を行い、現在も感染予防対策を徹底しています。 在宅勤務が続く限り、こうした需要の高まりはしばらく続くと予想され、ホームセンター業界にとって追い風となっています。

ホームセンター市場の課題と対応策

ホームセンター業界は、他業種小売やネット通販との競争激化、地方の人口減少、都市部への人口集中、少子高齢化といった要因から市場縮小の課題に直面しています。一方で、DIY需要の増加やコト消費志向の広がりを背景に、都市部での新たな市場開拓も進められています。 各社は生き残りをかけ、M&Aによる業界再編や住居関連・園芸用品などの強化、リフォームや農業分野への特化、小規模店舗展開やPB商品の開発など差別化戦略を進めています。また、異業種との協業も進み、高齢化に対応した店舗設計やサービス強化が求められています。 こうした取り組みにより、ホームセンター業界は社会の変化に適応しながら競争力を維持しようとしています。

ホームセンター業界の追い風と未来への課題

ホームセンター業界は、新型コロナウイルス感染症の流行による在宅時間の増加やDIY需要の拡大が追い風となり、一時的に市場が活性化しましたが、少子高齢化や地方人口減少、都市部の集合住宅増加といった社会変化が長期的な課題となっています。 今後は、異業種との協業や環境に配慮した商品の展開、高齢者に配慮した店舗設計などを含む多角的な取り組みが業界の鍵となるでしょう。 なおBIZMAPSでは、オリジナルタグを用いて多様なアプローチで企業情報を検索できます。ホームセンター業界の企業はもちろん、国内200万社以上の企業の基本情報が無料で閲覧でき、売上や従業員数などの情報を基にターゲット企業を絞り込むことが可能です。 ▼その他の法人営業ハックの業界企業の特集はこちら! 受託システム開発業界とは?その定義から今後の展望まで徹底解説 ネットワークインテグレーターとは?情報化社会を支える業界を徹底解説 OA機器商社業界とは?注目企業の動向や業界展望まで徹底解説! 業務用ソフトウェアの業界動向を徹底分析!大手企業の事業展開も解説 携帯電話業界の現状と動向を徹底解説!暮らしに欠かせないサービスの実態とは 通信業界はさらに発展!?現状と動向を解説!売上ランキング15社も紹介! インターネット関連サービスとは?需要が高まる業界の現状と展望を徹底解説

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