一色 みわ
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目次
銀行業界は経済を支える基盤産業
銀行業界とは、私たちの生活や企業活動を支えるために「お金」に関するサービスを提供する企業が集まる重要な産業です。経済全体の基盤を担っており、多種多様な銀行がその役割を果たしています。 まず、多くの人が利用したことのある「メガバンク」は、銀行業界の中でも特に大規模な存在です。メガバンクは日本全国、さらには海外にも拠点を持ち、個人の預金や住宅ローンから、企業への大口融資、投資、外国為替取引まで、多岐にわたるサービスを提供しています。これにより、個人や企業の資金ニーズを幅広く支えています。 一方で、「地方銀行」は地域経済を支える重要な存在です。地方銀行は特定の地域に根ざし、その地域に住む人々や地元企業を主要な顧客としています。例えば、地域企業が新たな設備を導入する際の資金提供や、個人のマイホーム購入のための住宅ローンなど、地域密着型のサービスを通じて、地域経済の成長をサポートしています。 また、近年注目されている「ネット銀行」や「ATM専用銀行」は、テクノロジーを駆使した新しい形態の銀行です。これらの銀行は実店舗を持たず、スマートフォンやパソコンを活用して、どこからでも簡単に取引ができる便利さが特徴です。 また、ATM専用銀行は、全国に設置された多くのATMを通じて、現金の引き出しや入金をスムーズに行えます。これらの銀行は、低コストでの運営を強みに、利便性の高いサービスを提供しています。 銀行業界は、これら多様な銀行がそれぞれの役割を果たしながら、連携して成り立っています。預金や貸出といった基本的なサービスにとどまらず、投資や資産運用、さらには相続関連のサービスなど、多岐にわたる金融サービスを提供し、私たちの日常生活や企業活動が円滑に進むよう支えています。 銀行業界を理解することは、私たちの生活や経済全体の動きを把握する上で非常に重要です。銀行業界の仕組みや役割を知ることで、お金の流れや経済の仕組みについての理解が深まり、より豊かな視点で社会を見ることができるようになります。銀行業界の進化する業界構造
銀行業界の取扱商品の特性
銀行業界のビジネスモデル
銀行業界の財務指標分析
銀行業界の財務状況を分析すると、安定性を保ちながらも収益性や効率性に課題を抱えていることがわかります。特にメガバンクの収益性は2019年度までは経常利益率が20%前後と比較的安定していましたが、2020年度以降は低金利政策や新型コロナウイルス感染症による経済停滞の影響で低下傾向が続いています。 これは、融資による利ざやが縮小したことや、経済全体の停滞により資金需要が減少したことが要因とされています。 安全性の面では、銀行は現金や債券といった流動資産を多く保有しており、固定資産比率はわずか1%未満と非常に低い水準を保っています。このため、経営の柔軟性や流動性の確保が可能です。 しかし、負債の大部分が預金によって賄われているため、自己資本比率は3%台から4%台と低く、収益性が低下すると資本の安定性が揺らぐリスクが指摘されています。 効率性については、総資産回転率(資産をどれだけ効率的に活用しているかを示す指標)は横ばいで推移していますが、利益率が低迷しているため、総資産利益率(ROA)は非常に低い水準となっています。これは、銀行が大規模な資産を持ちながらも、それを十分に活用して高い収益を上げることが難しい状況を反映しています。 また、2000年代初頭には多くの銀行が競争を繰り広げていましたが、バブル崩壊後の経済混乱を受け、業界全体で統合や再編が進みました。2002年から2004年にかけて市場集中が進行し、現在のメガバンクを中心とした業界構造が形成されました。これにより、銀行業界は規模の経済を活用しつつ、競争力の強化を目指すようになりました。 こうした背景から、銀行業界は現在、安定性を維持しながらも、収益性や効率性を改善する必要性に迫られています。また、低金利政策や技術革新、そして経済環境の変化が大きな影響を与えており、これに適応するためのさらなる変革が求められています。 銀行業界は、これらの課題を克服しながら、今後も重要な経済基盤としての役割を果たしていくことが期待されています。銀行業界の市場規模とトレンド
銀行業界のマクロ環境
銀行業界の相関図・業界地図
- 鹿児島銀行と肥後銀行による九州フィナンシャルグループ(2015年)
- 横浜銀行と東日本銀行によるコンコルディア・フィナンシャルグループ(2016年)
- 常陽銀行と足利銀行によるめぶきフィナンシャルグループ(2016年)
- 住信SBIネット銀行や大和ネクスト銀行のように金融サービス業界から派生したもの
- PayPay銀行やauじぶん銀行といったインターネットや通信事業者が展開するもの
- イオン銀行やセブン銀行のように流通小売業界が参入したもの
銀行業界の主要プレイヤーの動向
- 【スルガ銀行】個人向けローン戦略と再出発
- 【イオン銀行】特典活用で顧客を囲い込み
- 【地方銀行】金融以外の価値提供で地域支援
【スルガ銀行】個人向けローン戦略と再出発
静岡県を拠点とするスルガ銀行は、1980年代後半に大きな事業転換を行い、それまで主力だった法人向け融資から、個人向けローンに特化した戦略へと舵を切りました。この戦略転換により、現在では貸出金残高の約9割が個人向けローンとなっています。 このような成果を支えているのが、先進的な自動審査システムや顧客データを活用したリスク管理システムです。これにより、ローン審査が迅速かつ効率的に行えるようになり、転職直後の人や独身女性といった、他の銀行では融資を受けにくい層への対応も可能となっています。 さらに、スルガ銀行はネット支店を活用し、地域を超えた広範なサービスも展開。例えば、「Tポイント支店」や「ANA支店」など、提携先の企業ごとにカスタマイズされたサービスを提供しています。これにより、住宅ローンやカードローンを提供するだけでなく、提携先のブランド価値を活用した新しい顧客層の開拓にも成功しています。 しかし、2018年には不動産投資ローンに関する不正が発覚し、経営に大きな打撃を受けました。この問題では、営業至上主義の企業文化が背景にあり、審査内容の改ざんや偽装といった不正行為が行われていたことが明らかになりました。 この影響で、スルガ銀行の信頼性は大きく損なわれました。その後、経営改革の一環として創業家が保有していた株式をノジマに売却し、事業モデルの抜本的な見直しを行うことで、新たなスタートを切りました。 さらに、新型コロナウイルス感染症の影響によって多くの企業や個人が経済的に厳しい状況に直面する中、スルガ銀行の収益は依然として減少傾向にあります。しかし、これを乗り越えるために、銀行としての基本的なサービスの見直しや新しい戦略の構築を進めています。 今後の課題は、失われた信頼を取り戻しながら、地域密着型のサービスと全国規模での展開を両立させることです。 スルガ銀行のこれまでの取り組みは、挑戦と挫折の繰り返しではありますが、地方銀行がどのようにして他行との差別化を図り、持続可能な成長を目指すかという観点で、他の銀行にも示唆を与えるモデルケースと言えるでしょう。【イオン銀行】特典活用で顧客を囲い込み
イオン銀行は、2007年にイオングループが設立した銀行で、生活密着型のサービスを提供することで独自のポジションを築いています。この銀行は、主に住宅ローンを中心とした貸出業務で収益を上げており、特にイオンの主要顧客である主婦層に向けたサービスが充実しています。 たとえば、住宅ローンの契約者には、イオンでの買い物が5%引きになる特典が付与されており、家計を助けるメリットとして多くの利用者に支持されています。 さらに、イオン銀行は預金の集客にもユニークな工夫をしています。電子マネー「WAON」やクレジットカード機能が付いたキャッシュカードを契約することで、通常の6倍となる0.12%の預金金利を提供しています。この高金利設定は他の銀行には見られない特徴であり、多くの顧客にとって大きな魅力となっています。 これにより、イオン銀行はスーパーやコンビニ、映画館、ドラッグストアなどを網羅する「イオン経済圏」の形成に大きく貢献しています。イオン経済圏とは、イオングループの多岐にわたる事業を利用することで、日常生活のあらゆる場面で便利さとお得さを提供するエコシステムのことを指します。イオン銀行はその中核を担い、金融面での利便性を高めています。 また、新型コロナウイルス感染症の影響で資金繰りに困難を抱える顧客への融資や、新しいローンサービスの提供にも力を入れています。これにより、個人向けサービスをさらに充実させ、幅広いニーズに対応しています。さらに、近年では相続相談や税務相談の紹介サービスも開始し、金融だけでなく資産管理や相続といった分野にも事業を拡大しています。【地方銀行】金融以外の価値提供で地域支援
地方銀行は、地域における重要な金融インフラとしての役割を担っていますが、現在、多くの地域で人口減少や企業数の減少が続いており、従来の資金貸出に依存したビジネスモデルだけでは安定した収益を維持することが難しくなっています。このような環境の中、地方銀行には、単なる金融サービスの提供を超えた新たな価値提供が求められています。 具体的には、地方銀行が地域商社としての機能を果たし、地元企業の商品を外部に販売する仕組みを構築する例や、経営コンサルティングを通じて中小企業の課題解決をサポートする取り組みが進んでいます。 また、IT導入支援やデジタル化のアドバイスを行い、地域企業の業務効率化や競争力強化を支援する動きも活発化。これにより、地域経済の活性化を目指す役割を担っています。 加えて、地方銀行は地域密着型の強みを生かし、地元の企業や住民と連携してイベントを開催したり、観光や農業の振興に協力するなど、地域全体の価値を高める活動にも注力しています。このような「金融+α」の取り組みを進めることで、地方銀行は地域経済の発展に寄与し、存在感を高めることを目指しています。銀行業界の今後の業界展望
- 新型コロナウイルス感染症による業界への影響
- 銀行業界は手数料ビジネスと新領域で模索
新型コロナウイルス感染症による業界への影響
世界的な政策金利の引き下げにより、銀行は本業である融資業務から得られる利益が減少しています。これに加え、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で金融市場が混乱し、多くの企業が経営不振に陥ったことで、貸し付けたお金を回収できない可能性が高まりました。 このような状況では、銀行は倒産リスクや債権回収の難しさに備えて追加の費用を計上する必要があり、それが利益の減少に直結しています。 特に地方銀行は中小企業や個人事業主との取引が多いため、その影響を強く受けています。中小企業や個人事業主はコロナ禍で売り上げが減少し、資金繰りに困るケースが増えており、地方銀行は地域経済を支えるという使命のもと、緊急融資の提供に積極的に取り組んでいます。 しかし、融資が増えればその分返済不能のリスクも高まり、信用リスクの課題が大きな問題です。 こうした状況を受けて、政府は2020年8月に改正金融機能強化法を施行し、銀行が企業に出資できる比率を一時的に引き上げました。この改正により、銀行は融資だけでなく、企業への出資を通じて経営を直接支援できるようになりました。 これにより、コロナ禍で業績不振に陥った企業を支援し、地域経済や産業全体を支える役割が、銀行にさらに強く求められるようになっています。 今後、銀行は貸し倒れリスクを管理しながら、地域や企業を支援するというバランスの取れた対応を迫られるとともに、経済回復に向けた重要な役割を果たしていくことが期待されています。銀行業界は手数料ビジネスと新領域で模索
銀行業界は、低金利や人口減少などの影響で貸出業務や住宅ローンからの収益拡大が難しい状況です。特に国内の住宅着工件数が減少していることや、新型コロナウイルス感染症の影響で住宅ローン滞納リスクが高まっていることが課題となっています。 一方で、相続関連の資産運用や高所得者向けのプライベートバンキングといった手数料ビジネスの分野でのサービス拡大が進められています。 また、低金利を背景に活況を呈していた「賃貸住宅バブル」は、金利上昇局面で崩壊する可能性が指摘されており、今後の動向が注目されています。さらに、技術革新の進展により、AIやビッグデータを活用した新しい融資サービスやFintech(フィンテック)の導入が期待されています。 ただし、規制の少ないFintechベンチャーや異業種企業との競争も激化しており、銀行には新たな戦略が求められています。 銀行業界は効率化や新サービスの開発を進めつつ、手数料ビジネスや異業種との協力による収益確保を模索していますが、ビジネスモデル自体の大きな変革が求められる可能性もあります。銀行業界の未来を切り開く進化と挑戦
日本の銀行業界は、長期的な低金利政策や人口減少、地域経済の停滞といった課題に直面しつつ、さまざまな戦略で収益拡大と役割の再定義を進めています。技術革新の進展により、FintechやAIを活用した新サービスの開発が進む一方、異業種との競争や市場の変化への対応も必要です。 特に、相続や資産運用といった新分野でのビジネスチャンスや、ネット銀行の台頭が注目される中、銀行は従来のビジネスモデルを超えた変革が必要となるでしょう。 なおBIZMAPSでは、オリジナルタグを用いて多様なアプローチで企業情報を検索できます。銀行業界の企業はもちろん、国内200万社以上の企業の基本情報が無料で閲覧でき、売上や従業員数などの情報を基にターゲット企業を絞り込むことが可能です。 ▼その他の法人営業ハックの業界企業の特集はこちら! 百貨店・スーパー業界の現状とは?トレンドや今後の展望も考察 総合商社業界とは?最新の動向から今後の展望まで解説します! 倉庫業界とは?物流の効率化と社会を支える重要な産業を徹底解説! 海運業界を徹底解説!企業提携やモーダルシフトなど業界の最新動向も 空運業界とは?成長のカギとなる構造と主要プレイヤーの動向を徹底解説 バス業界が抱える深刻な課題とは?主要プレーヤーの動向や今後の展望も解説 トラック輸送業界と2024年問題!宅配や引越し各分野の動向も解説 保険業界を取り巻く環境を徹底解説!トレンドや主要プレイヤーの動向も
「場所や時間にとらわれない自由な働き方」がモットーの転勤族ママライターです。読み手に寄り添った分かりやすい文章を心がけています。転職・副業・旅行ジャンルなどが得意。旅行とカメラと甘いもの(とくにチーズケーキ)が大好きで、毎日のお茶タイムは欠かせません。元気すぎる2人の子どもを育てながらのんびりと活動しています。
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