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保険業界のバリューチェーン
保険業界は、保険商品の開発を行い、TVCMなどの広告宣伝をはじめとするマーケティング活動や、各顧客に合わせた保険商品の提案をおこなうコンサルティング活動を通じて、保険商品を販売することを主業務とする業界です。 保険業界の主要企業としては、生命保険会社と損害保険会社が挙げられます。生命保険会社と損害保険会社は日系と外資系に分けられ、日系生命保険会社としては日本生命や第一生命、外資系生命保険会社としてはアフラックやジブラルタ生命が代表的な企業です。 日系損害保険会社としては東京海上日動火災保険や三井住友海上火災保険、外資系損害保険会社としてはAIG損害保険やアメリカンホーム医療・損害保険などが挙げられます。販売チャネルは規制緩和により、ダイレクト販売を含めて多様化が進行している状況です。 以前の保険業界では、特に生命保険において、女性(生保レディー)を中心とした自社の営業員が対面で訪問販売をおこなう手法が一般的でした。 しかしオフィスのセキュリティが厳格化され、保険等の営業員が顧客の職場を訪問できる機会が激減。その結果、銀行の窓口や通信販売、さまざまな会社の生命保険・損害保険を販売する保険代理店など、販売チャネルが多様化しています。 最近の保険業界では、TVCMなどを多用して知名度を向上させ、保険加入に積極的な若年層の取り込みを図るネット保険や、店舗を構えてさまざまな会社の保険商品を選ぶことができる保険代理店が注目されています。保険業界の取り扱い商品・サービスの特徴
おもな保険商品には、次のようなものがあります。- 第一分野の生命保険:被保険者が死亡した際に保険金が支払われる保険。
- 第二分野の損害保険:偶然のリスクによって損害を被った際に保険金が支払われる保険。
- 第三分野の医療保険:病気や怪我で入院した場合の医療費などを保障する保険。
保険業界のビジネスモデル
保険業界は、少子高齢化にともなう生産労働人口の減少や自動車保有台数の減少などを背景に、成熟した業界であるといえます。 保険業界は継続的に保険料収入を確保できるため、ストック型のビジネスモデルです。財務の厚みが必要である反面、保険商品の販売や顧客対応などは人手に依存するため、労働集約的な側面が色濃く存在します。 生命保険会社や損害保険会社は、契約者から保険料を集め、その資金をもとに株式や国債などで資産運用をおこなって資金を増やします。したがって保険会社の収入は、保険料収入と資産運用収益から成り立ちます。そのため、それぞれの保険会社は、独自の指標で収益性や安全性を確認しなければなりません。 生命保険業界で見るべき指標は、次の通りです。- 死差損益(予定保険支払金と実際の保険支払金の差)
- 費差損益(予定事業費と実際の事業費の差)
- 利差損益(予定運用利回りと実際の運用利回りの差)
- 基準利益(死差損益、費差損益、利差損益の合計)
- エンベディッドバリュー(EV:純資産価値と保有契約価値の合計)
- ソルベンシーマージン比率(保険引受リスクなどに対する支払い余力の比率)
- 損害率(支払保険金/収入保険料)
- 事業費率(経費/収入保険料)
- コンバインドレシオ(損害率と事業費率の合計)
- ソルベンシーマージン比率
業界構造
業界構造を見ると、損害保険業界では業界再編が進行。大手企業による上位寡占が進んでいる一方で、生命保険業界はそれほど業界再編が盛んではなく、上位寡占が進行していません。 ネット保険会社が生命保険・損害保険業界に新規参入しているものの、既存の保険会社を脅かすまでには至っていません。 保険代理店業界では、イオンやニトリといった消費者の生活に根差したサービスや商品を提供する企業の新規参入が目立ち、脅威となっています。買い手の多くは一般消費者であり、保険比較サイトや口コミサイトの登場・台頭により、保険に加入したい能動的な消費者はそれらを参考にして保険に関する知識を増やし、交渉力を強めています。KFSは多様な販売チャネルの連携
保険業界の市場規模・トレンド
保険業界の市場規模やトレンドについては、生命保険協会の「生命保険の動向」と日本損害保険協会の資料を参照します。 「生命保険における保険種類別収入保険料の推移」(生命保険協会)では、保険料収入の合計は2015年までは30兆円台後半で推移していましたが、2016年度以降は減少傾向が続き、2020年度には29兆円まで縮小しました。 コロナ禍による対面営業の自粛などで2020年度は大幅な減少となりましたが、2022年度にはコロナ禍前の水準まで回復しています。種類別では「個人保険」が大半を占めています。 「個人保険の種類別保有件数の推移」では、保有件数は増加傾向で、2022年度には1億9,453万件となっています。種類別では「終身保険」と「医療保険」の割合が大きく、「医療保険」は高度医療に備え増加傾向です。 「個人保険の種類別契約高の推移」では、契約高全体は減少傾向で、2022年度には794兆円です。保有件数が増加しているのに対し契約高が減少している要因は、契約単価の低下と廉価なネット生命保険の台頭などです。 種類別では、掛け捨て型保険の代表的な商品である「定期保険」と、低金利下で貯蓄型保険の代表的な商品である「終身保険」が増加傾向で、全体の6割以上を占めています。 「損害保険種目別元受正味保険金の推移」(日本損害保険協会)によると、元受正味保険料(被保険者との直接の保険契約にかかる収入)は景気回復などを背景に増加傾向にあるものの、近年は横ばいが続き、2022年度は前年度比3%増の9兆9,593億円でした。種類別に見ると「自動車」の割合が大きく、成長性では「火災」や「新種」の伸び率が大きいです。保険業界を取り巻く環境
保険業界の相関図・業界地図
保険業界の相関図を、日系企業と外資系企業に分けて見ていきましょう。 生命保険業界では、日系の伝統的企業として、かんぽ生命保険や日本生命、第一生命が挙げられます。日系の新興企業として挙げられるのは、ソニーフィナンシャルグループ傘下のソニー生命保険、ライフネット生命保険、オリックス傘下のオリックス生命保険です。 外資系企業には、アフラック、ジブラルタ生命、プルデンシャル・ファイナンシャル傘下のプルデンシャル生命保険があります。生命保険業界では、相互会社形態を採用している企業が多いですが、最近では第一生命などが株式会社化し、上場して資金調達の機動性を確保して事業の多角化を進めている状況です。 損害保険業界では、日系の伝統的企業として、東京海上ホールディングス、MS&ADインシュアランスグループホールディングス、SOMPOホールディングスが挙げられます。日系の新興企業として代表的なのが、ソニーフィナンシャルグループ傘下のソニー損害保険や、SBIグループ傘下のSBI損害保険です。 外資系企業には、AIGジャパン・ホールディングス傘下のAIG損害保険、アメリカンホーム医療・損害保険、アクサグループのアクサ損害保険があります。 業界再編の結果、東京海上ホールディングス、MS&ADインシュアランスグループ、SOMPOホールディングスの3グループに集約されており、これらのグループは海外企業のM&Aも積極的に実施。例えば東京海上ホールディングスは、2018年9月に南アフリカの大手保険会社に約400億円の出資をおこないました。 保険代理店業界では、三菱商事インシュアランス、トータル保険サービス、ほけんの窓口グループ、光通信傘下の「保険見直し本舗」を運営するナローピーク(旧NFCホールディングス)などが挙げられます。保険業界の主要プレイヤーの動向
ここからは、保険業界の主要プレーヤーの動向をご紹介します。 第一生命ホールディングスの経常収益は、増収基調です。この背景には、2014年に買収したアメリカの生命保険会社プロテクティブ社の連結があります。国内市場は競争が激しく成熟していますが、そのため保険会社は海外進出を積極的に進めています。 主要企業の経常利益率を見ると、保険代理店の経常利益率は二桁を維持しており、コロナ禍でも堅調に推移。その中で急速に成長しているのが、光通信傘下でアウトバウンドテレマーケティングによる保険販売を推進するナローピーク(旧:NFCホールディングス)です。 ナローピークは2014年に「保険見直し本舗」や「損害保険見直し本舗」を運営するウェブクルーを子会社化し、「保険見直し本舗」のリアル店舗とコールセンター、「保険スクエア bang!」の保険比較サイトと訪問販売を連携させ、売上高を急拡大してきました。 コロナ禍で外出自粛や対面営業が制限された2020年度と2021年度は減収となりましたが、経常利益率は高水準を維持しています。 第一生命ホールディングスは、2020年度はコロナ禍による営業制約等から新契約年換算保険料が前期比32%減と大きく減少しました。 しかし、2020年度下半期からは本格的に営業活動が再開し、新契約年換算保険料は前年同期比で上半期は53%減まで落ち込んでいたものの、下半期には9%減まで回復しています。保険業はストック型ビジネスであるため、新規契約獲得数の増減に業績が左右されますが、2021年度以降は好調を取り戻しています。保険業界の今後の展望
新たな保険商品の開発・販売も本格化
さらにビッグデータ技術が高度化し、スマートフォンやウェアラブルデバイスの普及が進んでいる状況です。これにより、現在の健康状態と連動した保険商品の開発・販売が本格化することが予測されます。 政府も健康寿命の延伸に対してさまざまな取り組みを実施しており、消費者のニーズも高まっています。生命保険会社は既にビッグデータ分析に長けた企業と提携を進めており、例えば、第一生命がアクセンチュアやNTTデータと提携し、保険商品の開発を進めています。 また、海外ではアメリカのOscar Health社が健康アプリと連動し、目標の歩数を達成するとリワードが付与される保険商品を販売。このような事例を考えると、日本でも今後は現在の健康状態に連動した保険商品の開発・販売が本格化することが予測されます。 損害保険市場では、自動運転の実用化に伴い、自動車保険の在り方が変化する可能性があります。これまでは事故の責任が運転者にある前提で自動車保険が組み立てられていましたが、自動運転技術が進化するにつれ、責任の所在が不明瞭になる問題が指摘されているのです。 また、自動車の安全性が向上し、交通事故の発生数が減少した場合、保険料の引き下げが求められることも予想されます。長寿社会を支える保険業界の今後に注目
保険業界は多様な販売チャネルと高度なマーケティング戦略を駆使し、顧客のニーズに応え続けています。 近年は少子高齢化やテクノロジーの進化といった環境の変化がありながらも、主要企業は収益性の高いビジネスモデルを追求。今後も業界再編や新規参入、規制緩和などにより、保険業界はさらに活性化し、消費者の期待に応える革新的な商品やサービスが登場する可能性があります。 保険業界の今後の動きに、ぜひ注目しておきましょう! ▼法人営業ハックのその他の業界特集はこちら! 総合商社業界とは?最新の動向から今後の展望まで解説します! 倉庫業界とは?物流の効率化と社会を支える重要な産業を徹底解説! OA機器商社業界とは?注目企業の動向や業界展望まで徹底解説! 通信業界はさらに発展!?現状と動向を解説!売上ランキング15社も紹介! システムインテグレーター業界に注目!全産業DXの担い手を徹底解説 ▼法人営業に役立つハック記事はこちら! BtoB営業のアポ取り成功率アップのコツとは?BtoC営業への活用も! 営業職に資格は必要?営業活動に役立つ資格26選! 【法人営業の業界】転職先としてのおすすめは?経験・未経験別で徹底紹介! 【法人営業のコツ】テレアポ~商談までの5つのコツを押さえて業績を伸ばそう! 法人営業職は未経験も第二新卒も転職できる!志望動機の書き方のコツも解説 ▼BIZMAPSのオリジナルタグを元にした企業特集はこちら! SaaSLOGとは?サービス概要と注目の掲載企業10社を紹介 2022年4月新設法人10選!業界の動向に影響を与えるニュースも紹介無料で使える企業検索サービス
