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出版業界は、紙媒体とデジタル媒体が共存し、デジタルシフトが進行する中で新たな成長モデルを模索する産業です。特に、電子書籍やサブスクリプション型サービスの普及、グローバル市場での展開が、業界の今後を左右する重要なポイントとなっています。企業最大級のプラットフォーム「BIZMAPS」の機能を使い、出版社で調べたところ、4,421社もありました。 現在、出版業界は、伝統的な出版の価値を守りながら、時代に即した変革が求められています。この変革に柔軟かつ即時対応できるか否かが今後の生き残りに関わると言っても過言ではありません。出版業界の特性や構造、主要企業の動向から最新のトレンドまで徹底的に調査しました。出版業界の経営者の方や営業職の方に最適な内容となっています。

出版業界の特性を知ろう

出版業界は、書籍、雑誌、電子書籍、その他印刷物の制作、流通、販売を中心とする産業です。文化や教育の普及、知識の伝達において重要な役割を果たしてきました。近年ではデジタル化の進展や消費者の嗜好変化により、大きな変革期を迎えています。出版業界は、伝統的な紙媒体の出版とデジタル化の進展という2つの潮流の間で変革を続けています。 知識や文化の発信基地としての役割を維持しながら、デジタル時代に適応した新しいビジネスモデルの構築が鍵となります。特に、電子書籍やサブスクリプションモデルの成長を背景に、デジタル技術の活用が不可欠な状況です。

出版業界のバリューチェーン

出版業界のバリューチェーンは、コンテンツの企画から読者への提供に至るまでの一連のプロセスを指します。出版業界が提供する出版物は大きく企画編集、製本、出版、流通、販売というバリューチェーンを持ちます。 出版業界は企画編集・出版業務に注力している業界で、出版物の製本や流通業務については外部化しています。また、編集に関しては、外部企業に委託している場合もあります。 出版業界の提供する出版物は広告媒体としての役割も大きいです。そのため、出版業界は広告代理店やPR会社との関係性も深いのが特徴的です。出版業界が提供する出版物の流通は、出版社、取次、書店の3者の関連性が強く”三位一体”の流通構造を有しています。 中でも、小売に関しては書店だけにとどまらず、コンビニエンスストア、スーパーなどへ多様化する中で、卸売業者=取次の果たす役割は大きいものでした。 近年では、Amazon楽天などのECプレイヤーが台頭し、出版業者と小売業者の直接取引も盛んになってきています。今までは紙媒体の出版物が主流でしたが、近年では電子媒体での書籍や雑誌も増加傾向にあります。このことからも出版業界の流通構造は大きく変化しつつあります。出版業界の参入企業は中小企業から大企業まで幅広く存在しています。

出版業界の取扱商品は?

出版業界の取り扱い商品は、従来の紙媒体(書籍、雑誌、新聞)を中心としながらも、電子書籍やサブスクリプションサービスなどデジタル媒体へ急速にシフトしています。 特に、電子書籍や電子コミック、サブスクリプション型サービスの成長は顕著で、業界の未来を形成する重要な要素となっています。出版業界が提供している取り扱い商品について解説します。

紙媒体の取り扱い商品

出版業界では代表的な紙媒体の取り扱い商品です。
  • 書籍::文字情報を中心とした冊子型商品で、ジャンルや目的に応じて多様な種類があります。主なジャンルとして、小説、エッセイなどの文芸書、料理本、自己啓発書、ビジネス書、趣味関連書籍の実用書、学校教育用や資格試験対策用の教科書・学習参考書、 医学、工学、法学など特定分野に特化した専門書、 幼児向けの視覚的に魅力的な絵本、知識の体系的な整理を提供する図鑑・辞書があります。
  • 雑誌:定期刊行される冊子で、情報提供や娯楽を目的としています。主な種類として、女性向け・男性向け、ライフスタイルやトレンド情報を扱うファッション誌、料理、スポーツ、アウトドア、写真などを扱う情報誌、 漫画や学習を組み合わせた内容の子ども向け雑誌、雑誌の多くは販売収益だけでなく、広告収益も大きな収益源になる広告収入があります。
  • 新聞:日々のニュースや特集を中心とした定期刊行物です。全国紙、地方紙、専門紙(業界紙やビジネス紙)など、多様な種類があります。
  • コミック・マンガ:漫画やグラフィックノベルとして親しまれるイラスト主体の出版物です。国内外で高い人気を誇り、日本の出版業界を代表する商品カテゴリーで、電子書籍化が進んでいる分野です。

デジタル媒体の取り扱い商品

出版業界でデジタル媒体の取扱商品は以下の通りになります。
  • 電子書籍:デジタルフォーマットで提供される書籍で、タブレットやスマートフォンでの閲覧が可能です。短編や自己出版も含め、多様なコンテンツが普及し人気ジャンルは、ライトノベル、マンガ、ビジネス書です。
  • オンライン記事・デジタルマガジン:雑誌や新聞のデジタル版、またはオンライン限定で発行されるコンテンツです。Web版週刊誌、dマガジン(サブスクリプション形式)などがあります。
  • 電子コミック:デジタル形式の漫画作品で、専用の電子書籍プラットフォーム(Kindle、BookLiveなど)で提供しています。紙媒体よりも手軽に購入・閲覧可能で、定額読み放題サービスが拡大しています。
  • 学術論文・専門コンテンツ:大学や研究機関向けのオンライン学術ジャーナルや電子書籍です。学術出版業界がデジタル化を推進し、購読型プラットフォームで提供しています。
  • セルフパブリッシング作品: 個人が直接出版する電子書籍です。出版社を介さないため、コストが抑えられます。プラットフォーム例として、Amazon Kindle Direct Publishing(KDP)などがあります。

その他の商品とサービス

出版業界が提供するその他の商品について解説します。
  • 教育・学習関連商品:書籍に加え、テキストや問題集、参考資料などがあり、紙媒体と電子教材のハイブリッド型が増加しています。
  • オーディオブック:音声で提供される書籍コンテンツです。通勤・通学中に手軽に利用できます。Audible(Amazon)などが代表的なプラットフォームです。
  • サブスクリプション型サービス:電子書籍やデジタルマガジンを定額で利用可能です。Kindle Unlimited、dマガジン、楽天マガジンなどがあります。

出版業界が扱うサービスを紹介します

出版業界のサービスは、販売・配信、マーケティング、教育支援など多岐にわたります。デジタル化や消費者ニーズの変化に伴い、電子書籍配信やサブスクリプションサービス、オーディオブックなどの新しい形態のサービスが増加しています。 今後も、デジタル技術を活用した新たなサービスの開発が重要になります。出版業界が扱うサービスを解説していきます。

出版物の販売・配信サービス

出版業界では出版物の販売や配信サービスを提供しています。
  • 書籍・雑誌の販売:書籍や雑誌を販売するサービスで、伝統的な紙媒体の販売が中心となります。販売チャネルは、書店、コンビニエンスストア、オンラインストアです。
  • 電子書籍配信サービス:電子書籍や電子コミックをオンラインで販売・配信しています。購入型とサブスクリプション型の両方が存在し、専用のリーダーアプリやデバイスで閲覧可能です。
  • 直販サービス:出版社が直接読者に商品を販売します。オンラインショップを通じた直販が拡大しています。限定版や特典付き商品を販売するケースもあります。

サブスクリプションサービス

出版業界が提供するサブスクリプションサービスについて解説します。
  • 電子書籍の定額読み放題サービス:月額料金で電子書籍や電子雑誌を読み放題で提供しています。コストパフォーマンスが高く、利用者が増加中な項目です。
  • デジタルマガジン配信サービス:雑誌のデジタル版を提供するサービスです。紙媒体の雑誌をスマホやタブレットで閲覧可能とし、配信プラットフォームが収益を分配しています。

コンテンツ制作・配信サービス

出版業界が提供するコンテンツ制作や配信サービスについて紹介します。
  • オンデマンド出版:注文が入った時点で印刷・製本を行うサービスで、在庫リスクを抑えられます。個人出版やニッチな需要に対応しています。
  • セルフパブリッシング支援:個人が直接書籍や電子書籍を出版するサービスです。著者が自由に出版・販売でき、出版者が印税や収益を得やすいのが特徴的です。
  • オーディオブック制作・配信:書籍を音声化し、消費者に提供しています。忙しい人でも「聴く読書」を可能とし、通勤・通学中の利用が増加しています。

マーケティング・プロモーションサービス

出版業界が提供するマーケティング・プロモーションサービスは以下の通りです。
  • 広告掲載サービス:雑誌や書籍内に広告を掲載するサービスです。雑誌の重要な収益源で、広告主にとってターゲット層への直接アプローチが可能となります。
  • インフルエンサー活用プロモーション:インフルエンサーやSNSを活用した宣伝活動です。読者層に直接リーチする効果的な手法です。
  • イベント・キャンペーンの開催:出版物や著者をPRするためのイベントやキャンペーンです。書店でのサイン会やオンライン配信が主流です。

教育・学術向けサービス

出版業界が提供する教育・学術向けサービスについて解説します。
  • 学術出版サービス:研究論文や専門書の出版です。大学や研究機関向けの専門書籍が中心となります。
  • 教育コンテンツ配信:教材や学習コンテンツをオンラインで提供しています。電子教科書や問題集のデジタル配信が増加しています。
  • ライセンス販売:出版物のコンテンツを他社にライセンス提供しています。マンガや書籍の翻訳・映画化権の販売が主です。

読者向けサービス

出版業界が提供する読者向けサービスは以下の通りです。
  • 読書サポートアプリ:読書体験を向上させるアプリです。読書履歴や感想共有、読書会の機能を提供します。
  • 定期購読サービス:雑誌や新聞の定期購読を管理するサービスです。新刊を定期的に自動で届けます。

物流・流通関連サービス

出版業界は書籍の出版だけではなく、物流や流通に関連するサービスも提供しています。
  • 配送サービス:書籍や雑誌を店舗や読者に届けます。取次業者(日販、トーハン)を通じた物流が主です。
  • 返品管理サービス:書籍や雑誌の返品を効率的に処理するサービスです。抱えている課題としては、高い返品率の削減になります。

出版業界のビジネスモデルを解説します

出版業界の収入源は、コンテンツ販売収入と広告収入の2つに分かれます。どちらの収入パターンでも、コンテンツの質に左右されるため、重要なのは出版する企画内容や、それを実現する優秀な人材を採用することです。広告収入については、企業の業績により増減するため、社会の景気と連動性が高い点も特徴的です。 特に、広告収入比率が高い雑誌を扱う出版社については景気による影響も強く受けることになります。広告収入も事業者の主な収益源となっていることから、新規参入の難易度は高い業界と言えます。一定量の広告量を保つためには、多くの企業とのネットワークが必須となります。 そのため、にわかに構築できるものでもないことから新規参入の壁は高いです。出版業界全体として、「出版不足」といわれる状況であることから、旧来の紙ベースの出版業界参入の魅力は高いとは言えません。 出版物に代替するサービスも多く、普及が進む電子書籍や、ネットを使った情報収集の増加などが高まり、紙媒体である雑誌や書籍の需要が少なくなってきています。このことから出版業界が非常に厳しい状況にあるため、比例して競争状況も厳しく、分野によっては廃刊も相次いでいます。 近年は出版業者の売り手にあたるAmazonや楽天などのEC事業者の展開強化もあり、売り手の交渉力は強くなっています。

出版業界の主要企業の財務指標を分析

出版業界の主要企業の財務指標を分析するにあたり、出版・デジタルコンテンツを提供するKADOKAWA、フリーペーパーのSuccess Holders(旧:ぱど)、インプレスホールディングスを取り上げます。 収益性については、KADOKAWA、インプレスホールディングスの営業利益率が2-10%と近年改善傾向であるのに対し、Success Holdersは営業損失が続いています。対策として、コロナ禍によるフリーペーパーの需要減少や子会社の譲渡などで収益性を低下させ、事業の構造改革を行っています。 重版や増版、シリーズものなど企画がヒットすると1作品あたりの広告宣伝費や各種経費を減らすことができ、効率的に利益を稼ぐことができるのが出版業界のビジネスモデルです。安全性については、商品在庫を多く抱え、流動資産の比率が高く、自己資本比率は、50-80%台で安定的に推移しています。

出版業界の最新トレンド

出版業界は、デジタル化や消費者ニーズの多様化、技術革新により急速に変化しています。紙媒体中心の市場から、電子書籍やサブスクリプションサービス、セルフパブリッシングなど、新しいビジネスモデルやサービスが登場しています。 出版業界の最新のトレンドを知ることは新しいビジネスモデル構築やサービス提供のチャンスを掴むことにもつながります。特に出版業界の経営者の方には得てほしい情報です。

デジタル化の加速

出版業界は主流だった紙媒体の提供からデジタル化へ加速的に乗り出しています。
  • 電子書籍市場の拡大:紙媒体の売上が減少する中、電子書籍市場は拡大を続けています。特に人気のジャンル: マンガ、ライトノベル、ビジネス書、手軽に購入・閲覧できる利便性が高評価を得ています。
  • 電子コミックの急成長:電子コミックが電子書籍市場の中で圧倒的なシェアを占めています。スマートフォン対応プラットフォーム(LINEマンガ、BookLiveなど)が普及し、サブスクリプション型サービスや読み放題プランが人気です。
  • オーディオブックの普及:忙しい現代人に適した「聴く読書」として人気が拡大しています。主要プラットフォームはAudible(Amazon)、audiobook.jpになり、通勤や家事中の「ながら消費」をターゲットにした市場となります。

サブスクリプション型サービスの普及

出版業界では、サブスクリプション型のサービスの普及が拡大しています。
  • 電子書籍・雑誌の読み放題サービス:Kindle Unlimited、dマガジン、楽天マガジンなどの定額サービスが成長しています。多数のコンテンツを低コストで楽しめるため、利用者が増加しています。
  • 特化型サブスクリプション:特定ジャンルに特化したサービスが登場しました。マンガ特化型読み放題サービス、専門書向けプラットフォームなどがあります。
  • バンドル型サービス:動画配信や音楽ストリーミングと組み合わせたサービスが人気です。

セルフパブリッシングの拡大

出版業界ではセルフパブリッシングが拡大しています。
  • 個人出版の増加:Amazon Kindle Direct Publishing(KDP)などを利用した個人著者が増加しています。出版社を通さないセルフパブリッシングが一般化し、著者が直接収益を得るビジネスモデルができています。
  • クリエイター支援プラットフォーム:BOOTH、pixivFANBOXなど、クリエイターが直接作品を販売・収益化できるプラットフォームが普及しています。

マーケティングの進化

出版業界のマーケティングは日々進化しています。
  • SNSマーケティングの活用:TwitterやInstagram、TikTokを活用した宣伝活動が主流になり、特に若年層向けのマンガやライトノベルが効果を発揮しています。ハッシュタグキャンペーンや読者レビューのシェアが増加しています。
  • インフルエンサーマーケティング:読書好きのインフルエンサーやブック系YouTuberによるレビューが拡大しています。
  • データ活用型マーケティング:電子書籍プラットフォームが収集したデータを活用し、読者の嗜好に合わせたプロモーションを実施しています。パーソナライズされたおすすめ機能の提供などがあります。

グローバル展開の強化

出版業界ではグローバル展開の強化に乗り出しています。
  • 日本のマンガの海外展開:日本のマンガが電子書籍として海外市場で急成長しています。配信プラットフォーム: MANGA Plus(集英社)、Crunchyroll Mangaなど、ローカライズと翻訳の迅速化が成功要因です。
  • ライトノベルの海外人気:ライトノベルやWeb小説が英語圏やアジア市場で拡大しています。
  • 国際共同出版:海外出版社と連携した共同出版や同時配信が増加しています。

コンテンツ形式の多様化

出版業界ではコンテンツ形式の多様化を進めています。
  • マルチフォーマット出版:1つの作品を紙媒体、電子書籍、オーディオブックの複数形式で展開しています。読者の嗜好や状況に合わせた情報を提供しています。
  • 没入型コンテンツ:VR/AR技術を活用した新しい読書体験が実現しています。例としてインタラクティブなストーリーブックなどがあります。
  • 短編コンテンツの人気:短いストーリーやエピソード単位での販売が増加し、特にスマホユーザーに人気です。

サステナビリティへの対応

出版業界は、サステナビリティへの対応にも力を入れています。
  • 環境配慮型出版:環境に優しい紙やインクの使用、デジタル出版への移行が主流となってきています。これにより、紙媒体の製造・流通の環境負荷を低減します。
  • 電子書籍の推進:環境に優しい出版形態として、電子書籍の普及が一層進んでいます。

物流と流通の変革

出版業界は出版の分野だけではなく、商品を届けるための物流や流通に関しても日々変革を進めています。
  • オンライン直販の増加:出版社が直接オンライン販売を強化しています。限定版や特典付き商品を販売し、書店を介さないモデルが拡大しています。
  • 返品率削減への取り組み:在庫管理の効率化や、オンデマンド出版(POD: Print On Demand)の導入が進んでいます。

出版業界におけるAIの活用

出版業界では、AIを取り入れることにより業務効率などを目指しています。
  • AIによる執筆支援:ChatGPTなどの生成AIを活用した執筆や編集支援ツールが登場しています。
  • AIによる翻訳:自動翻訳ツールの進化により、多言語出版のスピードが向上しています。
  • 読者分析:AIが読者の嗜好や行動パターンを分析し、ターゲティング広告やおすすめ機能に活用しています。

出版業界の市場規模

出版業界の市場規模を調べるために、出版科学研究所の調査結果を参考にします。書籍・雑誌の推定販売金額は、2022年の紙の出版物市場が1兆1,290億円となっています。長期的に見て紙の出版物市場は縮小していますが、今後も続いて縮小傾向が進むと思われます。 中でも、週刊誌・月刊誌を中心とする紙媒体の雑誌は販売不振が続いています。これには、近年の広告メディアがインターネットなどのデジタル広告にシフトしていることが要因です。 紙媒体への広告出稿が減少し、紙媒体の雑誌が廃刊となることも続いています。全体的に紙媒体への広告出稿は減少しています。その一方で電子書籍は急激に拡大しています。電子書籍市場は、2022年には市場規模が前年比8%増の5,013億円となりました。 電子書籍市場は、読み放題のサービスやマンガアプリなど、多様なサービスが展開され、競争が激化しています。 また、新型コロナウイルスの影響により、外出自粛が続き、自宅で楽しめるデジタルコンテンツのニーズが高まりました。これにより、電子書籍の利用が拡大しました。出版業界全体で見ると、2014年以降一貫して市場は縮小してきましたが、2019年以降は紙の出版物の落ち込み分を電子書籍の増加分が上回るようになり、市場は拡大傾向にあります。 2022年は紙媒体の落ち込みが大きく微減となり、この傾向は当面続くと思われます。

出版業界のマクロ環境を解説します

出版業界は、これまで解説してきた内容から結果として、比較的厳しい環境下にあると言えます。従来のレガシーな出版業界に対しては向かい風と言えます。 出版業界の主要な収入源は広告ですが、雑誌などの出版物に掲載するのではなく、ターゲットに対して適切にリーチできるネット広告の方に魅力を感じる企業も出始めています。出版業界の商品購買チャネルについてもECの比率が高まっています。 そのため、広告面から見てもこれまでの出版物の魅力が落ちており、コンテンツ自体も読まれなくなってきています。この背景には、スマートフォンなどのデバイスが普及し、消費者の情報源が出版物ではなく、ネットになっていることが背景にあります。 出版業界を取り巻く環境は大きく変容。広告媒体として、またコンテンツとしても相対的な魅力度が徐々に下がっている状況にある。このことから、活字離れやSNSへの娯楽の移行など出版業界には向かい風要因が続いています。 書籍の電子化が進んでおり、レガシーな出版業界には、厳しい状況です。そのため、出版業界は新たな試みとして、2019年からAmazonは書籍の買い切りを試験的に始めました。 これは従来の書店の売れ残った本を出版社に返品できる委託販売です。日本の返品率は約30%と高く、出版社の収益を圧迫してきました。Amazonが売れ残りのリスクを抱える代わりに、売れない本を値下げするビジネスモデルを構成しています。

出版業界の業界地図を広げます

出版業界への参入プレイヤーは、雑誌、書籍関連では「総合出版社」と、それ以外の専門出版社に分かれます。また、新聞やフリーペーパー関連では、それぞれ専門プレイヤーが存在しています。 総合出版社の代表例は、ドワンゴとの経営統合の後に誕生した「KADOKAWA」や週刊少年マガジンで有名な「講談社」、雑誌サライの「小学館」、週刊少年ジャンプの「集英社」などがメインプレイヤーです。 専門出版社についてはいくつかの分類に分かれ、経済コンテンツに強い日経BPダイヤモンド社東洋経済新報社、理工系コンテンツに強いインプレスホールディングス、学習参考書の学研ホールディングス文溪堂旺文社、文芸の新潮社文藝春秋宝島社、地図のゼンリン昭文社があります。どの企業も業界独自の調査力やコンテンツ企画力を保有しています。 フリーペーパー出版社として、業界内で発行部数が1位、2位のぱど(現:Success Holders)とサンケイリビング新聞社RIZAPグループが買収しています。しかし、2019年11月にRIZAPグループは経営再建の一環としてぱど(現:Success Holders)を売却しています。

出版業界の主要プレイヤーの動向

出版業界は、日本国内で多くの大手出版社や特定分野に特化した中小出版社が活動しており、書籍、雑誌、電子書籍、学術書、教育出版など、多岐にわたる分野で競争を繰り広げています。 出版業界の主要企業の動向は、今後の出版企業の展望にもつながります。特に出版業界の経営者の方や、営業職の方には動向が最重要な情報にもなります。以下に、出版業界を代表する主要企業を解説します。

KADOKAWA株式会社

KADOKAWAは、日本を代表する総合エンターテインメント企業であり、出版を中心に映像、アニメ、ゲーム、電子書籍、イベント事業など多岐にわたるコンテンツを展開しています。特にマンガやライトノベルの分野では国内外で高い評価を得ています。1954年設立の角川書店と動画投稿サイト運営のドワンゴが2014年に経営統合し設立されました。 2022年3月期の売上高構成比は、出版53%、映像16%、ゲーム12%、Webサービス8%、教育他12%となっています。2013年に角川書店、角川マガジンズ、富士見書房、アスキー・メディアワークス、エンターブレイン、中経出版、メディアファクトリー他、連結子会社9社とKADOKAWAが合併しています。 ドワンゴが運営する動画投稿プラットフォーム「ニコニコ動画」は2007年にサービス開始し、2010年代前半には日本のネット文化の発信地として根強い支持を得ました。投稿者が生中継をおこなう「ニコ生」は、手軽にコンテンツを提供できる場となり、ニコニコ動画は2016年時点で有料会員数が約256万人となりました。 2017年の仕様変更で利用者が急減して大幅な赤字となり、2019年に社長の川上氏が辞任する事態となりました。 2022年度から始まった中期経営計画では、基本方針に「グローバル・メディアミックス with Technology」を掲げ、「制作」「流通」「体験」の各側面において事業強化を推進しています。従業員一人ひとりのクリエイティビティをより発揮しやすい環境づくりや制度改革を行うことでイノベーションの促進に取り組んでいます。 また、従来取り組んできた優れたIP(IntellectualProperty)を安定的に創出し、様々な形で世界に届けるグローバル・メディアミックスをさらに加速させることを目標としています。

株式会社プロトコーポレーション

プロトコーポレーションは、主に自動車関連情報サービスを提供する企業で、自動車業界向けの情報媒体やデジタルプラットフォームを中心に事業を展開しています。また、医療や生活関連分野にも進出し、多様なサービスを展開する総合情報企業として成長を続けています。 2022年度の売上構成比は、プラットフォーム(メディア・サービス)28%、コマース(物品販売等)64%、その他が8%となっています。 M&Aや再編に積極的に乗り出している企業です。2012年には中古車販売店キングスオート、2013年には輸入タイヤ・ホイール通販のオートウェイを買収、2015年4月にはタイヤワールド館ベストを子会社化し、コンテンツに加えて販売事業の強化もおこなってきました。事業の核となるのは、IT事業です。 IT事業に関しては、カービューやヤフーカカクコムLINEなどとの業務提携をおこない、2016年10月には子会社であるプロトデータセンターとアイソリューションズを合併し経営の効率化を図っています。 2016年9月からはソフトバンクロボティクスが提供する「Pepper」を活用したロボ査定の提供を開始し、新車ディーラー及び中古車販売店にPepperの販売もおこなうことで、販売店の支援事業も強化しています。 2018年3月からはバイク専用SNS「モトクル」のアプリケーションを提供しました。2019年4月にはベンチャーキャピタルの「プロトベンチャーズ」を設立し、自動車関連のAI・IT分野を手掛ける東南アジアのベンチャー企業への投資強化を図っています。 主要商品である情報誌「グー」は、今後印刷用紙の価格変動などのリスクに備え、電子メディア化を進めていく方針を固めています。

出版業界の今後の展望は?

出版業界だけにとどまらず多くの業界に影響を及ぼした新型コロナウイルスについて解説していきます。新型コロナウイルスの影響により、緊急事態宣言が発令されました。出版業界は多くのイベントや企画事、出版するための編集作業に追われる業界です。 新型コロナウイルスにより、企画が中止になり、編集内容の変更に迫られるだけではなく、定期的に発行されている雑誌そのものの発売を延期する事態に追われました。 その一方で、外出自粛による巣ごもりで、紙媒体ではなく、電子出版の売上が伸長しています。出版市場では、2019年より3年連続で前年を上回る販売額を記録しています。 そのため、出版業界の企業によっては、巣ごもり需要にターゲットを移し、マンガを無料で公開したり、小・中・高校生の自宅学習支援のため、様々な参考書や教材を無料で公開したりするなどピンチをチャンスに変えるための取り組みを見せました。

新しい媒体に沿ったコンテンツ創造が鍵

出版業界の今後の展望は、新たな媒体にシフトしていくことが鍵と考えられます。実際に、消費者の情報源がスマートフォン普及に伴い、インターネットが主流になってきています。 今後もさらにスマートフォンへの移行が続くと思われます。それに伴い、紙媒体の書籍や雑誌の情報価値が低下しています。結果、従来の出版業界の市場が縮小していくことは確実です。 市場が縮小することで拡大するのが予想されるのが、取次業者の中抜きの進展、電子出版の更なる拡大です。Amazonが書籍の買取の実現化を進めていますが、これにより出版社の収益性が上がり、取次業者はますます苦しい状況になることが伺えます。また、制作側も変化する可能性がある技術として人工知能・ITがあります。 人工知能が小説を書くレベルまで編集技術は進歩しており、編集・制作業務の半自動化、またそれにともなう商品ライフサイクルの短縮化は継続的に起こっていくことが予測できます。 こうした媒体やデリバリー形態のシフトに応じて、読者を集められる最適なコンテンツを企画・制作できるプレイヤーが生き残っていくと考えられます。その際に、ITの活用などを通じて労働集約的なプロセスをいかに効率化させることができるかも事業の収益性を決定づける重要な論点となります。

出版業界は新しい媒体にシフトすることで発展します

出版業界は、デジタル化や消費者行動の変化を背景に進化を続けています。特に、電子書籍の拡大、サブスクリプション型モデルの普及、グローバル市場への進出が成長の鍵となります。また、紙媒体も環境配慮や特別版の制作などで再評価される可能性があります。 これらのトレンドに柔軟に対応できる企業が、次の時代をリードします。しかし、柔軟に対応するには、常に最新の情報を手にしなければなりません。 最大規模の企業プラットフォーム「BIZMAPS」では、月額無料で100件もの企業情報をダウンロードすることができます。出版業界の各企業の情報をいち早く得られるだけではなく、タグ検索機能により自分の欲しい情報にいち早くたどり着くことができます。 出版業界の経営者の方はもちろん、営業職の方にも心強い味方になること間違いありません。ぜひ、利用してみてください! ▼その他の特集記事はこちらから! マスコミ・出版業界の仕事内容とは?業界で活躍する上位10社を紹介! 【大手出版会社一覧】業界の動向も合わせて解説 エンターテインメント業界の最新の動向から導き出す今後の展望は? 紙・パルプ卸業界の最新動向!ペーパーレス時代における業界の展望は 広告業界を徹底解説!市場規模や最新動向、売上ランキング上位の主要企業一覧も 出版業界とは?今後の展望を見据え業界内容を徹底的に解説します!

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