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<h2>コンテンツ制作業界のバリューチェーン
コンテンツ制作業界は、知的財産(IP)やアーティストなどの人材を活用したコンテンツの企画・制作を主な業務とする業界です。 バリューチェーンを見てみると、音楽制作においては芸能プロダクションからアーティスト、音楽出版社から楽曲などを手配し、音楽レコードの企画・制作を実施。そして「Spotify」などのオンライン配信チャネルや、地上波放送などの放送メディア、CDショップにコンテンツを流通させます。 主要なレコード会社として挙げられるのは、エイベックスやソニー・ミュージックエンタテインメント、日本コロムビアなどです。 番組・CM制作においては、テレビ局や広告代理店の編成方針に基づき、芸能プロダクションからタレントなどを手配して番組・CMの企画・制作し、「Hulu」などのオンラインメディアや地上波などの放送メディア、DVDショップに流通させます。 代表的な番組・CM制作会社は、東北新社、IMAGICA GROUP(旧イマジカ・ロボット・ホールディングス)などです。 アニメ制作においては、芸能プロダクションから声優、IP保有会社からキャラクターの知的財産(IP)などを手配して、アニメを企画・制作。オンラインメディアや放送メディア、DVDショップに流通させます。主要なアニメ制作会社としては、東映アニメーション、IGポート、バンダイナムコフィルムワークス(旧サンライズ)などがあります。 一般的には、アニメ制作会社やテレビ局、広告代理店などがパートナーシップを組んで共同で出資して「製作委員会」という形で企画を担当し、版権を保有する形です。制作については、元請けの制作会社と下請けの制作会社が担います。 映画制作においては、芸能プロダクションから俳優、レコード会社から楽曲などを手配し、映画の企画・制作をおこない、オンラインメディアや放送メディア、DVDショップ、映画館に流通させます。主要な映画制作会社は、東宝、東映、松竹などです。アニメ制作と同様に、企画は「製作委員会」が担い、版権を保有します。
目次
コンテンツ制作業界の取り扱い商品・サービスの特徴
コンテンツ商品の分類については、総務省の情報通信政策研究所が実施した「メディア・ソフトの制作及び流通の実態に関する調査研究」を参照します。 「コンテンツ」は非常に幅広い概念ですが、形態別に見ると「映像コンテンツ」「音楽・音声コンテンツ」「テキストコンテンツ」の3つに分類されます。- 映像コンテンツ:映画、ビデオ・DVD、テレビ番組、ゲーム、インターネット配信向けに制作されたネットオリジナルコンテンツ
- 音楽・音声コンテンツ:音楽、ラジオ番組、ネットオリジナルコンテンツ
- テキストコンテンツ:新聞、コミック、雑誌、書籍、通信回線を通じて提供されるデータベース、ネットオリジナルコンテンツ
コンテンツ制作業界のビジネスモデル
コンテンツ制作業界は今後大きな成長が見込めないため、成熟した業界です。また、コンテンツの質はアーティストや技術者といった人材に大きく左右されるため、労働集約型産業とも言えるでしょう。 コンテンツ制作においては、費用負担が大きく、コンテンツがヒットしなければ投資の回収が難しいですが、ヒットした場合のリターンは大きく、ハイリスク・ハイリターンのビジネスです。収益を多角化してリスクをできる限り分散させるためには、コンテンツの二次利用(想定していた主要メディアと異なるメディアでのコンテンツ流通)の促進が鍵となります。 近年は、劇場やテレビからゲームや漫画などへの展開も増えています。ただし一次利用でヒットしなかった場合、二次利用も厳しくなるため、ヒット作品の創出はコンテンツ制作会社にとって変わらぬ命題です。 業界構造を見ると、音楽制作では大手のシェアが高く、上位寡占が進んでいる状況です。映画・アニメ制作でも大手が人気コンテンツを有していますが、中小の制作会社でも高いプレゼンスを持つ企業が存在します。 音楽制作では新規参入が少なく、脅威はあまり見られません。映画・アニメ制作では、大手プロダクションから独立して映画・アニメ制作会社を立ち上げることが多いため、一定の新規参入があります。有名なプロデューサーが立ち上げた会社は、既存企業にとって脅威となるでしょう。 代替品としては、時間の消費を競い合うという意味で、ゲームや雑誌などのテキストコンテンツがあります。スマートフォンやタブレットの普及により、スマホゲームの利用者が増加し、映画やアニメ、音楽に費やされていた余暇時間が奪われている状況です。書籍や雑誌の売上は減少しているため、現在ではあまり深刻な脅威とはなっていません。 買い手としては、オンラインメディア・放送メディア、量販チャネルと、その先にいる個人消費者が考えられます。オンラインメディア・放送メディアは視聴率の上昇やユーザーの確保のために人気のあるコンテンツを必要としており、コンテンツ制作会社の交渉力は強いです。 一方、個人は「モノ消費(所有のための消費)」から「コト消費(体験のための消費)」に移行。ライブや映画鑑賞のニーズは高まっていますが、選択肢が増加しているため供給側の交渉力は強いとは言えません。 クリエイター・アーティストを売り手とみた場合、コンテンツ制作業界では人材不足、特に3DCG技術など専門的な知識を有する人材不足が問題となっており、人材獲得競争が激化しています。そのため、コンテンツ制作会社の交渉力には課題があると言えるでしょう。KFSはアーティストやクリエイターの獲得と育成
コンテンツ制作業界の市場規模・トレンド
市場規模やトレンドについては、日本レコード協会の「日本レコード産業」やコンサートプロモーターズ協会のウェブサイト、日本動画協会の「アニメ産業レポート」、日本映画製作者連盟のウェブサイトを参照します。 レコード生産や有料音楽配信の動向を金額ベースで見ると、オーディオレコードや音楽ビデオが長期的に減少傾向にある一方、有料音楽配信は近年増加しており、全体の市場規模としては横ばいで推移していました。 しかし、コロナ禍で2020年は前年比9%減となり市場規模が縮小しましたが、2021年は微増にとどまっています。そして2023年には有料音楽配信が好調だったため、3,373億円に達し、コロナ禍前の水準を上回りました。 数量ベースで見ると市場規模は減少傾向が続き、単価が上昇していることが分かります。これは、音楽データを受信しながら再生するストリーミングが市場を牽引し、高価格帯での利用が広がったことが要因でしょう。 Spotifyなどのユーザーの増加に伴い、同サービスの広告収入も増加しました。さらに、Prime Musicなどのサブスクリプション型音楽配信サービス(定額制の音楽聴き放題サービス)が次々にリリースされ人気となっており、1ダウンロード当たりの単価も上昇しています。 音楽を中心としたライブ・エンタテインメントを主催するコンサートプロモーターズ協会の正会員の事業規模動向を見ると、コロナ禍前までは市場規模は拡大傾向にありましたが、コロナ禍により急激に縮小しました。 2019年には年間売上高が3,665億円、年間入場者数は4,955万人でしたが、2020年は1/5に激減。2021年は、多少回復するもコロナ禍前の水準の半分弱でした。消費者のニーズが「コト消費」に移行し、ライブ人気が高まっていましたが、コロナ禍で開催中止や延期が相次ぎ、また収容人数の制限などの規制も加わり、業界全体が大きなダメージを受けました。 しかし、コロナ禍が明けた近年では反動で大幅に増加し、年間売上高は過去最高となっています。アニメ分野も増加傾向
コンテンツ制作業界を取り巻く環境
日本の消費社会が成熟し、モノがあふれている現代では、消費者のニーズが「モノ消費(所有のための消費)」から「コト消費(体験のための消費)」に移行しています。 そうした流れの中で、音楽ライブや2.5次元ミュージカル(2次元で描かれたアニメなどを原作とする3次元の舞台コンテンツ)、映画、特に座席が動いたり風を吹き付けたりするなど、臨場感を高めた「4Dシアター」が人気です。 サーバーサービスなどの情報通信技術の発達やスマートフォン・タブレット端末の普及、Amazonプライム会員ユーザーの増加により、オンライン音楽・動画配信サービスが普及し人気を博しています。それに伴い、CDやDVDを購入する消費者が減少し、レコード会社や映像制作会社はビジネスモデルの転換を本格的に迫られている状況です。 また、3DCG技術やVFX技術などの映像制作技術が発達し、そのような技術を採用した映画やアニメが増加。その結果、映像制作に必要な技術が高度化し、一部の技術者の獲得競争とともに人材不足の問題が生じています。 また、高度な映像制作技術の活用は制作費の高騰とアニメ制作会社・映画制作会社の収益圧迫を意味し、このリスクを回避するために、制作費を複数の会社で分担する製作委員会方式が発達・普及しました。コンテンツの選択肢が増えている
そのほか、近年ではYouTubeなどの動画投稿サイトで一般人がクリエイターとしてコンテンツを生み出すことが増えており、消費者がさまざまなコンテンツの選択肢を持つようになっています。 このような個人によるコンテンツ制作の流れは、既存のコンテンツ制作事業者にとってプレッシャーになると予測され、実際に2018年に住友商事がユーチューバーと広告主の仲介をする事業を始めるといった事例も出てきている状況です。 また、2020年の新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて映画やアニメなどのコンテンツ制作に遅れが生じている中、多くの芸能人やアーティストがYouTubeなどの動画サイトへ投稿を始めており、個人のコンテンツ制作の流れが加速する可能性もあります。コンテンツ制作業界の主要プレイヤーの動向
コンテンツ制作業界の今後の展望
今後のコンテンツ制作業界の市場規模は、新型コロナウイルスの影響を除けば、海外での需要の高まりなどを背景に堅調に推移すると予測されます。 コンテンツ制作業界は労働集約型産業であり、3DCGなど専門的なスキルを有する技術者が必要ですが、人材不足や人材の定着が問題となっています。コンテンツ制作業界は伝統的に長時間労働が蔓延しており、労働環境が非常に過酷であるため、人材が定着せず、常に人材不足が深刻です。 政府による「働き方改革」が実行され、長時間労働などの是正が進められており、今後はコンテンツ制作業界でも人材確保に向けた労働環境の改善が徐々に進むでしょう。 コンテンツ制作業界では、コンテンツがヒットするかどうかが最も重要であり、人気のあるコンテンツを生み出すためには有能なアーティスト・クリエイターの確保が求められます。 一方で、個人のヘッドハンティングよりも、現在機能しているチームをそのまま囲い込みたいという要望も強く、こうした人材やチームの獲得を目的としたM&Aが増加するでしょう。 若年人口の減少などを背景に、日本の消費市場は成熟化し、国内のコンテンツ制作業界の市場規模は縮小していく可能性が高いです。ただし、アニメなどの日本のコンテンツは海外でも人気があり、政府も「クールジャパン戦略」でコンテンツの海外展開を支援しています。そのため、今後はコンテンツの海外展開がさらに本格化するでしょう。 東映アニメーションは「ドラゴンボール」や「ワンピース」などの海外展開を積極的におこない、大幅な増収につなげています。ほかの企業もコンテンツの海外展開に注力すると考えられます。コンテンツ制作業界の今後の展開に注目
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