ネット広告業界は、インターネットを介して商品やサービスを広告するビジネスを支える企業群で構成される業界です。広告主が消費者に効果的にリーチし、購買行動やブランド認知を促進するための広告を提供しています。 デジタル技術の進化やインターネット利用の普及により、広告業界の中でも特に急成長を遂げている分野です。最大規模の企業プラットフォーム「BIZMAPS」でネット広告業界に携わる企業を調べてみました。 インターネット広告代理店が2,625社、Web広告運用コンサルティングが1,070社と非常に多くの企業が活躍しています。ネット広告業界を細かく解説するとともに、最新のトレンドや主要企業の動向を踏まえ、ネット広告業界の今後の展望を解説します。

ネット広告業界の特性は？

ネット広告業界は、テクノロジーとデータ活用を基盤に、消費者行動に迅速に対応する柔軟性が特徴です。多様な広告フォーマットや精密なターゲティングが成長を支えています。 一方で、個人情報保護や広告詐欺といった課題にも直面しており、これらへの対応が持続的成長の鍵となります。今後、AI活用、動画広告の拡大、データ規制への対応が、業界の重要なトレンドとして進展していくでしょう。

ネット広告業界のバリューチェーン

ネット広告業界のバリューチェーンは、広告主から消費者に広告メッセージが届けられるまでのプロセスを指し、多様なプレイヤーやプロセスが絡み合っています。ネット広告業界の主な構造としては、広告主、広告代理店、広告プラットフォーム・配信ネットワーク、メディア・パブリッシャー、消費者の6つに構造が分かれています。

• 広告主：広告キャンペーンを立案・実行するために予算を拠出する主体です。
• 広告代理店：広告主とメディアや配信プラットフォームを仲介し、広告キャンペーンを設計・運営しています。
• 広告プラットフォーム・配信ネットワーク：広告の配信を自動的に行い、適切な広告を適切なタイミングで適切なユーザーに届けます。
• メディア・パブリッシャー：広告を表示する場（媒体）を提供しています。
• 消費者：広告を閲覧し、商品やサービスに対する購買行動や関心を示すターゲットです。

ネット広告業界のバリューチェーンは、広告主から消費者までを結ぶ複雑なプロセスで構成されています。特に、データ活用、AI、自動化技術の進化が業界の効率性を向上させる一方で、個人情報保護やクッキーレス対応といった課題も存在します。 今後、テクノロジー革新、消費者との信頼関係構築、広告詐欺防止が、バリューチェーン全体の競争力を高める重要な要素となります。

ネット広告業界の取扱商品

ネット広告業界は、検索連動型広告、ディスプレイ広告、動画広告、ソーシャルメディア広告など多様な商品を取り扱い、広告主の目的に合わせた最適なプロモーション手段を提供しています。近年では、プログラマティック広告やデータドリブン型のターゲティング広告が主流となり、AIや機械学習を活用した高度な配信技術が競争力の鍵となっています。 また、ショッパブル広告やサステナブル広告など、消費者や社会のニーズに応じた新しい広告商品が急速に拡大しています。ネット広告業界の取り扱い商品について紹介します。

広告フォーマット別の商品

ネット広告業界の広告フォーマットおよび別の商品について解説します。

• ディスプレイ広告：ウェブサイトやアプリ内に表示される画像やバナー広告です。種類として、静止画像広告、アニメーション広告、リッチメディア広告などがあり、ブランド認知に長け視覚的訴求が強い傾向にあります。
• 動画広告：動画プラットフォームやウェブサイト内で再生される広告です。種類として、インストリーム広告、アウトストリーム広告などがあり、消費者の視覚と聴覚を活用した高い訴求力を持ってストーリーテリングを活かしたブランド構築を可能とします。
• 検索連動型広告（リスティング広告）：検索エンジンの検索結果ページに表示される広告で、ユーザーの検索キーワードに基づいて表示されるため、高い関連性を持つという特徴があります。費用対効果（ROI）が高いのも特徴的です。
• ソーシャルメディア広告：Facebook、Instagram、Twitter、TikTokなどのプラットフォーム上で配信される広告です。フィード広告、ストーリーズ広告、リール・ショート動画広告などがあり、高いターゲティング精度（年齢、性別、興味・関心、行動履歴）とインフルエンサーマーケティングとの相性が良いという特徴を持ちます。
• ネイティブ広告：サイトのデザインやコンテンツに溶け込む形で表示される広告です。自然な形でユーザーに情報を届け、広告への抵抗感を減少させます。
• アフィリエイト広告：成果報酬型の広告モデルで、リンク経由で購入や登録が発生した場合に報酬が発生します。初期費用が抑えられるため、中小企業にも適しており、高いコンバージョン効果を期待できます。

配信モデル別の商品

ネット広告業界の配信モデル別の商品を紹介します。

• プログラマティック広告：AIやアルゴリズムを用いて、広告枠の購入・配信を自動化します。種類として、DSP（Demand-Side Platform）、SSP（Supply-Side Platform）などがあります。広告配信の効率性が高く、ターゲティング精度が向上する特徴を持ちます。
• コンテンツ連動型広告：ウェブサイトやアプリの内容に基づいて表示される広告です。例としてニュース記事の内容に合わせた商品広告などがあります。
• リターゲティング広告：過去にサイトを訪問したユーザーをターゲットに広告を配信します。再訪問や購入を促進し高いクリック率とコンバージョン率が期待できます。

データドリブン広告商品

ネット広告業界のデータドリブン広告商品を紹介します。

• ターゲティング広告：消費者データを基に、特定のユーザー層に向けた広告配信です。行動ターゲティング、コンテクストターゲティング、位置情報ターゲティングなどがあります。
• オーディエンス広告：顧客の属性情報（年齢、性別、職業、趣味など）を活用した広告配信です。パーソナライズド広告として消費者への効果を最大化します。

クロスチャネル広告商品

ネット広告業界のクロスチャネル広告商品について紹介します。

• オムニチャネル広告：複数のチャネル（PC、スマートフォン、タブレット、テレビなど）を統合して広告を配信します。消費者のデバイス横断的な行動を追跡し、最適なタイミングで広告を配信できる特徴を持ちます。
• デジタルサイネージ広告：駅や商業施設のデジタル看板で表示される広告とネット広告を連動させます。オフラインとオンラインを組み合わせたマーケティング戦略を強化します。

特化型広告商品

ネット広告業界の特化型広告商品について解説します。

• ショッパブル広告：広告内で直接商品を購入できる機能を提供します。プラットフォーム例として、Instagram、Pinterest、Googleショッピング広告などがあります。EC事業者に最適で、購買までのプロセスを短縮させる特徴を持ちます。
• アプリインストール広告：スマートフォンアプリのインストール促進を目的とした広告です。ゲームやサービスアプリのプロモーションで活用されています。

サステナブル広告商品

ネット広告業界も環境対策に取り組んでいる企業があります。サステナブル広告商品について解説します。

• カーボンニュートラル広告：ネット広告業界の広告配信のエネルギー使用を最小限に抑え、環境負荷を軽減する広告商品です。特徴として、ネット広告業界の環境対策として、サステナビリティを重視するブランドに活用される傾向にあります。

ネット広告業界の取り扱いサービス

ネット広告業界のサービスは、広告企画から配信、効果分析、データ活用、運用支援まで多岐にわたり、広告主のニーズに応じた柔軟な対応が可能です。特に、データ活用やAI、機械学習を活用した高度なターゲティングや効果測定が進化しており、リアルタイムで広告効果を最大化する体制が整っています。 また、ショッパブル広告やリターゲティング広告など、特化型サービスが消費者行動を直接促す手段として重要性を増しています。

広告キャンペーンの企画・設計

ネット広告業界は取り扱いサービスの一つとして、広告キャンペーンの企画や設計を提供しています。

• マーケティング戦略の立案：広告主のビジネス目標やターゲット層に応じた広告戦略を構築しています。ターゲット市場の選定、競合分析、KPI（重要業績評価指標）の設定などが含まれます。提供事業者は、総合広告代理店（例: 電通、博報堂）、デジタル専門広告代理店（例: オプト、セプテーニ）です。
• 広告クリエイティブ制作：広告に使用する画像、動画、テキストなどのクリエイティブ素材を制作し提供しています。種類として、バナー広告、動画広告、インタラクティブ広告やネイティブ広告などがあります。デザイン制作、動画編集、コピーライティングなどを提供します。

広告配信サービス

ネット広告業界は広告配信サービスを提供しています。

• ターゲティング広告：消費者データを基に、特定のユーザー層に広告を配信しています。行動ターゲティング、オーディエンスターゲティング、地理的ターゲティングなどがあり、 地域や現在地に基づく配信を行っています。高い広告効果とコンバージョン率をもちます。
• プログラマティック広告配信：自動入札システム（RTB: Real-Time Bidding）を活用して広告枠を購入し、配信していきます。主要プラットフォームとして、広告主向けにDSP（Demand-Side Platform）、メディア向けにSSP（Supply-Side Platform）があり、効率的な広告運用や配信コストの最適化を可能としています。
• クロスチャネル配信：複数のチャネル（PC、スマホ、タブレット、テレビなど）を統合して広告を配信します。ユーザーのデバイス間で一貫性のある広告体験を提供します。

広告効果の分析・最適化

ネット広告業界は、広告効果の分析や最適化を提供しています。

• データ収集・分析：広告キャンペーンのパフォーマンスデータを収集・分析を提供します。主な指標は、CTR（クリック率）、CPC（クリック単価）、CVR（コンバージョン率）で、ツールとしてGoogle Analytics、Adobe Analyticsなどがあります。広告の改善ポイントを明確化します。
• アトリビューション分析：ユーザーが広告に接触してから購入に至るまでの全接触点を評価します。各接触点の貢献度を把握し、広告費を最適化します。
• A/Bテスト：広告クリエイティブやランディングページを複数パターン用意し、効果を比較します。最も効果的なバリエーションを特定します。

データマネジメントサービス

ネット広告業界のデータマネジメントサービスについて紹介します。

• DMP（データマネジメントプラットフォーム）：消費者データを収集・統合し、広告キャンペーンに活用します。機能として、ファーストパーティーデータ（自社データ）とサードパーティーデータ（外部データ）の統合などがあり、高度なターゲティングを可能にするデータ分析をします。
• CDP（カスタマーデータプラットフォーム）：個別の顧客データを統合し、パーソナライズド広告に活用します。ユーザーごとの広告配信を最適化するという特徴を持ちます。

特化型サービス

ネット広告業界の特化型サービスに関して説明します。

• リターゲティング広告：過去にサイトを訪問した消費者に広告を配信し、再訪問や購入を促進します。提供事業者として、Criteo、Google Adsがあります。
• 動画広告配信：動画プラットフォームやウェブサイト上で動画広告を配信します。高い視覚・聴覚訴求力をもち、ブランド認知向けキャンペーンに有効です。
• インフルエンサーマーケティング：ソーシャルメディア上の影響力を持つインフルエンサーを活用した広告キャンペーンを行い、口コミ効果により消費者行動を喚起します。

デジタルツールとの連携サービス

ネット広告業界のデジタルツールとの連携サービスに関して詳しく解説します。

• デジタルウォレット広告：Apple PayやGoogle Pay内で広告を表示することにより、消費者が広告から直接購入可能とします。
• ショッパブル広告：広告内で商品購入が完結する広告フォーマットです。提供例として、Instagramのショッピング機能、Pinterestのショッピング広告があります。
• アプリプロモーション：アプリのダウンロード促進を目的とした広告キャンペーンを提供します。ユーザーのエンゲージメント向上効果があります。

サポート・運用サービス

ネット広告業界のサポートや運用サービスについて詳しく解説します。

• 運用代行：広告キャンペーンの運用を代理で行うサービスです。内容として入札戦略、ターゲティング設定、広告文の最適化があります。提供事業者はオプト、セプテーニなどのデジタル広告代理店です。
• トレーニング・コンサルティング：広告主の内部運用チーム向けにトレーニングや運用ノウハウを提供します。自社内で広告運用を完結するためのスキルアップを支援します。

ネット広告業界のビジネスモデル

ネット広告業界は、市場の成長率が非常に高いため、新規参入や異業種からの参入が相次いでいる多数乱戦の業界です。また、ネット広告業界は、労働集約型の産業のため、設備投資が小さい傾向にあります。結果、中小プレイヤーにとっても参入しやすいです。 ネット広告業界は、個人から企業まで幅広く存在するWebサイトやコンテンツ、SNSなどの広告媒体をとりまとめています。 広告スペースとして大企業などの広告主に対して信頼と共にサービスを提供できるため、業界ポジションとしては現状では必要不可欠な位置づけです。 多対多で取引できる運用型広告の発展により、売り手であるメディアは高単価で広告スペースを売り切ることが可能となり、買い手の広告主にとってもノウハウのない複雑なネットマーケティングを委託することができるため両者にとってメリットが大きいです。 その一方で、ネット広告業界は多選乱戦の業界であることから競合他社との価格戦争、新規サービスの開発競争、人気媒体の仕入れ競争が激しいことは留意すべき点です。ネット広告業界の広告主にとっては、費用対効果が高いことが選択基準となります。 そのため、価格を抑えたサービスが優位性を持ちます。また、近年では、PC用広告、スマホ用広告へシフトしているように成長するサービスが目まぐるしく変化しています。 目まぐるしく変化するサービスに対応するため、常に広告手法の開発を行うことは必須です。また、人気メディアの変化も激しいのがネット広告業界の特徴です。動画サイトやSNSの人気が高まっており、これらの媒体の変化に素早く対応し広告枠を仕入れる必要があります。

ネット広告業界の主要企業の財務指標を分析

ネット広告業界の財務指標を分析するために、サイバーエージェント、GMOインターネットグループ、アドウェイズを取り上げます。ネット広告業界の収益性は、3社とも営業利益率が9-17%台と良好です。サイバーエージェント、GMOインターネットグループの利益率が高い背景には、広告事業以外にも様々な事業を手がけていることがあげられます。 大きな設備投資を必要とせず、固定資産を多く抱えないため、安全性については、各社流動資産の構成比率が非常に高いです。中でも、GMOインターネットグループはネット証券事業を手がけていることから、預託金が流動資産に含まれており総資産が大きいです。負債については、受入補償金が流動負債に含まれているため、自己資本比率が低くなっています。 その一方で、サイバーエージェント、アドウェイズは自己資本比率が高く、安全性の高さがうかがえます。ROAは、サイバーエージェントの総資産回転率が低下しているのに対し、高い利益率を上げていることで効率性を高めています。 GMOインターネットグループは、証券事業による総資産が大きいため総資産回転率は低い傾向にありますが、当期純利益率は高水準です。 ネット広告業界の市場の寡占状況を示すHHI指数をみると、インターネット広告代理は3年間で徐々に大手のシェアが上昇していることがわかります。ネット広告業界は中小企業が多く、新規参入も多い業界のため、多数乱戦はまだしばらくは続くと考えられます。

ネット広告業界の最新トレンドをチェック

ネット広告業界は、AI活用、クッキーレス対応、動画広告の進化を中心に急速に進化しています。特に、データ規制の強化や消費者プライバシーへの配慮が求められる中で、ファーストパーティーデータや新しいターゲティング手法が注目されています。 また、ショート動画広告やインタラクティブ広告、ソーシャルコマースなどの新フォーマットが消費者との接点を拡大し、広告のROI向上に寄与しています。 ネット広告業界は情報の更新が早い業界です。いち早く対応するためにも、ネット広告業界の経営者の方や営業職の方は、最新のトレンドを把握することが重要です。ネット広告業界の最新トレンドを紹介します。

AIと機械学習の活用拡大

ネット広告業界はAIと機械学習の活用拡大に乗り出しています。

• AIによるターゲティングと最適化：AIが広告配信のターゲティング精度を向上させ、広告効果を最大化しています。自動化ツール（Google Ads、Meta Ads Manager）がAIを活用し、入札やクリエイティブを最適化しています。
• クリエイティブ生成の自動化：生成AI（Generative AI）を活用し、広告バナーやコピーを自動生成します。これにより、動画広告のテンプレート化やパーソナライズが容易になります。
• 予測分析：AIが過去の広告データを分析し、消費者行動やキャンペーン効果を予測します。

クッキーレス時代への対応

クッキーレス時代に移行しつつあるため、ネット広告業界も対応を進めています。

• サードパーティークッキーの廃止：ブラウザ（Google Chromeなど）がサードパーティークッキーを段階的に廃止しています。これにより、従来のリターゲティング広告や個人データ利用に制約します。
• 新しいターゲティング手法として、ファーストパーティーデータの活用し、自社サイトやアプリで収集したデータを基に広告配信しています。コンテクストターゲティングとして、ウェブページの内容に関連する広告を配信しています。
• プライバシーサンドボックス：Googleの「Privacy Sandbox」など、新しいプライバシー保護技術を活用し、ユーザー情報を匿名化しつつターゲティングを実現しています。

動画広告のさらなる拡大

ネット広告業界は、動画広告のさらなる拡大に乗り出しさまざまな取り組みを行っています・

• ショート動画広告の人気：TikTok、Instagram Reels、YouTube Shortsなど、短尺動画フォーマットが急成長しています。ユーザーの注意持続時間に適合し、高いエンゲージメントを実現しています。
• ライブ配信広告：ライブストリーミング中に配信される広告（例: YouTube Live、Instagram Live）が人気を集めています。リアルタイムの双方向性が強みです。
• インタラクティブ動画広告：動画内でユーザーがクリックして商品情報を確認・購入できる機能を提供しています。例として、ショッパブル広告（YouTubeやInstagramでの展開）などがあります。

ソーシャルメディア広告の進化

• インフルエンサーマーケティング：マイクロインフルエンサー（フォロワー数数千人〜数万人）を活用した広告が増加しています。消費者の信頼感を活かした口コミ型広告が主流になっています。
• ソーシャルコマース：Instagram、Facebook、TikTok内で購入が完結するショッパブル広告の拡大が見られます。特徴として、広告が直接売上につながるモデルです。
• UGC（ユーザー生成コンテンツ）の活用：ユーザーが作成したコンテンツを広告として再利用し、エンゲージメントを向上させます。

音声広告の普及

ネット広告業界では、音声広告の普及により、さまざまなサービスの提供に乗り出しています。

• ポッドキャスト広告：ネット広告業界では急激に成長する、SpotifyやApple Podcastsを利用した音声広告への対応を急いでいます。ポッドキャスト広告が成長することにより、パーソナライズ化された広告配信が可能となります。
• スマートスピーカー向け広告：Amazon AlexaやGoogle Nest向けに音声対応型広告を展開しています。これにより、音声検索と連動したプロモーションを実現します。

サステナブル広告へのシフト

ネット広告業界も、環境を意識した商品の提供が求められています。ネット広告業界の環境に配慮した新たな取り組みが話題を呼んでいます。

• 環境配慮型広告：グリーン広告と呼ばれ、エコ製品や環境保護活動を訴求する広告を提供しています。これにより、広告配信時のカーボンフットプリント削減を目指すことにつながります。
• 企業の社会的責任（CSR）広告：サステナビリティや社会貢献をテーマにした広告が増加しています。

クロスチャネル戦略の強化

ネット広告業界では、今後、クロスチャネル戦略を強化することが重要とみて、活動が活発になっています。

• オムニチャネル広告：オンラインとオフライン（デジタルサイネージ、店舗広告）の統合キャンペーンを提供します。これにより、店舗クーポンをオンライン広告で配信するなどのメリットが得られます。
• クロスデバイス配信：ユーザーのデバイス間移動を追跡し、一貫した広告体験を提供しています。

広告フォーマットの進化

ネット広告業界は広告フォーマットを常に進化させています。

• AR/VR広告：拡張現実（AR）や仮想現実（VR）を活用した没入型広告です。これにより、消費者が広告内で商品を試着・シミュレーションできるようになります
• リッチメディア広告：インタラクティブな要素を取り入れた広告（スクロール、ホバーアクションなど）です。

データ主導型マーケティングの深化

ネット広告業界はデータ主導型のマーケティングを深く提供しています。

• リアルタイムデータ活用：AIがリアルタイムでデータを分析し、広告の配信内容やタイミングを調整します。例として、天気や時間帯に応じた広告表示などがあります。
• ゼロパーティーデータの活用：消費者が自発的に提供したデータを広告配信に活用しています。例として、クイズやアンケートから得た情報を反映させるなどがあります。

ゲーム内広告の成長

ネット広告業界は、スマートフォンの普及によりアプリゲームなど対象を広げたサービスの提供が求められています。ゲーム内広告は、ゲームアプリやコンソールゲーム内に表示される広告です。 例として、スポーツゲーム内の看板広告や、無料ゲームでの動画広告視聴によるアイテム付与などがあります。アプリゲームが急激に成長し、多くのゲームがリリースされる中、最も有効的なネット広告としてサービスの提供が求められています。

ネット広告業界の市場規模は？

ネット広告業界の市場規模を調べるために、2022年電通グループの「日本の広告費」を参考にします。ネット広告業界の売り上げは前年比14%増の3兆912億円となり、マスコミ四媒体(新聞・雑誌・ラジオ・テレビメディア)の総額を上回り、広告出稿が既存媒体からインターネット広告にシフトしていることが伺えます。 2022年のテレビメディア広告は1兆8,019億円で縮小傾向が続いているのに対し、インターネット広告の躍進は顕著です。 以上のことから、ネット広告の市場規模は、2010年から高い成長率を維持しており、リーマンショック等の景気停滞を受けても縮小せず、近年市場拡大が加速しています。 国内のネット広告業界の推移をみると、広告費はテレビや新聞などのマス四媒体および街頭看板や通販、交通機関における広告などを含むプロモーションメディアは長期的な縮小傾向です。ネット広告業界は、インターネット広告費が拡大を続けています。 広告費別にみていくと、インターネット広告媒体費が全体の80%を占め、インターネット広告製作費が14%、物販系ECプラットフォーム広告費が6%となっています。これには、スマートフォンの普及により、インターネットの利用時間が増加したことと、コロナ禍の影響で巣ごもりが増加したことが市場規模拡大に寄与したと考えられます。 結果、SNSでのバナーやテキスト広告と動画サイトでのプロモーション動画が特に伸びています。 新型コロナウイルスの影響で企業の広告費が抑制され日本の総広告費は2020年に前年比11%減となりましたが、社会のデジタル化の加速によりネット広告費は2020年が前年比6%増、2021年が前年比21%増、2022年が前年比14%増と市場は拡大しており、ネット広告業界は今後も成長が見込まれます。

ネット広告業界のマクロ環境を解説します

ネット広告業界のマクロ環境に大きな影響を与えるのは、主に社会動向と技術動向が挙げられます。社会動向は、消費者のインターネット利用の増加や、スマートフォン利用率などの増加が挙げられます。スマートフォンが主流になったことでSNSや動画サイトの利用者が増えており、またネットショッピング取扱高も拡大しています。 実際に、総務省の「通信利用動向調査」によると、2022年のインターネットの利用者割合は84.9%で増加傾向が続いています。スマートフォン利用が増加傾向にあることで、ネット広告でも広告手法の入れ替わりが起きています。 例としては、検索連動型の広告よりも、動画広告やSNS、スマートフォンアプリでの広告に注目が高まっていることなどがあります。 インターネットが普及したことにより、ネットショッピングの利用も増加しています。ネットショッピングにはさまざまな小売りメーカーが参入してきているため、ネット広告業界にとっても、更なる市場成長に繋がる動きです。 Googleなど検索エンジンのアルゴリズムや広告表示ポリシーの変更の影響をとても受けやすい点も留意する必要があります。また、技術動向としては、アドテクノロジーの発展が著しいです。 ネット広告業界では、RTB(Real-Time Bidding)による広告の仲介業務の自動化や、RTBの仕組みに利用されるDMP(Data Management Platform)と呼ばれるビッグデータを駆使した広告主のマーケティングに関わる様々な情報を蓄積するプラットフォームなどが開発されています。 その一方で、広告仲介業者の自動化を成したことにより、広告主と広告掲載枠の数が増加しました。 しかし、その結果、アドフラウド(広告詐欺)と呼ばれる、実際は閲覧されていないのに広告料を徴収する悪質行為をおこなう業者も増加しており、対策需要も高まっています。ネット広告業界は、技術革新のスピードが非常に速い業界です。 そのため、成長していたサービスがすぐに陳腐化するリスクが高いです。ネット広告業界は常に新サービスの開発と技術レベルのキャッチアップが求められています。

ネット広告業界の業界地図を広げました

ネット広告業界の業界地図や相関図を把握するために、主要企業の資本関係を参考にしていきます。大きな潮流として、ネット専業広告代理店のメディア参入と、大手総合広告代理店のネット広告業界参入が挙げられます。 サイバーエージェントはネット専業広告代理店の最大手です。「Amebaブログ」などメディアやコンテンツ事業に注力している企業です。コア事業であるネット広告で得たキャッシュをメディアやコンテンツ開発に注いでいます。自社で新たな人気媒体を創ることで、さらなる広告事業の成長を見込んでいます。 また、「電博」と並び称される大手広告代理店はそれぞれ大手メディアレップ企業を傘下に有しています。電通グループも2009年にメディアレップ大手のサイバー・コミュニケーションズを、2018年にネット広告のVOYAGE GROUPを連結子会社化しています。その他のネット広告企業は、アフィリエイト広告に強いアドウェイズに注目しています。 アドウェイズは、総合商社の伊藤忠商事と2007年から業務資本提携をおこなっています。また、インフラ構築からネット広告、コンテンツまで様々な事業を手がけるGMOインターネットグループに関しては、事業ごとに子会社を設立しており、GMOアドパートナーズがネット広告専業の子会社です。

ネット広告企業の主要企業の動向をチェック

ネット広告業界では、広告の配信、運用、プラットフォーム提供などを担う多様な企業が活躍しています。主要企業は、グローバル企業と国内企業に分かれ、それぞれが特定の強みを活かして市場を牽引しています。 ネット広告業界の主要企業の動向を知ることは、今のネット広告業界の現状を知ることにもつながります。特にネット広告業界の経営者やネット広告業界に新規顧客開拓を考えている営業職の方には必須の情報となります。

サイバーエージェント株式会社

サイバーエージェントは、1998年に設立された日本を代表するインターネットサービス企業で、広告事業、ゲーム事業、メディア事業を中心に幅広い事業を展開しています。 特に、インターネット広告事業においては国内トップクラスの地位を確立しており、デジタル広告市場の成長を牽引しています。サイバーエージェントは、加速的に増収を続けている企業です。 しかし、一大プロジェクトとしてスタートしたインターネットテレビ局の「ABEMA」の先行投資が重く、好調なインターネット広告とゲーム事業で得た利益を投資に回す形となっており、大きく変動している面もあります。 セグメント別売上をみると、2001年頃からネット広告事業とその他の事業の比率は半々で推移しています。サイバーエージェントの一番の強みは、変化が激しいネット広告業界への対応力です。 サイバーエージェントが広告代理店として設立した後、当時成長市場でもあったメールマガジン、ブログ事業に積極的に投資し、スマートフォンが普及した時はいち早く今後の動向を先読みしたうえで、スマートフォン向けAmebaやゲーム事業にリソースを投入するなど柔軟な対応力を見せています。 2015年にはネットで動画がさらに拡大することを見通し、ABEMAに大規模な投資を行うなど、先読みを武器にしたサービス展開が続いています。 長期で見て安定的な広告事業によるキャッシュが支え、自社の人気メディアを育成することで、広告事業で扱う広告スペースを内製・拡大することができるため、相乗効果が大きいです。2022年度のインターネット広告事業の売上高は、前期比17%増の3,768億円となり、拡大が続いています。

株式会社ファンコミュニケーションズ

ファンコミュニケーションズは、アフィリエイト広告事業を核に、モバイル広告やプログラマティック広告分野でもリーダーシップを発揮しています。 特に、「A8.net」を中心とした成果報酬型広告の提供は、日本市場での確固たる地位を築いており、スマートフォン広告やDX対応などの新分野への取り組みも進んでいます。今後は、AIの活用、海外展開、サステナブル広告への対応が成長の鍵となるでしょう。 ファンコミュニケーションズは、ネット広告企業の中で群を抜いた営業利益率を誇っており、10%以上をキープしています。最大の強みは、1999年設立の老舗のASP(Application Service Provider)であることから先行者利益によって、業界トップ水準のメディア(広告媒体のWebサイト)・広告主の登録数を維持している点です。 登録者数が多いことはメディア運営側と広告主側の双方にとって選択肢が増えることにつながります。このメリットから、他社に切り替えるユーザーは少なく、継続的なストック収入を得られることが、ファンコミュニケーションズの事業モデルです。 また、近年はスマートフォン対応もおこなっており、スマートフォンアプリのインストールによって広告費が発生するASPを開発し、スマートフォン向けの広告媒体の大規模なアドネットワークを構築しています。 売上の推移としては、コロナ禍の巣ごもり需要を受け躍進する動画コンテンツ配信プラットフォームとの競争激化や広告主の予算削減などの影響で、2020年度と2021年度は減収となりました。また、2022年度の大幅な減収は、「収益認識に関する会計基準」の適用により売上高の計上方法を変更したことが要因と考えられます。

中小企業の動向

ネット広告業界の中小企業の動向としては、改正個人情報保護法や検索エンジンによるサードパーティークッキーの廃止など、ターゲティングに基づいた広告の表示が難しくなってきています。 しかしその一方で、消費者の購買行動がオンライン化していることに伴い、企業におけるインターネット広告を含むWebマーケティングへの投資額は年々増加傾向にあります。このことから、中小企業に対する広告表示のニーズも高まりを見せています。 ネット広告業界の追い風を受け、需要に対して供給者が少ないことから中小規模の企業の参入が続いています。ネット広告業界の中小企業は、特に需要が伸びているSNS広告を中心に事業展開しています。

ネット広告業界の今後の展望は？

ネット広告業界の今後の展望を解説するためにも、まずは大きな影響を与えた新型コロナウイルスについて解説します。新型コロナウイルス感染症拡大により、ネット広告業界だけではなく全体的に経済活動が停滞し、人が集まる展示会の中止、店舗休業などにより、体験機会が大幅に減少しました。 そのため、ネット広告業界においても従来通りの宣伝効果が見込めなくなり、企業広告の出稿量は抑制されました。 オフライン系の施策が難しくなるため、オンライン系への施策の切り替えが進みました。ネット広告業界は、新型コロナウイルスの影響を乗り切るために、顧客がネット広告出稿を増やすタイミングを掴んでいくことが最も重要な鍵となります。 ネット広告業界が提供するネット広告の中でも、消費者が広告に接する媒体や場所、場面が多様化するなか、広告表現をそれぞれ最適化していくことが求められました。 新型コロナウイルスの影響で大きな変化を得たネット広告業界の今後の展望を解説します。

ネット広告業界は消費・技術動向に対して切り替えが重要

ネット広告業界の今後の展望は、消費動向や技術動向に対しての成長分野のシフトが重要だと見られます。EC市場やSNSなどのインターネットメディアはなおユーザーが増加し、接触時間の長いスマホネイティブ世代の増加から、ネット広告市場も確実な成長が見込まれます。 しかし、その一方で大きな課題もあります。消費者庁は、サイト上である商品に不当な表示広告をしていたとして、違反事実の周知徹底と再発防止策を命じました。 この動きを見て分かる通り、消費者庁はアフィリエイト広告の法規制を強化しています。他にも、自動で広告をクリックし、クリック数を水増しするアドフラウド(広告詐欺)も問題となっています。また、ネット広告業界は今後、消費者の動向の変化や技術のさらなる発展、新手法の開発によって、提供するサービスメニューが変化することが予測されます。 サービスメニュー変化により、ネット広告業界内の新分野が成長し、新興プレイヤーが出現することが考えられます。現に、すでにメール広告や、ポータルサイト広告など、PC型広告の成長は伸び悩んでおり、スマートフォン分野の成長が著しくなっています。 こういった変化は今後も続くことが考えられるため、新しい広告手法を開発して成長する新興プレイヤーの出現も十分に予測されます。 また、異業種からの参入に伴う、業界間の垣根の低下も予想されます。大手総合広告代理店の参入が続く中、今後も関連業界からの参入が増加します。中でも、インターネットメディア企業が直接広告主にリーチするケースが増えています。 ネットマーケティングを支援するPR業界やコンサルティング業界、ITベンダーなどは、クライアントへの提案力を高めるために、様々な分野を総合的に提案できるようにする動きがあります。

ネット広告業界は技術革新が今後の成長の鍵

ネット広告業界は、技術革新、消費者行動の変化、規制対応が成長の鍵となります。特に、AI活用によるターゲティング精度向上やクッキーレス環境への対応が重要です。 また、ショート動画広告、ソーシャルコマース、サステナブル広告といった新たな広告フォーマットが注目されています。規制対応と技術革新をバランスよく進めることで、持続可能な成長が期待されている業界です。 ネット広告業界はとにかく情報の更新が早い業界です。情報をいち早く手に入れ、対応を広げることが非常に重要になってきます。 最大級の企業プラットフォームBIZMAPSでは、月額無料で月100件までの企業情報をダウンロードすることができます。登録されている企業は200万社を超え、今後もどんどんと増えていきます。最新情報を手に入れるためにも、ぜひ活用してみてください。 ▼その他のBIZMAPS掲載企業の特集記事はこちらから！ Eコマース業界とは？注目の最新トレンドや今後の動向を徹底解説！ 広告業界を徹底解説！市場規模や最新動向、売上ランキング上位の主要企業一覧も アースキーラボで世界中のユニークなサービスを発見！注目の関連企業10選 イケサイでwebサイトデザインやLPに強い企業に出会える！ SNS広告の運用とは？SNS広告がおすすめのポイントを解説します コンサルティング業界はさらなる成長へ！市場規模や今後の展望を解説

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