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放送業界は、私たちにさまざまな情報や娯楽を与えてくれています。近年は若者のテレビ離れが指摘されているものの、新たな需要である動画配信サービスなども展開して、利益を生み出す努力をしているようです。 本記事では、そんな放送業界の現状や今後の展望などを詳しく解説します。BIZMAPSの「テレビ・ラジオ放送局」「テレビ番組制作」の企業情報も参照しながらご覧ください!

放送業界のバリューチェーン

放送事業者の事業内容は、IP(知的財産権)を保有する企業や芸能プロダクションからIPや人材の提供を受けて、テレビ番組やラジオ番組を企画・制作することです。 制作された番組は、テレビ放送チャンネル(地上波・衛星放送・ケーブルテレビ)やラジオ放送チャンネル(AM放送・FM放送)を通じて放送されます。制作番組はインターネット配信やDVD化などで二次利用され、収益の最大化が図られます。 地上波テレビやラジオ局の主な収入源は、広告代理店やスポンサーからの広告収入です。一方、WOWOWやCATVなどの有料放送では、視聴者からの月額視聴料が主要な収入源となります。 次に、テレビ放送とラジオ放送のバリューチェーンをそれぞれ見ていきましょう。テレビ番組の制作においては、テレビ放送事業者グループの番組制作会社や、東北新社などの独立系制作会社と連携します。制作された番組は「Netflix」などの動画配信サービスや、DVD商品として個人に提供されます。 代表的なテレビ放送事業者として挙げられるのは、地上波放送を行う日本テレビ放送網TBSテレビ、衛星放送を行うスカパーJSATWOWOW、ケーブルテレビ事業を行うJCOMコミュニティネットワークセンターなどです。 ラジオ放送もテレビ放送と同様に、ラジオ放送事業者グループの番組制作会社や独立系のラジオ番組制作会社と連携して制作されます。二次利用としては、インターネットでラジオ番組を視聴できる「radiko」に注目が集まっています。代表的なラジオ放送事業者は、AM放送を行うニッポン放送TBSラジオ、FM放送を行うエフエム東京J-WAVEなどです。 なおNHK(日本放送協会)は、社団法人として公共放送を担い、視聴者からの受信料や一部国からの交付金を収入源として運営されています。

放送業界の取り扱い商品・サービスの特徴

放送業界は「テレビ放送」と「ラジオ放送」に分けられますが、テレビ放送には「地上波放送」「衛星放送(BS・CS)」「有線放送(ケーブルテレビ)」があります。 地上波放送は、放送局と家庭の間に地上の中継所を設けて電波を送る方式で、もっとも多くの人に視聴される主流のテレビ放送です。2012年に地上波デジタル放送に完全移行し、高品質な映像と音声が提供されるようになりました。 衛星放送は人工衛星を使って電波を送る方式で、山間部など障害物が多い広域の地域にも効率よく大容量の情報を提供でき、災害時にも強いのが特徴です。この強みを活かして、サービスの多様化(災害通信サービスなど)が進められています。 有線放送(ケーブルテレビ)は、ケーブルテレビ局と家庭をケーブルでつなぎ、電波を送る方式です。さまざまなエリアでテレビの視聴が可能であり、豊富な情報提供や対話型サービスが可能で、地域密着情報や専門番組を提供することができます。 また、テレビ放送事業者、とくに地上波放送を行うキー局は、IPネットワーク(インターネット)を通じた動画配信サービスにも力を入れています。 ラジオ放送には「AM放送」「FM放送」「短波放送」があります。AM放送は、電波の振幅を変えて信号の強弱を伝える方式で、トーク番組やバラエティー番組を中心に配信されます。FM放送は、周波数を変えて信号を伝える方式です。AM放送と比較して音質が高いことから、音楽番組を中心に配信されます。 短波放送は短波を利用した方式で、出力が小さくても遠距離に電波を届けることができるため、国際放送や国内の特定地域向けの放送に利用されます。

放送業界のビジネスモデル

放送業界はテレビの視聴率が低下するなどして広告収入が減少し、市場が伸び悩んでいることから、成熟業界といえます。また、放送事業者は放送設備や機材を持つ資本集約的な側面がある一方で、番組の質はプロデューサーやディレクターといった人材に大きく依存するため、労働集約的な側面も強いです。 地上波放送を手掛ける企業の収入は、大きく分けて広告収入と広告外収入がありますが、TV番組の視聴率低下により広告収入が減少しています。このため、放送事業者は動画配信サービスの月額利用料など広告外収入の獲得に注力している状況です。 一方、衛星放送やケーブルテレビを手掛ける企業の収入はほとんどが視聴者からの月額利用料ですが、一部広告収入や広告外収入もあります。 業界構造を見ると、地上波放送ではキー局のネットワーク力やコンテンツ力が強く、シェアも高いです。しかし、キー局同士の視聴者獲得競争は激しくなっています。 衛星放送でもスカパーJSATホールディングスやWOWOW、JCOMといった大手企業が有力なコンテンツ力を持ち、高いシェアを占めています。放送業界はケーブルテレビ業界を除いて免許制であり、新規参入はほとんどなく、新規参入の脅威は少ないです。 代替サービスとしては、YouTubeやニコニコ動画などの無料動画配信サービスが人気で、脅威となっています。 TV番組の視聴率は低下し広告媒体としての魅力が低下しているため、広告代理店やスポンサーはテレビ広告費を削減し、ネット広告費を増加させており、交渉力が強まっています。 また、スマートフォンのヘビーユーザーが増え、衛星放送やケーブルテレビよりも動画配信サービスにお金を使う視聴者が増加しており、消費者の選択肢が多様化している状況です。近年はIP獲得競争の激化により調達金額が上昇し、IP保有会社の交渉力が強まっています。

KFSは視聴者の獲得

放送業界の重要成功要因(KFS)は、視聴者の獲得です。放送事業者は視聴者を獲得することで、月額利用料が増加し、広告媒体の価値が高まり広告収入も増加します。 ただし、動画配信サービスなどさまざまな放送チャンネルがある中で、魅力的な番組ラインナップやサービスで差別化を図ることが求められるでしょう。 日本BS放送は自社制作番組、日本テレビホールディングスはインターネットとテレビを連動させたサービスで差別化を追求しています。

放送業界の市場規模・トレンド

放送業界の市場規模とトレンドについては、総務省の「情報通信白書」および「メディア・ソフトの制作及び流通の実態に関する調査」を参照します。 「放送産業の市場規模推移(売上高ベース)」によると、リーマンショックの影響で企業の広告費が大幅に削減され、広告収入が主な収入源である放送産業の市場規模は2008年度、2009年度に大きく縮小しました。 その後、テレビ番組の視聴率低下やインターネット広告市場の成長により、テレビ広告費は伸び悩み、2021年度の放送産業の市場規模は3.7兆円となっています。 「民間ラジオ放送局営業収入の推移」を見ると、民間ラジオ放送局の営業収入はラジオ広告費の伸び悩みにより縮小し続けています。 2010年度から一時的に下げ止まりが見られましたが、2019年度から再び減少傾向に転じ、2021年度は1,033億円となっています。ラジオ放送事業者は広告以外の収入(イベントやグッズ販売など)に注力し、営業収入の減少を補おうとしています。 電通の「日本の広告費」によると、2020年は新型コロナウイルスの影響でテレビ業界・ラジオ業界ともに広告収入が大幅に減少。2021年度には徐々に広告出稿が戻ってきましたが、インターネット広告の成長により、放送事業者にとっては依然として厳しい状況が続いています。

放送業界を取り巻く環境

テレビ関連技術の進化により、高品質なTV番組を楽しめるようになりました。例えば2003年に放送が開始され、2012年に完全移行した地上デジタル放送は、高品質な映像と音声を提供するだけでなく、野球の試合経過をリアルタイムでチェックできるデータ放送や、リモコン操作による視聴者参加型番組などの新サービスを提供しています。 しかしテレビ放送事業者は、地上デジタル放送に対応するために、電波の送信設備や放送の送出設備、番組制作設備などに多額の設備投資をおこなわなければなりません。特に地上波放送の系列局には大きな負担となりました。 この状況を背景に「マスメディア集中排除原則」の一部が緩和され、放送持ち株会社の設立が認められ、業界再編の基盤が整備されたのです。 さらに、4K・8K放送(現行のハイビジョン(2K)を超える超高精細な画質の放送)の開発も進行中で、すでに衛星放送「スカパー!4K」や、BS放送でも2018年12月から4K・8K放送が開始されています。 一方、スマートフォンやタブレット端末の普及に伴い、動画配信サービスが人気となり、TV番組の視聴率が低下。このためテレビ広告費が削減され、広告収入の減少がテレビ放送事業者の収益性の悪化とTV番組制作費の削減につながっています。

放送業界の相関図・業界地図

放送業界は、NHK、フジ・メディア・ホールディングス、日本テレビホールディングス、テレビ朝日ホールディングスTBSホールディングステレビ東京ホールディングスの6大メディアが大部分を占めています。 それぞれの企業は地上波放送と衛星放送(BS・CS)を傘下に収めていますが、ケーブルテレビ事業者はテレビ東京ホールディングスを除いて傘下に収めていません。 放送業界では、キー局が中心となってネットワークを形成し、地方の系列局にキー局が制作した番組を提供しています。 フジ・メディア・ホールディングスの「FNS系列」、日本テレビホールディングスの「NNN系列」、テレビ朝日ホールディングスの「ANN系列」、TBSホールディングスの「JNN系列」、テレビ東京ホールディングスの「TXN系列」がそれに当たります。 また6大メディア以外にも、地上波放送、衛星放送(BS・CS)、ケーブルテレビを手掛ける企業が存在します。代表的な企業として挙げられるのが、衛星放送ではスカパーJSATホールディングスやWOWOW、ケーブルテレビではJCOMです。 放送業界は、新聞業界とも深いつながりがあります。主要な全国紙とキー局グループは資本関係を持つことが多く、フジ・メディア・ホールディングスは産業経済新聞社と、日本テレビホールディングスは読売新聞グループ本社と、テレビ朝日ホールディングスは朝日新聞社と、TBSホールディングスは毎日新聞社と、テレビ東京ホールディングスは日本経済新聞社と、それぞれ出資関係です。

放送業界の主要プレイヤーの動向

2022年度の民放キー局5社の業績は、WOWOWを除いて増収となりました。コロナ禍で停滞していた経済活動が回復し始め、テレビCMの広告収入の増加や動画配信サービスへのコンテンツ販売が好調となり、前期の減収減益から回復する企業が増えています。 ここでは、放送業界の主要プレーヤーの動向として、日本テレビホールディングス株式会社と日本BS放送株式会社の動向をご紹介します。

日本テレビホールディングス株式会社の動向

広告収入トップの日本テレビホールディングスは、全日帯(6~24時)、ゴールデン帯(19~22時)、プライム帯(19~23時)の全ての時間帯で、視聴率トップを2021年度まで9年連続で達成していましたが、2022年度にテレビ朝日ホールディングスに視聴率トップの座を奪われました。 しかし視聴率首位は奪われたものの、広告収入は堅調で、オンライン動画配信サービス「Hulu」を運営する日本法人(HJホールディングス)や、「科学忍者隊ガッチャマン」などで人気のタツノコプロを買収したことで、コンテンツ販売収入が拡大。好調を維持しています。 また、インタラクティブコンテンツを制作するバスキュールなどと共に「HAROiD」を設立し、視聴者参加型LIVE CMなど、テレビとインターネットを連動させた新サービスを提供していました。 現在、HAROiDは株式会社LiveParkと株式会社YourCastに分社化しており、YourCastは在京民放5社と広告会社4社が出資する株式会社プレゼントキャストに株式譲渡されました。今後はインターネット領域をさらに強化し、映像コンテンツだけでなく、イベントや教育など人々の生活に根付いた総合コンテンツ企業を目指します。 中期経営計画2022-2024では、テクノロジーを活用したコンテンツ開発として、XR・ブロックチェーン/NFT・AI・VFXの活用を通じ、次世代コンテンツの開発に乗り出すことが掲げられています。

日本BS放送株式会社の動向

ビックカメラ傘下でBSチャンネルのBS11を運営する日本BS放送は、営業利益率20%前後の水準で推移。放送業界トップクラスの利益率を誇ります。 日本BS放送は六大メディアに所属しない独立系のテレビ放送事業者であるため、比較的自由に番組枠・広告枠を設定することができ、さまざまなスポンサーのニーズに対応した「説明型CM」の提供が可能です。 また、競馬やアニメ、韓国ドラマ、通信販売を中心に高品質な自社制作番組を放送し、広告枠の付加価値が向上し広告収入が増加しており、高い利益率を維持しています。今後はアニメ・スポーツ・エンターテインメントを強化するとともに、自社制作番組に積極的に投資を進めています。 2022年度の業績は、自社制作コンテンツの強化、良質なコンテンツへの出資、配信ビジネス等の新規事業開発に取り組み、増収増益となり、コロナ禍前の水準まで戻しています。

放送業界の今後の展望

放送業界の今後の展望としてまず挙げられるのは、4K・8K放送の普及です。2018年12月1日にBSで一部の4K・8K放送が開始され、将来的には地上波でも普及することが予測されています。しかし4K・8K放送に対応するため、テレビ放送事業者は設備投資を負担する必要があり、消費者側も対応するテレビやチューナーを用意しなければなりません。 さらに、放送事業者の業績悪化や「マスメディア集中排除原則」の一部緩和を背景に、今後は放送事業者間での再編が進行すると予測されます。 放送事業者は業績悪化に伴い収益の多角化が必要となり、消費者のニーズが「モノ消費(所有のための消費)」から「コト消費(体験のための消費)」に移行しているため、有力コンテンツを活用した参加型イベントが増加すると考えられます。 フジテレビが主催する「お台場夢大陸」や、テレビ朝日が主催する「テレビ朝日・六本木ヒルズ 夏祭り SUMMER STATION」などのイベントは人気を博しており、このようなイベントがさらに増加する予測です。 スマートフォンやタブレット端末の普及に伴い、Netflix、Hulu、Amazon Prime Videoなどの動画配信サービスが台頭してきました。テレビ局各社も自社で動画配信サービスを整備し、動画配信サービスに注力しています。 在京民放5局が共同で立ち上げた無料配信サービス「TVer」では、見逃したテレビ番組を無料で配信しており、視聴率の維持・向上を図っています。今後、このようなテレビと動画配信サービスの連携が強まり、一つのコンテンツをさまざまな媒体で視聴可能になると考えられるでしょう。 この傾向が強まると、テレビ発・ネット発を問わず、コンテンツの質や魅力が最重要視されるようになり、ネット動画配信企業とテレビ放送事業者の垣根が曖昧になっていくと予測されます。

放送業界の今後の展開に注目

放送業界は技術の進化や視聴者のニーズの多様化に対応しながら、収益の最大化を図るために多岐にわたる戦略を展開しています。テレビとラジオ、それぞれの独自の特徴を活かしつつ、動画配信サービスとの連携を強めるなど、新たなビジネスモデルの構築が求められているのです。 今後も放送業界は、技術革新や市場動向に柔軟に対応しつつ、視聴者の期待に応えるコンテンツを提供することが重要となるでしょう。 ▼その他の業界特集はこちらから! テレビ通販業界とは?暮らしを変える販売の仕組みと役割を徹底解説 エンターテインメント業界の最新の動向から導き出す今後の展望は? スポーツ用品業界の最新動向!消費者の購買行動の変化や振興策も解説 ▼BIZMAPSのオリジナルタグを元にした企業特集はこちらから! 暮らしを支える製鉄所の現状とは?関連企業の売上ランキングも紹介 ビジネス界に大きな影響を与えたホリエモンの経歴を解説します! 芸能事務所とレコード会社の違いとは?企業情報15社を紹介します! オウンドメディア運営とは?運用方法や得られるメリットを解説!

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