一色 みわ 0 Comments
クリーニング業界とは、衣類や布製品を洗浄して清潔な状態にするサービスを提供する業界のことです。主に個人や法人から衣類やリネンを預かり、専門的な機械や技術を使って洗浄し、仕上げて返却します。 クリーニング店やコインランドリー、ホテルや病院向けのリネンサプライ事業などが含まれ、私たちの日常生活やビジネス環境を清潔で快適に保つ重要な役割を担っています。 本記事では、クリーニング業界の定義をはじめ、業界構造や取扱商品の特性、主要プレイヤーの動向などを解説します。クリーニング業界の今後についても触れていますので、ぜひ参考にしてください。 なお、BIZMAPSではクリーニング業界に関連する企業の情報を掲載中です。クリーニング業界における各企業の詳細は、【業界名:クリーニング】からご確認いただけます!是非合わせてご覧ください。

クリーニング業界とは?

クリーニング業界とは、衣類や布製品をきれいにするサービスを提供する業界のことを指します。クリーニング業界の主な役割は、個人や法人から衣類や布製品を預かり、専用の洗浄設備や技術を使って汚れを落とし、仕上げた商品を届けることです。 具体的には、クリーニング店での衣料品の洗浄・アイロンがけ、コインランドリーでのセルフサービス洗濯機の提供、ホテルや病院などで使用されるシーツやタオルを洗うリネンサプライ事業など、多岐にわたります。 例えば、普段私たちが利用するクリーニング店では、家庭の洗濯機では落とせない頑固な汚れや、特殊な素材の衣類を専門的にケアします。一方、コインランドリーは、大型の洗濯機や乾燥機を利用して、自分で手軽に洗濯できるサービスを提供。 また、リネンサプライ事業では、ホテルや飲食店、医療機関などで使われる大量の布製品を洗浄し、清潔な状態で再利用できるようにするサービスが主流です。 このように、クリーニング業界は私たちの生活や仕事の場を清潔で快適に保つ重要な役割を担っています。衣類や布製品を長く美しい状態で使えるようにするだけでなく、手間を省く便利さや衛生面の安心感を提供しているのが特徴です。

クリーニング業界の業界構造

クリーニング業界の運営方法は、主に以下の3つです。これらの運営方式により、クリーニング業界はさまざまなニーズに対応しています。
  • クリーニング店
  • コインランドリー
  • リネンサプライ
ここでは、それぞれの仕組みを詳しく解説します。

クリーニング店

クリーニング店には大きく分けて2種類の運営方式があります。
  • クリーニング所
クリーニング設備と商品を受け取る店舗が同じ場所にある方式です。この場合、洗濯物の受付から洗浄、引き渡しまでが一か所で完結します。
  • 取次所
クリーニングの設備がない店舗で商品を受け取り、工場でクリーニングを行う方式です。取次所は直営店として運営されることもありますが、最近ではフランチャイズ(FC)方式が一般的です。取次所では洗濯物の受け取りと引き渡しのみを行い、クリーニング自体は別の工場で実施されます。 商品はお客様が店舗に持ち込む場合と、業者が個人や法人を訪問して回収する場合があります。

コインランドリー

コインランドリーも直営とフランチャイズの両方で運営されています。店舗には自動洗濯機や乾燥機が設置されており、利用者が自分で洗濯物を持ち込み、洗剤の投入や操作を行います。最近では、機械の使い方をサポートするためにスタッフを配置する「有人店舗」が増えています。 また、コインランドリーのタイプは以下の2つです。 都市型:下着などの日常的な衣類を洗う人向け 郊外型:毛布やカーテンなど、大型の洗濯物を洗う人向け 現在は、この2つのタイプがほぼ同じ割合で利用されています。

リネンサプライ

リネンサプライとは、ホテルや病院、飲食店などで使用されるシーツやタオル、テーブルクロスなどの布製品を貸し出し、回収、クリーニングして再び清潔な状態で提供するサービスです。 リネンサプライ事業者は顧客のニーズに合わせて布製品を在庫として保有し、定期的に貸し出します。使用後の製品は回収され、専用工場で洗濯・消毒を行ったうえで再納品されるため、施設側は在庫管理や洗濯設備が不要となり、効率的な運営が可能です。

クリーニング業界の取扱商品の特性

クリーニングには、使う方法や技術によっていくつかの種類があります。それぞれの方法には特徴があり、衣類の素材や汚れの種類に応じて使い分けられています。
  • ランドリー
ランドリーは、一般的な水と業務用の洗剤を使って汚れを落とす方法です。洗濯機を使って洗うため、大量の衣類を効率よく洗えます。この方法は、ワイシャツや白衣など、丈夫で水に強い衣類向けです。普段私たちが家庭で行う洗濯と似ていますが、クリーニング店では専用の機械や洗剤を使うため、より清潔に仕上がります。
  • ドライクリーニング
水ではなく溶剤を使うクリーニング方法です。この方法は、ウールやシルクなどのデリケートな素材や、形を保つ必要があるスーツやドレスなどに使われます。水を使うと形が崩れたり縮んだりしてしまう衣類を優しく洗えるのが特徴です。 ドライといっても完全に乾燥した状態ではなく、溶剤を使って汚れを浮き上がらせる技術で、特に高級な衣類やおしゃれ着のケアに向いています。
  • ウェットクリーニング
ウェットクリーニングは、水で洗うべきでないとされる衣類を、特殊な技術で水洗いする方法です。本来ならドライクリーニングをする衣類を、あえて水で洗うことで、水溶性の汚れを落とします。デリケートな衣類を傷めずにきれいにできるため、クリーニングの技術が必要とされる少し特別な方法です。 これらの中で、ドライクリーニングが最もよく使われています。特にビジネス用のスーツやコート、フォーマルな衣類には欠かせない方法です。一方で、最近ではウェットクリーニングも注目されており、環境への配慮や、より衣類に優しい洗浄方法として需要が増えています。

クリーニング業界のビジネスモデル

クリーニング市場は縮小傾向にあり、すでに成熟した業界といえます。クリーニング業は作業工程が多く、大量の衣類を効率よく処理する必要があるため、機械設備への投資が欠かせません。そのため、機械装置に依存する「装置型産業」とされています。しかし、サービス内容の差別化が難しく、価格競争が激化しているため、厳しい競争環境にあります。 クリーニング需要が減少する要因は、以下の3つです。
  • オフィスカジュアルの普及
ビジネスウェアのカジュアル化により、スーツなどクリーニングが必要な衣類の利用が減少しています。
  • 家庭での洗濯の進化
高機能な洗濯機や家庭用洗剤、アイロンが普及したことで、家庭でも簡単に衣類をケアできるようになり、クリーニングの必要性が薄れています。
  • 節約志向の高まり
特に若者を中心に、節約の意識が高まり、クリーニングにお金をかける人が減っています。 なお、新規参入は全体的に減少していますが、近年では家事代行サービスが注目されています。これらのサービスは衣類の洗濯やベッドメイキングなど、クリーニング業と重なる部分が多いため、競争相手として無視できない存在です。 そして、コインランドリーは、共働き世帯の増加やアレルギー対策で毛布などの大物を洗うニーズが高まり、利用者が増えています。また、大手コンビニチェーンの参入による店舗拡大も進んでいます。 一方、リネンサプライは病院やホテルでの需要が増加していますが、顧客からの値下げ要求が強く、事業者は厳しい価格交渉に直面しているのが現状です。

クリーニング業界の市場規模とトレンド

クリーニング業界は、少子化による人口減少や家庭用洗濯機の高機能化により、自宅で簡単に洗濯できるようになったことから、全体的に縮小傾向にあります。さらに、2020年と2021年には新型コロナウイルス感染症の影響で外出が減り、クリーニング需要が大きく落ち込みました。 しかし、2022年以降、経済活動が再開し外出機会が増えたことで、市場規模は回復傾向にあります。2024年現在もコロナ禍前の水準には完全には戻っていませんが、業界は少しずつ回復基調にあり、特にコインランドリーや宅配クリーニングといった新しいサービスの需要が増えています。 なお、クリーニング店や取次所の数は減少していますが、コインランドリーの数は増えています。例えば、2019年時点で全国に約2万1,900軒ありました。特に、共働き世帯の増加や、アレルギー対策として布団やカーテンなどの大きな洗濯物を気軽に洗いたい人が増えたことが、コインランドリー利用者の増加につながっています。 さらに、最近では、インターネットで注文できる「宅配クリーニング」やスニーカー専用のクリーニングなど、新しいサービスを展開する施設も増加。新たな需要を掘り起こす動きが見られます。これにより、伝統的なクリーニング業界も少しずつ変化し続けています。

クリーニング業界のマクロ環境

クリーニング業界の動向や参入企業の収益性に影響を与える要因として、大きく3つのポイントがあります。
  • 家庭での洗濯事情の変化
家庭用洗濯機の性能が向上し、自宅で洗えるスーツや形状記憶のワイシャツが普及したことで、クリーニング店の利用が減少しました。この結果、市場が縮小し、クリーニング施設の数も減少しています。
  • コインランドリー需要の増加
共働き家庭の増加により、平日に洗濯する時間が取れず、夜間や週末にコインランドリーを利用する人が増えています。また、花粉症やアレルギー疾患を持つ人が増えたことで、毛布やカーテンなど大きな洗濯物を頻繁に洗い、アレルギー症状を軽減したいというニーズも高まっています。 これらの要因から、コインランドリーの利用者が増え、施設数も増加しているのです。
  • リネンサプライ市場の安定
訪日外国人の増加によるホテルの稼働率上昇や、高齢化による病院や老人ホームの利用増加、さらに2018年の規制緩和による民泊サービスの拡大が、リネンサプライ市場を支えています。これらの施設では大量のリネンが必要とされ、リネンサプライの需要が堅調に推移しています。 これらの要因が業界全体に影響を与え、クリーニング市場や関連ビジネスの成長や変化を形作っています。

クリーニング業界の相関図・業界地図

クリーニング業界は多くの個人経営の企業が存在し、市場シェアは分散していますが、近年では大手企業が経営の厳しい中小企業や事業承継が必要な企業を買収する動きが活発化しています。 主要企業には「白洋舎」「きょくとう」「WASHハウス(コインランドリー)」などがあり、M&Aを通じた規模拡大が進行中です。例えば、きょくとうは「神戸ホープ」を吸収合併し、バスケットは「ストライプインターナショナル」の傘下に入りました。 また、リネンサプライ業界では病院リネンを手がける「ワタキューセイモア」や「トーカイ」、ホテルリネンの「白洋舎」や「東急リネン・サプライ」が主要企業で、提携や子会社化を通じて基盤を強化しています。 全体として、大手企業が競争力を高める一方、地域に根ざした中小企業も存在し、大手と中小が共存しながら業界全体が変化を続けています。

クリーニング業界の主要プレイヤーの動向

クリーニング市場が縮小する中で、コインランドリー事業に注力し急成長しているのがWASHハウスです。 同社はフランチャイズ(FC)店と直営店を運営し、2016年に上場しました。コインランドリー事業は商圏が狭いため、店舗網の拡大が重要であり、WASHハウスでは特にFC店での運営効率を高めるためにIoT技術を活用しています。 監視カメラや遠隔操作システムを組み合わせた集中管理システムを導入することで、接客品質を維持しつつ、トラブルが発生した際にも迅速な対応が可能です。 また、洗濯時間を有効活用できるよう、小売店や飲食店を併設した店舗も展開しています。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響で新規出店が制限され、2023年7月時点での店舗数は435店舗に留まっています。 一方、「うさちゃんクリーニング」を展開するロイヤルネットワークは、宅配クリーニングと衣類保管を組み合わせた「クリーニングパック」を提供中です。このサービスでは、集荷からクリーニング、最大9か月間の保管、そして配送までを一括で行うため、都市部の収納スペースが限られた家庭に人気です。 リネンサプライ業界では、病院やホテルの稼働率の高さを背景に需要が堅調に推移しています。トーカイは、リネンサプライに加えて入院セットの提供や清掃などの医療周辺業務を一括受託することで差別化を図り、医療機関のPFI事業にも積極的に参入。 さらに、業界で先駆けて手術用リネンのリユースシステムを事業化し、コスト削減と環境負荷の軽減を実現して病院から注目を集めています。 一方、中小規模の事業者も、自社の強みを活かした独自のサービスを展開。例えば、衣類の修繕やリサイクル対応など、環境に配慮した取り組みを行うことで差別化を図っています。また、顧客獲得競争が激しくなる中で、LINEでのクーポン配信などSNSを活用した販売促進も重要となっています。

クリーニング業界の今後の業界展望

クリーニング業界の今後の展望を知ることで、ビジネスの方向性を見極め、新たなサービスや市場への対応策を考えるヒントが得られます。ここでは、クリーニング業界の今後の展望について、以下の2点に焦点を当てて解説します。
  • 新型コロナウイルス感染症による業界への影響
  • クリーニング市場の縮小とコインランドリー市場の成長

新型コロナウイルス感染症による業界への影響

新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、クリーニング業界全体が大きな影響を受けました。外出機会の減少に伴い、シャツなどのクリーニング需要が減少したほか、店舗型クリーニング店では利用者と接触するリスクが敬遠され、利用控えが広がりました。 これに対し、各社は靴やベビーカーなど衣類以外の商品を取り扱うサービスの周知や、非接触で受け渡しが可能なロッカーの設置といった取り組みを進めています。一方で、非接触が可能な宅配型クリーニングサービスの需要は急増しており、業態による明暗が分かれています。 なお、コインランドリー事業も外出自粛の影響が懸念されましたが、事業者側は業務用乾燥機による高温乾燥でのウイルス対策をアピールし、利用者減少を最小限に抑える動きが見られました。一方、リネンサプライ事業では、貸出先であるホテルの利用激減が直撃し、業績への影響が避けられない状況となっています。 ただ、その後はインバウンド需要の回復やホテル利用の増加により、リネンサプライ事業の業績も徐々に回復しています。

クリーニング市場の縮小とコインランドリー市場の成長

クリーニング市場やリネンサプライ市場は、少子高齢化や家庭用洗濯機・洗剤の高機能化による需要減少で縮小が続いています。一方、共働き世帯の増加などを背景に、コインランドリー市場は成長が期待されています。 今後のクリーニング業界では、いくつかの変化が予測されます。まず、コインランドリーの店舗数が増加し、業態が進化すると考えられます。共働き世帯の増加や女性の社会進出の促進により、利便性の高いコインランドリーの需要がさらに拡大する見込みです。 また、人工知能を活用した無人クリーニング店舗の登場や、カフェやコンビニと併設した複合型店舗の増加も予測され、利便性の向上が進むでしょう。 次に、クリーニング業界と周辺業界の相互参入が活発化すると考えられます。市場の縮小に対応するため、クリーニング業界の企業は新たな分野に進出する動きを見せています。例えば、ロイヤルネットワークは衣類保管サービスを展開し、トーカイは病院向けの物流機能を活用して医療周辺業務に参入しています。 一方、異業種からクリーニング業界への参入も進んでおり、アパレル業界のストライプインターナショナルが宅配クリーニングを手がけるほか、通販業界の千趣会は宅配・保管クリーニング事業に参入しています。これらの動きは、クリーニングやリネンサプライの物流機能を他事業と組み合わせて相乗効果を狙うものです。 今後は、技術革新や異業種との連携を通じて、クリーニング業界が新たな可能性を模索し続けることが期待されます。

まとめ:クリーニング業界の変化と新たな成長の鍵

クリーニング業界は、少子化や家庭用洗濯機の進化により市場が縮小していますが、共働き世帯の増加を背景にコインランドリー事業が成長しています。また、宅配クリーニングや保管サービス、環境に配慮したサービスなど、新しい取り組みも広がりを見せています。 今後は技術革新や異業種連携がさらなる競争力向上の鍵となるでしょう。 なおBIZMAPSでは、オリジナルタグを用いて多様なアプローチで企業情報を検索できます。クリーニング業界の企業はもちろん、国内200万社以上の企業の基本情報が無料で閲覧でき、売上や従業員数などの情報を基にターゲット企業を絞り込むことが可能です。 ▼その他の法人営業ハックの業界企業の特集はこちら! ゲーム業界の市場動向と課題とは?主要プレーヤーの動向もチェック 芸能プロダクション業界を解説!業界地図や新たなメディアでの戦略も 出版業界とは?今後の展望を見据え業界内容を徹底的に解説します! コンテンツ制作の市場規模やトレンドを解説!主要プレーヤーの動向や展望も ネット広告業界とは?広告代理店の紹介や業界最新情報を紹介します! 放送業界の現状と展望を徹底解説!トレンドや主要プレーヤーの動向も 注目のイベント・ディスプレイ業界とは?コロナ禍を経て新たなる展開へ 医療機器商社業界とは?病院・クリニックを支える仕組みと主要企業の動向

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