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フードデリバリービジネスは、かつてはコストやオペレーションの煩雑さから大手チェーンに限られた展開でした。しかし近年の物流の高度化やモバイルテクノロジーの普及により、フードデリバリーサービスは一気に普及期に入っています。
このフードデリバリー市場の成長性の高さから、創業から短期間でグローバル規模でトッププレイヤーとして展開する企業も登場し、ベンチャーキャピタルや投資ファンドからの投資が相次いでいます。
本記事では、急拡大するフードデリバリービジネスの海外での展開状況と最新の事例を紹介し、世界で起こりつつある飲食ビジネスの変化を考察します。
海外のフードデリバリービジネスの現状
まず、海外のフードデリバリービジネスの現状について、次の内容を解説します。
- 店舗型飲食ビジネスの限界
- 技術の進化と市場の変化
- フードデリバリー業界の競争
- サブスクリプションモデルの普及
店舗型飲食ビジネスの限界
店舗型飲食ビジネスは来客数が商圏規模に制約され、サービス提供可能な顧客数も限られています。このため、デリバリービジネスへのニーズは高いものの、自社で配送網を整えるコストや手間が障壁となっていました。
特に都市部における交通渋滞や駐車スペースの不足、さらには配送スタッフの確保など、フードデリバリーには多くの課題が存在しています。また、消費者のライフスタイルの変化に伴い、外食の頻度が減少し、フードデリバリーの需要が高まっていることも無視できません。
技術の進化と市場の変化
グローバル規模でのスマートフォンの普及や、AmazonなどのECの本格的普及に伴う物流網の整備により、デリバリービジネスは急成長しました。新しい物流モデルの浸透により、企業はデリバリーによる新たな購買機会を獲得し、機会損失を最小化しています。
さらにAIやビッグデータの活用により、顧客の嗜好や行動パターンを分析し、個々のニーズに応じたサービス提供がフードデリバリーにおいても可能となりました。
フードデリバリー業界の競争
海外でもフードデリバリー業界は競争が激化しており、多くの企業が新しいサービスやビジネスモデルを展開している状況です。例えば、地域の食材を使用した高品質な料理の宅配や、特定の食事制限に対応したメニューの提供など、差別化を図るための取り組みが進んでいます。
消費者の健康志向の高まりに応じて、オーガニック食材やビーガンメニューを提供する企業も増加しています。
サブスクリプションモデルの普及
フードデリバリーにおいてもサブスクリプションモデルを採用する企業が増えており、消費者は定期的に食材や料理を受け取れるようになりました。消費者は忙しい日常の中で手軽に食事を楽しめて、企業は安定した収益が確保できます。
さらに、サブスクリプションモデルは顧客との長期的な関係を築くための効果的な手段でもあり、リテンション率の向上にも寄与します。
フードデリバリーの海外先進事例

海外ではフードデリバリー事業が盛んです。どのような事例があるのか、次の3つの海外のサービスに分けてご紹介します。
- 食材キットの宅配サービス
- 調理済み食品の宅配サービス
- シェフの派遣サービス
1. 食材キットの宅配サービス
「Blue Apron」や「Munchery」などの企業は、調理済み食材やレシピを提供するフードデリバリーサービスを展開しています。これらのフードデリバリーサービスは、忙しい消費者にとって便利で、食品ロスを減らし、環境にも優しい点が特徴です。
「Blue Apron」は、2013年にニューヨークで創業し、1週間に3食分の食材とオリジナルレシピを提供するフードデリバリーのサブスクリプションモデルを採用している企業です。消費者は地元の農家から厳選された食材を受け取り、簡単に調理することができます。さらに「Blue Apron」は食材の品質管理に厳格な基準を設けており、消費者に対して安心・安全な食材を提供しています。
「Munchery」は、2010年にカリフォルニアで創業し、半調理済みの食材キットを提供するフードデリバリーサービスを展開している企業です。地域の生産者から直接仕入れた新鮮な食材を使用し、調理時間が短縮できます。また、「Munchery」は消費者の健康を考慮し、栄養バランスに配慮したメニューを提供しています。
「Home Chef」は、2013年にシカゴで創業し、毎週10種類程度のメニューから選べる食材キットのフードデリバリーを提供している企業です。消費者は自分の好みに合わせてメニューを選べて、手軽に美味しい料理が楽しめます。また季節の食材を活用したメニューや、特定の食事制限に対応したオプションを提供し、幅広いニーズに応えています。
2. 調理済み食品の宅配サービス

GrubHubやJUST EAT、UberEatsなどの企業が展開する調理済み食品のフードデリバリーサービスは、オンラインで注文ができ、迅速な配達が可能です。これらのフードデリバリーサービスは、利便性を求める消費者に支持されています。
GrubHubは2004年にシカゴで創業し、2014年にはニューヨーク証券取引所に上場しました。同社は提携レストランが調理した料理を消費者に配達するフードデリバリーサービスを提供しており、消費者はクレジットカードやペイパルで支払いが可能です。注文から配達までのプロセスをシンプルかつ効率的におこなうためのシステムを構築しており、消費者の利便性を最大限に高めています。
JUST EATは2001年にイギリスで創業し、2014年にロンドン市場に上場しました。多様なレストランと提携し、オンラインで注文を受け付け、レストランが直接配達するモデルを採用しています。2021年にはドローンを使用したフードデリバリーサービスを開始し、革新的なサービスを展開。地域密着型のサービスを提供することで、消費者に対して高い満足度を実現しています。
UberEatsはUberの配車サービス基盤を活かし、2016年にデリバリーサービスを開始しました。登録した配達員がレストランから料理をピックアップし、迅速に配達するモデルで、多くの都市で展開。2020年には東京でもサービスを開始し、多くの消費者に支持されているサービスです。配達時間の短縮や配達地域の拡大など、常にサービスの向上を図っています。
3. シェフの派遣サービス
「On Demand Chefs」や「La Belle Assiette」などの企業は、オンラインでシェフを派遣するサービスを提供しています。これにより消費者は、自宅やオフィスでプロの料理を楽しめます。
「On Demand Chefs」はボストン発で、顧客がオンラインでシェフを予約し、指定したメニューを調理してもらえるサービスです。ジュニアシェフからマスターシェフまで、さまざまなレベルのシェフが利用可能で、価格も異なります。消費者のニーズに応じたカスタマイズメニューを提供し、特別な食事体験を提供しています。
「La Belle Assiette」はフランス発のサービスで、ヨーロッパにおいてオンデマンドシェフサービスのリーディングカンパニーです。自宅でのランチやディナーパーティーに最適なシェフをオンラインで予約し、必要な材料や調理器具を持って訪問するモデルです。
ユーザーに最高の食事体験を提供するために、シェフが料理のクオリティやサービスの質に徹底的にこだわっていて、シェフのプロフィールや過去のレビューを参考にしながら、自分の好みに合ったシェフが選べます。さらに、シェフは各国の料理や特定のテーマに対応したメニューを提供しており、ユーザーの要望に応じたカスタマイズが可能です。
海外におけるフードデリバリースタートアップの資金調達の状況

フードデリバリースタートアップはベンチャーキャピタルから注目を浴びており、大型の資金調達が相次いでいます。海外でのフードデリバリースタートアップについて、いくつかの事例を紹介しましょう。
食材キットのフードデリバリーサービスGobbleは、2015年10月にTrinity Venturesが主導したシリーズA投資ラウンドで1,075万ドルの調達に成功しました。Gobbleは10分以内に調理が可能な半調理済みの食材キットを提供しており、忙しい家庭にとって非常に便利です。地元の生産者から新鮮な食材を仕入れ、栄養バランスに優れたメニューを提供しています。
Blue ApronはシリーズD投資ラウンドを迎え、2015年9月時点の合計で19億3,000万ドルの投資を受けている企業です。サブスクリプションモデルを採用し、1週間に3食分の食材とレシピを提供するフードデリバリーサービスを展開。高品質な食材と独自のレシピにより、消費者に対して手軽で美味しい食事を提供しています。
調理済み食品の宅配サービスGrubHubは、2009年3月にシリーズB投資ラウンドでOrigin Ventures、Leo Capital、Amicus Capitalより200万ドル調達しました。多様なレストランと提携して、消費者に幅広い選択肢を提供しています。注文から配達までのプロセスを効率化し、消費者の利便性を最大限に高めているフードデリバリーサービスです。
調理済み食品のフードデリバリーサービスFood Pandaは、2016年12月時点で創業以来合計3億1,800万ドルの資金調達に成功しました。グローバル規模で展開しており、世界中の多くの都市でサービスを提供。消費者に迅速かつ効率的な配達サービスを提供するために、最新のテクノロジーを活用しています。
JUST EATは、2014年4月にロンドン市場へのIPOで24億5,000万ドルを調達しました。JUST EATは、多様なレストランと提携し、オンラインで注文を受け付け、レストランが直接配達を行うモデルを採用しています。2021年にはドローンを使用したフードデリバリーサービスを開始し、革新的なサービスを展開しています。
海外のフードデリバリービジネスの位置づけ
フードデリバリービジネスは、消費者にとって「AT HOME EATING」の選択肢を多様化させるビジネス革新をもたらしています。代表的なフードデリバリービジネスの事例を紹介しましょう。
スーパーでの買い物の延長として新鮮な食材や日用品を手軽に入手できるGrocery Storesのサービスは、消費者にとって便利であり、日常の生活をサポートしています。例えばWalmartやTESCO、Carrefourといった大型スーパーがオンラインで食材や日用品を提供しており、消費者は店舗に足を運ばずに必要な商品が購入可能です。
- Grocery Delivery(グロサリーデリバリー)
オンラインのネット通販サービスでは、消費者は食材や日用品を注文し、自宅に配送してもらえます。AmazonやFreshDirect、Ocadoなどがこの分野で活躍しており、消費者は豊富な品揃えと迅速な配送サービスが利用可能です。消費者は日常の忙しさの中で、手軽に必要な食材が入手できます。
- Prepared Groceries(プリペアドグロサリーズ)
食材キットのフードデリバリーサービスは、消費者が簡単に料理を楽しむための利便性を提供しています。「Blue Apron」や「Munchery」、「Gobble」、「Home Chef」などの企業は、調理済みの食材キットやレシピを提供しており、消費者は短時間で美味しい料理が作れます。忙しい日常の中で、手軽に本格的な料理を楽しめるのがメリットです。
- Meal Deliveries(ミールデリバリー)
調理済み食品のフードデリバリーサービスは、忙しい消費者にとって非常に便利です。GrubHubやJUST EAT、UberEatsなどの企業が提供するサービスは、オンラインで注文ができて迅速に配達されるため、消費者は手軽に食事が楽しめます。外食する時間がない消費者でも、自宅でレストランの味が楽しめるでしょう。
- Personal Chef(プロフェッショナルシェフ)
シェフの派遣サービスは、プロの料理を自宅で楽しむことができる革新的なサービスです。On Demand ChefsやLa Belle Assietteなどの企業は、オンラインでシェフを予約し、特別な食事体験を提供しています。家庭でも高級レストランの味を楽しめて、特別なイベントやパーティーに最適です。
フードデリバリービジネスの環境への影響

フードデリバリービジネスの成長に伴い、環境への影響が増大している状況です。各企業は、サステナブルなパッケージングや、食品ロスの削減に取り組むことが求められています。例えば「Blue Apron」は、食品ロスを最小限に抑えるために、厳選された食材を適切な量で提供。また再利用可能なパッケージを採用し、環境への負荷を軽減しています。
さらにフードデリバリー業界全体では、環境に配慮した取り組みが進んでいます。多くの企業がプラスチックの使用を減らして、再利用可能な容器や生分解性の材料を採用して、廃棄物の削減と環境保護を推進中です。
また、エネルギー消費の増加も見逃せません。企業は効率的な配送ルートの構築や、電動配送車の導入など、エネルギー消費の削減に取り組む必要があります。UberEatsは電動自転車や電動スクーターを利用する配達員を推奨しており、エネルギー消費の削減に努めているところです。
ドローンや自動運転車を活用した配送も注目されています。これらの技術を導入することで、配送効率の向上とエネルギー消費の削減が期待されています。フードデリバリー業界の企業は、持続可能な配送モデルを構築して、環境への負荷を最小限に抑える努力を続けているのです。
海外フードデリバリービジネスの今後の展望
海外フードデリバリービジネスの今後の展望としては、次のようなトピックが挙げられます。
- 技術革新
- 新たなビジネスモデルの登場
- 顧客体験の向上
- グローバル展開の強化
1. 技術革新
フードデリバリービジネスは、技術革新によってさらなる進化が期待されます。AIや自動運転技術を活用した配送の効率化が進むことで、配送コストの削減や配達時間の短縮が実現されるでしょう。また、ドローンを使用した配送も実現可能性が高まっています。JUST EATはドローンを使用したフードデリバリーサービスを開始しており、効率的な配送モデルの構築を目指しています。
さらに、AI技術を活用した需要予測や在庫管理の最適化も進んでいます。これにより、企業は効率的なオペレーションを実現し、コスト削減と顧客満足度の向上が実現可能です。AIを活用したパーソナライズドサービスの提供も注目されており、消費者の嗜好に合わせたメニュー提案もできるようになっています。
2. 新たなビジネスモデルの登場

フードデリバリービジネスは、新たなビジネスモデルの登場によって、さらに多様化するでしょう。例えばサブスクリプションモデルやオンデマンドサービスの普及により、消費者はより柔軟なサービスを利用できるようになります。また、健康志向の高まりに伴い、健康的な食材やメニューを提供するサービスが増えることが予想されます。
サブスクリプションモデルでは、定期的に食材や料理を届けることで、消費者は手軽に食事を楽しめます。このモデルでは企業が安定した収益を確保して、顧客との長期的な関係の構築が可能です。
オンデマンドサービスでは、消費者が必要なときに必要なサービスを利用できるため、利便性が向上するでしょう。
3. 顧客体験の向上
顧客体験の向上も今後のフードデリバリーにおいて重要な課題です。企業は消費者のニーズに応じたパーソナライズドサービスを提供することで、顧客満足度の向上が求められます。例えば消費者の好みやアレルギー情報を元に、最適なメニューを提案するサービスなどが考えられるでしょう。
また、顧客とのコミュニケーションを強化するために、カスタマーサポートの充実や、フィードバックを活用したサービス改善が重要です。消費者の声を反映したサービス提供により、顧客の信頼が得られるでしょう。
4. グローバル展開の強化
フードデリバリービジネスは、グローバル展開の強化が進むでしょう。各企業は海外市場への進出や現地パートナーとの提携を通じてサービスの拡大を図り、グローバル規模での成長が期待されます。
特に新興市場ではフードデリバリーの需要が高まっており、企業にとって重要な成長機会です。現地のニーズに合わせたサービス提供やローカルパートナーとの協力により、成功する可能性が高まります。
日本での飲食デリバリービジネス展開の可能性

日本においても、デリバリーサービスはすでに多くの企業によって展開されています。もともと出前文化が根づいているため、新たなフードデリバリーサービスの導入が期待できる市場です。
出前館やぐるなびデリバリーなど、オンライン出前サービスが人気を集めており、すでにいくつかの企業が新しい形態の飲食デリバリーに取り組んでいます。最近では、食材キットを提供する「
Oisix」や「コープデリ」が注目されています。
また、環境に配慮したサービスや健康志向の高まりも影響を与えている要素です。消費者は安心・安全な食材を求める傾向が強まっており、オーガニックやヘルシーな食事が求められています。今後、こうしたトレンドに応じたフードデリバリーサービスがますます増えるでしょう。
さらに、地域特有の食材や料理を活かしたサービスの提供も重要です。たとえば地方の伝統的な料理や季節限定の食材を使用したメニューを提供することで、顧客に新しい食体験が提供可能です。地域の農産物や漁業産物を活用して地元の生産者を支援し、地域経済の活性化にも寄与できるため、消費者のロイヤリティを高められるでしょう。
国内・海外のフードデリバリービジネスに注目
フードデリバリービジネスは、技術の進化と市場の変化に伴い急速に拡大しており、今後も注目される市場です。海外だけでなく、日本においても関連ビジネスの拡大が期待されており、企業は新たなサービスやビジネスモデルを展開することで競争力を高めることが求められます。
今後どのような新しいサービスが登場するのか、国内・海外のフードデリバリービジネスに注目しましょう!
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