一色 みわ 0 Comments
中古住宅流通市場とは、すでに建てられた住宅(中古住宅)を売買・賃貸・リフォームして再活用する市場です。中古住宅は新築住宅と比べて価格が抑えられ、リノベーションによる価値向上も可能なため、近年注目が高まっています。 本記事では、中古住宅流通市場の現状や課題、拡大に向けた取り組みについて分かりやすく解説します。ぜひ参考にしてください。

中古住宅流通市場の概況

日本の中古住宅流通市場は、新築住宅と比べるとまだ小規模ですが、少子高齢化や人口減少の影響を受けて、その役割がこれまで以上に重要になっています。近年は震災復興や賃貸住宅の需要増加によって新築住宅の建設が一時的に増えていますが、長い目で見ると減少が続いており、今後は中古住宅などの今ある住宅をうまく活用していくことが求められています。 しかし、日本では中古住宅の売買が流通全体の約15%と少なく、欧米(アメリカ約80%、イギリス約90%)と比べるとその流通には大きな差があります。その理由は、日本では新築住宅を好む人が多いことや、日本の住宅は築年数が経つと価値が大きく下がる傾向があるからです。この状況を改善するために、政府は中古住宅の品質を保証する制度を作ったり、税制を優遇したりして、より売買しやすい環境を整えています。 また、2010年代以降は住宅のリフォーム市場が広がっており、古くなった住宅を維持・改修する動きが活発に。これは、住宅の老朽化が進んでいることに加え、政府がリフォームを後押ししていることや、新築にこだわらず自分好みにリノベーションして住む人が増えていることが関係しているでしょう。 一方で、空き家の増加も大きな問題となっています。老朽化した空き家が放置されると、倒壊の危険が高まるだけでなく、周囲の治安が悪化したり、景観を損ねたりする原因にもなりかねません。さらに、空き家が増えることで土地が有効に使われなくなり、地域の活気が失われるといった課題も出ています。 これから世帯数が減るにつれて、空き家はさらに増えると考えられており、こうした住宅をどう管理し、活用していくかが中古住宅流通の大きな課題となっています。

中古住宅流通市場を広げる政府の取り組み

政府は「住生活基本計画2016」において、中古住宅流通やリフォーム市場の拡大を重要な課題として位置づけ、2025年までに市場規模を現在の約2倍に拡大する目標を掲げています。少子高齢化や人口減少が進む中で、空き家の増加や住宅ストックの老朽化が深刻化しており、住宅市場を新築中心から、中古住宅の活用を重視する市場へと転換することが求められているのです。 現状では、空き家の増加による防災・治安・衛生面での問題が指摘されており、特に老朽化した住宅やマンションの管理・活用が課題となっています。また、住宅が地域コミュニティの維持に重要な役割を果たす一方で、人口減少により地域の居住環境の質が低下する懸念もあります。こうした課題に対応するため、政府は以下の施策を進めています。
  • 中古住宅流通市場の拡大
2025年までに中古住宅流通の市場規模を8兆円(2013年は4兆円)へ倍増
  • リフォーム市場の成長促進
2025年までに市場規模を12兆円(2013年は7兆円)へ拡大
  • 空き家の活用と解体の推進
2025年までにマンションの建て替え累計件数を500件程度に増加(2014年は250件程度) 「その他空き家」(売却や賃貸以外の用途がない空き家)の数を2025年には400万戸程度に抑制(対策なしの場合は500万戸を超える見込み)
  • 住宅の質の向上と住環境の整備
若年世帯や子育て世帯、高齢者が安心して暮らせる住環境の整備 住宅確保が特に困難な人への支援強化
  • 住宅・不動産産業の発展と地域活性化
住宅関連産業の成長を促し、地域経済の活性化につなげる 住宅地の魅力を維持し、都市と地方のバランスの取れた発展を目指す こうした取り組みを通じて、新築偏重の住宅市場から、既存の中古住宅等を有効活用する市場への移行を促し、持続可能な住環境を実現することが目標とされています。

中古住宅が流通しにくい理由とその課題

日本の中古住宅市場は、新築住宅と比べて流通が低迷しており、その背景にはさまざまな課題があります。中古住宅の流通における主な問題として、売主、買主、事業者、金融機関のそれぞれが情報不足や取引リスクの大きさに直面していることなどです。 売主側の課題としては、リフォームや建物の維持管理にかけた努力が市場で正当に評価されにくく、また物件情報の開示に消極的な傾向があることが指摘されています。一方で、買主は物件に関する十分な情報が得られないため、住宅の品質や耐久性に対する不安を拭えず、購入をためらうケースも多いです。 さらに、不動産業者やリフォーム業者などの事業者にとっては、取引に必要な物件情報が少なく、リスクが大きいことが中古住宅流通の市場の活性化を妨げていると言えるでしょう。金融機関も同様に、住宅の詳細な情報が不足していることで、担保価値の判断が難しく、融資に慎重にならざるを得ません。 このように、中古住宅流通市場全体で情報の透明性が低いことが、中古住宅の流通を阻害する大きな要因となっています。政府はこうした課題を解決するために、中古住宅の情報開示を促進し、流通を円滑にするための対策を進めています。

中古住宅市場活性化のための重点施策

政府は、中古住宅市場における流通活性化に向けて、以下のような取り組みを進めています。
  • 建物評価の見直し
  • 住宅ストックの管理強化
  • 金融制度の整備促進
  • 戸建て賃貸市場の拡充
  • 地域との連携強化
まず、建物評価の改善では、宅建業者や不動産鑑定士による査定・評価手法の見直しを進め、住宅ローンの担保評価に新たな指標を導入することで、中古住宅の適正な価格評価を促しています。 次に、住宅ストックの適正な管理です。中古住宅の流通促進に向けて、住宅所有者に対する維持管理の促進、建物検査(インスペクション)の普及、不動産事業者間の連携強化、そしてポータルサイトの活用を推進し、情報の透明性を高めています。 また、金融面での支援として、中古住宅取引をスムーズにするための金融制度の整備や、リバースモーゲージの普及促進、DCF分析を活用した担保評価の導入、新たな金融商品の開発などが検討されています。 さらに、戸建て賃貸住宅市場の活性化に向けて、借主負担のDIY型賃貸の普及促進など、新しい賃貸モデルの導入が進められています。 最後に、地域政策との連携では、地方銀行や自治体と協力し、定住を促すためのローン商品の開発など、地域の住宅市場を支援する施策が展開されています。

中古住宅流通を支える評価制度の見直し

日本では、築20〜25年を過ぎると住宅の市場価値がゼロになる評価方法が一般的です。その影響で住宅投資総額と住宅資産額の間に500兆円以上の差が生じています。この仕組みでは、住宅の状態に関係なく一定の年数が経過すると価値がなくなるため、以下のような問題が発生しています。
  • 適切に維持管理された住宅やリフォームを行った住宅でも正当な評価を受けにくい
  • 住宅の価値が低く見積もられることで、中古住宅の流通が進まない
こうした問題を解決するために、政府は住宅評価の見直しを進めており、以下の対策を講じています。
  • 住宅の構造ごとに評価(基礎・躯体・内外装・設備などに分けて適正に査定)
  • リフォームやメンテナンスの価値を評価に反映
  • 住宅ローンの担保評価に新たな建物評価基準を導入
  • インスペクション(建物検査)の普及を促進し、住宅の状態を客観的に判断
適正な評価制度の導入により、住宅の本来の価値が反映され、中古住宅流通市場の活性化が期待されます。

中古住宅流通促進のための空き家対策

これまで各自治体が個別に運営していた「空き家バンク」を、国土交通省は2017年度中に全国版として一元化する方針を示しました。従来の空き家バンクは自治体ごとに管理されており、利用者はそれぞれの空き家バンクに個別に登録しなければならないうえ、システムや情報の形式が統一されていなかったため、使いづらい状況が続いていました。 この一元化により、全国の空き家情報を一つのシステムで検索・登録できるようになり、利用の利便性が向上します。さらに、全国版空き家バンクと民間の不動産サイトとの連携も検討されており、より多くの人が活用できる仕組みが整えられています。 また、住宅が建っている土地は、固定資産税や都市計画税の特例措置によって税負担が軽減されています。しかし、これが空き家が放置される一因となっていたため、2014年に制定された「空家等対策の推進に関する特別措置法」に基づき、市町村長が所有者に適切な管理を促しても対応がない場合、その土地を特例の適用対象から除外することが可能となりました。 これは、適切に管理されない空き家は税負担が増加し、放置を防ぐという仕組みです。具体的には、小規模住宅用地(200㎡以下)は固定資産税が1/6、都市計画税が1/3に軽減される特例がありますが、空き家が放置されるとこの特例が適用されなくなるため、税負担が大幅に増える可能性があります。 政府のこれらの施策により、空き家の情報を一元管理し、流通を促進するとともに、放置された空き家には税負担を重くすることで、適切な管理や活用を促す仕組みが進められています。

中古住宅流通とリノベーション市場の拡大

新築住宅の購入に代わり注目されているのが、中古住宅を買い取り、大規模リフォームを施して活用する方法です。総費用を抑えながら理想の住まいを手に入れることが可能になるため、リノベーション専門業者だけでなく、デベロッパーやハウスメーカーも市場に参入するなど、業界のプレイヤーも増加。2023年度には「適合リノベーション住宅」件数は累計で7万件を超え、市場の急成長が続いています。 なお、リノベーションには大きく「買取再販型」と「請負型」の2種類があります。
  • 買取再販型
事業者が中古住宅を購入・改修し、消費者に販売するモデル
  • 請負型
消費者が物件を選び、希望に合わせてリフォームを実施するモデル この流れを支えるのが「ワンストップサービス」です。資金計画、物件探し、設計・施工、アフターサポートまでを一括で対応する仕組みが整い、消費者にとっても利便性の高いリノベーションが可能になっています。 これまでのリフォーム業界では工事費用が不透明で、見積もりの不明瞭さが課題とされてきました。しかし近年は、「商品+工事」セット販売 による明確な価格設定が進んでいます。 短時間施工やアフターサービス込みのプランを提供
  • インターネット事業者系(Amazon、リノコなど)
オンラインで工事付きリフォーム商品を販売 これにより、消費者は事前に工事費を把握でき、安心してリフォームを依頼できる環境が整いつつあります。 リノベーション市場は今後も成長が見込まれており、ワンストップサービスの充実、価格の透明化、多能工の育成などが業界の重要なテーマです。政府の支援や新たなビジネスモデルの確立により、中古住宅を活用したリフォーム・リノベーション市場はさらなる発展を遂げるでしょう。

まとめ:中古住宅の活用が広がる新たな流れ

日本の住宅市場では、新築中心の流れから中古住宅の流通と活用へとシフトが進んでいます。しかし、住宅評価の不透明さや空き家問題が障害となっており、政府は評価制度の見直し、情報開示の強化、税制改革などを進め、市場の活性化を図っています。 同時に、リノベーション市場も拡大しており、中古住宅を購入して大規模リフォームを施す手法が注目されています。価格の透明化が進み、「商品+工事」のセット販売やオンラインリフォームも普及。また、職人不足に対応するため多能工の育成も進められています。 今後は、新築偏重から中古住宅を有効活用する時代へと移行し、リノベーションがさらに重要な役割を担うことになりそうです。 なおBIZMAPSでは、オリジナルタグを用いて多様なアプローチで企業情報を検索できます。国内200万社以上の企業の基本情報が無料で閲覧でき、売上や従業員数などの情報を基にターゲット企業を絞り込むことが可能です。 ▼その他の法人営業ハックの業界企業の特集はこちら! 医療法人業界とは?仕組みと業界構造を詳しく解説!市場の動きにも注目 成長市場の医療関連サービス業界!ビジネスモデルや市場規模を解説 旅行代理店業界とは?今後の展望を見据え最新の動向を徹底解説します レジャー施設運営業界とは?仕組みと企業動向を徹底解説!今後の展望も スポーツビジネス業界とは?主要プレイヤーの動向や今後の展望を徹底解説! 宿泊業界の現状と課題を徹底解説!今後の展望なども考察 クリーニング業界とは?主要プレイヤーの取り組みや最新動向を徹底解説

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