一色 みわ
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目次
医薬品開発の分類とそれぞれの特徴とは?
医薬品開発とは、新しい医薬品を創出し、安全かつ有効に使用できるようにするためのプロセスです。医薬品は、その効用やリスクを考慮し、医療用医薬品とOTC(Over The Counter)医薬品に分類され、それぞれ異なる開発プロセスを経て市場に供給されます。 医療用医薬品は医師の処方のもと薬剤師が調剤し、OTC医薬品は消費者が直接購入することが可能です。特に、医療用医薬品は以下のように細分化されます。 【先発医薬品(新薬)】 ・新規に開発された成分を使用 ・特許および再審査の制度で保護 ・研究・開発・臨床試験を経て承認される 【長期収載品】 ・特許・再審査期間が終了した医薬品 ・依然として医療現場で使用される 【後発医薬品(ジェネリック医薬品)】 ・先発医薬品の特許/再審査期間終了後に製造・販売 ・同等の成分・効果を持ちつつ、コストを抑えた医薬品 なお、OTC医薬品は、消費者が自身の判断で使用できるようリスクレベルに応じて3つの分類(第1類・第2類・第3類)に分かれています。医薬品開発のプロセスと新薬誕生までのステップ
- 探索研究
- 非臨床試験(前臨床試験)
- 臨床試験(治験)
- 申請・承認
医薬品開発におけるIT活用の最前線
医薬品開発業界では、研究開発から審査・承認、製造、流通、マーケティング、再審査・再評価に至るまで、さまざまな段階でITの活用が求められていますが、特に創薬分野での高度化・効率化が重要視されています。 ここでは、ITを活用した新しい創薬技術(医薬品開発)の動向について以下の4点に焦点を当てて解説します。- スクリーニング技術の進化と効率化
- スパコン「京」による in silico創薬基盤の概要
- IBM Watsonの創薬・医療分野への活用
- ゲノム創薬の概要と従来の創薬手法との違い
スクリーニング技術の進化と効率化
従来の医薬品開発におけるスクリーニングは手作業が多く、時間と労力がかかっていましたが、近年の技術進歩により、自動化やコンピューターシミュレーションを活用した効率的な手法が導入されています。医薬品開発の現場では、ハイスループットスクリーニング(HTS)がロボットを用いて大量の化合物を短時間で評価できる技術として活用され、開発のスピードを大幅に向上させていますが、装置の導入やデータ管理にはコストがかかります。 一方、コンピューター上で分子と候補化合物の相互作用を予測する「in silico」スクリーニングも医薬品開発の分野で活用されており、より正確な評価が可能になっています。さらに、バイオシミュレーション技術の発展により、仮想的に細胞や動物、患者のモデルを作成し、生体内での化合物の動きを予測できるようになり、実験の負担を軽減しながら精度の高いスクリーニングが期待されています。スパコン「京」による in silico創薬基盤の概要
スーパーコンピューター「京」を活用した in silico 医薬品開発技術は、薬の候補となる化合物を高速かつ高精度にスクリーニングする手法です。特に探索研究の効率化を目的としています。この技術により、従来2〜3年かかっていた医薬品開発の研究期間が半減し、開発費も大幅に削減できると期待されています。 例えば、従来は2,500個の化合物を試験して1つの候補を見つけていましたが、10〜100個の試験で有望な化合物を特定できる可能性があり、200億円規模の医薬品開発費が数十億円に抑えられる見込みです。さらに、臨床試験においても in silico シミュレーションを活用することで成功確率が向上し、医薬品開発にかかる費用を300億円から100〜200億円に削減できる可能性があります。 この医薬品開発基盤の構築には製薬企業、IT企業、研究機関が共同で参加し、オープンイノベーションの場として発展しています。 2012年から実際の医薬品開発の現場での応用が始まり、2017年までにアステラス製薬株式会社、エーザイ株式会社、塩野義製薬株式会社、大正製薬株式会社など20社以上の製薬企業が参画するコンソーシアムが設立されました。京都コンステラ・テクノロジーズ株式会社や三井情報株式会社が計算基盤の構築を支援し、京都大学大学院薬学研究科や理化学研究所AICSが技術提供を行っています。 今後、スーパーコンピューターを活用した in silico 医薬品開発技術は、新薬開発のスピード向上とコスト削減に貢献し、製薬業界の競争力強化に大きく寄与すると期待されています。IBM Watsonの創薬・医療分野への活用
- ゲノム研究(酵素の特定)
- 創薬研究(化合物の探索)
- 新薬の安全性評価
- 治験・調査のデータ分析
ゲノム創薬の概要と従来の創薬手法との違い
ゲノム創薬は、患者のゲノム情報を解析し、特定の遺伝子変異を発見したうえで医薬品を開発する新しい手法です。従来の創薬は、発見された病気の原因物質や症状をもとに候補化合物を探索する方法でしたが、ゲノム創薬では、病気の根本原因に直接アプローチできる点が特徴です。 2003年のヒトゲノム計画の完了により、遺伝子の構造が明らかになり、DNA塩基配列から特定の遺伝子を発見し、その内容や特性を理解する研究が進められました。さらに、以下の技術の発展により、ゲノム創薬の精度が向上しています。- DNAチップ(マイクロアレイ)による遺伝子の測定技術
- プロテオミクス技術(タンパク質の分析技術)
- バイオインフォマティクス(データ解析、シミュレーションによる遺伝子情報の比較分析)
- 既知の遺伝情報を活用するため、開発コストや期間の削減が可能
- 目的に合わせた創薬が可能なため、適応疾患に高い精度で適合する医薬品を開発できる
- 病気の根本原因にアプローチすることで、対症療法ではなく根本的な治療が期待できる
医薬品開発における日本企業のAI・ビッグデータ活用
医薬品開発の進化と乗り越えるべき課題
医薬品開発にはいくつかの課題も残されています。現在、大手企業を中心に創薬にITを活用する動きは加速しており、製薬メーカーが他社との提携を進めながら、新たな技術の導入に積極的に取り組んでいます。 しかし、これまでIT活用は主に低分子医薬品の開発にとどまっており、バイオ医薬品の分野では同様の進展が見られていません。また、医薬品開発の新たな潮流に素早く対応することが求められており、特にバイオ医薬品の開発では海外メーカーに遅れを取る状況が続いています。 今後は、既存分野の改善にとどまらず、バイオ医薬品のような新規分野への取り組みを積極的に進める必要があります。さらに、先進技術の実用化に向けては、継続的な資金の確保が課題となっており、ベンチャー企業への投資促進や大手企業の関与、政府による助成などを通じて、革新的技術を長期的に育成できる体制を整えることが重要です。まとめ:医薬品開発の効率化と競争力強化へ

「場所や時間にとらわれない自由な働き方」がモットーの転勤族ママライターです。読み手に寄り添った分かりやすい文章を心がけています。転職・副業・旅行ジャンルなどが得意。旅行とカメラと甘いもの(とくにチーズケーキ)が大好きで、毎日のお茶タイムは欠かせません。元気すぎる2人の子どもを育てながらのんびりと活動しています。
ブログ:https://miwaalog.com/
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