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急速に拡大するオンラインショッピング市場や多様化する消費者ニーズなど、近年アパレル関連業界を取り巻く環境は大きな変革を迎えています。そこで注目されているのが、アパレル関連企業によるライフスタイル提案の取り組みです。 本記事では、アパレル関連企業がライフスタイル提案の取り組みを行う背景や具体的な事例、さらには成功要因をひも解きながら、業界が直面する課題と新たな展望について探っていきます。

アパレル・生活雑貨関連企業を取り巻く環境

現在、アパレル業界ではさまざまな変化とトレンドが進行しています。特に注目されているのが、オンラインショッピングが急激に普及していることです。そのためアパレル関連企業は自社のECサイトの強化を進めて、ライブコマースやSNSを活用した新しいマーケティング手法を導入しています。 このような中でアパレル関連業界のライフスタイル提案事例が増えている背景について、詳しく掘り下げていきましょう。主な要因として挙げられるのが、次の4つです。
  • 市場環境の変化
  • 外資系ブランドの新規参入
  • 消費者ニーズの変化
  • 企業戦略の進化

市場環境の変化

日本の市場環境は、経済的および人口動態的な変化によって大きく影響を受けています。まず、生産年齢人口の減少により、国内の消費市場全体が縮小しています。この傾向はアパレルや生活用品関連企業にも影響しています。アパレルや家具、生活雑貨といった各分野の市場規模が長期的に減少し、消費行動の変化が求められているのです。特に若い世代の購買力低下や節約志向の高まりが、購買単価の低下を招いています。 さらに住宅着工件数の減少により、家具市場も同様に縮小傾向です。このような市場環境の変化は、アパレル・生活用品関連企業に新たな戦略的対応を促す結果を招いています。

外資系ブランドの新規参入

日本市場には、ZARAH&MIKEAなど、外資系ブランドが積極的に進出しており、国内アパレル・生活雑貨関連市場の競争が急速に激化しました。これらのブランドは効率的な供給チェーンとグローバルな展開能力を活かし、短期間でシェアを拡大しています。 外資系ブランドに対抗するため、国内アパレル・生活雑貨関連企業は従来の製品供給モデルから脱却し、新たな価値を提供する必要性に迫られています。外資系ブランドの進出は消費者に選択肢を増やす一方で、国内アパレル・生活雑貨関連企業には競争優位性を保つためのイノベーションが求められているのです。

消費者ニーズの変化

消費者のニーズは、「モノを所有する消費」から「体験を重視する消費=コト消費」へと移行しており、従来の物質的な所有価値よりも旅行やイベント参加、農業体験といった「体験」の提供が求められるようになっています。これは、都市部への人口集中や住居空間の縮小、また長引くデフレ経済などの影響によるものです。 このような消費行動の変化により、アパレル・生活雑貨関連企業は単なる製品販売ではなく、顧客に付加価値を提供する総合的なライフスタイルの提案を余儀なくされています。

企業戦略の進化

アパレル・生活雑貨関連企業は単一の商品を提供するのではなく、複数の商品カテゴリを統合した提案型の販売モデルを採用するようになっており、家具、アパレル、雑貨といった異なる商品群を組み合わせて、統一感のあるブランド体験を提供しています。 また、これまでの業種を超えた多角的な事業展開に取り組むアパレル・生活雑貨企業も増加傾向です。例えば家具メーカーがアパレル市場に進出したり、逆にアパレル企業が飲食業や生活雑貨を展開するといった例が挙げられます。異業種間の協働が、ブランドの付加価値向上につながっているのです。

アパレル・生活用品関連企業によるライフスタイル提案の取り組み

ここからは、アパレル・生活用品関連企業によるライフスタイル提案の具体的な取り組みを見ていきましょう。 ご紹介するのは、次の2社です。

株式会社ストライプインターナショナル

ストライプインターナショナルは「ファッションの力で笑顔輝くあしたを創る」をパーパスに掲げて、アパレルを中心に生活雑貨や飲食店において、サスティナブルなライフスタイルを提案している企業です。 例えば出来立てのドーナツをナイフ&フォークスタイルで楽しむ体験型のドーナツファクトリー「koé donuts」では、「オーガニック」「天然由来」「地産地消」という3つのキーワードで食材を選び、ドーナツを開発。持続可能な未来に向けて、これまでにないドーナツの提供に挑戦しています。 またOFFICIAL Used SHOPを運営して、自社が取り扱う人気アパレルブランドの最新アイテムや完売アイテムをブランド公式古着として販売するなど、企業をあげてサステナビリティに取り組んでいます。

株式会社ニトリホールディングス

ニトリは現在の生活雑貨を中心としたビジネスモデルに限界を感じ、新たな収益源としてアパレル業界へ参入しました。ニトリの似鳥昭雄会長は、売上高の伸びが鈍化している現状に危機感を抱き、次のビジネスモデルを模索する必要性を強調しているのです。 具体的には、アパレル商品を取り入れることで、家具や生活雑貨と組み合わせた総合的なライフスタイル提案を目指しています。この戦略は、既存のホームファッション事業を補完し、顧客の多様なニーズに応えることが目的です。

アパレル関連企業のライフスタイル提案:成功事例

それでは、アパレル関連企業のライフスタイル提案の取り組みに関して、どのような成功事例があるのか見ていきましょう。 成功事例の代表として挙げられるのは、次の2社です。

株式会社良品計画のライフスタイル提案の取り組み

良品計画は、1989年に西友のプライベートブランド(PB)から独立し、現在では生活雑貨、家具、衣料品、食品、さらには飲食店運営までを手掛ける総合的な事業を展開している企業です。 その中核となるのが「無印良品」という確立されたブランドコンセプトで、「これでいい」という日常生活を重視する価値観を提供しています。このコンセプトは、実質本位の商品を企画・製造・販売する3つの基本視点「素材の選択」「工程の点検」「包装の簡略化」に基づいています。これによりシンプルで高品質な商品を、リーズナブルな価格で消費者に届けることを可能としているのです。 さらに良品計画は「SPA型のサプライチェーン」を採用し、自社で商品企画、製造、販売を一貫して管理しています。この仕組みにより消費者の需要を迅速に捉えた商品開発を可能とし、在庫管理や物流の効率化にも寄与しています。 ライフスタイル提案の具体的な事例として挙げられるのが、カフェ事業「Café&Meal MUJI」の展開です。この事業では「素の食」をテーマとして、地元の新鮮な食材を使用した健康的な料理を提供しています。また、2006年には「IDEE」ブランドを買収し、家具やインテリアの企画・販売だけでなく空間プロデュースまで手掛けることで、住環境全体をトータルに提案しています。 加えて良品計画は専門販売員の育成を重視しており、店頭でのオーダー家具や商品のカスタマイズ、インテリアサービスの提供を可能にしました。例えば整理収納アドバイザーがお客様の家に訪問して片付けの悩みを解決したり、インテリアアドバイザーが結婚や引っ越しの際の家具選びを支援する「インテリア相談会」などのサービスを展開したりしています。 このように、良品計画は単なる商品販売に留まらず、生活全体を豊かにする総合的なライフスタイル提案を目指しており、確立されたブランドコンセプト、効率的なサプライチェーン、そして専門販売員によるサービスという強みが、その成功を支えているのです。

INDITEXのライフスタイル提案の取り組み

INDITEX(インディテックス)はスペインを拠点とする世界最大級のファッション小売で、特に「ZARA」ブランドで知られているアパレル企業です。その成功の鍵は、効率的なグローバルサプライチェーンと、消費者ニーズに迅速に対応するビジネスモデルにあります。 INDITEXは1985年に設立され、現在では162,450人の従業員を抱え、世界中で7,000店舗以上を展開しています。特に注目すべきは、ZARAの「ファストファッション」モデルです。このモデルではデザインから店舗への商品供給までをわずか数週間で完了させることが可能で、最新のトレンドを迅速に取り入れられる点が強みです。 ライフスタイル提案の取り組みとしては、2003年に「ZARA HOME」というホームファニシングブランドを立ち上げました。このブランドではテキスタイル商品を中心に、インテリアや雑貨を取り扱っています。ZARA HOMEの特徴は、ファッションの流行を取り入れたデザインと手頃な価格設定です。例えばバスタオルは15ユーロ程度から購入可能で、消費者にとって手軽に部屋の雰囲気を変えられる商品を提供しています。 さらにINDITEXはZARAのグローバルサプライチェーンを活用し、ZARA HOMEの商品供給を効率化。これにより大規模な初期投資を必要とせず、効率的なビジネス成長を実現しました。 ZARA HOMEは2003年の設立以来、店舗数と売上高の両方で年平均成長率が高い水準を維持しており、INDITEX全体の成長を牽引しています。

アパレル関連企業によるライフスタイル提案の成功要因とは

前述の良品計画やINDITEXがアパレル関連企業としてライフスタイル提案の取り組みを成功させたおもな要因には、次のようなものが考えられます。
  • ブランドコンセプトの確立と維持
  • SPA型サプライチェーンの構築と活用
  • 消費者体験の重視
  • デジタル技術の活用
  • 専門販売員の育成
  • 多面的な商品・サービスの提供

ブランドコンセプトの確立と維持

アパレル関連企業によるライフスタイル提案の取り組み成功要因の第一は、一貫したブランドコンセプトの確立です。 良品計画は「これでいい」という日常生活の本質を重視する理念を掲げ、商品の質を維持しながらも価格を抑えることで多くの顧客を引きつけました。例えば「素材の選択」「工程の点検」「包装の簡略化」の3原則を基に、シンプルで実用性の高い商品を展開し、ブランドロイヤリティを確保しながらも、消費者の日常に調和する商品ラインを提供しています。 INDITEXのZARAも「迅速なトレンド反映」をブランドのコアとしており、シーズンごとのデザイン変更や新商品の定期的投入がその価値を支えています。消費者に一貫したメッセージを伝えることが、ブランドの認知度と信頼を高める鍵であることを示しているといえるでしょう。

SPA型サプライチェーンの構築と活用

次に、製造・小売一体型(SPA)のビジネスモデルの活用が挙げられます。このモデルは、製造から販売までのプロセスを一貫して管理することで、商品の開発速度や在庫管理の効率性を向上させるものです。 良品計画ではグローバルサプライチェーンを通じて需要変動に柔軟に対応し、トレンドを反映した製品をタイムリーに供給しています。一方、INDITEXのZARAは、週に2回新商品を店舗に投入する仕組みを持ち、消費者の新たなニーズに素早く応えています。このような効率的なプロセスは、競争の激しい市場で優位性を保つために不可欠です。

消費者体験の重視

消費者は「モノ消費」から「コト消費」へと価値観をシフトしています。これに対応するには、アパレル関連企業は商品そのものではなく、商品を通じた体験を提案しなければなりません。 例えば良品計画の「Café&Meal MUJI」では、地元食材を使用した健康的な料理を提供し、食を通じたライフスタイル提案をおこなっています。「体験重視型」のアプローチは消費者の感情的な満足感を高め、ブランドとのつながりを深める役割を果たすのです。

デジタル技術の活用

現代の消費者はオンラインとオフラインをシームレスに利用することを期待しており、アパレル関連企業もこれに応えるべくデジタル技術を積極的に取り入れています。具体的にはAIを活用して顧客データを分析し、個別化されたショッピング体験を提供する事例が増えているのです。 また、AR/VR技術を活用したバーチャル試着やインテリアのシミュレーションも、新しいショッピング体験を可能にしています。これらの技術は消費者の購入プロセスを円滑にして、満足度を高める重要な要素となっています。

専門販売員の育成

良品計画が特に力を入れているのが、専門販売員の育成です。インテリアアドバイザーやスタイリングアドバイザーなど、特定の知識やスキルを持つスタッフが、顧客のニーズに応じた的確なアドバイスを提供。これにより、単なる商品販売に留まらず、顧客の生活全体を支援する提案型サービスが実現されています。 例えば、インテリア相談会や整理収納サービスなどのプログラムは、顧客満足度を向上させるだけでなく、ブランドへの信頼感を高める効果も生み出すでしょう。

多面的な商品・サービスの提供

良品計画やINDITEXは、アパレルから生活雑貨、食品、家具に至るまで幅広い商品を展開し、顧客の多様なニーズに応えているのが特徴です。特にINDITEXの「ZARA HOME」は、ファッション感覚でインテリアを楽しむライフスタイルを提案しており、手頃な価格とトレンドを反映したデザインで顧客を魅了しています。 このようにアパレルだけでなく異なるカテゴリーの商品やサービスを組み合わせることで、顧客のライフスタイル全体にアプローチする戦略が成功しているのです。

アパレル関連企業の今後の展望

今後は、消費者の「コト消費」志向が一層加速することが考えられます。市場は「体験」や「共感」を重視する方向に進んでおり、アパレル関連企業もその流れを反映して、単なる製品提供を超えたサービスや体験型のビジネスモデルを強化するでしょう。例えば店内イベントやコミュニティ形成を通じて、ブランドが顧客との深いつながりを築く動きがさらに活発化する可能性があります。 そして企業活動において、サステナビリティと環境意識が重要な軸となり続けるでしょう。すでにオーガニック素材やリサイクル可能な商品を取り入れているアパレル関連企業が増えていますが、今後はより高度なエコロジカルな取り組みが期待されます。 デジタル技術のさらなる進化と統合も予想され、AIによる個別化されたスタイリング提案、AR/VRを活用した仮想試着システム、さらにはメタバースにおけるショッピング体験の提供が現実味を帯びています。このような技術をいかに取り入れるかも、アパレル関連企業の成長を左右する要素といえるでしょう。

時代の変化に対応するアパレル関連企業に注目

アパレル関連企業のライフスタイル提案は、消費者ニーズと技術革新、そして社会的課題への対応を軸に多面的に進化していくと考えられます。 今後は多業種とのコラボレーションやグローバルとローカルのバランスを重視した戦略が拡大することも予想されます。アパレル関連企業は、グローバル市場をターゲットにしつつ、地域ごとの文化やニーズに適応したカスタマイズ型のライフスタイル提案をできるかどうかが鍵となるでしょう。 ▼関連記事はこちらから! アパレル製造・販売業界とは?業界構造や市場動向を詳しく解説! アパレル通販業界の市場規模はECが必須!最新トレンド含め解説します アパレル業界の内容とは?現状から将来性まで多角的に紹介します! アパレル・美容業界の今後の傾向は?コスメやファッションに強い20社を紹介 飲食業界の多ブランド展開:成功のカギとは?他業界の事例も紹介 クリーニング業界とは?主要プレイヤーの取り組みや最新動向を徹底解説 理美容・エステサロン業界の今後の展望とは?課題や現状を徹底解説

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