P.Kei
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組織のトップにとってメンバーが本来持っている力を発揮して円滑な経営を行っていくことは最も重要な事柄の一つです。メンバーのモチベーションを高め、組織が目指す方向へを導いていけるかどうかは「マネジメントコントロール」が大きく関わっています。
そこで今回の記事では、マネジメントコントロールについてわかりやすく解説していきます。管理職などマネジメントを行うポストのみなさんは、ぜひ参考にしてください。
目次
そもそもマネジメントコントロールとは?
マネジメント(management)には「管理」「運営」「経営」といった意味、コントロール(control)には「指揮」「統率」といった意味があります。 マネジメントコントロールとは組織のメンバーがそれぞれ本来持っているパフォーマンスを発揮できるよう管理し、組織目的の達成のために導くための仕組みやプロセスのことです。適切なマネジメントコントロールが行われればメンバー同士、助け合いながら効率的に業務を行うことができるでしょう。 マネジメントコントロールが組織に必要とされる様になった理由としては、組織の拡大や内部での分権化が進み、メンバーの管理が困難になったことが挙げられます。メンバーの孤立を防止し、適切な管理体制を整えるためにマネジメントコントロールは必要です。マネジメントコントロールの効果と必要性
マネジメントコントロールを行うことで期待できる効果は主に以下の3つです。 ・メンバーのモチベーションの維持 ・意思疎通を円滑にする ・組織目標の達成に向けた体制作り それぞれについて詳しく見ていきましょう。メンバーのモチベーションの維持
マネジメントコントロールを行うことでメンバーのモチベーションの維持が可能です。 失敗を繰り返してしまうというような業務上の悩みを抱えることは誰にでもありうることです。しかし、こうしたきっかけから仕事へのモチベーションが下がってしまうことも十分に考えられます。 メンバーのモチベーションが低い状態が続くと、本人への影響だけでなく組織の効率も下がる可能性があります。こうした事態にならないためにも、マネジメントする立場の人が適切にコントロールすることで、メンバーのモチベーションの維持が可能となるでしょう。意思疎通を円滑にする
組織内での意思疎通が上手くいっていないと、ミスやスケジュール進行の遅れといった問題が懸念されます。こうした問題が頻発してしまうようでは、組織の経営にも悪い影響を与えてしまうでしょう。 マネジメントコントロールを常に意識すれば、組織全体の方向性をメンバー全員が理解し、マネジメント側とメンバーの意思疎通が円滑に進むようになり、考えのズレや業務上のトラブルを未然に防げるのです。組織目標の達成に向けた体制作り
マネジメントコントロールが適切に行われていると、組織に一体感が生まれ、方向性が定まります。メンバーが組織目標の達成という共通の目的に向かって進むことができるでしょう。 特に、起業したばかりの会社や小規模の会社は組織の一体感を強め、方向性を定めることが重要ですので、マネジメントコントロールを意識しましょう。マネジメントコントロールを行うには
マネジメントコントロールの効果について解説しましたが、実際にどのように行うのでしょうか。南カリフォルニア大学で教鞭をとるケネス・マーチャント教授はマネジメントコントロールの手法を以下の3つに分類しています。 マネジメントコントロールの手法 1.行動コントロール 2.結果コントロール 3.環境コントロール 3つのマネジメントコントロールの手法についてみていきましょう。マネジメントコントロールの手法① 行動コントロール(Action Control)
マネジメントコントロールの手法の一つ目は「行動コントロール」です。行動コントロールとは、メンバーの行動に働きかける直接的な手法です。メンバーに関わらず業務や作業の結果が同じになるように、マネジメントを行う管理者がメンバーの行動を管理するのです。例えば、管理者は業務標準化やマニュアルによって、メンバーの行動を管理します。 また、手順や方法の統一で思わぬ事故を防いだり、効率よく成果を上げる効果も期待できます。実際に業務がスムーズにできているか、不備は無いかなどの検証も大切です。問題があれば、マニュアルを変更し、メンバーが効率よく業務を遂行できるようにしましょう。行動コントロールが向いてる仕事、向いていない仕事
行動コントロールが向いている仕事は、標準化やマニュアル化できる仕事です。 例えば、同じ作業を繰り返す工場や倉庫の仕事、スタッフの入れ替わりが多かったりアルバイトが多くを占めるコンビニやファーストフードなどフランチャイズ店の仕事があげられます。また、原発オペレーターやパイロットなど、絶対に失敗できない仕事も行動コントロールに向いています。 逆に、行動コントロールが向いていない仕事は、標準化やマニュアルでは対応できない仕事です。 例えば、クリエイティブ・コンサルティング系の仕事や、ホテルコンシェルジュなど顧客によってサービスが異なる仕事です。また、研究開発など成功パターンが確立していない仕事も作業コントロールには向きません。行動コントロールのメリット・デメリット
行動コントロールのメリット ・誰でも同じ成果を上げることができる ・ミスを防げる ・人件費のコストダウン ・付加価値の高い仕事に集中できる 行動コントロールがうまく働けば、経験の少ないスタッフを含め、誰でも同じ成果を上げることができます。また、従業員がやるべき仕事が明らかになるため、悩む必要がなくなります。その分、他の付加価値の高い業務に時間を費やしたり集中したりできるでしょう。 また、デメリットは次の通りです。 ・思考力が低下し、指示されたことしかできなくなる ・クリエイティブな従業員が離れる 厳しい行動コントロールを行うと「マニュアルにないことは出来ない」「しなくていい」という思考になり、臨機応変な対応や自主性が損なわれるかもしれません。また、優れたアイディアをもつクリエイティブな従業員が離れてしまう恐れもあります。管理者は行動コントロールを強めすぎないよう注意しましょう。行動コントロールでマネジメントがするべきこと
行動コントロールにおいてマネジメント側がするべきことは、業務の標準化・マニュアルの作成です。業務を標準化し、マニュアルを作成することは、企業の商品やサービスの品質を保つことに繋がります。 例えば、営業リスト作成手順やテレアポ業務トークスクリプトの作成、毎回送付するメールのテンプレ化などがあります。毎回、同様に行っている作業を見つけて、それを標準化できるか検討しましょう。 行動コントロールには、思考力が低下する、クリエイティブな従業員が離れるなどのデメリットもありますので、後述の「結果コントロール」「環境コントロール」と適宜合わせてバランスをとる必要があります。 将来的に、行動コントロールできる業務は自動化や外注を検討してもよいでしょう。マネジメントコントロールの手法② 結果コントロール(Result Control)
マネジメントコントロールの手法2つめは、結果コントロールです。マネジメントを行う人は、メンバーに対して目標や評価基準を設定し、それに向けた具体的な方法はメンバーに任せます。顧客や場面に合わせて柔軟な対応が必要な業務で高い効果を発揮します。 やらされているという意識を減らすことでメンバーに当事者意識が芽生え、自主性やモチベーションの向上が期待できます。メンバーのやる気を引き出し成果に繋げていく手法です。結果コントロールに向いてる仕事
結果コントロールが向いている仕事には、成功モデルがない研究開発や、クリエイティブ関係の仕事、ホテルのコンシェルジュなど顧客ごとに異なる対応が必要な仕事が挙げられます。 また、成果報酬型のビジネスにも向いています。行動コントロールに向いていない仕事が、結果コントロールには向いていると言えます。結果コントロールのメリット・デメリット
メリット ・モチベーションが上がる ・作業品質が高まる デメリット ・担当者によって成果が異なる ・成果を出せない担当者がでる可能性がある ・単独行動が増えるため、組織の不安要素となる メンバーの責任範囲も広がり、メンバー間で結果にバラつきが出たり、単独行動が増え組織の一体感が損なわれたりする恐れがありますので、情報共有をしっかりと行うことが大切です。マネジメントコントロールの手法③ 環境コントロール(Personnel & Cultural Control)
マネジメントコントロールの手法3つめは、環境コントロールです。人事・文化コントロールともいわれ、組織の文化を作り根本的な組織力の向上を狙った手法です。経営理念に共感したメンバーを集め、人材の配置等を適切に行い組織をデザインします。 経営理念や能力向上の教育を行うことで、メンバーが共通の認識を持ち、能力を高め、同じ方向に進むことができます。また、メンバー同士で学習しあう体制を作るのも有効でしょう。 環境コントロールは長期的な効果が見込めますが、間接的な手法ですので効果が出るまでに時間がかかります。環境コントロールの具体的な手法
環境コントロールの具体的な手法には次のようなものがあります。 ・会社の経営理念を軸に規律を作る ・会社の価値観にマッチした人材を雇う ・会社の目標を達成するための組織をデザインする ・評価基準に基づき従業員を正しく評価する ・人材を適材適所で配置する、スキルアップの支援をする ・最高のパフォーマンスで仕事ができるよう職場環境を整える 間接的なマネジメントコントロールである環境コントロールは、すぐに効果が現れるものではないため、マネジメントを行う管理者は長期的に効果を検証しましょう。マネジメントコントロールを成功させるには?
マネジメントコントロールを成功に導くためにはコツがあります。 この記事では以下の4つに焦点を絞って解説していきます。 ・客観的な評価制度を設定する ・情報共有を徹底する ・メンバーの意見に左右されすぎない ・3つのコントロールのバランスを取る それぞれのマネジメントコントロールのコツについて見ていきましょう。マネジメントコントロールのコツ1:客観的な評価制度を設定する
成果を正当に評価することで、メンバーのモチベーションやパフォーマンスの向上が期待できます。マネジメントを行う管理者の主観に頼って評価してしまうと、正当な評価ができず不公平感や不満が生まれてしまい、メンバーのモチベーションの低下に繋がるでしょう。 自分の成果が評価されていると実感するためには、誰が見ても分かる公平で客観的な評価制度が欠かせません。特に、事務職のような評価基準が曖昧になりやすい業務については、評価制度の設定に寄り注意を払いましょう。 評価制度の透明性が高く、正しく評価されているとメンバーが実感できていれば、より適切なマネジメントコントロールが行えるでしょう。マネジメントコントロールのコツ2:情報共有を徹底する
メンバー同士や管理者など組織全体で情報共有を徹底することが大切です。情報共有の徹底は組織としての一体感を生み出すだけでなく、メンバーがミスを起こすリスクを減らすこともできます。 現場の状況をマネジメントを行う管理者が知らないのであれば、適切なマネジメントはできません。情報共有が活発に行われているほど、マネジメントコントロールが行いやすい環境といえるでしょう。 リモートワークが進んでいて対面でのコミュニケーションが難しい場合でも、チャットツールなどを上手に活用し情報共有を進めてマネジメントコントロールを円滑に行いましょう。マネジメントコントロールのコツ3:メンバーの意見に左右されすぎない
メンバーの声を聞くこともマネジメントコントロールの重要な要素ですが、マネジメントを行う管理者がその声に振り回されることがあってはいけません。 会社の規模が大きいほど、メンバーから多様な意見が出ますが、そのすべてを聞き入れるのは不可能に近く、かえって現場を混乱させかねません。マネジメントコントロールには、積極的に意見を聞きながらも、組織としての軸をブレさせない姿勢が重要です。 現場の規律性を高めるのもマネジメントコントロールの重要な役割ですので、その意見が組織にとって有益か、組織の方向性に合っているか、マネジメントを行う管理者がしっかりと見極める必要があります。マネジメントコントロールのコツ4:3つのコントロールのバランスを取る
行動コントロール、結果コントロール、環境コントロールの3つのバランスを取ることも忘れてはいけません。例えば、行動コントロールを重点的に行ってしまうと、商品やサービスの品質が保たれても、自分で考えられないスタッフが増えてしまう懸念もあります。 現場や状況に合わせて上手くコントロールのバランスを取ることが、マネジメントを行う管理者には求められるのです。マネジメントコントロールシステムとは?
マネジメントコントロールと同時に語られることが多い「マネジメントコントロールシステム」という言葉についても、触れておきましょう。 聞き慣れない言葉かもしれませんが、それもそのはずで日本ではまだそれほど浸透していない理論です。ただしアメリカやヨーロッパのMBA(経営学修士)コースでは教えられている学問分野です。マネジメントコントロールシステム(MCS)の概要
マネジメントコントロールシステム(MCS)は、欧米の企業が経営目標を達成するために活用している情報ベースのシステムです。 管理会計システムにもとづいた会計コントロールをその中軸に置いて、人間関係に基づく社会コントロールや経営理念を核とした理念コントロールとともに、組織の行動パターンに影響を及ぼしています。マネジメントコントロールシステム(MCS)の定義
経営学者アンソニーは1988年に、マネジメントコントロールシステム(MCS)を以下のように定義づけています。 ・経営者が、組織の経営戦略を実行するために、組織の構成メンバーに影響を及ぼすプロセス また、経営学者サイモンズは1995年に、マネジメントコントロールシステム(MCS)を以下のように定義しています。 ・組織活動の様式を維持あるいは変化させるために用いる、情報ベースのオフィシャルな手順や手続 また、経営学者マーチャントは2017年に、マネジメントコントロールシステム(MCS)を以下のように定義しています。 ・企業の従業員の行動や経営の意思決定の実行を確実にするために、経営目標や経営戦略によって構成される、経営者が実行するすべての施策やシステムを含むもの 日本ではまだ浸透していない概念なので、まだまだ解釈もすっきりとわかりやすいものではありませんが、今後重要なキーワードとなる可能性が高いので、経営者や管理職などマネジメントを行うみなさんは注目しておくほうが賢明でしょう。マネジメントコントロールと管理会計
マネジメントコントロールには管理会計が重要です。管理会計とは、企業をマネジメントするための会計です。 マネジメントコントロールは一般的に次のような段階で進められます。まず、会社の目標を各部門の目標に落とし込み、目標達成のための行動などを定めます。その目標に必要な経営資源を見積もります。次に、具体的なプロジェクトや部門ごとの資源配分を決定し、各部門管理責任者に割り当て、予算編成します。マネジメントコントロールを実行し、その実績データを予算と比較して分析し、業績評価や行動修正を行います。 管理会計は、実績モニタリング、行動修正、評価などで有効となります。管理会計はマネジメントコントロールを確実に進めるために大変重要なのです。ドラッカーに学ぶマネジメントの役割
最後に、マネジメントを広めた最大の功労者ともいえる経営学者ピーター・ドラッカーのマネジメント論をベースに、マネジメントの役割を見ていきましょう。マネジメントの役割を理解することで、より適切なマネジメントコントロールが可能となるでしょう。 彼によればマネジメントは組織に成果を上げさせる機能であって、その成果に責任を持つのが管理職であると断じています。管理職の最大のミッションは、部下のコントロールではなく、成果を上げて企業経営に貢献することです。 「管理」はそのうちの、ひとつの要素に過ぎません。経営者と一体になってビジネスに関与する姿勢が、ドラッカーの理想とするマネジメントに近いでしょう。マネジメント職が知っておくべき労働の5つの次元
ドラッカーは労働には5つの次元があることを説いています。それぞれの次元を見ていきましょう。 【生理的次元】 考え方や思想よりも本能的な、直接心身に影響を与えるものごとを指します。労働の主体であるメンバーに、長時間にわたって延々と同じ単純作業を繰り返させるタスクを与えると、誰しも精神的に疲弊します。 あるいは体力的に過酷なタスクを続けさせると、健康が損なわれます。マネジメントにおいてメンバーの生理的次元を考えれば、決して機械のように扱ってはいけないと理解できます。 【心理的次元】 労働は自己実現の点からいえば、心の動きに大きく影響します。マネジメントにおいては、労働を通して個人の価値を知り、人間性を確かめる側面を考慮する必要があります。 【社会的次元】 労働は、メンバー同士や社会との関わり合いを生み出す営みです。一日の大半が労働に費やされていることからも分かるように、労働の現場はコミュニティとして重要な位置づけとなります。マネジメントにおいては労働を、極めて社会的なものとして捉える考え方が重要です。 【経済的次元】 労働とは報酬を得る手段であることが前提です。その上で、得た報酬を使うことで他の労働者の仕事が生み出され、その労働者が報酬を得て使うという連鎖が延々と生み出されます。このように、労働を経済的次元で考える視点も必要です。 【政治的次元】 政治的次元とは組織内の権力構造を意味します。役職の違いによる関係性や、派閥などの構造からも分かるように、企業には権力構造がつきものです。マネジメントにおいては、労働に関して政治的次元から考えることも重要です。マネジメントコントロールについて まとめ
マネジメントのあり方が時代と共に移り変わる背景には、経済のグローバル化や価値観の変化があります。多様性が広がり、不確実で不安定な時代の組織運営は、旧来のコントロール志向ではなく、時代にふさわしいマネジメントコントロールをお縄なくてはなりません。 マネジメントコントロールの手法を3つご紹介しました。 ・行動コントロール…マニュアルなどにより誰でも同じ結果が出すことができる手法 ・結果コントロール…成果を設定するが、具体的な方法は担当者に任せる手法 ・環境コントロール…組織の規律や評価基準などを整えるなど環境からアプローチする手法 管理者はこれら3つのマネジメントコントロール手法をバランス良くブレンディングする必要があります。 号令や命令によって組織の構成メンバーを動かすのではなく、共感と信頼によって個々のメンバーが自発能動的に動く組織へと導くマネジメントコントロールが、管理職に求められています。企業組織のリーダーのみなさんは、本記事でご紹介したマネジメントの考え方を参考にしながら新しい時代に見合った組織運営を進めてみてはいかがでしょうか。 なお、管理職のみなさんはビジネス上の好機を逃さないように、企業データベースを効率よく検索・閲覧・ダウンロードできる情報サービスBIZMAPSを最大限に活用し、営業戦略に役立ててください。 毎月、企業データを100社までは費用なしにダウンロードができるBIZMAPSは、あらゆる検索条件、属性、事項で検索・閲覧できます。法人営業の企業において営業を担当するみなさんは、営業アプローチを模索する際に価値を発揮するので、ぜひご利用ください。 ▼日本最大級の企業DB【BIZMAPS】で営業対象企業を探す▼ ▼管理職・決裁者・経営幹部の方向けのコンテンツはこちらです。 【組織再編の基本】その手法やメリットを分かりやすく解説します。 コーチング型マネジメントとは?従来型との違いやメリットを解説! 新規事業の組織を立ち上げるプロセスとチーム育成のコツを解説「売上げを上げる」を信念にWebライター兼アフィリエイターとして地道に活動中。お悩みを解決できる記事を書くことを目指しています。苦手な家事育児にも奮闘中。日々の癒しはコーヒーと漫画とペットのセキセイインコ。