BIZMAP 編集
携帯電話やインフラの普及で近年は社会生活のすみずみにインターネットといった通信技術が行きわたり、IT業界は今後も右肩上がりの成長が見込めるとして、就職や転職先としても注目されています。しかし、IT業界といってもハードウェアやソフトウェア、ネットワークなど広い分野でそれぞれ革新的な技術が次々と開発されており、一般的な営業担当者では、説明しきれないというケースが増えています。
そこで活躍するのが「セールスエンジニア」です。セールスエンジニアの仕事内容と将来性について紹介します。
IT分野の需要が高まりセールスエンジニアが重宝される可能性大
セールスエンジニアとは、IT技術の専門知識を持った営業担当者です。一般的な営業担当者と商談に同行し、顧客のニーズを的確にヒアリングするなどの営業スキルと、製品提案やカスタマイズ・納期・予算の是非を読む専門知識とで、お客様の課題解決に貢献します。
高度情報化社会ではIT分野の需要が高まり、さまざまな業種でIT製品やサービスの導入が急速に進んでいます。これまでの「企業のシステム部門対営業担当者」という図式だけではなく、IT知識を持たない「普通の人」へもITサービスの仕組みやメリットをわかりやすく説明する必要があり、セールスエンジニアの働きが期待されています。
他にもセールスエンジニアの需要が高まっている要因は複数あります。それぞれについて詳しくみていきましょう。
先端IT分野は特に人手不足に
2019年3月の「IT人材需給に関する調査」(参照:
経済産業省)では「2030年にはIT人材が最大で79万人不足する」 と報告されています。
この調査では、IT市場を従来型のITシステムの受託開発や保守・運用サービスに関する「従来型IT市場」とIoTやAIを活用した「先端IT市場」とに分類し、それぞれの市場規模を予測しています。
「従来型IT市場」は、2015年を100とした場合、2030年には51に縮小していくと予測されています。つまり、2030年で不足するのは、「先端IT市場」に関わる人材であり、「従来型IT人材」は余剰してしまうことが明白です。
セールスエンジニアも同様に、今後必要とされる先端技術についての学びを進めておかないと、「従来型IT人材」としてふるいにかけられてしまうことになります。
反対に、「AI」「IoT」「ビッグデータ」「5G」「クラウドコンピューティング」「量子コンピュータ」「ロボット」「セキュリティ」など、先端IT分野を得意とするセールスエンジニアは、引く手あまたとなることでしょう。
AIやロボットに任せることが難しい職業
AI技術の活用により、今ある仕事の多くがAIやロボットに代替されていくと予見されています。AIに代替されやすい職業は、仕事のベースが「繰り返し作業」のものです。月ごとに取り扱う数字は異なっても、作業自体はそれほど大きく変わらない財務管理などは、すでにパソコンで自動化しているというケースもあるのではないでしょうか。
また、物流や清掃などもいずれドローンやロボットへと代替する未来が予想されます。そんな中、「セールス」の場面はAIに任せることが難しいと考えられています。セールスには「人間関係の構築」や「困りごとへの共感力」、「プラスアルファの提案」など、ヒューマンスキルと発想力が不可欠だからです。
そのため、セールスエンジニアは、職業地図が大きく塗り替えられる時代にあっても、需要のある職種だといえるでしょう。
先端技術を使った新製品・新ソリューションは今後ますます増えていく
IT技術をより豊かな生活に役立てるため、業務の効率化や革新的なビジネスを生み出そうという動きをDX(デジタルトランスフォーメーション)といいます。DXは少子化の進む日本にあって、経済的に豊かで快適な生活を維持するためにも不可欠な取り組みで、2018年には経済産業省がDX推進ガイドラインを制定するなど、さまざまな施策がとられています。
先端技術の「AI」「IoT」「ビッグデータ」「5G」「クラウドコンピューティング」「量子コンピュータ」「ロボット」「セキュリティ」などを使った新製品やソリューションはますます増えていくことでしょう。
こうした背景から専門分野の知識だけでなく、クロスオーバーの発想力を持つセールスエンジニアが求められます。
営業職としてIT技術の効率性や便利さをわかりやすく伝える人が必要
先端IT技術がビジネスに活用されるようになると、その使い方やメリットなどをお客様が理解していない、というケースも出てくるでしょう。そのため、お客様側の「よくわからないものは買わない」という心理をケアする必要が生じます。お客様からの「どのような仕組みなのか」「どのようなメリットがあるのか」「運用の手順は」「保守管理にかかるコストは」といった質問へ、専門用語ばかりで答えていては、理解や信頼を得ることは難しいでしょう。
IT技術をわかりやすく説明するには、使われている技術への深い理解と受け手への配慮が大切です。相手のITリテラシーに合わせ、IT用語を「通訳」する意識でプレゼンや質疑応答を展開できる人材が必要とされています。
セールスエンジニアのキャリアプラン
セールスエンジニアは営業スキルと技術知識が必要な専門性の高い職種です。それぞれのスキルを磨いていけば、より高いポジションでプロジェクトに関わることができるようになるでしょう。
セールスエンジニアの代表的なキャリアプランを3つ紹介します。
経営戦略サイドでステップアップ
企画開発サイドでのステップアップ
フリーランスとして独立
それぞれ紹介しますので、ご自身のキャリアの参考にしてください。
経営戦略サイドでステップアップ
製品・サービスありきの営業ではなく、「お客様企業にとってより良い方法とは」「ITの力でビジネスに変革をもたらすには」といった視点を持てるようになると経営戦略サイドでステップアップできるでしょう。
職種としては、企業の経営戦略に最適な財務・人事・物流システムの提案・運用・保守まで行う「ITアーキテクト」や、企業ビジョンを実現するための仕組み作りを提言する「ITコンサルタント」などがあります。
企画開発サイドでのステップアップ
お客様企業への理解が役立つ企画開発サイドの職種には、「ITスペシャリスト」や「プロジェクトマネージャー」があります。いずれも技術畑からステップアップできる職種ですが、セールスエンジニアとしてお客様に対応し、市場のニーズや業界トレンドを肌で感じたことのある人材なら、その経験を存分に活かすことができるでしょう。お客様や開発セクションなど関係各所との折衝力も活かせます。
フリーランスとして独立
セールスエンジニアとして一定のスキルを持つ人は、フリーランスという働き方もあります。ヒューマンスキルや技術知識・英語力などがある人材は好待遇で迎えられるでしょう。フリーランスの求人情報を紹介するサイトや、案件ごとにオファーを受けるクラウドソーシングサイトなどを活用すれば、企業から独立して働くことも難しくありません。
会社員の場合は、自身が望まない分野の案件を担当することもありますが、フリーランスなら自身の裁量でキャリアプランに合致した案件を選べます。専門分野を追求したり、さまざまな経験を積んでマルチに活躍したりとキャリアデザインを実現しやすいでしょう。
まとめ
人口減少が懸念される日本において、IT業界はビジネスの変革になくてはならない分野として市場の拡大が見込まれます。先端IT技術に対応できるセールスエンジニアは、需要が高く将来性のある職種といえます。
特に、DX推進に悩む企業から、コンサルタント的役割を持ったセールスエンジニアが歓迎されています。セールスエンジニアからのキャリアアップも、自身の資質に合わせて選ぶことができ、これからの日本を支える先端IT市場で活躍し続けることができるでしょう。
無料で使える企業検索サービス