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ランチェスター戦略

5分で理解!競争戦略のバイブル「ランチェスター戦略」

ビジネスの世界には、さまざまな「戦略」が存在します。その時の立場や状況によって、どの戦略を使うかという事を正確に判断することは大切なことです。

しかし、このビジネスの戦略というものは、いかんせんその内容を理解することが難しいもの。ビジネス本を開いたところで、諦めの気持ちになってしまうという人も少なくはないでしょう。

今回は、ビジネスの世界を生き抜くためには欠かせないと言われている「ランチェスター戦略」を初めて知ったという人にでもキチンと分かるように、簡単に解説します。

ランチェスター戦略とは?

ランチェスター戦略の内容はわからないけれど、名前は聞いたことがあるという人も多いのではないでしょうか。それだけ、ランチェスター戦略はビジネス界において広く使われている戦略であり、業界で勝ち抜いていくためには必須であると言われています。

では、ランチェスター戦略とはどのようなものなのでしょうか。

「ランチェスターの法則」の原点

ランチェスターの法則は、イギリスのエンジニア「フレデリック・ランチェスター」が考えたものです。戦闘機の開発をしていた人物でした。

第一次世界大戦の頃、自分が開発した戦闘機が戦争でどのような成果を上げるのかということに興味を持ちます。それまでの戦いの戦略といえば、紀元前500年頃の中国春秋戦国時代の軍事戦略家「孫子」の「兵法」のような戦い方が主流でした。「敵の不意をつく」や「敵を欺くにはまず味方から」のような戦略のみだった中で、ランチェスターは史上初めて、戦争の中での戦闘力を数値化しました。第二次世界大戦の際にはアメリカ軍がランチェスターの法則を応用し、戦略を立てたと言われています。

その後、日本ではコンサルタントをしていた田岡伸夫氏によって、この戦略を「戦争」のためではなく「ビジネスの戦略」として応用されるようになりました。

ビジネスシーンで活用するには

この戦略の中では「強者」「弱者」という言葉が出てきます。「強者」というものは市場地位1位の企業の事を指します。いわゆる業界トップです。対して「弱者」は市場地位2位以下の企業の事を指します。これらは企業の大きさのことではありません。業界シェアの話になります。

強者と弱者が同じような戦い方をしていては、弱者はいつまで経ってもトップを奪うことができません。弱者は強者が進出してこないような小さな市場に特化した戦略で戦うことが「弱者の戦略」なのです。小さな市場とは地方やマニアックな製品のことで「差別化戦略」とも言います。

一方「強者の戦略」は「追随戦略」と言い、差別化してきた弱者の製品と同じような製品を後から出すという手法です。先陣を切って開発した製品には、完成するまでの開発費がかかっています。追随戦略であれば、その開発費がさほど必要ではないため、その分製品を先発の弱者よりも安い価格で提供することができるのです。このような手法をとることで、弱者の企業が差別化する事を防ぐことができるのです。

自社よりも上の企業に対しては「弱者の戦略」、下の企業に対しては「強者の戦略」をとることで、生き延びることができるのです。

ランチェスター戦略のメリットとデメリットとは?

ビジネスの世界では、ランチェスター戦略は基本の戦略であり、どの業界にも共通するものです。ほとんどの企業で応用している戦略ですが、メリットやデメリットはあるのでしょうか。

どのような点に注意すべきなのかをご紹介します。

ランチェスター戦略のメリットとは

ランチェスター戦略のメリットは、同業他社との戦い方が見えるという点です。市場シェアを正しく把握すれば、自社の戦略を立てやすくなります。

ビジネスの世界で同業他社がいない業種は、ほとんどないのではないでしょうか。他者を意識せずに、一般的なありきたりな手法で強者と同じ売り方をしていては、いずれは上手くいかなくなるでしょう。

できれば取り入れた方が良いといったものではなく、他社と戦うためには必ず取り入れるべき戦略であるとも言えます。

ランチェスター戦略のデメリットとは

ランチェスター戦略のデメリットは、これといってありません。

強いて注意点としてあげれば、弱者が差別化した製品を出した後のことになります。強者がその製品の追随製品を出してくるため、本来自社の入るはずであった利益は強者に取られてしまいます。できるだけ利益を取られない為には、それに追随して製品を出さなければいけません。

有名な格言に「共食いを恐れるな。自分で自分を食わなければ誰かに食われるだけだ。」という、アメリカのアップル社を創立したスティーブ・ジョブズの言葉があります。実際に彼は、iPodを他社に食われることのないように、あえてiPhoneを開発し、自分で自分を食った形となりました。

また、近年ではネットショッピングという購買方法がスタンダードになっています。地域差がなくなりつつある昨今では、差別化が難しいという考えもあります。

ランチェスター戦略の事例細分化

実際にランチェスター戦略を取り入れた企業の例をご紹介します。

ランチェスター戦略を上手く応用し成功しているこれらの企業は、競合他社を研究すると同時に、自社の立ち位置や強みを調べ尽くし結果を残しています。

これまで気がつくことがなかった着目点は非常に参考になります。

下着メーカーの差別化戦略

女性下着業界はワコールという企業が圧倒的トップシェアを保持していました。そこで「弱者」であったトリンプは、差別化戦略を打ち立てます。

下着を選ぶ時には「つけ心地のよさ」や、着用したときの「ボディラインの美しさ」が注目されるため、このポイントに重点を置いた売り出しが一般的でしたが、トリンプはネーミングのインパクトに注目した商品を発売しました。「天使のブラ」「恋するブラ」「小悪魔ブラ」など、見た目を重視した商品は大ヒットし、その後も「ワンピースブラ」「Tシャツブラ」など、用途を特化した商品を売り出しました。

また、非売品の「世相ブラ」という、その時代の世相を反映したブラをメディアで発表するなど積極的なメディア戦略により、ブランドイメージのアップにも成功しました。

コンビニチェーンの地域集中出店

街中を歩いていれば、当たり前のように見かけるコンビニチェーンのセブンイレブン。現在では業界シェアトップを走り続けていますが、オープン当初は店舗進出について課題を抱えていました。

1974年に江東区に1号店をオープンさせた後は関東を中心に店舗拡大しますが、ローソンの知名度が高かった関西への進出はスムーズにいかなかったのです。そこでセブンイレブンは地域集中出店のドミナント戦略を打ち立てます。これは、特定の地域に高い密度で出店し続けるという手法です。

その結果、出店数が300店舗を超えたあたりから、急激に集客数を伸ばすことに成功しました。一般的に馴染みのない店へは足が遠のいてしまう傾向がありますが、店舗数を増やし頻繁に目につくようになったことで、地域の認知度が一気に高まったことが成功へつながったと考えられます。

激安カット店のターゲット

今は当たり前にあるけれど、一昔前には存在しなかった「1000円カット」。当時、美容室というものは、ある程度の時間をかけて、美しいまたはかっこいい髪型をする場所でした。そこで「低価格、短時間で身だしなみを整えたい」という層に目を付け、差別化戦略で成功したのがQBハウスです。

当時は「安さが売り」だと思われていたのですが、短時間でもキレイなカットができる技術、効率的な動線、具体的なカット方法を短時間で聞き出すカウンセリングを、社員研修で学ばせることで、リピーターを作ることにも成功しました。

まとめ

事業を立ち上げ、同業他社と競り合う為には欠かすことができないランチェスター戦略。進出しようと考えている市場が、大手企業がすでに君臨している状態であったとしても、ランチェスター戦略で挑み続ければ、生き残っていくことは充分に可能です。

大切なことは、自社の状況や立場をしっかりと把握すること、そして成功後も油断することなく、二の手三の手を打ち出し続け、常に前進し続けることです。

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