えむら若奈 0 Comments
建設コンサルティングは、国民が必要とする「良質で安全な社会資本」を提供するために欠かせない存在です。その活躍の場は国内のみならず、発展途上国を中心とした海外にも広がっています。 今回は、この建設コンサルティング業界の構造や市場規模、トレンドに加えて、今後の展望について解説していきます。 なお国内最大級の企業検索サービスBIZMAPSでは、建設コンサルティング関係の企業情報を数多く掲載しています。「建築コンサルティング」・「測量設計」から検索できるので、ぜひ参考にしてください。

建設コンサルティングとは

建設コンサルティングとは、建設技術を中心とした開発・防災・環境保護などに関して、国土交通省に登録された官公庁や民間企業を顧客として建設コンサルティング、測量業、地質調査業を展開している事業者のことです。 代表的な企業としては、建設コンサルティングの最大手である日本工営株式会社、測量業界の最大手であり航空測量に強みを持つ株式会社パスコ、地質調査で業界最大手の応用地質株式会社があります。

建設コンサルティングの業界構造

建設業界は一般的に、施主である官公庁や民間からの発注をゼネコンが元請け業者として受注して、下請けの専門工事業者が施工を実施して建設物を完成させる構造となっています。 その中で、建設コンサルティング・測量業界のおもな顧客は、発注者である官公庁です。建設コンサルティング業者は、公共事業の発注者の技術的パートナーとして、企画・計画・調査・設計・施工監理に携わっています。 一方、測量業者や地質調査業者は、調査段階での関与がメインです。測量業者のなかでも、工事測量を手がける企業の場合は、道路会社やゼネコンから直接発注を受けることも多いでしょう。 なお、建設コンサルティングとゼネコンの役割の大きな違いは、次の通りです。
  • 建設コンサルティング:発注者の技術的パートナーとして、企画・計画・調査・設計・施工監理に携わっている。
  • ゼネコン:設計されたトンネル、ダム、橋、道路などの施設をつくること(施工や監理)をおもな業務としている。
建設コンサルタントは安全性や使いやすさ、施工のしやすさなども十分考慮して設計に当たる必要があり、建設業者は設計者の意図を十分に汲み取って施工を進めなければなりません。 また、これまでは設計と施工を別の者が実施する設計・施工分離が原則とされていたため、ゼネコンが設計までをおこなうケースは少なかったものの、現在は設計・施工一括発注方式が試行されており、ゼネコンが設計を手がけることも増えています。

建設コンサルティング業界の市場規模

建設コンサルティング・測量が含まれる建設関連業の動向は、国土交通省の「建設関連業等の動態調査報告」で公表されています。 「建設関連業等の動態調査報告」では建設コンサルタント、測量業、地質調査業の各50社の契約金額の推移が公表されていて、2022年度の契約金額は8,016億円です。内訳は建設コンサルタントが78%、測量業が14%、地質調査業が8%となっています。 なお、このデータは50社のみを対象としているため、売上が上位企業に集中している建設コンサルタントと、企業が地域ごとに分散している測量業・地質調査業とでは、単純に比較はできません。 推移を見ると、直近10年では多少の増減はありつつも増加傾向で推移しています。また、国土交通省が公表する建設投資額の推移と比較すると、建設関連業別50社の契約金額は建設投資額とほぼ連動していることが分かりました。 近年の建設投資額は増加傾向にあり、コロナ禍においても堅調に推移していたことから、今後も建設コンサルティング・測量の市場規模は、国内の建設投資の動向に左右されると見られています。

建設コンサルティング業界のトレンド

建設コンサルティング業界のトレンドとなっているのは、おもに次の3点です。
  • 人材不足の課題解決
  • 新規取引先開拓のポイントとなる新技術の有無
  • 主要企業の売上は好調に推移
  • 海外での売上が好調に推移している日本工営が業績を牽引
それぞれ解説します。

人材不足の課題解決

建設業界全体だけでなく、建設コンサルティング・測量業界においても、人材の確保が喫緊の課題となっています。特に地質調査業では、高度な知識と経験が要求されます。そのため優秀な技術者の数が、企業の業績を大きく左右することになるのです。 このようななか、各業種において人材の高齢化が進んでおり、技術力を持つ工事技能者の引退にともなう技術力の低下が懸念されています。賃金の減少などで、若い働き手にとっての市場の魅力が低下しているため、新たな人材の確保、そして技術者の流出を防ぐことが、各社にとっての大きな課題です。

新規取引先開拓のポイントとなる新技術の有無

建設コンサルティング・測量業界では、国内の限られた市場をプレイヤー同士が奪い合う形となっています。そのため、いかに新規取引先を開拓するかが重要です。 その新規取引先開拓の受注活動において、重視されるのが、実績と技術です。特に測量業界では技術の進歩が早いため、新規技術の有無が受注に影響を与えるケースが多くなっています。 近年ではIT化の進展を背景として、測量機器の電子化が進んでいます。さらにGPSを活用した簡易的な測量や、ドローンを用いた測量をおこなう企業も登場。価格競争が激しくなるなかで、他社にはない技術面での提案ができるかどうかが、新規取引先開拓の大きなポイントとなっています。

主要企業の売上は好調に推移

主要企業の業績推移を見ると売上高は増加傾向となっていて、コロナ禍による建設需要の変動の影響は、比較的小さかったようです。営業利益率は販売先や商材によって異なるものの、自己資本比率はほかの建設業と比較しても高く、安定した財務基盤を築いています。 2021年度から始まった「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化計画」により、測量・建設コンサルティングへの需要は堅調になっています。災害に強い街づくりや国土強靭化を一層推進するだけでなく、「デジタル田園都市国家構想」の具体化による地域活性化が打ち出されたこともあり、各社の高い技術に注目が集まっています。

海外での売上が好調に推移している日本工営が業績を牽引

建設コンサルティングの最大手である日本工営株式会社は、アジア、中東、アフリカ、南米など海外に拠点を多く持ち、国内と同様の建設コンサルティング業を展開しています。 2022年度のセグメント別売上は、コンサルティング事業58%、都市空間事業27%、エネルギー事業15%で、増収を継続。世界160か国以上に事業を展開し、海外売上比率は43%と年々高まっています。 また、中南米やサハラ砂漠以南のアフリカ諸国、ミャンマーなど、新興市場への営業展開を強化する一方、民間資金による小水力発電事業や工業団地開発事業などの案件にも多くの実績を持っていることから、今後も業界の業績を牽引することが予想されています。

建設コンサルティング業界の展望

新型コロナ感染拡大の影響により、2020年度は民間需要が減退したために建設投資が前年比減となりました。2021年度は政府建設投資は減少したものの、景気回復を受け民間建設投資が増加したため、建設投資全体としては増加に転じています。 建設経済研究所と経済調査会の発表によると、2021年度の名目建設投資額は前年比1.2%増の61兆6,600億円。民間建設投資は、住宅が前年比4.1%増、非住宅が前年比2.8%増とコロナ禍からの回復がみられました。 政府建設投資は、2021年度補正予算の事業費が減少したことで前年比2.2%減となったものの、建設投資全体としては1.2%増。2022年度は民間建設投資の回復が続きましたが、政府建設投資が微減となり、全体としては横ばいの0.5%増の見通しとなっていました。 建設コンサルティング・測量業界は、今後も国内の建設投資の影響を大きく受けることが予測されています。これまでは東日本大震災の復興需要や、東京オリンピックの恩恵を受けてきたものの、長期的には不透明な業界です。収益性を高めるためにも、案件ごとのコストコントロールや現場管理へのIT技術導入などで、業務の標準化と効率性向上が実現できるのかが課題となっています。 さらに、人材不足に対して専門技術を持つコア人材の適正配置、一部業務のアウトソーシングの活用によって、繁忙期・閑散期に対応することも求められます。 また大手企業では、発展途上国のインフラ整備などによる海外進出を加速させているものの、政府開発援助(ODA)の予算が縮小傾向となっていることから、世界情勢による影響も踏まえ動向を注視する必要もあるでしょう。

国内外で活躍する建設コンサルティング業界に注目!

建設コンサルティングは、日本だけでなく発展途上国のインフラ整備なども担っていて、社会への貢献度が高い業界です。コロナ禍でさまざまな産業が停止するなかでも、業績を大きく落とすことなく順調に推移してきました。 建設コンサルティングに対する需要は増していくと予想されているため、今後の動向に注目 しておきましょう。 ▼法人営業ハックではさまざまな業界について特集しています! 建設業界とは?定義や動向を解説 機械関連サービス業界の今を知る!最新動向とTOP15企業売上ランキング 士業ランキングTOP15を紹介!業界の現状や最新動向についても 法人営業担当者のための建設業界土木会社ランキングTOP30紹介! ▼BIZMAPSのオリジナルタグを元にした企業特集はこちら! 一般社団法人日本展示会協会とは?展示会支援企業についても ツクリンクの評判は?建設業界における注目企業を10社紹介! 【法人営業担当必見】非破壊検査会社の現状と将来!首都圏の会社一覧

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