MASA 0 Comments
営業インセンティブ事例 近年では主に営業職を中心に、ボーナスや歩合とは異なる「インセンティブ制度」を設けている企業が増加してきました。 欧米の企業や日本でも外資系などのグローバル企業では、従来から定められていた報奨制度です。 日本の企業では、一般的にはなかったものなので、少し分かりにくいと感じる人も多いでしょう。 そのため今回の記事では、現在各業界に浸透しつつあるこの比較的新しいインセンティブ制度とは何かについて、ボーナスや歩合などとの違いも踏まえて詳しく解説します。 また、実際にインセンティブ制度を導入して定着させる際の大切な手順についても紹介します。 営業メンバーの理解を深め、やる気を起こさせたい企業オーナー、個人事業主、経営幹部のみなさんの課題が解決できる可能性があるので、ぜひ参考にしてください。

そもそもインセンティブ制度とは?

まずは、本題に入る前にそもそも「インセンティブ制度」の定義は何なのか、なぜ開発されたのか、どういう取り組み、いかなる制度でどういうプラス面があるのかについて分かりやすく解説しましょう。

インセンティブとは「鼓舞するもの」

インセンティブという言葉は英語の「incentive」で、形容詞としては「刺激的な」という意味を持っていますが、ここでは名詞の「刺激」「動機」「鼓舞するもの」「駆り立てるもの」「やる気を起こさせるもの」などにあたります。 つまり、インセンティブというシステムは、職場環境の中での意欲や士気などのいわゆるエンゲージメントを高めることを指します。 欧米の能力主義の価値観をベースにした、実践的な報奨制度と言い換えても良いでしょう。 働き方改革が進みワークライフバランスが見直される時代の中で、必ずしも簡単な金銭的な問題だけでなく、働く喜びや自己実現などの働きがいに結びつくものとして、注意深くその価値が見直されています。  

モチベーションとの違い

インセンティブと同様に、努力の動機づけにつながっているモチベーションとインセンティブという名のものとはどういう関係で、何が違うのでしょうか? それは内発的な動機外発的な動機かの違いです。 モチベーションアップや高く維持することは、基本的には自分自身の内発的な動機づけから行動に出ることなので、内面から湧き上がる精神的な高揚や夢を目指す精神というようにニュアンスが変わります。 一方、外部要因でやる気を強制的に起こさせる力があるインセンティブは少し違います。 モチベーションに比べて現実的、技術的、打算的な面があります。 モチベーションが持つ精神の高揚ではなく、損得勘定からのやる気です。 そのため内発的なモチベーションほどの継続性を持たせることは、インセンティブでは難しくなります。 それでも、モチベーションが持続せずに低下した人も、インセンティブで心理的に良い変化を与えて生産性を上げられる可能性があります。 どういう動機であれ、一部の者の努力やパフォーマンスの発揮に結びつくので、良い刺激といえるでしょう。 それがあるからこそ、若手もベテランも含めて従業員の活性化が実現し、それまでは理念的に自社に共感せず不満を持ち、そのままではいずれ離職したかもしれない人も、インセンティブによる従業員満足によって辞めないで済む可能性が高まります。  

ボーナスとの違い

従来からあるボーナスはインセンティブとよく似ていますが、別物です。 ボーナスは主として企業や部門、部署の業績が大きく反映されるものです。 おおむね全員が対象になるボーナスに対して、インセンティブはあくまでその個人の実績や行いにフォーカスするものという点が異なります。 ボーナスは、基本給の月額を基準として何ヶ月分というベースの支給が決まり、多少個々の人事考課が加味されて増減するのが一般的です。 また、ボーナスは必ず与える義務があるものではありません。 経営者の判断次第であり、上司の査定にもよります。 しかし、インセンティブはこういう成果が出たらこのように提供されるという「決まりごと」になっていることが一般的であり、条件が揃えば必ずそれに対応して支給する義務があります。 ちなみに、ボーナス年間何ヶ月支給という条件で採用している場合は、実行不可欠です。 正当な理由なく不支給で済ませることはもちろんできません。  

歩合制度との違い

インセンティブ制度では売上目標達成によって、あらかじめ決められた額が支給されるのに対して、歩合制度で支給される額は実績に応じて変化します。 つまり、歩合制度は実績の数字に応じて歩合率を掛けた額を、基本給に加算する仕組みです。 完全歩合制というのもあり、この場合に支給されるのは歩合給のみで「フルコミッション制」ともいわれています。 完全歩合制は正社員の給与体系としては存在しません。 個人事業主として企業と業務委託契約を締結することになります。 フルコミッションの場合、実績がそのまま報酬となるので高額報酬を手にする可能性があって大きなやりがでしょう。 しかし、万が一実績がさっぱり上がらなければ報酬はゼロになるというリスクがあります。  

インセンティブ普及の背景

インセンティブ制度が近年に普及してきた背景には、年功序列や終身雇用を基本とする日本型の雇用スタイルの終焉と、欧米流の成果主義の台頭があります。 ベンチャーおよびスタートアップ企業にかぎらず、伝統がある大企業においてもすでに年功序列や終身雇用を固持する企業は減っています。 「組織」と「個」は、スキルを報酬と対価交換する関係性に変化してきたのです。  

インセンティブ制度の具体的な事例

インセンティブ制度とひとくちにいっても、利用している企業や職種によってルール設計や、やり方はさまざまです。 ここでは、具体的にどういう導入事例があるかを紹介しましょう。

代表的なインセンティブは報奨金タイプ

もっとも一般的なインセンティブのノウハウは、実勢に応じて報奨金のかたちで付与されるタイプです。 営業実績や業務の目標値を何段階か設定して、この段階ならいくら支給、あの段階ならいくら支給というように、あらかじめ支給する金額を決めておくやり方です。 あるいは、最低目標を超過する売上金額に対して10~20%が支給される設定の企業もあります。 その中には、40%のように高い設定をしているケースや、一桁台の数%という低い設定をしている企業もあります。 また、昇進をインセンティブとする場合もあります。 インセンティブのルール構築は従業員の欲求を理解し、物質的なものか経験的なものか、その他どのようなものを魅力と感じるかにフォーカスすべきというのが注意点です。  

株を用いるインセンティブ・ストックオプション

インセンティブ・ストックオプションとは、株式会社が自社株を一定の価格で購入し得る権利を発生させるタイプのインセンティブです。 インセンティブ・ストックオプションは報奨金のような現金報酬とは別の種類で、権利を与えられたあとに株価が上がって、権利を行使して取得する時点で初めて報酬となります。  

インセンティブツアーは報奨旅行

目覚ましい実績を残した個人や部署に対する、報奨としての旅行がインセンティブツアーです。 旅行代理店の大手ではインセンティブツアーに特化した相談窓口もあるほど、普及しているタイプのインセンティブといえるでしょう。 欧米では日本以上に、インセンティブツアーが盛んに実施されています。 インセンティブツアーの企画運営を専門に扱う、インセンティブハウスと呼ばれる業種も存在します。  

表彰にて名誉で報奨

人間誰しもが持つ、頑張りを「認められたい」という承認欲求を満たす形のインセンティブ制度が、表彰タイプです。 MVP表彰などの社内表彰制度では、精神的な満足とやりがいを生み出し、またそれを見守る同僚に競争心を起こさせて、組織としてのさらなる向上も期待できます。 こういう表彰制度は報奨金と併用されることが多く、たとえ金銭部分が少額でも表彰を添えることでインセンティブとして機能しやすいのが特徴です。  

物品支給型のインセンティブ

現金や株式ではなくモノ(物品)を支給するタイプのインセンティブでは、業務上で必要となる物品を報奨品として支給する場合が多いです。 顧客と相対してコミュニケーションを取る営業職に対して、高級時計や高級スーツ、高級ネクタイなどを支給することは、さらなる実績向上を生むインセンティブとして使えるでしょう。 社員からのアンケート調査などを活用して、望ましい支給物を決めると効果的です。  

プロフィットシェアリング

部門や部署など、メンバーが所属している組織全体における成果に応じて、配分元の原資から一律に支払われる報奨金がプロフィットシェアリングです。 これに関しては、個人の成果にかかわらずチーム単位で一律に支給されるので、一般的なインセンティブとは趣きが異なります。 一定の基準によってチームワークに対しての利益還元をおこなうため、全社員に対しての士気の向上をねらうタイプのインセンティブです。  

グローバル企業のインセンティブ

外資系企業や多国籍企業、日系グローバル企業、あるいはそういう企業群に倣って考え方を取り入れている日本の企業などでは、ベースサラリーを基準にインセンティブが支給されることがあります。 ベースサラリーは日本の企業でいう基本給に近いものです。 ベースサラリー自体は、実績や保有スキルに応じて等級で決められます。 日本の企業では基本給に家族手当や皆勤手当などの、さまざまな手当てが加算されるのに対して、外資系にはほとんどありません。 そういった手当ても含めたベースサラリーと考えてよいでしょう。 一方、インセンティブは実績に応じて、ベースサラリーの5〜30%程度が支給されます。 例えばベースサラリー800万円の場合で、インセンティブが15%の場合、目標達成時のインセンティブの額は120万円となります。 最高100%という設定の企業もあるようです。 余談ですが、インセンティブは実績と職種によって詳細が変化するので、求人票では「インセンティブあり」とのみ記載されているだけで具体的には触れていないケースが多く見られます。 ベースサラリーだけを公開している外資系企業もあるので、外資系の求職者はインセンティブがあるかどうかを問い合わせしておくほうが賢明です。  

ピアボーナス

ピアボーナスは従来のイメージのような、会社から職場での課題を達成した従業員に対して、働きが良い優秀な人材としての評価や成長のプロセス、業績への貢献に贈られる報酬とは違います。 社員同士で報酬を贈りって気軽に喜びを共有する、他者を評価し合う仕組みや制度です。 通常のマネジメントの考え方以外のものですが、労働環境や人間関係をよりよくすることにつながる人材育成の意味合いがあります。  

インセンティブの導入の手順

ここからは、インセンティブを実際に導入する際に失敗しないための手順について、具体的に紹介していきましょう。

必須5項目を決める

インセンティブ制度を導入する機械に、必ず決めておかなければならない関連項目が以下のように5つあります。 ●誰に?どういう場合に?何を?どれくらい?どうやって? それぞれを詳しく見ていきましょう。

誰に?

インセンティブ制度の対象者を誰にするのかを決めます。 これを決める場合のポイントは、以下のとおりです。 ●対象の部門・部署 ●個人向けのインセンティブの有無 ●チーム向けのインセンティブの有無 ●マネージャー向けのインセンティブの有無

どういう場合に?

これはインセンティブを支給する条件です。 基準を明確にして厳正に判断しなければ、不公平感が生まれる重要な項目です。 たとえば以下のような条件になります。 ●成約件数の月間目標を120%達成した場合 ●成約目標を3ヶ月連続で100%以上達成した場合 ●例外(紹介があっての商談での成約は含まないなど)

何を?

インセンティブとして何を支給するかを決めます。 現金やストックオプション、旅行、トロフィー、時計などです。

どれくらい?

支給する量を決めます。 たとえば以下のような決め方になります。 ●月間目標達成ごとに一律3万円 ●達成時に成約総額の5%相当額 ●半年間の連続達成月数✖️2%✖️達成月の成約額合計 ●実績に応じて何段階か変動(達成100〜120%は3万円、121〜130%は8万円、131%以上は一律15万円など) ●貢献度(成約企業の最初のアポイントを取った担当者に成約総額の1%など)

どうやって?

時期や支給する方法を決めます。一般的には以下のとおりです。 ●月末に締めた結果をもとに翌月給与に反映 ●月末に締めた結果をもとに翌月10日に手渡し ●半期に締めた結果でボーナスに加算  

制度運用のフローを決める

制度づくりとそれを円滑に運用するためのフローを決めます。 大まかなフローは以下のとおりです。 1:成果内容を正しく確認する 2:インセンティブを計算 3:インセンティブの支給 例) 1:月初に前月の各営業メンバーの成果をチームリーダーからマネージャーに報告 2:マネージャーがその報告をもとにルールにもとづいてインセンティブ額を計算し、経理部門に報告 3:経理部門がそれを加算し、反映された額の給与振込を予約  

制度導入の急所?リスクマネジメントを施す

最後に、インセンティブ制度を導入する場合のリスクマネジメントの強化対策について、触れておきましょう。 インセンティブ制度はやはりお金にかかわることでもあり、組織の和が損なわれるリスクがあるので、気を付ける必要があります。 リスクをあらかじめ、さまざまな資料をもとに洗い出して対策を想定しておけば、未然にリスクを避けて通ることができます。 まずは、インセンティブ導入によるリスクとして考えられるリスクを洗い出しましょう。 これには社員の何人かにヒアリングする方法や、匿名アンケートを実施するなどがあります。 現場の声をしっかり聞いておくことで、導入後の強いリスクを発見できたり、インセンティブに対する温度差を確認できたりします。 たとえば「その条件にすると各営業担当者が個人プレーに走って有益な情報を属人化しますよ」「そのインセンティブは独身のメンバーには喜ばれないですよ」「そのルールはバックオフィスのメンバーが快く思いませんよ」などが聞かれるかもしれません。 リスクを洗い出した後に、それぞれの優先順位対策を検討します。 先のヒアリングで聞いた声を例に挙げてみましょう。 有益情報が属人化するというリスクが考えられるなら、人事の評価項目で「情報共有」を重視すると発表する、あるいは情報共有の行為にインセンティブを設けるなどで、情報の属人化リスクを回避できるでしょう。 独身メンバーに喜ばれないのなら、既婚と独身でインセンティブの基準を分け、独身者に喜ばれるインセンティブを選ぶことで不公平感を緩和できます。 バックオフィスが快く思わないのなら、営業とバックオフィスとでインセンティブを分かち合えるルールにするなどが有効でしょう。 どのようなリスクも事前にわかっていれば、必ず打つ手が見つかります。  

まとめ

インセンティブ制度とは何かについて、ボーナスや歩合などとの違いも踏まえて詳しく解説し、インセンティブ制度を導入する際の手順についても紹介しました。 実施方法はいくらでも企業ごとに適切なものを考えることができるでしょう。 また、やる気を起こさせるためのインセンティブが弊害を招いてはいけないので、リスクマネジメントは重要性が高いのです。 各部署のメンバーにヒアリングすれば、おおよそのリスクは洗い出せて、対策は打てるでしょう。 営業活動においてメンバーの士気を鼓舞したい企業オーナーや経営幹部のみなさんは、ここで紹介した情報をぜひ参考にしてください。 ▼あわせて読みたい 営業成績改善のためのデータ分析方法とは?基本分析とフレームワークを解説 営業計画書の戦略的な運用方法とは?テンプレートとパワーポイントを使った書き方のコツも紹介

無料で使える企業検索サービス

営業リスト・法人企業リスト