一色 みわ
0 Comments
鉱業業界は、地球の地殻から金属鉱物資源や非金属鉱物資源を採掘、加工する産業です。鉄鋼石、銅、亜鉛、レアメタルなどの金属や、石灰石や塩などの非金属も含む広範な鉱物を扱います。
本記事では、鉱業業界の定義をはじめ、業界構造や市場規模、主要プレイヤーの動向などを解説します。今後の業界展望についても触れていますので、参考にしてください。
なお、BIZMAPSでは鉱業業界に関連する企業の情報を掲載中です。各企業の詳細は、【業界名:非鉄金属・鉱物製品】【業界名:ガス・燃料製品と原料採掘】からご確認いただけます!是非合わせてご覧ください。
目次
鉱業業界は基盤形成産業
鉱業業界は、鉄鋼石、銅、亜鉛、レアメタルなどの金属鉱物資源を採掘し、それらを加工利用可能な形にするまでの初期過程を担う産業です。鉱業業界は地球の地殻内に埋蔵された多種多様な鉱物資源を抽出し、それを工業生産、電子製品、建築材料などに使用する金属に変換します。 鉱業の対象となるのは主に金属鉱物であり、これらは日常生活やさまざまな産業領域で広く利用されています。 また鉱業業界は、石油や石炭などのエネルギー資源や、非鉄金属の製錬・加工といった異なるプロセスを含まないことも特徴です。これらのプロセスは、エネルギー業界や非鉄金属業界など、特化した他の業界で扱われるため、鉱業業界は金属鉱物の採掘に特化しています。 さらに、地球から貴重な金属鉱物を採掘し、生原料として提供する重要な役割も担っており、現代社会の生活や産業の基盤を支える基幹産業としての位置を確立しています。 鉱業業界は、日々の生活を豊かにし、産業の発展を促進するための資源を安定的に供給しているのです。鉱業業界のグローバルな業界構造
鉱業業界は主に鉄鉱石や銅鉱石などの貴重な鉱物資源の発掘に焦点を当てており、資源メジャーと呼ばれる大手グローバル企業によって管理されています。大手グローバル企業は世界各地に拠点を持ち、地域に根ざした鉱山を開発。これらの資源は、総合商社を介して世界中に輸入され、さらに金属メーカーや機器メーカーへと供給されます。 これにより、自動車、電子機器、建築材料など、日常生活に不可欠な製品の製造が可能となります。 鉱業業界の多くの企業は、単に資源を採掘するだけでなく、金属の製錬や加工プロセスも手掛けているのが特徴です。原材料から製品への全工程を一貫して管理することが可能となり、効率性と製品品質の向上が図られます。 日本における鉱業の歴史は、かつては金、銀、銅、鉄、亜鉛などの採掘が盛んであり、国内の多くの地域で大規模な鉱山が運営されていました。しかし、資源の枯渇や経済的な理由から、現在では国内での鉱山運営は大幅に縮小されています。 その結果、日本の鉱業業界は海外での鉱山開発と資源の輸入に注力する形で進化してきました。このグローバルな展開は、日本の産業基盤を支え、エネルギーと資源の安定供給を保障しているのです。鉱業業界における取扱商品の特性
鉱物資源はその種類や使用用途によって大きく、以下の3つのカテゴリーに分けられます。- ベースメタル
- 貴金属
- レアメタル(含むレアアース)
鉱業業界の財務指標分析
鉱業企業の財務分析によると、2022年度の売上高総利益率では、住友金属鉱山が18%、東邦亜鉛が9%、日鉄鉱業が21%となっており、特に日鉄鉱業が高い利益率を示しています。 一方で、営業利益率は企業間で異なり、日鉄鉱業は安定しているものの、住友金属鉱山と東邦亜鉛は大きな変動を経験しており、東邦亜鉛は2019年の米中貿易摩擦や住友金属鉱山は2022年の円安や銅価格の下落が収益に影響を与えました。安全性に関しては、設備投資の必要性から固定資産比率が高く、自己資本比率も安定していることから財務健全性が保たれています。 さらに、総資産利益率(ROA)を見ると、住友金属鉱山と日鉄鉱業は比較的堅調に推移していますが、東邦亜鉛は鉱物価格の変動により大きく変動しています。これらの分析から、鉱物資源市場の価格変動や経済的外部要因がこれら企業の財務に大きな影響を及ぼしており、適切なリスク管理と戦略的資源管理が必要であることが明らかです。鉱業業界の市場規模とトレンド
日本の鉱業の市場規模とトレンドに関して、以下の3点について解説します。- 国内鉱山の減少
1970年には国内に246カ所の金属鉱山が存在しましたが、鉱物資源の枯渇と品位の低下により閉鎖が進み、2007年には11カ所まで減少しました。
これに伴い、鉱山労働者数も33,851人から847人へと大幅に減少し、国内鉱業の衰退が鮮明になりました。
- 輸入依存の高まり
2000年代以降、日本の鉱業は海外からの輸入に大きく依存しており、鉄鉱石は年間約1億3,000万トン、非鉄金属鉱は約1,200万〜1,400万トンで推移しています。
金融危機やコロナ禍の影響で一時的に輸入量が減少しましたが、2020年以降、鉄鉱石は1億トン前後、非鉄金属鉱は1,000万トン前後で推移し、2021年以降は回復の兆しを見せています。
- 価格変動と輸入額の動向
鉱物価格の変動と為替相場の影響を受けるため、輸入額の変動幅は大きいです。
鉄鉱石の価格は、2014年から2016年にかけて中国経済の停滞により下落しましたが、2017年以降は価格が再度上昇し、輸入額も増加傾向にあります。
2021年は鉄鉱石価格の上昇と円安の影響で輸入額が大幅に増加しました。
鉱業業界のマクロ環境
日本の鉱業業界は、海外鉱山への依存が増加している中で、資源ナショナリズムの台頭が顕著なマクロ環境要因となっています。特に、2010年の中国によるレアアース輸出枠の削減や、2009年のインドネシアにおける鉱業法改正など、資源国における輸出制限措置が日本の鉱業に大きな影響を与えているでしょう。 これに対抗するため、日本政府は他の国と協力してWTOに提訴し、中国以外での鉱山開発推進や金属リサイクル、レアアース代替技術の開発を支援しています。これにより、レアアースの需給は安定化し、多様な輸入源や再利用技術が確立されました。 また、金属資源のリサイクルは、エコ意識の高まりと共に拡大しており、政府は家電リサイクル法の制定やアルミ缶のリサイクルを推進しています。リサイクルプロセスにはコストがかかるものの、環境問題への対応としての社会貢献や、CSVを通じた企業価値の向上が期待されているのです。 リサイクルの推進は今後も社会的な注目を集め、企業の競争力強化に寄与すると考えられます。鉱業業界の相関図・業界地図
日本の主要鉱業企業は、戦略的な出資と業界再編を通じてグローバルな鉱山権益を強化しています。 三菱マテリアルは、切削加工工具を手掛けるMOLDINO(旧日立ツール)を子会社化し、ペルーのサフラナル銅鉱山への出資を拡大しています。JXホールディングスと三井金属鉱業は、パンパシフィックカッパーを通じて鉱山開発を進め、三井物産と共にチリの日の丸銅鉱山を運営。住友金属鉱山は、ポーランドのKGHM Polska Miedźと共同でチリのシエラゴルダ銅鉱山に投資しており、かつてはニューカレドニアでのニッケル事業にも参加していましたが、不採算で撤退しました。 グローバルでは、Glencore、BHP Billiton、Rio Tinto、VALE、Anglo Americanなどの大手資源メジャーがM&Aを通じて市場の寡占を進めています。これらの企業は、需要減少の中で非中核資源事業の売却や事業ポートフォリオの整理も進めています。 このような動向は、業界全体の国際競争力強化と今後の成果創出に向けた重要なステップといえるでしょう。鉱業業界の主要プレイヤーの動向
主要プレイヤーの動向を把握することは、業界のトレンドや市場の方向性を理解する手助けになります。ここでは、鉱業業界の主要プレイヤーである住友金属鉱山と日鉄鉱業について詳しく解説しますので、参考にしてください。- 既存銅鉱山の強化と新規金鉱開発への注力
- 国内石灰石生産の強化と環太平洋地域での銅資源開発
既存銅鉱山の強化と新規金鉱開発への注力
非鉄金属業界のリーダーである住友金属鉱山は、国内外での鉱山開発と運営を積極的に行っています。国内では、日本最大の金鉱山である菱刈鉱山を含む複数の鉱山を運営。また、アメリカのポゴ鉱山や、ペルーとチリにおける銅鉱山開発など、国際的な展開も積極的に進めています。 2022年度は円安の影響やニッケル価格の上昇、さらには車載用電池向け部材の販売が好調であり、業績は大幅な増収を記録しました。 中期経営計画においては、電池材料(特に正極材)の生産能力を増強することに加え、チリのケブラダ・ブランカ銅山での生産開始が予定されています。これにより、銅の供給能力がさらに向上する見込みです。 また、ニッケルの新規鉱源探索とバリューチェーンの強化も重要な戦略の一つとされており、これらの動きは、企業の持続可能な成長と業界内での競争力を高めるためのものです。 さらに、M&Aを視野に入れた新規の金鉱開発にも注力しており、これは住友金属鉱山の資源確保戦略として重要な位置を占めています。国内石灰石生産の強化と環太平洋地域での銅資源開発
日鉄鉱業は、国内での石灰石生産を主力に据えつつ、チリの銅鉱山を核として環太平洋地域での銅資源開発に力を入れています。同社は全国に複数の石灰石鉱山を保有し、業界トップクラスの生産規模である年間2万トンの石灰石を生産。特に鳥形山鉱業所は国内最大級であり、尻屋鉱業所や大分事業所と共に、国内外の鉄鋼メーカーやセメントメーカーへの供給基盤となっています。 海外市場へのアプローチも積極的で、オーストラリアや台湾への石灰石輸出に加え、チリのアタカマ鉱山やソル・ナシエンテ鉱山、さらには双日との共同プロジェクトであるアルケロス銅山の開発に投資しています。2022年度の業績は、鉱石部門での燃料関連商品と電気銅の販売価格上昇により増収を記録しています。 日鉄鉱業は、既存の鉱山や施設での生産量を増やし、本格的な運用への大幅投資を予定しており、経営基盤の安定化を図るためのコスト見直しも進めています。将来的にはチリをはじめとする環太平洋地域全体での銅資源開発に注力し、グローバルな探鉱および鉱山開発をさらに拡大する計画です。鉱業業界の今後の業界展望
業界の未来を詳細に理解することは、企業や鉱業リーダーにとって非常に重要です。市場のトレンド、技術の発展、消費者の変化する要望をしっかりと捉えることで、鉱業業界の競争に勝つための戦略を立てる基礎が築けます。 ここで解説する鉱業業界の今後の業界展望の内容は、以下の2点です。- 新型コロナウイルスが鉱業業界に与えた影響
- 一貫生産体制の拡充とレアアース依存脱却の動向
新型コロナウイルスが鉱業業界に与えた影響
新型コロナウイルスの拡大は、2020年に海外鉱山の生産活動を大きく停止させ、鉱業業界における生産量や輸出量の大幅な減少を引き起こしました。2021年には生産活動が再開し、生産量と輸出量は若干回復しましたが、中長期的な減少傾向には変化がありません。 生産活動の再開後も、需給バランスの変化による価格の激しい変動が続いており、アフターコロナの世界経済の不確実性が鉱業業界に大きな影響を与え続けています。この状況は、鉱業企業にとって新たな戦略と適応策を求めることになり、業界全体のリスク管理と供給チェーンの再構築が重要な課題となっています。一貫生産体制の拡充とレアアース依存脱却の動向
鉱業業界において、海外資源メジャーの寡占化とエンドユーザー産業の大手集中が進む中、非鉄金属メーカーは収益性を確保するため、採掘から製錬・加工まで一貫したサービスを提供するビジネスモデルへと進出を加速。この動きは、製品供給の安定性を高め、市場での競争力を強化することを目指しています。 また、レアアースの採掘においては、中国が市場の大部分を占めている中、日本近海のスカンジウムなどのレアメタル採掘技術が進化しています。これに加え、小型家電のリサイクル拡大やレアアースを必要としない代替技術の開発が進んでおり、これらの技術革新が中国への依存脱却と供給網の多様化に貢献する可能性が高いです。 このような取り組みは、資源確保の戦略として重要であり、業界の持続可能な成長に向けた努力が続けられています。鉱業業界の変革に向けた対応策を模索しよう/h2>
鉱業業界は変革期に入っています。鉱業業界で成功するためには、特に最新の採掘技術と効率化への投資、そして強固な供給チェーンの確保などが重要です。これらを通じて、コスト効率を高め、持続可能な運営を実現することが、競争が激しい市場での成功につながります。 なおBIZMAPSでは、オリジナルタグを用いて多様なアプローチで企業情報を検索できます。鉱業業界の企業はもちろん、国内200万社以上の企業の基本情報が無料で閲覧でき、売上や従業員数などの情報を基にターゲット企業を絞り込むことが可能です。 ▼その他のBIZMAPS掲載企業の特集はこちら! 清涼飲料業界を徹底分析!主要企業の動きや今後の展望についても 給食業界の最新の動向や今後の展望とは?主要事業も紹介します! 水産業界とは?食料供給と自然資源の保護を担う重要な産業を徹底解説 加工食品業界漬物・煮物・大豆、米飯・総菜ベンダーとは?徹底解説 農業業界とは?グローバル市場における主要プレイヤーと市場の動向を紹介 健康食品業界とは?健康を支援する産業の現状と将来展望を紹介! 酒販店業界は免許が必要な規制業界!基礎知識や特性や最新動向を解説「場所や時間にとらわれない自由な働き方」がモットーの転勤族ママライターです。読み手に寄り添った分かりやすい文章を心がけています。転職・副業・旅行ジャンルなどが得意。旅行とカメラと甘いもの(とくにチーズケーキ)が大好きで、毎日のお茶タイムは欠かせません。元気すぎる2人の子どもを育てながらのんびりと活動しています。
ブログ:https://miwaalog.com/