一色 みわ 0 Comments
プラント業界とは、主に産業用や商業用の大規模施設、システム、または機器の設計、建設、保守を行う業界です。多様な産業セクターにわたって基盤的な役割を果たしています。 本記事では、プラント業界の定義をはじめ、取扱商品の特徴、市場規模、主要プレイヤーの動向などを解説します。これらの情報を活用することで、業界の将来のトレンドを見極められるでしょう。 なお、BIZMAPSでは プラント業界に関連する企業の情報を掲載中です。各企業の詳細は【プラント設備工事】【プラント設計】からご確認いただけます!是非合わせてご覧ください。

プラント業界の定義

プラント業界とは、工業施設や生産設備の設計、構築、管理を専門的に行う事業分野です。この業界には、化学工場、石油精製所、発電所、食品加工施設、製薬工場など、さまざまな種類の産業プラントが含まれます。プラントエンジニアリングの目的は、これらの施設が最適な条件で安全かつ効率的に稼働するようにすることです。 この業界の事業者は、エンジニアリング、調達、建設(EPC)という一連のプロセスを通じて、プラントのライフサイクル全体を支えます。具体的には、初期の設計段階から始まり、必要な機材や材料の調達、実際の建設作業、そして完成後のプラントの運営と保守に至るまでを含みます。 プラントエンジニアリングにおける設計プロセスでは、最新の技術を取り入れ、環境への影響を最小限に抑えつつ、エネルギー効率の良い方法で生産活動を行えるよう配慮されます。また、安全性はこの業界における最優先事項であり、厳格な安全基準とリスク管理プロセスが設計段階から組み込まれています。 さらに、デジタル技術の進展により、プラントエンジニアリングではビッグデータ分析、IoT(モノのインターネット)、AI(人工知能)を活用した遠隔監視や自動化が推進されているのも特徴です。プラントの運用効率が向上し、予防保守やエネルギー管理がより効果的に行えるようになります。 このように、プラントエンジニアリング業界は、技術革新と持続可能性の追求を通じて、産業の発展と環境保護の両立を目指しています。

プラント業界の構造

プラント業界の構造は、国や民間企業による工場建設の発注を受けるプラントエンジニアリング会社が中心です。これらの会社は、建設資材メーカーから必要な資材を調達し、さらに下請け業者を活用して工場の建設を行います。この分野では、設計(Engineering)、調達(Procurement)、建設(Construction)の三つの主要フェーズが存在し、これらは「EPC」という用語で一般に知られています。 プラントエンジニアリング会社の業務は、主に設計に集中していますが、実際の資材の調達は輸送業者が担当し、建設作業は施工会社やゼネコンが行う形式をとっているのが特徴。プラントは非常に複雑なシステムであり、多くの部品が必要で、設計から機械の調達、そして建設までを一貫して行うことは大きな課題です。そのため、プロセスの管理や品質、納期、コストの最適化がエンジニアリング会社の強みとなっています。 また、プラント業界は建設・土木業界と同様に、重層的な下請けのピラミッド構造を特徴としています。大規模プロジェクトでは、多数の会社が関与するため、プロジェクトマネジメントが非常に複雑になります。特に、海外プロジェクトでは、現場で多国籍の人材を管理する必要があり、プラントエンジニアの役割の重要性が高まります。このような状況は、業界内での専門知識と経験が求められる理由です。

プラント業界の取扱商品

プラントとは、製造業において使用される多数の機器や装置が統合された、特定の機能を持つ設備全体です。これらの設備は、生産プロセスを効率的かつ効果的に行うために設計されており、各種の業界で異なる用途に対応しています。 日本のプラント業界のリーダーである日揮ホールディングスでは、プラントを幅広いカテゴリに分類しており、以下のような分野が含まれます。
  1. 石油・ガス・資源開発関係:採掘地からの原油や天然ガスの抽出、処理、輸送設備
  2. 石油精製関係:原油をガソリン、ディーゼル燃料などに精製するプロセス設備
  3. LNG関係:液化天然ガスの製造、貯蔵、輸送設備
  4. 化学関係:化学物質や製品の製造プロセスに必要な設備
  5. 発電・原子力・新エネルギー関係:発電所、原子力施設、再生可能エネルギー源を利用した施設
  6. 生活関連・一般産業設備関係:食品加工や医薬品製造など、日常生活に密接な産業で使用される設備
  7. 環境・社会施設・情報技術関係:廃棄物処理施設、水処理施設、情報通信技術を活用したインフラストラクチャ
それぞれのカテゴリにおいて、設計と建設には生産物の特性に応じた特定の要件が求められます。生産性の向上、コスト削減、そして周囲の環境への影響を最小限に抑えるための配慮が必要です。 プラントの設計と運営においては、技術的な専門知識と共に、環境保全や持続可能性への配慮もますます重要になってきています。これらの要素を統合することで、日揮ホールディングスを含むプラント業界の企業は、効率的かつ環境に優しい施設の提供を目指しています。

プラント業界のサービスの特徴

プラント業界は、大規模プロジェクトが多く、完成まで3年以上かかることもあります。工事には数千人の作業者が関わることがある一方で、設備投資需要や為替、資源価格、政治経済の影響を受けるため、受注の波が大きいのが特徴です。 業績を評価する際には、完成工事高だけでなく受注高やプロジェクトの受注残高も重要です。また、グローバル競争が激しく、特に海外での投資増加に伴い、国内企業の海外事業が活発になっており、海外売上比率が8割を超える企業も多いです。 プラント業界ではプロジェクト遂行中に契約内容が変更されることもありますが、基本的には合意した仕様に基づいて進められます。このため、見積もり時に採算が取れるかどうかを決定する採算性調査(Feasibility Study, FS)の精度が極めて重要です。 受注前にはFSを用いて契約内容を詳細に精査し、リスクを分析して受注の可否を判断します。その後、利益が見込めると判断されれば、工場のサイズや性能の基本設計(Front End Engineering Design, FEED)が行われます。 プラントは物理的な完成だけでなく技術的な性能も満たす必要があり、顧客のニーズに沿った設計が成功の鍵となります。

プラント業界の市場規模

プラント業界の市場規模とトレンドについては、国土交通省の「建築着工統計調査」が重要な情報源です。この調査によると、2023年の製造業用建築物の工事費予定額は2.6兆円となっています。 この内訳では、機械器具製造業用の工事費が最も大きく、全体の37%にあたる9,761億円を占めています。これに続くのは、食料、繊維、木材・木製品等で、これらのセクターの工事費は5,599億円で全体の21%を占めています。 市場の動向を振り返ると、2008年に工事費予定額が急増した後、2009年の世界的な経済危機の影響で額が半減しました。その後は徐々に回復し、2018年と2019年には2兆円を超える規模に達していました。 しかし、2020年には新型コロナウイルスのパンデミックが発生し、多くの企業が設備投資計画の見直しや合理化を余儀なくされ、市場は大きく縮小傾向に。2021年には前年比で回復傾向が見られ、特に食料、繊維、木材・木製品の市場が早期に回復しました。 2022年には、延期されていた建築投資の需要が急増し、特に機械器具製造業用の市場がコロナ前の水準を大幅に上回る回復を示しました。2023年は若干の減少は見られましたが、製造業における省人化や自動化のニーズが高まっており、今後も市場は堅調に推移する見通しです。 ただし、この統計では海外の工場建設は含まれておらず、グローバル化が進むプラント業界においては、海外での受注状況にも注意を払う必要があります。

プラント業界のマクロ環境

国内での大型プラントの建設は減少していますが、既存施設の高経年化に伴い、改修や更新の需要は増加しています。海外市場では、2015年に大幅に落ち込んだ石油価格が回復傾向にあり、2015年以降、海外での成約額と調達比率が緩やかに拡大しています。 例えば、2015年の成約額は120.5億米ドル、海外調達比率は49.0%で、2017年には成約額が142.1億米ドル、海外調達比率が57.9%に増加しました。 アジア市場は、全体の約70%を占める主要な市場であり、社会インフラの整備が求められている新興国でのプラント需要が拡大しています。これには都市開発、交通網整備、電力・水供給などが含まれ、多額の投資が計画されています。 一方、米中貿易戦争の影響で中国への輸出が縮小するリスクがあり、米国ではLNGプラント建設の投資遅延が日本のプラントエンジニアリング会社に影響を与えています。 人材不足と技能労働者の高齢化は、プラント業界の大きな課題です。特に、プロジェクトマネジメントに必要な専門人材の獲得競争は激しく、技術力の継承と人材確保が重要となっています。また、情報技術の導入によるプラント運営の自動化や最適化が進められており、AIを利用した制御やメンテナンスの最適化が検討されています。

プラント業界の相関図

日本のプラント業界では、専業の大手3社が業界のトップに位置しています。この中で、日揮ホールディングスは独立系企業として活動していますが、千代田化工建設は三菱商事からの出資を受け、東洋エンジニアリングは三井物産の支援を受けています。 これらの商社は、それぞれ得意とする事業領域でのシナジー創出を目指しており、国内よりも海外市場に積極的に展開しているのが特徴。国内での売上は比較的小さい部分を占めています。 他の重要なプレイヤーには、以下の企業が含まれます。 【鉄鋼系】 【重電系】 【総合重機系】 海外の主要企業には、以下のような企業があります。 【ヨーロッパ】
  • Petrofac(イギリス)
  • Technip(イギリス)
  • Saipem(イタリア)
【アメリカ】
  • Bechtel
  • Fluor
  • CB&I
【オーストラリア】
  • WorleyParsons
【韓国】
  • HYUNDAI Heavy Industries
  • Samsung Engineering
  • SK Engineering & Construction
  • GS Engineering & Construction
【UAE】
  • Abu Dhabi-based National Petroleum Construction Company(NPCC)

プラント業界の主要プレイヤーの動向

プラント業界の主要プレイヤーの動向について、注目すべき以下の3点を詳しく解説します。プラント業界の今後の成長動向と市場の変動に深く関連しており、業界の将来を左右する重要なファクターです。
  • 国際市場とパンデミックを乗り越え業績回復へ
  • 日揮ホールディングス新規事業拡大
  • 千代田化工建設他コロナ後に収益回復

国際市場とパンデミックを乗り越え業績回復へ

プラント業界の主要企業は、2008年の世界的不況と原油・資源価格の急激な下落により売上が落ち込み始めました。2009年には中東の景気低迷と韓国企業を中心に新規参入が増えたため、価格競争が激化し、収益性が低下。2011年以降、市況が改善されるにつれ、企業の業績も持ち直し始めました。 しかし、2015年にアメリカのシェールオイルの輸出解禁とOPECの生産量維持策が石油価格を再び大幅に押し下げ、多くの企業が業績悪化に直面。2018年の米中貿易戦争の影響でアメリカでのプラント投資が遅れ、千代田化工建設や東洋エンジニアリングなど、海外展開を大きく行っている企業は大きな打撃を受けました。 2019年度には、大規模工事の順調な進行が企業収益の回復に。しかし、2020年度は新型コロナウイルスの影響で納期の遅れや新規受注の延期が多発し、多くの企業が業績を悪化させましたが、その後は徐々に回復傾向にあります。

日揮ホールディングス新規事業拡大

日本のリーディングカンパニーである日揮ホールディングスは、新型コロナウイルスの影響と原油価格の急落により、モザンビークの大型液化天然ガス(LNG)プラントやイラクの製油所プロジェクトにおいて投資決定の遅れが生じました。 これが原因で、2019年度の売上高は前年度比で22.4%減の4,808億円に。2020年度には世界的な需要減退が続き、売上はさらに低迷しましたが、2022年度にはコロナ前の水準へと回復しています。 2022年度には、エネルギーソリューション部門が世界的な需要回復に伴い受注額を増加させ、低・脱炭素化のトレンドを背景にファシリティインフラストラクチャーソリューション部門の受注も増え、収益性が向上しました。 中期経営計画(2021年度から2025年度)では、再生可能エネルギー(太陽光、蓄電、バイオマス発電)、洋上風力発電、水素・燃料アンモニアといったエネルギートランジション領域、電気自動車向け高熱伝導窒化ケイ素基盤や半導体用研磨剤などの高機能材領域、さらにはヘルスケア・ライフサイエンス領域での事業強化を目指しています。

千代田化工建設他コロナ後に収益回復

千代田化工建設と東洋エンジニアリングは、2018年度にアメリカの大型LNGプロジェクトにおける工事コストの増加で収益性が大きく悪化しました。この影響で、両社は有価証券報告書に「継続企業の前提に関する重要事象等」の注記を追加。千代田化工建設は三菱商事から、東洋エンジニアリングはインテグラルからの出資を受け、財務状態が改善されました。 また、コストリスクを低減するための対策とコスト管理体制の強化に迅速に取り組んだ結果、2019年度には営業利益が黒字に転じました。 2020年度はコロナ禍の影響で売上は減少しましたが、利益は黒字を維持しました。2021年度以降は売上の回復に伴い、収益性が改善しています。

プラント業界の今後の業界展望

プラント業界の今後の展望について、注目すべき以下の2点について詳しく解説します。
  • COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の影響
  • 業務拡大と新規参入で収益安定化を目指すと予測
これらの動向は、プラント業界の将来的な成長潜在力を形成するとともに、変化するグローバル経済の中での競争力を維持するための鍵となるでしょう。

COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の影響

新型コロナウイルスの感染拡大はプラント業界に多大な影響を及ぼしました。特に海外の大型プロジェクトでは、人の移動制限による造船所の稼働遅れや荷役の遅延が発生し、これがプラント納期の遅れにつながりました。 この納期遅れによる直接的な損失には、増加する作業員の人件費や遅延損害金の支払いリスクが含まれます。一般的には「不可抗力条項」に基づいて、こうした納期遅れによる損失は顧客側の負担となるのが通常ですが、新型コロナウイルスの具体的な影響範囲が不明瞭なケースも多く見受けられます。 加えて、多くのプラント大手企業は、2020年度からの収益向上を目指して不採算案件の処理を進めていましたが、コロナ禍によるエネルギーや化学分野の顧客の投資意欲の低下が新規受注の延期を引き起こし、これが収益性のさらなる悪化に繋がっています。

業務拡大と新規参入で収益安定化を目指すと予測

プラント業界は、設備投資需要、為替、資源価格、および地域政治経済の変動に敏感で、その受注波及は大きく、未来の動向は予測が難しいです。そのため、多くの企業が従来の「EPC事業」から脱して、プロジェクト管理、技術コンサルティング、完成後のメンテナンスなど、より安定した収益が見込めるサービス事業への拡大を進めているはずです。 また、医療分野など従来とは異なる業界への参入も活発に行われており、新たな受注源を開拓しています。 グローバル競争が激化する中で、クロスボーダーのM&Aが増加しており、特に総合重機業界ではM&Aによるノウハウ獲得と事業展開が顕著です。 例えば、三井造船、川崎重工業、日立造船などの企業が海外のプラントエンジニアリング企業を買収し、新たな市場でのEPC拡大や新技術の導入を進めています。これらの動きは、将来的な成長エンジンとしてM&Aを戦略的に利用する傾向が強まっています。

プラント業界でビジネスチャンスを掴もう

プラント業界の今後は、技術革新、持続可能な開発、およびグローバル化が主要な推進力となる見込みです。このような状況の中、業界の変化に敏感に反応し、新たな市場動向や技術を迅速に取り入れることで、ビジネスチャンスを積極的に捉えられるでしょう。 なおBIZMAPSでは、オリジナルタグを用いて多様なアプローチで企業情報を検索できます。国内170万社以上の企業の基本情報が無料で閲覧でき、売上や従業員数などの情報を基にターゲット企業を絞り込むことが可能です。 詳しくはこちら! 営業リストおすすめ無料検索サイト|BIZMAPS(ビズマップ) ▼その他のBIZMAPS掲載企業の特集はこちら! 2021年8月の新設法人をピックアップ!新設法人の動向や当時のニュースも紹介 ▼法人営業ハックの業界特集はこちら! 運輸業界とは?現状や最新動向を紹介!TOP5企業もチェック! 生活用品業界の研究情報を解説! 情報・通信業界を徹底解説!最新のトレンドも紹介します 総合小売業界とは?主な業種や最新動向などを解説 機械業界とは?産業の基礎知識から注目の業界動向まで徹底解説! エネルギー業界とは?徹底的に業界研究をした内容を解説します! 鉄鋼業界の市場は停滞の傾向?業界の概要と気になる今後の動向も

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