えむら若奈 0 Comments
建材とは、建築工事で使われる材料のことです。木材やコンクリート、金属、石などさまざまな種類があり、それぞれの特徴を活かしてあらゆる場所で使われています。その建材を取り扱っている建材業界は、私たちの生活を下支えする重要な産業といえるでしょう。 そこで今回は、建材業界の構造や市場規模、トレンドに加えて、建材業界の今後の動向などを徹底解説します。 なお、建材業界に関連する企業情報は「木材系建材」「金属系建材」「樹脂系建材」「窯業系建材・石材」から閲覧できるので、ぜひ参考にしてください。

建材業界の構造

建材メーカーとは、原材料メーカーから原材料を仕入れて建材を製造して、建材・設備卸を通して、施工を手がけるゼネコンや施工会社に販売する企業を指します。 建材メーカーでは木材などの原材料は、海外からの輸入に依存しています。木材の調達から手がける企業もありますが、輸入商社から仕入れるのが一般的です。建材メーカーのなかには、卸や小売りの機能も有して、販売まで手がけている事業者も存在します。 また、建材メーカーの顧客であるゼネコンや施工会社は、建材の在庫を多く保有することはなく、施主の発注に応じて建材を仕入れているため、建材業界は建設業界全体の動向の影響を大きく受けます。 建材業界に属する企業は、大手ではLIXILのように複数品目で強みを持つ企業もありますが、多くの中小企業は特定の品目に特化して事業を展開している点が特徴です。 流通は建材卸を通じた商流が一般的ではあるものの、近年ではメーカーがゼネコンや施工会社と直接取引をして、商品を現場に直接納めるケースも増加。住宅建築の現場では、物件の工事の進捗に合わせた邸別配送を求められることもあるため、卸を含めて建材業界全体として、サプライチェーンのあり方に変化が求められています。

建材はニーズに応じた素材が用いられる

建材は、用いられる原材料によって分類できます。木材、樹脂材、瓦など窯業で製造される材料、コンクリート材、金属材などです。 また、建材の品目としては屋根材、外壁材、床材、内装材、構造材、ドア・サッシといった種類があります。同じ品目であっても、顧客のニーズに応じて用いられる原材料は異なります。例えば床材だと、木材が用いられるケースや樹脂系の床材を使用する場合もあるでしょう。 日本産業分類において建材の製造業者に当てはまる業種としては、プラスチック板・棒・管・継手・異形押出製品製造業、木材・木製品製造業、プラスチック床材製造業、窯業・土石製品製造業、建設用・建築用金属製品製造業(製缶板金業含む)などがあります。

業界構造は品目ごとに異なる

建材業界は建設業界全体の影響を受けやすく、国・自治体・民間企業の建設投資額が、業績を大きく左右します。 建材業界の競争環境は品目によって異なっており、大手と中小企業が共存できている品目もある一方で、企業の淘汰が進んでいる品目もあります。また一般的に、大手企業は建材総合メーカーとして幅広い建材を扱っていますが、中小企業は特定の建材に特化しているケースが多いです。 買い手である建設会社に対しては、建設会社が建材の価格変動による影響を受けていることから、原材料の価格変動を建材の価格に転嫁できているようです。買い手に対する建材メーカーの交渉力はあると考えられる一方、供給業者である売り手に対しては、木材などを中心に輸入に頼っている建材も多いために、安定的な確保が難しくなっている面もあります。 またコンクリート系の建材メーカーに関しては、原材料となるセメントの系列会社が多いため、セメント業界の影響を受けやすい状況となっています。

他社との差別化を図る「高付加価値商品」の展開がカギ

建設市場が中長期的に縮小していくなかで、建材業界では他社との差別化を図る「高付加価値商品」の展開が重要になっています。従来の建材業界では価格や施工技術などでの差別化が主流でしたが、近年はそれらに加えて、機能面や意匠性の高さが求められるようになっているのです。 サスティナブルな社会の実現を目指す現代において、機能面として特に重視されているのは環境配慮型の建材で、高機能の断熱材や外装材の需要が高まっています。 また高齢化の影響で、補助金の交付とも連動して、シニア市場を意識した建材の需要も増えています。老人ホーム、介護施設、サービスつき高齢者住宅や病院などでは、高齢者向けの建材としてクッションフロア、吊り戸、手すりなどに高いニーズがあるようです。 意匠性の面では、顧客のニーズが多様化していることもあり、各品目において顧客の嗜好に合わせた建材を供給していくことが重要になっています。

建材業界の市場規模とトレンド

経済産業省の「経済構造動態調査」で公表されている産業別の出荷額データから、建材関連の産業を抽出し、市場規模およびトレンドをみていきましょう。 建材にはさまざまな材料が用いられているため、木材、プラスチック、窯業・土石、金属に絞ってデータを確認しています。データの抽出においては、木材は木材・木製品製造業のデータ、プラスチックはプラスチック板・棒・管・継手・異形押出製品製造業とプラスチック床材製造業のデータを用います。 また、窯業・土石は窯業・土石製品製造業のデータを、金属は建設用・建築用金属製品製造業のデータを用います。木材と窯業・土石に関しては、抽出しているデータの範囲が広いため、建材以外の用途で用いられているものも多少含まれている点に留意してください。 2021年の建材製造業の出荷額合計は18.8兆円。内訳はもっとも大きい窯業・土石製品が8.0兆円で、次いで建設用・建築用金属製品製造業の6.5兆円、木材・木製品製造業の3.2兆円と続いています。 建材業界は建築投資額の影響を大きく受けていることから、2020年はコロナ禍による需要減少でプラスチック板・棒・管・継手・異形押出製品製造業以外の業種で、大幅に市場が縮小しました。 2021年に入ると、窯業・土石製品製造業と木材・木製品製造業は前年の受注積み残し分の出荷も重なり、コロナ禍前を上回る金額まで回復したものの、ほかの業種では低調な状態が続いたままです。 1996年度に82.8兆円だった建設投資額は減少傾向が続き、2010年度には41.9兆円と半減しました。2009年度の金融危機の影響で民間の建設需要が冷え込んだことで、投資額が減少したためです。 2012年度以降は東日本大震災の復旧・復興などに向けた需要拡大と消費増税前の駆け込み需要、2015年度からは東京オリンピック関連施設の特需などにより、増加傾向が続きました。 2020年度は、コロナ禍により民間の建築投資額が減少したものの、政府による土木投資額が伸張して、建設投資額全体としては増加を維持。2021年度以降も拡大が続いており、2023年度の建設投資見通し額は70兆円で、土木への投資が堅調となっています。

建材業界を取り巻く環境

建設業界は、社会資本の老朽化や住宅ストックの増加にともなう住宅着工件数の減少により、今後大きな転換期を迎えることが予測されています。 社会資本・インフラにおいては、特に道路橋・トンネル・河川・下水道・港湾などで高度成長期以降に整備されたものが多く、今後20年間で建設から50年以上経過する施設が急速に増加すると言われています。 設備が老朽化することでコンクリートのひび割れや部品のさび、摩耗などにより建物が壊れやすくなり、重大な事故を引き起こすことにつながることが懸念されているのです。そのため、今後は社会資本を戦略的に維持管理・更新することが求められていて、建材需要が高まるものと見られています。 住宅においては、人口と世帯数が今後減少に転じると見られており、住宅着工件数の漸減が続くことが予想されています。一方、既存住宅のリフォーム需要は旺盛となっていて、省エネ関連の建材ニーズも高まっています。 2022年6月に公布された「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律」により、建築物省エネ法が改正され、2025年から原則すべての住宅建築において省エネ基準への適合が義務づけられました。建材メーカー各社は、資材やエネルギー価格の高騰の影響により厳しい経営環境に置かれながらも、新たなニーズを獲得するため、省エネ性能を高めた製品の販売を強化しているところです。

建築基準法・建設リサイクル法などへの対応も重要

建築基準法や建設リサイクル法など、関連する法制度への対応も建築業界の重要なポイントとなっています。 たとえば2007年の建築基準法の改正では、欠陥建築物の除去を目指して構造計算のチェックが厳格化され、建築確認審査が長期化したことで住宅着工戸数は大幅に減少。建材業界に影響を与えました。 また2000年に公布された建設リサイクル法は「特定建設資材に係る分別解体等及び特定建設資材廃棄物の再資源化等の促進等」を目的としており、コンクリートや木材の再資源化を義務づけています。 2003年に施行された建築基準法に基づくシックハウス対策により、ホルムアルデヒドに関する建材・換気設備の規制とクロルピリホスの使用禁止が義務づけられました。さらに省エネルギー基準により、住宅全体の断熱性能や外壁、窓などの断熱性能の基準が定められています。法的拘束力はないものの、建材業界においては今後の動向に注意が必要です。

中小メーカーも多く存在する多数乱戦業界

建材業界は各品目によって主要企業が異なり、中小メーカーも多く存在しているため、多数乱戦業界といえます。 品目によっては寡占市場となっている分野もありますが、中小企業が中心で、大手企業が少ない市場も存在しています。例えば金属系は、一部の大手以外は参入事業者のほとんどが中小企業です。また中小企業の多くは、特定の分野に特化して製品展開をすることが一般的となっています。 大手企業は、総合建材メーカーとして複数の建材を取り扱っており、複数の業界で主要な企業となってるケースも多くあります。例えば金属系の建材の大手である株式会社LIXILは、タイルにおいてはシェアトップ、窯業系においても主要企業です。さらにLIXILは、住宅設備においても業界トップの企業で、バス・トイレやシステムキッチンなどにおいても強みを持っています。 その一方、コンクリート系の建材においては、原材料となるセメント企業の系列会社が多く存在している点が特徴です。アジアパイルホールディングス株式会社日本ヒューム株式会社は、ともにセメント大手の太平洋セメント株式会社から出資を受けています。

建材業界の今後の展望

新型コロナウイルス感染拡大の影響により、工事の中断や延期が相次いだことで、2020年は建材の需要が減退して各社の収益を悪化させました。2021年には建築需要が戻ってきたものの、消費者マインドの回復に時間がかかっているのが現状です。 コロナ禍で訪日外国人の宿泊が減ったホテル業界の景況が悪化し、新規ホテルの投資計画が頓挫するなどの波及効果も懸念されています。BtoB向け(DIY用)の資材の需要が高まるなど、業界にとって否定的な要因ばかりではないものの、今後の需要回復には不透明感がある状況です。このような需要の減少が価格の下落につながる恐れも指摘されており、業界の見通しは依然厳しいものとなっています。 一方、安全な住まいへの消費者ニーズは高まっていて、抗菌建材については需要が拡大する見込みとなっています。 国内の建設市場は、東京オリンピックや社会インフラの整備など、堅調な需要に支えられていました。しかし今後は、人口減少により住宅などの新設工事は減少する見込みです。 また社会資本の老朽化にともなう更新需要や、住宅のリフォーム需要は高まると予想されていますが、新設工事の減少を上回って建設市場を押し上げるまでには至らないとされていて、国内の建材業界も停滞すると思われます。 このような状況下で各企業が成長をするためには、業界の中の成長市場を取り込んでいくことがカギとなっています。例えば耐力壁や防災屋根といった、リニューアルに適した建材の展開も考えられるでしょう。 また、諸外国のなかでも特に早いスピードで高齢化が進行している日本においては、シニア市場に適した建材の需要が高まっています。従来のバリアフリー建材に加え、耐震・防火・防犯などに適した建材が求められているようです。 リノベーション向け建材は、新築・新設向けと比べて、出荷の数がまとまらずに分散しているケースもあります。そのため建設業界における事業の拡大にあたっては、物流・商流を含めた最適化、サプライチェーン全体の再設計も必要でしょう。 さらに戸建て住宅も含むすべての新築の建築物で、省エネ基準への適合義務化が段階的に拡大されます。そのため、耐震や防耐火などと同様に、断熱材などの省エネに適した建材の需要が高まっています。今後はこのような国内の成長市場を取り込むために、高付加価値な建材を開発・展開しつつ、成長している新興国市場に対して高付加価値な建材を販売していくこともカギとなってくるでしょう。

建材業界の今後に注目

ひと口に建材といっても、その種類はさまざまです。そして建材の種類によって主要企業は異なるため、建材業界では大企業から中小企業まで多くのメーカーが活躍しています。組織の規模が小さくても、確かな強みを持って事業を展開している企業が建材業界には数多く存在しているのです。 社会の変化によって求められるものは変わっていきますが、建材業界自体のニーズは今後も高まっていくでしょう。 BIZMAPSでは、建材の種類ごとに該当する企業が検索可能です。今後も成長が見込まれる建材業界の注目企業を、ぜひチェックしてみてください! ▼法人営業ハックの業界特集はこちら! 不動産業界の今後はどうなる?業界動向を左右するポイントを解説 建設業界とは?定義や動向を解説 ▼BIZMAPSのオリジナルタグを元にした企業特集はこちら! 暮らしを支える製鉄所の現状とは?関連企業の売上ランキングも紹介 板金業界における注目の展示会・フェアや先駆け企業を10社紹介! 防災産業展とは?日本の防災を支える2018出展企業を10社紹介! 営業職募集のポイントや優秀な人材の見極め方は?注目企業25社も紹介 新卒採用中の企業へのアプローチ:最新媒体比較と特選20社徹底解説

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