一色 みわ 0 Comments
酒類業界は、アルコール飲料の製造、販売、流通を扱う産業です。ビール、ワイン、スピリッツ(蒸留酒)、サワー、RTD(Ready to Drink)飲料、地ビールやクラフトビールなどさまざまなカテゴリーが含まれます。 本記事では、酒類業界の定義をはじめ、構造や市場規模、主要プレイヤーの動向などを解説します。 なお、BIZMAPSでは酒類業界に関連する企業の情報を掲載中です。各企業の詳細は、【業界名:酒・ワイン】からご確認いただけます!是非合わせてご覧ください。

酒類業界は影響力のある産業

酒類業界は、ビール、ワイン、スピリッツ(蒸留酒)、およびその他のアルコール飲料を製造、販売する企業から構成される産業です。この業界にはさまざまな規模のメーカーが存在し、大手多国籍企業から地域に根ざしたクラフト醸造所まで幅広くあります。製品ラインは非常に多様な点が特徴。伝統的な製法に基づいた飲料から、新しいフレーバーや特殊な成分を用いた革新的な製品までを含みます。 酒類業界のメーカーは、原料の選定から製造、熟成、ボトリング、そして市場への流通という一連のプロセスを管理しています。また、この業界は文化的な側面も強く、地域の伝統や祭事、社会的な行事と深いつながりを持っていることが多いです。消費者の嗜好の変化に敏感であり、健康志向の高まりや持続可能性への関心の増加など、社会的トレンドに応じて製品開発やマーケティング戦略を進化させています。 このように、酒類業界は多岐にわたる商品を提供すると同時に、経済的および文化的にも重要な役割を担っており、世界中でその影響力を拡大しています。

酒類業界の広範なプロセスと構造

酒類業界の構造は、原料の調達から製品の販売まで、広範なプロセスを含んでおり、麦、米、芋、果実などの農産物が原料です。これらに含まれる糖やでんぷんを酵母で発酵させてアルコールを生成します。 酒類の製造プロセスは多様で、国内外からの農産物調達に加え、一部の製品(特にワイン)では濃縮果汁の輸入も行われます。 RTD(Ready To Drink)飲料の製造では、原料用アルコールや甲類焼酎などの安価なリキュールを原料として使用し、これらは原料メーカーからの直接購入が一般的です。原料となる農産物の調達は、商社を通じて行われることが多いものの、一部のメーカーは自社農場を持っているか、国内の農家と直接契約を結んでいます。 販売面では、製造された酒類は一般消費者向けと外食産業向けに異なる流通経路を持つのが特徴です。 一般消費者向けには、酒類卸を通じて酒販店やコンビニエンスストアなどの小売店に流通され、外食産業向けにも同様に卸を通じた流通が主流ですが、一部の大手メーカーは直接販路も持っています。これにより、業界内のプレイヤーは市場の需要に応じた柔軟な供給戦略を展開しています。

酒類業界における取扱商品の特製

酒類業界は、製造および販売が厳格な免許制度に基づいて行われる規制産業です。酒類業界では、事業を行うためには適切な許可が必要であり、許可された業種のみが各種事業活動を展開できます。さらに、製品の分類やアルコール含有量に応じて異なる酒税率が設定されており、これが製品の販売価格に大きな影響を与えることがあります。 酒類の主要原料である農産物は、季節変動や天候条件によって供給が左右されるため、これが業界全体の事業運営にも影響を及ぼします。特にビールやウイスキーに使用される大麦麦芽のように、輸入に頼る原料は国際市場の価格変動や為替レートの変動の影響を直接受けやすいでしょう。 また製造技術の進化により、生産方法は大幅に自動化が進み、効率的な大規模生産が可能です。一方で、市場において差別化を図るために、高付加価値を持つ製品の少量生産に注力する生産者も増えており、消費者には多様な選択肢が提供されるようになっています。 このように、酒類業界では、大量生産とカスタム生産が共存し、製品の種類と価格帯の幅が広がりつつある状況です。

酒類業界の市場規模とトレンド

2009年以降、酒類全体の出荷額は減少傾向にありますが、製品カテゴリーによっては異なる動きを見せています。 特にビール、発泡酒、清酒、焼酎などの伝統的な酒類は減少基調です。これは消費者の嗜好の多様化や税制変更が影響しています。一方、ウイスキーやチューハイ・カクテルなどは、コロナ禍においても市場が拡大しており、特にウイスキーは高価格帯製品の好調な売上が目立っています。 また、ビールや発泡酒の出荷額は、税制の変更や市場の縮小、新しい製品開発の方向転換により、2004年の6,800億円から2020年には大幅に減少。一方で、クラフトビールや地ビールは、規制緩和後の新規参入増加により、一時的なブームを経て、現在では高品質な製品が人気を博しています。 日本酒の市場は長期的に減少していますが、新しい顧客層の開拓や製品開発を進めることで市場の縮小を食い止めようとする動きも。果実酒も同様に、コロナ禍前に市場が回復傾向にありましたが、再び減少しています。 輸出に関しては、清酒やウイスキーなど、日本製酒類の国際的な需要が増加しており、特に清酒はアジアやアメリカ市場で急拡大傾向に。輸入はコロナ禍による飲食店向けの需要減少で一時的に落ち込みましたが、2021年以降は回復しています。 また成人一人当たりの酒類消費量は減少しており、特に若年層のアルコール離れが顕著です。このため、メーカーはノンアルコール飲料や健康志向の商品へのシフトを強化しており、市場の需要に応じた製品開発が進められています。

酒類業界の相関図・業界地図

ビール、ウイスキー、清酒の国内市場は縮小を続けており、大手企業間での競争が激化しています。このため、各社は成長戦略として海外市場への進出に注力。ビール業界では、大手プレイヤーが海外拠点の設立や現地企業の買収を通じて、その動きを加速しています。 一方、ウイスキーや清酒業界では、日本産品の国際的な評価の向上を背景に、輸出を増やすための取り組みが活発に行われています。 ワインや地ビールのような特定の商品セグメントでは、新市場の開発に向けた動きが見られており、ワイン業界では、生産技術の進歩や消費者の認知度の向上が国産ワインの普及を支え、さらには海外への輸出拡大と高付加価値化に向けた努力が進んでいます。 地ビール(クラフトビール)は、国内ビール市場の縮小の中で、その独特の味や香りを価値として高価格帯での販売を拡大中です。 大手4社(サントリー、アサヒ、キリン、サッポロ)は、日本酒を除く各酒類セグメントで活動しており、ビール・発泡酒での市場シェアを巡る競争が激しさを増しています。 サントリーはウイスキーとワインの強化を進め、アサヒはメガブランド「スーパードライ」への集中投資を実施。キリンは地ビールなどの差別化商品の拡大と国外での展開に力を入れ、サッポロは特定地域でのビール販売強化を図っています。 これらの戦略は、それぞれの企業が直面する国内市場の挑戦に対処し、新たな成長機会を捉えるためのものです。 サントリーホールディングス株式会社の企業情報 アサヒグループホールディングス株式会社の企業情報 キリンホールディングス株式会社の企業情報 サッポロホールディングス株式会社の企業情報

酒類業界の主要プレイヤーの動向

ここでは、酒類業界の主要プレイヤーの動向を二つの主要な点で詳しく説明します。これにより、彼らの戦略や市場行動を理解することが可能となり、市場の隙間や新しいビジネスチャンスを探るのに役立つでしょう。
  • ビール大手のグローバル戦略と焼酎大手の製品多様化
  • 酒類業界の新市場形成とグローバル展開

ビール大手のグローバル戦略と焼酎大手の製品多様化

酒類業界では、ビール大手4社がグローバル市場での成否を追求していますが、焼酎大手は非焼酎製品の成長に焦点を当てています。 サントリーは、2020年の大幅な売上減にもかかわらず、2021年には回復し、2022年には過去最高の売上を達成しました。ウイスキーやハイボール缶の需要が伸び、ノンアルコール・低アルコール商品も増加しています。 アサヒは、プレミアムブランド戦略と新価値提案により、過去最高の業績を記録。スーパードライのフルリニューアルや新製品の拡充が特に注目されています。キリンは、国内外市場の回復に伴い売上が増加しました。 地ビール市場のリーダーである株式会社ヤッホーブルーイングへの出資や、国際市場での積極的な展開が成果をもたらしています。一方、サッポロはコロナ禍の影響で回復が遅れていますが、北米とベトナムでの販売強化を図っています。 宝ホールディングス株式会社は焼酎販売に加え、ソフトアルコール飲料の市場を拡大。オエノンホールディングス株式会社では、巣ごもり需要に応えて焼酎ベースのリキュール販売が増加しました。両社とも国内外での多様な戦略を展開しており、特に宝酒造インターナショナルグループは国際市場でのプレゼンスを強化しています。 これらの企業は、国内市場の縮小に直面しながらも、新たな市場機会とブランド強化に向けて積極的な戦略を進めており、グローバル展開と製品多様化が今後の鍵となるでしょう。

酒類業界の新市場形成とグローバル展開

酒類業界では、各社が国内外で新たな市場を形成し、ブランド化による海外展開に力を入れています。特にワイン業界では、サントリーの登美の丘ワイナリーを含む大手メーカーが国産ぶどうを使用した「日本ワイン」の生産を拡大しており、これが国内外でブランド力を高めています。 ビール分野では、ヤッホーブルーイングが地ビール市場を牽引し、全国的な販売チャネルの拡大と株式会社ローソンとの商品共同開発を推進。また、エチゴビール株式会社新潟麦酒株式会社はそれぞれ米国への輸出拡大や中国での現地生産を行うことで、海外市場での存在感を増しています。さらに、共同商事は「コエドブルワリー」ブランドをアジア中心に国際的に展開し、クラフトビール市場の先駆けとして活動中です。 日本酒においては、山口県の旭酒造株式会社が醸造プロセスを科学的にデータ化し、量産システムへと生産モデルを革新。これにより、職人技に依存した伝統的なモデルから脱却し、低迷する市場での新たなブランド戦略として注目されています。 木内酒造合資会社は、瓶内二次発酵による発泡日本酒や10年間熟成したビンテージ日本酒の製品バリエーションを拡大し、永井酒造株式会社はクラフトビール市場に参入して国際的な輸出を行っています。 これらの動きは、国内市場の伸び悩みを背景に、各社がグローバル市場でのブランド確立と新たな成長機会を追求していることを示しているでしょう。

酒類業界の今後の業界展望

業界の将来展望を詳細に理解することは、企業や酒類経営者にとって非常に重要です。市場の動き、技術革新、消費者の期待やニーズの変化を正確に把握することにより、競争相手との差別化を図る革新的な戦略を策定する基盤を築けます。 ここでは、以下の2点について詳しく解説します。
  • COVID-19の影響と酒類業界の対応
  • 酒類業界の再編とグローバル戦略

COVID-19の影響と酒類業界の対応

COVID-19パンデミックは酒類業界に大きな変動をもたらしました。緊急事態宣言と外出自粛の影響で、家庭での酒類消費は増加しましたが、飲食店での業務用消費量は大幅に減少しました。 家計調査によれば、外食における飲酒代の支出はコロナ禍前の水準を下回っており、家飲みが主な消費形態となっています。ただし、飲酒代と酒類消費の総額は依然としてコロナ禍前の水準には戻っておらず、外食での消費減少を完全には補えていません。 国内消費が縮小する中、輸出は比較的好調です。日本産酒類の輸出金額はコロナ禍でも増加を続けており、国際コンクールでの受賞や、訪日外国人観光客による高評価が輸出増加に寄与しています。 業界各社は新たな市場ニーズに応えるため、高濃度の酒類をアルコール消毒に転用したり、酒蔵が共同でECサイトを開設するなどの施策を進めていますが、今後も消費の鈍化は続くと見られています。

酒類業界の再編とグローバル戦略

酒類業界では、大手メーカーがグローバル市場での展開を積極化しており、特に海外での輸出拡大に注目です。国内では、市場の細分化が進行し、ワイン、地ビール、RTD(Ready to Drink)、ノンアルコール飲料など特定セグメントの成長が見込まれています。 世界的な業界再編が活発に行われており、ビール業界最大手のAnheuser-Busch InBevが世界第二位のSABMillerを買収するなど、大規模な企業間提携や買収が進んでいます。これにより、外資系大手が日本市場にも進出する可能性が高まっているでしょう。 国内酒類業界では、特に新興セグメントの成長が継続すると見られ、大手企業間での提携や買収による再編が予想されます。日本酒においては、伝統的に杜氏に依存してきた醸造技術が技術革新によって変化し、より資本集約型の産業へと移行する可能性もあるでしょう。 その結果、大手メーカーが日本酒セグメントに進出する動きが加速するかもしれません。

酒類業界は地域からグローバル展開へ

酒類業界は伝統的な醸造技術から最新の生産技術を駆使し、小規模な地域生産者から国際的な大企業まで多様な事業者が存在します。法的規制や税制、消費者の嗜好の変化に敏感であり、これらの外部環境の変動に適応するために、革新的な製品開発やマーケティング戦略、グローバル市場への進出など、柔軟な戦略が必要です。 なおBIZMAPSでは、オリジナルタグを用いて多様なアプローチで企業情報を検索できます。外食企業はもちろん、国内200万社以上の企業の基本情報が無料で閲覧でき、売上や従業員数などの情報を基にターゲット企業を絞り込むことが可能です。 ▼その他のBIZMAPS掲載企業の特集はこちら! 専門食品卸の業界分析!市場規模やトレンド、今後の動向をチェック 配合飼料業界とは?特性や市場規模、業界の2大企業をまとめて紹介します! 加工食品業界とは?食肉や乳業などの主要企業、最新の動向を解説します 加工食品業界(製糖、製粉、製油)とは?主要三産業が形作る食品市場を解説 ベビー・子供服業界の最新動向を解説!市場規模や主要企業の紹介も アパレル製造・販売業界とは?業界構造や市場動向を詳しく解説! ラグジュアリーブランド業界に新たな動き!業界の重要成功要因も解説

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