一色 みわ
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金属製品業界は、さまざまな金属材料を加工して製品を製造する産業分野です。金属製品業界は、自動車、航空宇宙、建設、家庭用品、電子機器など、幅広い市場に製品を供給しています。
本記事では、金属製品業界の定義をはじめ、業界構造や取扱商品の特性、主要プレイヤーの動向などを解説します。今後の金属製品業界の展望についても触れていますので、参考にしてください。
なお、BIZMAPSでは金属製品業界に関連する企業の情報を掲載中です。各企業の詳細は、【業界名:金属製品】【業界名:金属部品】からご確認いただけます!是非合わせてご覧ください。
目次
金属製品業界は現代社会の基盤となる産業
金属製品業界は、日常生活や産業活動に欠かせない製品を生産するセクターであり、主に缶製品とねじ・工具の製造に特化した企業群から構成されます。金属製品業界の主なカテゴリーは以下の2つです。- 缶製品製造
食品保存や配送に使用されるアルミ缶やスチール缶、さらには特定の食品向けにデザインされた食缶などです。工業製品の安全な輸送や保管に利用される18リットル缶やドラム缶など、より大型で耐久性の高い缶も製造されています。食品産業や化学工業、ペイント業界など、多岐にわたる分野での要求に応じて作られ、日々の生活や工業活動の基盤を支えています。
- ねじ・工具製造
自動車業界、電気機械製造、建築業界など、様々な産業で使用されるねじや工具が製造されています。専門的な工業用途のみならず、DIYや家庭用修理で使用される一般消費者向けの製品も含まれており、小売店を通じて販売されています。これらの工具とねじは、構造物の組み立てや機械装置のメンテナンスに不可欠です。高い精度と耐久性が求められます。
金属製品業界は、これらの製品を通じて、日々の生活や産業の各フェーズで信頼性と効率を提供し、現代社会のインフラと消費者のニーズを支えています。金属製品業界の業界構造
金属製品市場の構造は、食品向け缶製品での大手企業の寡占から、工業向けにおける中小企業の活躍まで、業界ごとの特徴が鮮明です。ここでは、金属製品業界の構造について、以下の2点に焦点を当てて解説します。- 【缶製品】食品向けは大手寡占、工業向けは中小企業も参入
- 【ねじ・工具】中小企業が多く、特化した分業体制が特徴
【缶製品】食品向けは大手寡占、工業向けは中小企業も参入
金属製品業界における缶製品市場は、特に食品や飲料向けのセグメントで大手メーカーによって支配されています。主要なプレイヤーには東洋製罐グループホールディングス、ホッカンホールディングス、日本製罐などです。 これらの企業は市場シェアの大部分を占めており、主に大量生産を行い、飲料メーカーなどの大手クライアントに対して受注生産を提供しています。一方、工業向けの缶製品、例えばドラム缶や一般的な菓子缶などは、中小規模のメーカーも市場に参入しており、より多様な製品を提供しています。 これらの企業は素材供給者から金属を仕入れ、製造後は卸業者を通じて最終顧客へ製品を供給しているのが特徴です。 食品向けの缶においては、特に飲料メーカーとの共同でデザインを行い、密接なビジネス関係を構築しています。【ねじ・工具】中小企業が多く、特化した分業体制が特徴
金属製品業界におけるねじ・工具製造市場は、中小企業が中心となっており、それぞれが特定の専門分野に集中しています。これらの企業は素材メーカーから直接金属などを仕入れ、需要のあるさまざまな産業向けにカスタマイズされたねじや工具を製造しています。 製造過程には鋳造、加工、研磨、熱処理、メッキなど、多岐にわたる技術が求められ、これらの工程はしばしば複数の中小企業によって分担されているのが特徴です。 また、業界内では大手元請け企業の存在も見られますが、独自の専門技術を持つ中小企業が多く存在します。 販売面では、産業向けの受注生産が主流ですが、一般消費者向けにも汎用のねじや工具を製造し、従来の卸売りに加えてカタログ通販などの直販チャネルを拡大している企業も増えています。金属製品業界における取扱商品の特性
金属製品業界における缶製品市場では、高い輸送コストと変動する消費トレンドへの適応が求められています。これにより、製品の差別化と効率的な生産戦略が極めて重要です。ここでは、金属製品業界における缶製品とねじ・工具の取扱商品について、詳しく解説します。- 【缶製品】差別化の必要性
- 【ねじ・工具】高品質製造が重視
【缶製品】差別化の必要性
缶製品は、高い輸送コストと消費トレンドの影響を受けやすい商品です。空缶は輸送効率が低く、そのためメーカーは取引先の近くに工場を設けるなどの対策を講じなければなりません。 缶製品の需要は、ビール、コーヒー、果物缶、魚介類の缶詰などの消費動向に密接に依存しています。また、缶製品はリサイクルが法的に義務付けられており、日本ではリサイクル率が非常に高く、特にスチール缶は90%以上のリサイクル率を維持しています。 市場での差別化が求められる中、デザインや機能性においても革新が必要とされているでしょう。【ねじ・工具】高品質製造が重視
ねじ・工具市場では、高品質な製造が重視されています。海外からの低価格製品の流入により、国内の大量生産メーカーは競争に苦しんでいますが、職人の技術に支えられた中小メーカーは特殊なニーズを満たす高精度製品で市場に残り続けています。 これらの企業は、例えば宇宙産業用の超精密ファスナーや世界最小クラスのマイクロファスナーなど、特定の高性能を要求する産業で不可欠な製品を提供しており、その品質は容易に代替できない価値を持っているのです。金属製品業界の市場規模とトレンド
金属製品業界の市場規模は、経済産業省が発表した工業統計などに基づき、建材や暖房装置を除く金属製品製造業の出荷額をもとに算出されます。 2021年のデータによると、金属製品製造業全体での出荷額は6.2兆円であり、その中で金属素形材製品の製造が2.4兆円、ボルトやナット、リベットなどの小型金属部品製造が1.1兆円、ブリキ缶やその他のめっき板製品の市場規模は約2894億円です。 金属製品業界の市場の推移は、2009年の金融危機を底に回復していますが、金属製品の需要は自動車産業などの下流産業の影響を強く受けており、自動車産業の動向と連動する傾向にあります。近年は自動車の生産台数の増加が鈍化しているものの、エコカーや軽量化など高付加価値製品への移行により、出荷額は増加しています。 缶製品の市場では、特にアルミ缶がペットボトルなど他の包装材への置き換えをある程度阻止しながら、比較的安定した需要を保っているのが特徴です。新しいボトル型アルミ缶の開発が貢献しており、消費者の好みの変化に応じた製品の提供が行われています。金属製品業界の相関図・業界地図
金属製品業界の相関図は、主要企業間の出資関係や提携を通じて形成されています。 具体的な例を挙げると、缶製品およびその他の容器を製造する東洋製罐グループホールディングスとホッカンホールディングスは、素材メーカーや元請けメーカーとの交渉力を高めるために統合を計画していましたが、2018年3月に公正取引委員会の認可が得られず、統合が中止となりました。 また、JFEスチールの子会社であるJFEコンテイナーや日本製罐は、素材メーカーからの出資を受けています。 ねじ・工具セグメントでは、ねじ製造の大手である日東精工が2016年に奈良の協栄製作所を買収し、販路拡大と生産力の強化を図っています。 自動車用ボルト製造の尾張精機は、トヨタや日立金属MMCスーパーアロイ(プロテリアルと三菱マテリアルの合弁会社)から出資を受けています。 作業工具の分野では、京都機械工具が電動工具のグローバルメーカー、Apex Tool Groupと業務提携を結び、海外展開を推進。 自動車向けねじメーカーのトープラは、自動車部品メーカーの日本発條の傘下にあり、自動車メーカーへの供給体制を強化中です。 これらの関係は、金属製品業界内での競争力の維持と市場での地位確立に重要な役割を果たしており、企業間での提携や出資は業界の動向を左右する要因となっています。金属製品業界の主要プレイヤーの動向
東洋製罐グループホールディングスと日東精工は、それぞれ総合容器メーカーと精密ねじ製品のリーダーとして、業績の回復と戦略的な拡張を進めています。 以下では、金属製品業界の主要プレイヤーである二つの企業が直面する市場の変動、技術革新、そして国際展開にどのように対応しているかを詳しく紹介します。- 【東洋製罐グループホールディングス】総合容器メーカーの業績と戦略
- 【日東精工】コロナ禍後の回復と海外進出
【東洋製罐グループホールディングス】総合容器メーカーの業績と戦略
東洋製罐グループホールディングスは、缶を含む多様な素材で容器を製造する総合容器メーカーです。主力の包装容器事業では、缶製品、プラスチック、ガラス、紙容器、エアゾールなどが含まれており、2022年度には夏の猛暑により飲料容器の需要が増加しましたが、原材料の価格上昇により営業利益は減少しました。 缶コーヒーやペットボトルの需要が伸び悩む中、同社は海外市場への進出や紙・プラスチック容器の強化に注力。特にミャンマーでの新会社設立や国内外の工場増設を進めており、環境配慮型製品の開発にも力を入れています。 中期経営計画では、社会の変化に対応した新規事業の創出を目指しており、ライフスタイルの変化や環境負荷削減へのニーズに応える製品とサービスを提供することを計画しています。【日東精工】コロナ禍後の回復と海外進出
日東精工は、ねじ製品、自動ねじ絞め機、流量計などの計測・検査装置を手掛ける企業です。2008年度に337億円の売上を記録した後、減収傾向が続いていましたが、2020年度のコロナ禍での落ち込みを経て、2021年度には回復し、2022年度には過去最高の売上を達成しました。 同社の強みは、金型からめっき処理までを含むねじの製造工程を全て内製化している点にあり、0.6ミリの世界最小クラスのマイクロファスナーの開発など高い技術力で市場から高い評価を受けています。 また、同社は国際展開も積極的に行っており、2017年には米国ミシガン州に拠点を設立、マレーシアの工業用ファスナー製造会社を買収し、中国では新工場の設置と子会社の設立を進めています。 国内では、メタルワンの子会社からねじ製造販売事業を譲り受け、精密プレス部品や金型の製造会社も買収しています。中長期経営計画では、グローバル市場でのさらなる事業開拓と拡充が目標です。金属製品業界の今後の業界展望
金属製品業界の今後の業界展望を知ることは、市場の変動、技術革新、および競争環境を理解し、適切な戦略を立てる上で非常に重要です。 ここでは、以下の3点に焦点を当てて、金属製品業界の現状と将来性を掘り下げます。- 【新型コロナウイルス感染症】業界への影響
- 【缶製品】大手同士の再編・単一素材専業の淘汰
- 【ねじ・工具】グローバル展開と市場変化
【新型コロナウイルス感染症】業界への影響
新型コロナウイルスの感染拡大は、自動車や電気製品などの製造業におけるサプライチェーンを大きく乱し、これらの製品の需要が大幅に減少しました。この結果、これらの最終製品の製造に不可欠な工具、金型、ねじなどの関連部品の需要にも同様の影響が及んでいます。 一方で、家庭内での消費が増えたため、家庭用の金属製品の需要は高まりました。しかし、建設業界では現場作業の需要が依然として低迷しており、この業界は今後も長期的に新型コロナウイルスの影響を受け続ける見込みです。【缶製品】大手同士の再編・単一素材専業の淘汰
缶製品メーカーの将来には、国内人口減少に伴う消費の減少が影響し、市場の縮小と業界再編が進むと予測されます。 特に、ペットボトルへの依存が減少してきており、EUの「脱プラ」政策のような環境対策の強化によってペットボトル需要が下降傾向に。これにより、アルミ缶への需要が再び高まると、東洋製罐グループホールディングスなどの大手缶メーカーは見込んでいます。 しかし、コンビニコーヒーのように缶以外の容器需要が増える傾向もあり、単一素材専業メーカーの衰退が予想されます。将来的には、複数の素材を扱う総合容器メーカーが市場で生き残る構造へと移行すると見られるでしょう。【ねじ・工具】グローバル展開と市場変化
ねじ・工具メーカーの将来は、新興国市場の成長とハイエンド製品への需要増加に大きく依存しています。新興国での経済発展に伴い、日本の産業も海外展開を加速。これにより、アジアの低価格製品との競争が激化しています。 特に自動車や電子機器業界では、先進的な技術が求められるため、高品質のハイエンドねじ・工具が必要です。このような状況は、日本のねじ・工具メーカーにとって、海外での供給体制を強化するチャンスを提供しており、海外進出が増加しています。 一方で、汎用品を大量生産しているメーカーは競争に苦しみ、カスタムメイドの高品質製品を提供するメーカーが市場で生き残ると予測されています。まとめ:金属製品業界での競争力を高めるために
金属製品業界での成功には、技術革新、環境持続可能性への対応、およびグローバル市場への適応が重要です。これらの戦略を組み合わせることで、金属製品業界内での競争力を高め、持続的な成長を達成できるでしょう。 なおBIZMAPSでは、オリジナルタグを用いて多様なアプローチで企業情報を検索できます。金属製品業界の企業はもちろん、国内200万社以上の企業の基本情報が無料で閲覧でき、売上や従業員数などの情報を基にターゲット企業を絞り込むことが可能です。 ▼法人営業ハックがお届けする各業界の特集はこちら! 医薬品・バイオ業界とは?市場規模やトレンド、展望を解説 化粧品業界の最新の動向をチェック!今後の展望を見据え解説します! フードデリバリー業界の市場規模は?コロナ禍の影響で拡大した業界を解説 酒類業界とは?業界の定義や構造、主要プレイヤーの動向を徹底解説 たばこ業界の現状と展望:主要企業の動向についても徹底解説 酒類・食品卸業界を徹底解説!市場規模・トレンド・今後の動向を要チェック 食品スーパー業界の市場規模、最新トレンドや今後の動向を解説します! 半導体業界とは?デジタル革新の核心を担う産業の今後を徹底解説!「場所や時間にとらわれない自由な働き方」がモットーの転勤族ママライターです。読み手に寄り添った分かりやすい文章を心がけています。転職・副業・旅行ジャンルなどが得意。旅行とカメラと甘いもの(とくにチーズケーキ)が大好きで、毎日のお茶タイムは欠かせません。元気すぎる2人の子どもを育てながらのんびりと活動しています。
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