一色 みわ 0 Comments
倉庫業界とは、荷物を安全に保管し、必要に応じて管理・配送するサービスを提供する業界です。物流業界の一部を構成し、冷蔵倉庫や普通倉庫など、保管する荷物の種類やニーズに応じて多様なサービスを展開しています。 企業や消費者の物流を支える重要な役割を果たしており、今後の拡大が期待されています。 今回の記事では、倉庫業界の定義をはじめ、業界構造や取り扱う商品の特性、さらに今後の業界動向まで詳しくご紹介。倉庫業界の現状と未来について理解を深めていただける内容となっています。 なお、BIZMAPSでは倉庫業界に関連する企業の情報を掲載中です。倉庫業界における各企業の詳細は【業界名:倉庫】からご確認いただけます!ぜひ合わせてご覧ください。

倉庫業界とは物流を支える基盤的な産業

倉庫業界は「お客様から預かった荷物を倉庫で保管し、その対価として報酬を得る仕事」を担う業界です。この仕組みを簡単に言うと、荷物を安全に保管するサービスを提供するビジネスモデルです。日用品や食品、工業製品から貴重品まで、多種多様な荷物を取り扱い、個人や企業の物流ニーズに応えています。 倉庫業界は、運送業とともに物流業界を構成しており、両者は非常に密接に関わっています。たとえば、倉庫業と運送業の両方を手掛ける物流会社も多く、商品を保管しつつ、配送まで一貫して行う体制が整えられています。このように、倉庫業は物流の要として、商品が効率よく流通するための基盤を提供しています。 また、倉庫業はかつて公益性が高いとされ「許可制」で運営されていましたが、現在では物流業務の効率化や国際的な競争力を高めるために「登録制」に移行しました。これにより、新規参入が容易になり、競争が活性化しています。 倉庫業を始めるには、各地域の運輸局で登録を行う必要がありますが、近年はメールによる申請が可能となり手続きが簡略化されています。 さらに、倉庫業界の役割は単なる保管にとどまらず、商品の品質維持や流通加工(ラベル貼り、梱包など)を通じて、物流全体の効率化と価値創造に寄与しています。物流業界を支える重要な存在として、倉庫業は私たちの日常生活や企業活動に欠かせない基盤を提供しており、その発展が経済全体の成長にもつながっています。

倉庫業界の多機能で複雑な業界構造

倉庫業界では、単に「荷物を保管する」だけでなく、倉庫内でさまざまな業務が行われています。それぞれの業務は、荷物の管理や物流の効率化に欠かせない重要な役割を担っています。 倉庫内の主な業務は、以下の通りです。
  1. 荷役(にやく)

荷役とは、荷物の積み下ろしや、倉庫への入庫・出庫を行う作業のことです。たとえば、大型トラックで運ばれてきた荷物をフォークリフトで倉庫内に移動させたり、配送準備のために出庫作業を行うことが含まれます。

  1. 流通加工

倉庫内で、荷物にラベルを貼ったり、値札を付けたり、複数の商品をセットにする作業です。このような作業を行うことで、商品がそのまま店舗や顧客の元に届けられるようになります。特に、ギフト商品の梱包や、キャンペーン用のセット作りなどに役立っています。

  1. 包装

荷物を保護するために、梱包材や包装材で包む作業です。たとえば、壊れやすい商品をプチプチで包んだり、外箱にテープを貼ってしっかり固定するなど、安全に配送するための準備が行われます。

  1. 通関業務

輸入品や輸出品を取り扱う場合に必要な手続きです。税関への申請や書類の確認を行い、国際的な荷物の流れをスムーズにする重要な業務です。

  1. 情報管理業務

倉庫内で扱う荷物の受発注データや在庫の管理を行います。バーコードやQRコードを活用して、どの荷物がどこにあるかを正確に把握するシステムを使うことも一般的です。

そして、倉庫業界と運送業界は互いに深く関係し合っており、大手の運送事業者である宅配便会社は、荷物の保管や流通加工を行うために自社で倉庫を所有していることがあります。一方で、大手の倉庫事業者も単なる保管業務にとどまらず、自ら荷物の輸送を行うケースが増えています。 このように、両業界は業務内容が重なり合う部分が多いため、物流全体において業務の境界があいまいになっているのです。その結果、倉庫業者と運送業者の間では競争が激しくなり、より効率的で多機能なサービスを提供することが求められるようになっています。

倉庫業界で取り扱う商品の特性

倉庫業界では、取り扱う商品の特性に応じて、倉庫がさまざまな種類に分類されています。これらの分類は、国土交通省が定める「倉庫業法」に基づき、8つに区分されています。各倉庫には保管する商品に応じた基準が設けられており、事業者はこれらの基準を遵守することが義務付けられています。 倉庫の中でも最も一般的なものが「普通倉庫」と呼ばれる種類です。この普通倉庫には、以下のような分類があります。
  • 第1類倉庫

主に常温での保管が可能な一般的な物品を扱います。多くの商品がここで保管され、日用品や加工品など広範囲にわたります。

  • 第2類倉庫

湿気を嫌う商品を保管する倉庫で、湿度管理が求められます。例えば、紙製品や一部の食品などが該当します。

  • 第3類倉庫

温度管理が必要な商品を保管する倉庫です。適切な温度を保つための設備が整っています。

  • 野積倉庫(第4類)

屋外に設置され、野ざらしで保管するための倉庫です。主に耐候性の高い商品(建築資材など)が対象です。

  • 貯蔵品倉庫(第6類)

ワインや食品など、貯蔵によって価値が向上する商品を保管するための倉庫です。

  • 危険品倉庫(第7類)

可燃性の高い商品や化学薬品など、危険物を専門に保管する倉庫です。消防法や防災基準に基づく特別な管理が必要です。

これらの普通倉庫は、日本国内の倉庫業者の大部分を占めており、物流の基盤として重要な役割を果たしています。 さらに、普通倉庫以外にも、特定の商品の特性に合わせた特殊な倉庫が存在します。
  • 水面倉庫

原木や木材を水面に浮かべて保管する倉庫です。木材が水分を吸収することで乾燥を防ぎ、品質を保つ目的があります。

  • 冷蔵倉庫

食品や薬品など、常時摂氏10度以下での保管が適切な商品を扱います。冷凍食品や生鮮食品など、鮮度が求められる商品の保管には欠かせません。

そして、個人の財産を保管するための倉庫として「トランクルーム」もあります。ここでは、家財道具、美術品、骨董品、ピアノ、書籍など、さまざまな物品を保管することが可能です。トランクルームは1類から8類までのいずれの倉庫でも提供可能です。近年では、都市部での需要が高まっており、狭い住居空間を補完する役割も果たしています。

倉庫業界のビジネスモデル

倉庫業界は、大規模な設備を必要とする装置産業であり、港湾地域や高速道路のインターチェンジ付近など交通の便が良い場所に集中的に立地しています。収益の主な柱は、「保管料」と「荷役料」で、保管スペースの効率的な利用と荷物の出入りによる高回転が収益拡大の鍵となります。 しかし、料金は市場環境によって調整されるため、実際には収益確保が容易ではありません。また、貨物の形状や収容力に限界があるため、生産性向上には制約があります。 近年の物流の見直しや多様な顧客ニーズの増加により、倉庫事業者には厳しい環境が続いています。他社との差別化が重要であり、運送業務への進出や物流全体の企画力を高める「サードパーティーロジスティクス(3PL)」への対応が成長のカギとされています。 また、冷凍倉庫や定温倉庫など、付加価値の高い保管サービスの提供により、品質ニーズに応えることも重要な方向性です。 一方で、倉庫業界は労働力不足や品質管理の課題に直面しており、老朽化した施設の対応も喫緊の課題です。多くの倉庫が耐用年数を超えているため、建替えや物流効率化への対応が求められています。しかし、代替地の確保が難しく、こうした対応が遅れている状況です。

倉庫業界の主要企業財務指標分析

倉庫業界の主要企業である三井倉庫ホールディングス三菱倉庫横浜冷凍を比較すると、それぞれの財務状況や事業特性が異なることがわかります。 まず収益性の面では、三井倉庫ホールディングスと三菱倉庫が営業利益率5〜8%と高水準を維持しており、これには物流業に加えて不動産業も行っている点が寄与しています。不動産業は全体の売上構成比では1割程度にとどまりますが、営業利益の2〜5割を占める収益源となっています。 一方、横浜冷凍の営業利益率は3%前後と低い水準です。これは、売上の約7割を占める食品販売事業が赤字を出しており、収益全体を圧迫しているためです。生産性の観点では、横浜冷凍が従業員1人当たりの売上高で他の2社を上回っています。 これは、横浜冷凍が食品販売事業を中心に据えているためであり、労働集約型である三井倉庫ホールディングスや三菱倉庫とは異なる構造が影響しています。 一方、安全性の面では、装置型産業である倉庫業界全体に共通して固定資産比率が高いことが特徴です。自己資本比率を見ると、三菱倉庫と横浜冷凍は40〜60%台と安定しているのに対し、三井倉庫ホールディングスは低めですが、近年改善傾向が見られます。 また、資産の効率性を示す総資産回転率(ATO)においては、三井倉庫ホールディングスが他の2社を上回っており、資産を効果的に売上へ結びつけていることがわかります。このように、収益性、生産性、安全性のいずれの観点でも各社の事業モデルや収益構造の違いが明確に表れており、競争環境や課題への対応方法にも差が見られます。

倉庫業界の市場規模とトレンド

倉庫業界の市場規模を知るために、国土交通省が発表する「倉庫統計年報」を参照すると、2022年時点で日本の倉庫の所管面積は約7,102万㎡となっています。この所管面積とは、倉庫業者が保有する保管スペースや荷役場の合計面積を指します。 このうち、普通倉庫(第1〜第3類倉庫)が約6,612万㎡を占めており、倉庫全体の大部分を構成しています。普通倉庫は幅広い種類の荷物を保管できる汎用性の高い施設であるため、特に需要が集中しています。 過去の推移を見ると、所管面積は2000年以降ほぼ横ばいで推移していましたが、近年は増加傾向にあります。しかし、今後の成長は限定的と予測されています。その背景にあるのが、国内工場の海外移転や国内経済活動の縮小です。これに伴い、国内での貨物量の減少も見込まれ、倉庫面積の大幅な拡大は難しいと考えられています。 さらに、同じ年報によれば、2022年の倉庫の所管容積(保管できる荷物の総量)は約5,822万㎥に達しています。この中で特に目立つのが冷蔵倉庫で、約3,730万㎥と全体の大半を占めています。 冷蔵倉庫の容積は緩やかな増加傾向にあり、冷凍食品や中食(調理済み食品)市場の成長が後押ししています。このような消費者のライフスタイルの変化に対応するため、冷蔵倉庫は引き続き需要が拡大していくでしょう。 一方で、危険品倉庫(タンク)は2004年に大幅な減少を記録しました。これは、2003年に石油公団法が廃止され、国家石油備蓄が民間事業者ではなく専用の組織で管理されるようになったためです。このように、政策や経済動向が倉庫業界に直接的な影響を与えることも特徴の一つです。 今後の倉庫業界は、冷蔵倉庫などの特化型施設で成長の余地がある一方で、国内全体の貨物量が減少するという課題に直面しています。これに対応するためには、効率的な物流システムの構築や、付加価値の高いサービス提供がカギとなるでしょう。

倉庫業界におけるマクロ環境

日本の倉庫業界は「倉庫業法」によって規制され、この法律は倉庫の適正な運用と倉庫証券の流通を確保するために制定されています。倉庫証券は、倉庫に預けた物品の権利を証明する有価証券で、譲渡や担保として利用できる重要な仕組みです。 2002年の「倉庫業法」改正により、参入許可制から登録制への変更や料金の事後届出制への移行が行われ、業界への新規参入が容易になりました。また、優良なトランクルームを国が認定する制度も導入され、利用者が信頼できるサービスを選びやすくなっています。 さらに、2018年には国土交通省が事前確認制度を導入し、営業倉庫への登録手続きが簡略化されました。これにより、倉庫会社は需要の変動に柔軟に対応できるようになり、貸庫の利用に伴うタイムラグが改善されました。 トランクルームサービスにも変化が見られます。もともと法人や富裕層の高価な物品の保管が中心でしたが、一般層の利用が住宅地を中心に増加。また、東日本大震災以降、リスク分散のため家財や思い出の品を自宅外で保管するニーズが広がり、トランクルームの利用が急増しています。 最近では、スマホアプリを使って荷物を梱包・配送する「ネット宅配型トランクルーム」など、新しいサービス形態も登場しており、業界全体が多様化し続けています。

倉庫業界の相関図・業界地図

倉庫業界は、普通倉庫事業者と冷蔵倉庫事業者の2つに大きく分けられます。近年では規制緩和の影響により、運送事業者からの新規参入が増加しており、成熟した市場でありながら事業者数は増加傾向にあります。 一方で、この業界は地場の中小事業者が多く、大手企業が市場を独占しているわけではありません。そのため、競争が激化する中、規模拡大を目指したM&A(企業買収・合併)が進んでおり、業界再編が起こりやすい状況です。 具体的には、三菱倉庫が2010年に富士物流を買収したことで、企業の物流部門を包括的に受託する「サードパーティー・ロジスティクス(3PL)」のノウハウを獲得し、物流事業の拡大を実現しました。同様に、三井倉庫は2012年に三洋電機ロジスティクスを完全子会社化することで、従来弱かった家電分野の物流事業を補強しています。 住友倉庫は2017年に印刷物保管を手掛ける若洲を買収し、文書保管事業の拠点を広げました。冷蔵倉庫業界では、2015年に名糖運輸ヒューテックノオリンが統合し、冷蔵・冷凍食品物流の総合企業であるC&Fロジホールディングスを設立しました。この統合により、高度な温度管理技術を活用して食品物流の新たな価値を提供しています。 さらに2019年には、大和ハウスグループが食品物流に強みを持つ若松梱包運輸倉庫を買収し、建材やアパレルに加えて食品分野への事業拡大を図っています。 業界全体としては、立体倉庫や自動倉庫の導入といった設備投資が進む中、規模のメリットを追求する動きが顕著です。特に、大手企業によるM&Aが物流の効率化や新規市場開拓の手段として重要視されています。また、競争の激化に対応するため、各企業が3PLなどの新たなサービス領域を強化し、より高度で効率的な物流サービスの提供を目指しています。 こうした動きから、倉庫業界は激しい競争の中で進化を続けており、効率化や差別化を通じてさらなる成長を模索しています。再編の進む業界の中で、企業の戦略や技術革新が市場の行方を大きく左右する状況となっています。

倉庫業界の主要プレイヤーの動向

倉庫業界の主要企業では、売上が増加傾向にある一方で、営業利益率には企業間で差が見られます。多くの企業は倉庫業を中心とした物流業務に加え、不動産事業も展開しており、不動産事業が収益の一部を支える重要な役割を果たしています。 たとえば、三菱倉庫では2022年度の売上高に占める不動産の割合は13%ですが、営業利益に占める割合は35%に達しています。同様に三井倉庫では、不動産の売上高割合は3%ながら、営業利益の20%を占めており、不動産事業が収益構造に大きく寄与していることがわかります。 ここでは、以下の2点について詳しく解説します。
  • 横浜冷凍の冷蔵物流戦略と将来展望
  • 中小企業の課題と効率化への取り組み

横浜冷凍の冷蔵物流戦略と将来展望

横浜冷凍は、食品販売事業を主要な柱としつつ、利益面では冷蔵倉庫事業が支える収益構造となっています。特に、同社の冷蔵倉庫の収容能力は世界有数の規模を誇り、低温物流サービスのネットワーク拡充に向けて積極的な投資を継続しています。この戦略により、過去には増収増益を実現してきました。 しかし、2020年以降、コロナ禍の影響で食品販売事業は停滞を余儀なくされ、2021年度も荷主企業による在庫調整や海上コンテナ不足による入庫遅延が響き、減収減益が続きました。この時期には、ノルウェーでの養殖事業の再編に伴い、関連運営会社を非連結化するなど事業の見直しも行われています。 2022年度には状況が改善し、冷凍食品の取扱量が増加。さらに、海外パートナーとの連携強化を通じてノルウェーサーモンの取引を拡大し、国内の量販店や外食産業向けの販売が好調でした。これらの成果により、再び増収増益を達成しています。 横浜冷凍の中期経営計画では、冷蔵倉庫の新設や物流インフラの強化に向けて、3年間で300億円の投資を実施する方針が掲げられています。 具体的には、冷凍食品やEC(電子商取引)の利用頻度が高まる中で、物流の拠点となる地域に新たな冷蔵倉庫を建設し、需要拡大に対応する計画です。また、効率化を目指してDX(デジタルトランスフォーメーション)やITロボティクスへの投資を進め、省人化・省力化を図っています。 これらの取り組みを通じて、横浜冷凍は成長を持続させ、変化する物流環境に柔軟に対応しつつ、冷蔵物流サービスのさらなる強化を目指しています。同社の戦略は、冷凍食品の需要拡大や食品流通のグローバル化が進む現代において、大きな成長ポテンシャルを秘めているといえます。

中小企業の課題と効率化への取り組み

物流業界は現在、人手不足や輸送効率の低下、消費者ニーズの多様化・高度化といった課題に直面しており、特に中小規模の事業者にとっては変革が急務となっています。これらの課題を受け、業界全体で効率化を進める動きが活発化しており、政府も物流総合効率化法の改正を通じてこれを後押ししています。 物流総合効率化法の改正により、輸送ネットワークの集約や「モーダルシフト」(トラック輸送から鉄道や船舶への切り替え)、配送の共同化といった効率化が進められています。これらの施策は、物流コストの削減や環境負荷の低減を目指しており、中小事業者もこの流れに対応しなければなりません。 しかし、規模の小さな企業ではこうした変革に伴う設備投資や運用変更が難しいケースも多く、業界内の連携や政府の支援が鍵となっています。 中小事業者向けには、保険限度額の引き上げや長期無利子貸付制度の拡充といった特別措置が講じられています。これにより、中小企業が必要な設備投資を行いやすくなるだけでなく、効率化に向けたリスクを軽減する仕組みが整えられています。 また、大手企業や他の中小事業者との連携を通じて、共同配送ネットワークの構築や倉庫スペースの共有といった効率化の取り組みも進んでいます。 さらに、DX(デジタルトランスフォーメーション)を活用した効率化も注目されています。AIを使った配送ルートの最適化やIoTによる車両や貨物のリアルタイム追跡といった技術が普及しつつあり、従来の物流の非効率を解消し、より少ないリソースで高品質なサービスを提供する助けとなるでしょう。 中小規模の事業者にとっては、単独での変革は難しい場合が多いため、業界内での協力やネットワーク構築が今後ますます重要になります。物流の効率化は、業界全体の競争力を高めるだけでなく、持続可能な社会の実現にも寄与する重要な取り組みです。 中小企業がこれらの課題にどう対応し、変革を進めていくかが、業界全体の未来を左右するポイントといえます。

倉庫業界の今後の業界展望

ここでは、倉庫業界の今後の業界展望について、以下の4点に焦点を当てて詳しく解説します。これらの取り組みが業界全体の進化を牽引し、今後の成長を支える鍵となるでしょう。
  • コロナ禍による倉庫業界への影響
  • 提案力強化と再編の進展
  • 労働力不足と自動化の進展
  • 温度管理型倉庫の需要拡大

コロナ禍による倉庫業界への影響

新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、倉庫への需要が急増しました。外出自粛の影響で「巣ごもり需要」が増え、EC(電子商取引)を通じた消費活動が急速に拡大したことが主な要因です。これにより、EC関連の物流を支える倉庫がさらに必要とされるようになりました。 また、感染リスクやサプライチェーンの混乱に備えて、荷主企業が在庫を増やす動きも見られ、倉庫の利用が増加しています。このように、不測の事態への対応として、より多くの保管スペースが求められるようになりました。 さらに、感染対策としてソーシャルディスタンスを確保する必要性や、多品種小ロット化する貨物に対応するための人手不足といった課題が浮上しています。これらを背景に、倉庫内作業の自動化への取り組みが加速しており、ロボットや自動化技術を活用して効率的かつ安全な作業環境を構築する動きが進んでいます。 コロナ禍をきっかけに、倉庫業界では需要の増加とともに効率化の重要性が高まり、業界全体の変革が加速しているといえます。

提案力強化と再編の進展

倉庫業界は、荷主企業による物流コスト削減ニーズの高まりにより、変化を迫られています。特に物流業務のアウトソースが増える中、物流業務全体の提案力を持つ事業者が優位に立つと考えられています。そのため、倉庫事業者は倉庫業務だけでなく、運送業務や物流の統合的なサービス提供など、事業領域を拡大する必要性が高まっているのです。 さらに、顧客ニーズが多様化する中で、これに柔軟に対応する力も求められており、特に中小事業者にとっては厳しい競争環境となっています。この状況により、資金力のある大手企業によるM&Aが進み、業界全体の再編が加速することが予測されます。

労働力不足と自動化の進展

国内物流量は、国内メーカーの生産拠点の海外移転や人口減少の影響で減少傾向が続いています。市場は成熟化しつつあり、企業は顧客に高付加価値のサービスを提供することで生き残りを図ることが求められています。一方、人口減少と高齢化により労働力不足が深刻化し、特に冷蔵倉庫では厳しい労働環境のため人材確保が難しい状況です。 これを受けて、業界では省力化や自動化が進められています。倉庫内では無人搬送車や梱包機械などの導入が進み、物流施設の効率化が図られています。また、運送業務においても、ETCシステムを活用したルート管理の自動化や、ドローン配送、トラックの自動運転の実用化に向けた技術革新が進展しています。

温度管理型倉庫の需要拡大

食品流通において低温食品の取扱いが増加し、冷凍・冷蔵食品の需要が高まり続けています。特に、総合スーパーやコンビニエンスストアに加え、病院食や宅配食など付加価値の高い分野でも需要が増加しています。新型コロナウイルス感染症の影響で外食機会が減少し、中食や内食が普及した結果、冷凍食品の需要が急増し、冷蔵倉庫の保管容量が逼迫する事態が生じています。 こうした状況を受け、温度管理型倉庫の強化が求められている状況です。これまで普通倉庫を中心に事業を展開してきた事業者も、低温物流への対応を強化することで新たな市場を開拓しようとしています。この分野での投資が、物流業界全体の成長に寄与すると考えられます。

倉庫業界の効率化を進めよう!

倉庫業界が成長し発展していくためには、物流全体の効率化と付加価値の高いサービス提供が鍵となります。具体的には、自動化やDX(デジタルトランスフォーメーション)を活用した省力化と効率向上、冷凍・冷蔵倉庫をはじめとする特化型施設への投資、新たな物流ニーズに対応する提案力の強化が重要です。 また、業界内の連携やM&Aを通じた規模拡大と競争力向上を進める一方で、人手不足や労働環境の改善に取り組む必要があります。これらを通じて、多様化する顧客ニーズに応えつつ持続可能な物流基盤を築くことが、業界全体の成長に繋がるでしょう。 なおBIZMAPSでは、オリジナルタグを用いて多様なアプローチで企業情報を検索できます。倉庫業界の企業はもちろん、国内200万社以上の企業の基本情報が無料で閲覧でき、売上や従業員数などの情報を基にターゲット企業を絞り込むことが可能です。 ▼日本最大級の企業DB【BIZMAPS】で倉庫関連企業を探す ▼法人営業向けの、さまざまな業種の特集記事はこちらです。 大手不動産会社売上ランキング&法人営業担当者のための優良企業一覧 【法人営業向け】コロナ禍の業績回復を支援しよう!貸切バス会社一覧 【法人営業担当必見】非破壊検査会社の現状と将来!首都圏の会社一覧 東証一部が消えた?区分再編の背景を解説!元東証一部上場の企業一覧 東証一部からプライム市場への移行基準未達企業一覧【法人営業向け】 ▼法人営業に役立つ業界特集はこちらです。 証券業界が直面している課題とは?主要プレーヤーの動向や今後の展望を考察 保険業界を取り巻く環境を徹底解説!トレンドや主要プレイヤーの動向も 銀行業界とは?経済全体を支える基盤産業のトレンドや動向を徹底解説

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