MASA 0 Comments
セグメンテーションとは、市場分析に用いられるSTP分析の中のひとつで、顧客ニーズの細分化を行なう手法です。 マーケティングに携わる方にとって、重要なノウハウだといえるでしょう。 セグメンテーションの良し悪しは、マーケティング戦略の成果に反映します。 しかしながら、実戦で使えるくらいに深く理解をしている人は少ないかもしれません。 今回の記事ではセグメンテーションをわかりやすく解説し、成功事例を紹介していきます。 自社のマーケティングに関わっている方は、ぜひ参考にしてください。

そもそもセグメンテーションとは?

まずはセグメンテーションとは何か、そして関連性が深いターゲティングとポジショニングについても触れておきます。  

潜在顧客の細分化

セグメンテーション(Segmentation)とは、マーケティング戦略の基本的なフレームワークであるSTP分析の中のひとつです。 セグメンテーションを行なって、潜在顧客を同じニーズを持つグループにセグメント(分類)します。 そうやって細分化されたグループから、自社の商品やサービスをどのグループにどのような方法でアプローチをするのが効果的かを検討するのです。 そうすることで、限られた経営リソースを駆使して有効な販売戦略を策定することができます。 ひいては、競合他社に対するプライオリティ(優位性)を築くのに役立つのです。  

ターゲティングとポジショニング

セグメンテーションで市場を細分化できたら、その中でどの人(企業)たちをねらうのかを決める作業がターゲティング(Targeting)です。 そして設定されたターゲットに対して、自社商品やサービスをアピールするために差別化する作業がポジショニング(Positioning)となります。 このようにセグメンテーション・ターゲティング・ポジショニングの3段階で行なうSTP分析は、マーケティングの基本といえる手法です。  

現代のセグメンテーションの課題

現代ならではでの、セグメンテーションの課題が考えられます。それは主に以下の3つです。 ●ニーズの多様化SNSの発達デジタルツールの発達 個別に見ていきましょう。  

ニーズの多様化

現代において消費者のニーズは非常に多様化しており、みんなが例外なく欲しがるような商品やサービスというものはほとんど見られません。 万人向けの商材を手掛けたとしても、掛かったコストを回収できるだけの売上はまず期待できないでしょう。 自社の強みに惹かれるリード(見込み客)やメインの顧客と属性が共通するリ―ドなどの層を、ねらいすましてアプローチしなければなりません。 そのため、セグメンテーションの重要度はいやが上にも増しています。  

SNSの発達

BtoC企業においては、SNSの発達がセグメンテーションのクオリティ向上に影響しています。 それは、一般人であるターゲットの関心や購買行動についての情報が、簡単に入手できるようになったからです。 BtoC企業は、消費者の傾向性を認識しやすくなっているので、それを利用しない手はありません。 個人情報でセグメントされた消費者グループに向けて、最適化した広告を配信するなどの高度で効率的な施策を打つことも可能です。 つまり、BtoC企業はSNSから得られる潤沢な情報を、いかに有効にセグメンテーションに反映できるかが問われます。  

デジタルツールの発達

BtoB企業では潜在顧客やリ―ドの情報からセグメンテーションを行なう重要性は理解していても、マンパワーの作業で行なうには膨大な時間と手間が掛かります。 そのため、それが実施できる資金力がある企業に限られていました。 しかし、ITが進化して手頃な価格でマーケティング向けのデジタルツールが利用できるようになったのです。 それらにより、潜在顧客企業の行動や、興味の対象に関するデータの入手や分析がしやすくなっています。 BtoCがSNSの情報を有効に活用することが課題であるように、BtoB企業はデジタルツールを使いこなして市場を分析し、良質なセグメンテーションを行なうことで競合に対抗しなければなりません。  

セグメンテーションの4つの切り口

セグメンテーションを行なう際には、市場や潜在顧客を分類する基準となる「切り口」が非常に重要です。 セグメンテーション分析では、この切り口として代表的な4種類の変数と呼ばれるものがあります。 ●地理的変数/ジオグラフィック人口動態変数/デモグラフィック心理的変数/サイコグラフィック行動変数/ビヘイビア 個々の変数を詳しく見ていきましょう。  

地理的変数/ジオグラフィック

セグメンテーションを行なう際に、地理的要素を切り口として行なう場合に使われるのが地理的変数です。 衣料品や食料品、家電製品などの生活習慣や気候などの要素によって、消費行動に差が出やすい商材を扱うときに有効です。 具体的には、以下のような切り口が使われます。 【地域の進展度】 例)駅周辺だけは開発が進んでいる・都市として発達している・開発されていない 【文化・習慣】 例)車社会・近隣のつながりが強い・宗教的な理由で飲食の制限がある 【エリア】 例)東日本・西日本・関東・東北・東海・中部・関西・日本海沿岸部・太平洋沿岸部・アジア・ヨーロッパ・北米・南米・中東 ほかにも、人口密度や気温・湿度・降雨量・積雪量などの切り口が考えられます。  

人口動態変数/デモグラフィック

セグメンテーションを行なう際に、客観的な属性を切り口として行なう場合に使われるのが人口動態変数です。 顧客ニーズとの関連性が強くて測定がしやすく、マスマーケティングを中心によく使われてきた手法です。 具体的には、以下のような切り口が使われます。 【年齢・世代】 例)20代・30~40代・50~60代・70代以降 【性別】 例)男・女・LGBT 【業種】 例)サービス業・金融業・製造業 【職種】 例)事務員・販売員・エンジニア・広報担当・企画担当 【収入】 例)年収300万円未満・300万~400万円未満・400万~500万円未満・500万~1,000万円未満 【最終学歴】 例)中学・高校・専門学校・高専・短大・大学・大学院・海外の大学 【家族構成】 例)独身・既婚・子供の有無 【世帯規模】 例)単身・2人・3人以上 たとえば男性向けのビジネススーツを作る場合、20代の若手なのか30代の中堅なのかでは、作る商品のコンセプトやマーケティングのチャネルも手法も変わってきます。  

心理的変数/サイコグラフィック変数

セグメンテーションを行なう際に、価値観やライフスタイル、パーソナリティなどを切り口として行なう場合に使われるのが心理的変数です。 従来では定性的で絞り込みにくいと考えられてきましたが、近年ではインターネットの普及、とりわけSNSやECサイトの発達によって精度が高まっています。 具体的には、以下のような切り口が使われます。 【ライフスタイル・価値観】 例)オーガニック志向・ブランド志向・新しい物好き・伝統を重んじる派 【パーソナリティ】 例)社交的・内向的・野心的 人口動態変数では同じグループに属していても、心理的変数ではまったく別のグループにセグメントされることは珍しくありません。 たとえば人口動態変数で「既婚の30代女性」に分類されている中でも、心理的変数では「新しい物好き」や「伝統を重んじる派」に分かれることがいくらでもあります。 そのため心理的変数は、ほかの変数と併用しつつ立体的に検証するのに役立ちます。  

行動変数/ビヘイビア

セグメンテーションを行なう際に、行動パターンや反応、知識などで行なう場合の切り口が行動変数です。 こちらも心理的変数と同様にSNSやECサイトの発達によって、かなり測定しやすくなりました。 具体的には、以下のような切り口が使われます。 【使用する場面】 例)週末に使う・毎日朝晩使う・いつも夕方に使う・夏に使う・春と秋に使う 【知識の有無】 例)関心はあるが詳しくない・リピーターなので商品をよく理解している・まったく認知していない 【利用頻度】 例)ライトユーザー・ミドルユーザー・ヘビーユーザー 行動変数を用いることにより、たとえば商品情報を知らない新規の見込み客とリピーターで商品情報をよく知っている顧客を区別して、アプローチの方法や販売チャネルを変えるなどの施策を実行できます。  

セグメンテーションのチェックは4つのRで

セグメンテーションを行うにあたっては、思いつくままに市場を細分化するだけではいけません。 自社の潜在顧客として最適なグループを見極めるために有効な基準となる「4R」を用いて、セグメントの有効性をつぶさにチェックしましょう。 4Rとは以下の4つの項目です。 ●Rank/優先順位Realistic/規模の有効性Reach/到達可能性Response/測定可能性 それぞれに目を向けて見ましょう。  

Rank/優先順位

セグメントされたグループのそれぞれの特徴を、自社のマーケティング戦略や営業ビジョンと照らし合わせて、重要度によって優先順位をつけます。

Realistic/規模の有効性

マーティング戦略の対象とすべきグループに、売上や収益を確保できる充分な規模があるかを調べます。

Reach/到達可能性

対象とすべきグループに対して、プロモーションなどのマーケティングのアプローチが実際に到達可能かどうかを調べます。

Response/測定可能性

グループの規模や特性、購買力などを明確に測定することや、マーケティングのアプローチに対する反応が測定可能かどうかを調べます。 ▼あわせて読みたい マーケティングでの戦略的なポジショニングとは?ポジショニングマップの解説&成功事例集 マーケティングにおけるペルソナの役割とは?設定方法をBtoCとBtoBに分けて徹底解説   

セグメンテーションの成功事例

地理的変数や人口動態変数のような客観的切り口に、心理的変数や行動変数のように定量的な判別ができない難しい切り口も組み込んでセグメンテーションの精度を上げる試みが盛んです。 実際にセグメンテーションの切り口が的を射ているかどうかは、業績を大きく左右しかねません。 つまり、切り口の感度の良さは、マーケティングにおける重要なカギと言っても過言ではないでしょう。 どういう切り口こそ感度が良いのかを理解するために、セグメンテーションの成功事例を紹介しておきます。  

ハーゲンダッツ

「ハーゲンダッツ」はコンビニやスーパーの中に並ぶアイスクリームの中でワンランク上の価格帯ですが、特別感や季節感のある商品をタイムリーに投入し、時として爆発的な売れ行きを見せます。

競合の逆張りをした「大人のアイス」

従来では日本のアイスクリーム市場のメインターゲットは子供でした。 つまり、子供がお小遣いの範囲で気軽に買えて、なおかつ万人受けするテイストが基本だったのです。 ハーゲンダッツはグレード感がある自社のアイスクリームのターゲットとして、同業他社のセグメントから外れている「大人」というグループにフォーカスすることで、圧倒的な差別化を図りました。  

ユニクロ

アパレルの従来の考え方であれば、性別や年齢層、キャリア志向などで詳細にセグメントをするものです。 しかし、ファーストリテイリングの「ユニクロ」のセグメンテーションはそれをせず、ただただ「カジュアルでベーシック」を徹底する独特のものです。

SPAの強みを活かせるセグメンテーション

もともとナショナルブランドの衣料品の小売業だったファーストリテイリングは、1990年代後半からSPA(製造型小売業)への方向転換を進めました。 そして消費者のニーズに合わせて、生産を柔軟に調整できるというSPAの利点を活かす戦略を取り、それが功を奏します。 メンズ・レディース・キッズのオールジャンルでの個々のサイズ展開に圧倒的に豊富なカラーバリエーションを導入したフリースなどで人気が爆発したのです。 その後もヒートテックなどの人気商品を生み出して、ユニクロは世界的な企業に大きく成長しました。  

スタディサプリ

サブスク型オンライン学習サービスであるリクルート社の「スタディサプリ」は、大学受験を目指す高校生をねらってローンチされました。 ただし、地域的あるいは経済的理由で予備校に通えない高校生をセグメントしています。 このセグメンテーションは、そういう高校生のグループが高校生全体のおよそ7割を占めるというデータに基づいています。

切り口の掛け合わせによる勝利

「大学受験を目指す」という心理的変数と「高校生」や「世帯収入」という人口動態変数、そして「予備校が無い地域」という地理的変数を掛け合わせたセグメンテーションで多くのユーザーを獲得しています。  

JINS PC

従来の眼鏡は視力が悪くて矯正の必要がある人のためのアイテムであり、ファッショングラスやサングラスはニッチな存在でした。 そこで、眼鏡ブランドJINSは眼鏡の市場を再定義するセグメンテーションによって、「視力が良い人」のグループをターゲットに加えたのです。 視力が悪い人にプラスして、視力は良いけれど疲れ目やドライアイなどの目に関する悩みを持つ人や、おしゃれに敏感な世代をもターゲットに設定しました。

眼鏡の目的を変えて市場が拡大

視力を矯正するための眼鏡ではなく、おしゃれで軽くて機能性があるアイウェアとしてPC仕事での目の疲れを軽減するブルーライトカット眼鏡「JINS PC」などで競合他社と差別化しました。 「JINS PC」は事務用品や健康グッズ、ファッションアイテムなどの位置づけで、視力矯正の必要がなくても目の健康のためにメガネを掛けるという新しいライフスタイルの選択肢を生み出したのです。  

Let’snote

パナソニックの「Let’snote」は、人口動態変数を巧みに用いたセグメンテーションで成功を収めたノートPCです。 ビジネスパーソン全体をターゲットに絞るのではなく「営業で外回りをする人」というグループにフォーカスしました。 それが一貫してモバイルPCに徹する理由です。

スペックの目的を明確にするセグメンテーション

そして、軽くて小さくて薄くて持ち運びしやすく、しかも頑丈であるというノートPC「Let’snote」は1990年代後半からロングセラーとなりました。 当時のPCメーカーの多くは、スペックの高さを追求していたものです。 しかし、パナソニックは独自路線のセグメンテーションに従いました。 営業で外回りするPCヘビーユーザーにねらいすましたおかげで、Let’snoteは成功することができたのです。  

まとめ

セグメンテーションの意味やそのための切り口、それをチェックするための4Rをわかりやすく解説し、感度の良いセグメンテーションによる成功事例を紹介しました。 セグメンテーションの価値は、切り口の組み合わせや従来と違う目のつけ所などによって、未だなかった市場を創造できるところにあります。 マーケティングに携わるみなさんはここで紹介した情報を参考に、良質なセグメンテーションにトライしてください。 ▼あわせて読みたい マーケティング戦略に有効なSWOT分析は他手法と併用+クロス分析で最強のアプローチに! マーケティングとプレゼンの意外な関係!?プレゼンに活かせるマーケティング的ポイント6選

無料で使える企業検索サービス

営業リスト・法人企業リスト