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 マーケティングコンセプトとは何か?その概要および歴史と変遷も解説 マーケティングコンセプトは、企業のマーケティング活動の依って立つ根本とする考え方です。経営者としての視点から、現場の最前線での施策までを貫く統合的な考え方ともいえるでしょう。 今回の記事では、そんなマーケティングコンセプトの概要および歴史と変遷に関して、詳しく解説します。マーケティング担当者のみなさんは、ぜひ参考にしてください。

マーケティングコンセプトとは?

 マーケティングコンセプトとは何か?その概要および歴史と変遷も解説 まずはそもそもマーケティングコンセプトとは何かについて、定義することから始めましょう。 マーケティングというビジネス用語が定着する前から、企業の目指すところは市場でより多くの自社商材を販売して利益を上げることであり、そのために個別の目標を設定して、どのような姿勢でマーケットに対峙するかを工夫してきました。 市場に対する向き合い方のベースとなる考え方がマーケティング・コンセプトであり、時代とともに変化してきました。 マーケティングコンセプトという言葉は、1950〜1960年代に主流になるマネジリアルマーケティング(経営者視点で戦略的に取り組むマーケティング)の中心的な考え方として登場しました。 この時代に、経営の根幹にマーケティングを位置づける、マーケティング中心主義が広まりました。 そして、今日でも活用されている、「4P」に代表されるマーケティングミックスや「STP分析」として知られるセグメンテーション(市場細分化)やターゲット設定、ポジショニングが主張され始めたのです。 このいわゆるマーケティング中心主義と呼ばれる考え方が、マーケティングコンセプトのベースなのです。 ここでは、わかりやすく「マーケティング活動の方向性を決める考え方」あるいは「さまざまなマーケティング活動のよりどころとなる基本的な理念」と考えてください。 コンセプト(Concept)という言葉は、しばしば「概念」と訳されます。しかし、この言葉にはそれを考える人の理想や、その考え方に基づいて行われるさまざまな活動内容の本質、あるいは活動全体を貫く考え方という意味があります。 これは「理念」、つまり「理」想を「念」じる文字通りの意味で捉えるほうが、概念よりも適切に言わんとするところが伝わるかもしれません。 「経営の理想」と「個別の戦略群」の間にあって、そのふたつを統合するのがマーケティングコンセプトです。

マーケティングコンセプトと戦略ヒエラルキー

 マーケティングコンセプトとは何か?その概要および歴史と変遷も解説 マーケティングコンセプトには、企業組織のトップから現場の最前線まで、あらゆる階層が共通するマインドを持って、包括的な活動や連携プレイを行う統合的マーケティングの発想があります。 それを理解するには、戦略ヒエラルキー(階層)のモデルを考えるのがよいでしょう。 基本的な戦略ヒエラルキー(階層)は「経営理念」を三角形の頂点とし、その下にミッションとビジョン、その下にドメイン(活動領域)と中期計画が位置します。 その下に経理・人事・開発・生産などの機能、その下に事業、市場、広告などのオペレーション、最下部を支えるのが製品・価格・流通・販促・広告などのマーケティングミックスです。 企業によって戦略ヒエラルキーの要素の呼称やポジションも異なるでしょう。要点は、企業が目指している方向と、現場の最前線の考えに差異がないことです。そのために、マーケティングコンセプトが全階層を貫いていることが大切となります。 ここで先ほど定義した内容を、今一度振り返りましょう。マーケティングコンセプトとは「マーケティング活動の方向性を決める考え方」あるいは「さまざまなマーケティング活動のよりどころとなる基本的な理念」です。 つまりマーケティングコンセプトは、ヒエラルキーの最下部、製品・価格・流通・販促プロモーションから構成される4P(マーケティング・ミックス:マーケティング手法を組み合わせる考え方)を統合するものです。 さらに、4Pの一部や下位に位置する個別の戦術領域を統合する役割を果たすのも、マーケティングコンセプトです。例えば、プロモーションでいえば広告のコンセプト、流通でいえばストアコンセプト、製品でいえば開発コンセプト、などがあります。 そして4Pを充分に機能させ、マーケティングコンセプトを際立たせることに役立つフレームワークがSTP分析です。

マーケティングコンセプトと関係が深い4PとSTP分析

マーケティングコンセプトと密接不可分の関係にある4Pと、それを機能させるのに有効なSTP分析について、触れておきましょう。 【4P/マーケティングミックス】 4Pとは、以下の頭文字を取ったフレームワーク(考え方の枠組み・思考ツール・論理モデル)です。 Product:製品の属性・特性 Place:流通チャネル Price:市場価格 Promotion:プロモーション(販促・広告) マーケティングミックスとは、マーケティングの目標達成のためにコントロールできるマーケティング手法を組み合わせていくことです。どの要素が欠けてもうまくいかないということが重要です。 製品だけが抜群でも、店舗だけがレベルが高くても、価格が安いだけでも、広告が洗練されているだけでも、売れるわけではありません。すべての要素が機能し、うまく統合することで、初めて売れるということです。 これが1960年代に定着したといわれる、マネジリアルマーケティングの根幹の考え方です。 【STP分析】 次にSTP分析とは、以下の頭文字を取ったフレームワークです。 Segmentation:市場細分化 Targeting:顧客ターゲットの設定 Positioning:市場における自社商材の位置づけ これらは4Pを実行するより先に解決しておきたい課題と考えてよいでしょう。 一般的な順序は、セグメンテーション(市場を細分化)して、ターゲティング(特定のセグメントを設定)して、ポジショニング(その市場で競合商材と差別化するための位置づけ)する流れです。 しかし、すべてがSTPの順に実行されるとはかぎりません。特に、ポジショニングは顧客のマインドの中に自社商材をどのように位置づけたらよいかという最重要課題であり、何度も修正(リ・ポジショニング)されることがあります。

マーケティングコンセプトの黎明

マーケティングコンセプトは昔から一貫して変わらないように思われがちですが、そんなことはありません。技術革新や消費者の価値観の変容、社会の変動、時代の変化に応じてマーケティングコンセプトも変遷してきました。 生産志向に始まり製品志向に移り、販売志向が生まれ、顧客志向にたどり着き、ついに社会環境志向というように変遷してきた5段階モデルが代表的です。 このモデルの発祥を遡ると、19世紀のとある経営者に行き着きます。それは、ケーキ材料や小麦粉、動物飼料などを製造する、1869年創業のピルスベリー社の経営者ロバート・キースです。

ロバート・キースのもたらした功績

ロバート・キースはピルスベリー社の経営に対する理念が、1869〜1930年は「生産・製品志向」、1930〜50年は販売志向、1950〜58年はマーケティング志向のように変化したと考えたのです。 キースによると、製品が足らなかった時代には、最も重要な企業の機能は生産でした。 これが生産・製品志向の時代ですが、需要を供給が上回るようになると顧客を獲得しなければならず広告や販促が重要になって販売志向に移行しました。 販売の増大とともに、市場調査や調達・流通経路の整備・販売活動を調整する必要が生じ、広告部門とプロモーション部門はマーケティング部門に収斂されることになります。

マーケティング革命

しかし、マーケティング部門による短期的な計画設定は、効果が充分に上がらないことが判明しました。そこで企業活動のすべての領域が同じ考え方によって導かれ、顧客に満足を与えるよう組織化されるようになります。 これはマネジリアルマーケティングと呼ばれる経営視点の統合的マーケティングの必要性を示唆しています。ロバート・キースは、このような顧客志向をベースとした統合的マーケティングの確立を「マーケティング革命」と呼びました。

マーケティングコンセプトの変遷

 マーケティングコンセプトとは何か?その概要および歴史と変遷も解説 マーケティングコンセプトの変遷を表にまとめると以下のようになります。 表の左端の縦の流れが、マーケティングコンセプトの変遷です。右の「市場」が市場環境、つまり需要と供給の関係の変化を表しています。 もちろん実際のビジネスでは、このように明確な区分はできませんが大枠を理解するのに役立つでしょう。この表に沿って、マーケティングコンセプトの変遷を理解していきましょう。

生産志向のマーケティングコンセプト

生産志向の段階は「売手市場」です。多くの人がそれを求めているけれど、供給が追いつかない状態だからです。 そのため、「手段」の縦の流れにあるように、技術革新や流通の改善を通じて、右端の「生産増による」利益を目指すことになります。 経済学の考え方でいくと、買い手が多い売手市場では、あえて増産せずに価格をつり上げるオプションが出てきます。ところがマーケティングと経済学は別物です。 顧客志向にもとづいた企業は、増産して価格を下げます。「理念」の列の1番目である「より価格を下げてより多く市場に供給する」ことが、生産志向のマーケティングコンセプトです。 T型フォードの事例は、生産志向のマーケティングコンセプトの古典として知られています。20世紀の初頭、自動車は大衆の憧れであり、売手市場でした。消費者は同じ型の自動車でも、安ければ喜んで購入しました。 フォードシステムのような大量生産のスケールメリットを価格に反映して、廉価普及版を大ヒットさせた方式こそが生産志向のマーケティングコンセプトの成功事例です。 次の段階で、市場が成長して競合も参入すると、消費者はクオリティや性能に敏感になります。自動車だけでなく家電でも携帯電話でも、成長期にはバージョンアップが盛んになるものです。

製品志向のマーケティングコンセプト

​​表の製品嗜好の行を見てみましょう。「生産者からみてより良い商材を供給する」という理念のもと、「クオリティや機能による利益」が追求されます。 しかしこういった考え方は主に品質管理や技術の部門が主導するため、全社的な統合されたコンセプトにはなりにくいものです。 「理念」に「売り手からみてより良い品を提供する」とあるのは、製品について自分たちがよくわかっているという製品中心の見方に陥りがちだからです。 やがて、量産によるコストダウンも限界に達します。改良のための技術革新が止まると、商材が余り始めて、やがて買手市場に向かいます。

販売志向のマーケティングコンセプト

次に三段目「販売志向」の行を見ていきましょう。「消費者は何もしなければその商材を選ばない」ので、購買意欲を高めるために「販売志向」になります。マーケティングが販売と混同される原因はここにあります。 そのため、手段として取られる「販売テクニック・広告プロモーションなどの刺激策」をマーケティングと混同している人も多いと思われます。 日本企業は、モノづくりは上手なのにマーケティングが下手だとよく評されますが、この場合のマーケティングは売り方の技術を指しています。しかし売り方はあくまでマーケティングの一部であり、商材を開発して市場に供給する活動全体がマーケティングです。

顧客志向のマーケティングコンセプト

あふれる刺激に慣れっこになった消費者は、販促キャンペーンや広告プロモーションには踊らされなくなります。販売・接客技術を磨き、広告の露出を増やしても売れない状態です。 それまでは売上げアップこそが利益の源泉だと考えていた企業は、ここに至って発想の転換を迫られます。そして、顧客満足から生まれる利益を追求する「顧客志向」の理念の登場です。 これが「顧客志向」のマーケティングコンセプトで、前述のロバート・キースが「マーケティング革命」と呼んだものです。 表の「顧客志向」の行を見てみましょう。「理念」では「市場ニーズを見極めてそれを満たす商材を供給する」のですが、「手段」で「全社的な統合活動」、すなわち統合的マーケティングの考え方が出てきます。 「生産▶製品▶販売」という「モノ」を売ればよいという段階では、開発・生産・販売がそれぞれ別々に行えるので、売上目標達成の手段が偏りがちです。 生産志向の段階では生産部門がメインに、製品志向の段階では技術部門や品質管理部門がメインになります。販売志向の段階では、販売部門の活躍に期待する部分が多く、運良く優秀な販売員が多くいれば、売上目標を達成することもあるでしょう。 ところが、顧客志向の段階になると、市場を創造するためにすべての部門がアンテナを張り巡らせる必要があります。 カスタマーサービス部門は、故障やクレームへの対応ではなく、顧客の本当のニーズや課題を引き出す部門としての機能が望まれます。 開発部門も一貫して市場調査から生産、販売まで関与しなければなりません。いくら良い製品も、サプライチェーンが整理され、各プロセスが有機的に連動しなければ顧客に届かないのです。 また、販促や広告のプロモーション活動と連動していなければ、不良在庫や品不足が生じてしまうでしょう。 いわゆるバックオフィスである経理や人事さえも、消費者やマーケットの動向に敏感でなければ、設備投資や人員戦略において後れを取り、ビジネスチャンスを逸してしまう可能性があります。 極論をいえば社員の服装や電話への受け答え、社員間の雑談内容にも注意しなければ、いつでもブランドは崩壊するといわれる時代です。 このように顧客志向の段階では、経営トップから現場の最前線まで、あらゆる階層が1つのマインドを持って、全社を貫く統合活動を展開することが求められます。

社会環境志向のマーケティングコンセプト

消費者の生活者としての意識が高まるほどに、市場のニーズと社会のニーズのバランスという難題に折り合いをつけなければ、長期的な利益の確保は難しくなります。 これが社会志向の段階です。さらに、地球全体がひとつの生活圏として捉えられ、地球規模の環境問題が企業の業績に直接関係するようになった現代では、環境志向のマーケティングコンセプトも必要です。 SDGsやカーボンニュートラルなどの考え方が社会の隅々まで広がり、環境志向を持ったマーケティングコンセプトが不可欠ともいえるでしょう。 この段階でも、顧客志向の段階と同じく「全社的統合活動」が、理念達成の根幹になります。むしろその統合範囲は、企業内部にとどまらず、外部のステークホルダー、パートナー企業など、関連する全ネットワークとの連携が求められます。 社会環境志向のコンセプトの実現は、一企業だけではもはや不可能です。行政や消費者の意識も、もっと変わらなければならないでしょう。理想を目指すグリーン企業、グリーン消費者、グリーン為政者が協力し合って初めて実現するでしょう。

これからのマーケティングコンセプトの展望

社会環境志向のマーケティングコンセプトの次には、いかなる新しい考え方が登場するのかは、まだわかりません。おそらくよりパブリック、つまり公共的な要素が強い考え方に発展するのではないかと思われます。 いずれにせよ、今後の「個」の消費者の支持を得るためには、「全体」である社会のニーズと密接にリンクする必要性が強まっていくでしょう。ともあれ、当面は社会環境志向のマーケティングコンセプトの時代が続くと考えられます。 それは文字通り「社会」そのものを視野に入れたマーケティングコンセプトです。現代社会ではWeb上のコミュニケーションは不可欠であり、それによって生み出される価値や救われる人もいます。 しかし、インターネットが社会の一部に組み込まれていることは否めませんが、かといって日常的にインターネットを使っていない人たちもたくさんいるのもまた事実です。 ミクロレベル、マクロレベルの景気の悪化や環境問題によって、閉塞感を感じる人も多いことでしょう。さまざまな課題が山積する中で、企業が消費者、ひいては社会とどう関わっていくのかを、これからのマーケティングは考えていくことが求められています。

まとめ

マーケティングコンセプトは、19世紀に作られたものですが、それは時代の変化を吸収しながら変化し、現在にも引き継がれています。 発祥のロバート・キースの時代には想像もつかなかった、コンピューターの発展によるビジネスの変化、デジタルマーケティングの登場と進化によって、手法は洗練され複雑化、多様化していますが、根幹の部分には普遍性があります。 時代は変化しても人間の経済活動の根っこの部分は変わらず、人間を取り巻く環境が変わっているだけなのでしょう。 経営者やマーケティング担当者のみなさんは、ここで紹介したマーケティングコンセプトを認識しつつ、自社商材とターゲットはもちろん、社会との関わりも視野に入れ、マーケティング戦略を磨き上げてください。 なお、マーケティングではマーケティング担当者の資料・情報収集をサポートしており、Webマーケティング用のお役立ち資料がダウンロードできます。 マーケメディアでマーケティング資料をダウンロードする また、法人データベースとして日本最大級であるBIZMAPSでは、170万件以上の法人情報から効率よく見込み客リストが作成できます。毎月100社まで無料ダウンロードできるので、検索条件を上手に組み合わせて、目指すターゲット企業の検索が可能です。 BIZMAPSで企業を探す マーケメディアに関する特集記事はこちらです。 「リード」について徹底解説!営業とマーケティングにおける意味の違いとは? マーケティングとプレゼンの意外な関係?プレゼンが上手くなる6つのポイント マーケティングでの戦略的なポジショニング方法と成功事例集 ホワイトペーパーのマーケティングでの活用法とは?DLサイト紹介も! ペルソナとは?マーケティングにおける役割や設定方法を徹底解説!

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