一色 みわ
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目次
設備工事業界の定義
- 電気工事業
建物や施設の電力供給システム、照明設備、電気機器の設置とメンテナンスを行います。電気工事は安全性が特に重視される分野であり、高度な技術と厳格な基準が求められます。
- 電気通信工事業
インターネットや電話回線、LAN配線、情報通信ネットワークの構築と維持を担当します。高速かつ安定した通信環境を提供するためには、最新の技術と知識が必要です。
- 管工事業
給排水やガス供給システムの設計・施工・保守を行います。適切な配管とシステムの管理は、建物の衛生環境と安全性を維持するために不可欠です。
- さく井工事業
地下水の供給を目的とした井戸の掘削や、地下資源の開発を行います。この工事は、地下構造や水質の調査、適切な設備の設置が求められます。
- 熱絶縁工事業
熱の伝導を防ぐための断熱材の施工を行います。エネルギー効率の向上や、快適な室内環境の維持に寄与します。
- 機械器具設置工事業
工場やプラント、ビル内の機械設備の設置を行います。精密な機械の取り扱いには、高度な技術と経験が求められます。
- 消防施設工事業
火災時に人命と財産を守るための消火設備や警報システムの設置・保守を行います。消防法に基づく厳格な基準に従って施工が行われます。

設備工事業界の構造
設備工事業界は、発注者からの依頼を受けて施工を行い、電気、衛生、通信、空調などの設備を完成させる役割を担っています。設備工事業界における発注形態は、「一括発注方式」と「分離発注方式」の二つがあります。 一括発注方式では、ゼネコンや元請と呼ばれる総合建設会社に全ての工事を一括で依頼します。この方式の主なメリットは、発注先を一本に絞ることで責任体制を明確にできることです。また、工事期間中の各種業務や対応についても窓口を一本化できるため、管理が容易になる利点があります。 一方、分離発注方式は、各種専門の工事会社へ個別に発注する方法です。この方式では、工事の総括をする人物がいないため、責任の所在が不明確になる場合があります。また、施主の自己責任で費用負担が発生することもあります。しかし、コスト面では中間にゼネコンが介在しないため、経費負担を軽減でき、発注者にとって有利になることが多いです。 発注方法には、競争的な方法と非競争的な方法があります。競争的な方法には「見積もり合わせ」と「入札」があり、見積もり合わせは、施工業者を数社に絞り込み、見積もりを提出させ、その中から条件の良い発注先を決定する方法です。入札は、工事の内容を公開し、応札企業が提示する請負金額を基に、最も低い金額を提示した企業が落札する仕組みです。 非競争的な方法には「特命」があります。特命は、1社のみに見積りを依頼し契約する方法で、業者の選択の手間を省ける利点がありますが、受発注者間の馴れ合いから工事の質が低下するリスクもあります。 設備工事業界では、これらの発注形態や方法により、様々なメリットとデメリットが生じます。発注者はプロジェクトの規模や内容、予算に応じて最適な方法を選択することが重要です。各方式の特徴を理解し、適切な発注方法を選ぶことで、工事の効率化と品質の確保を図ることが求められます。設備工事業界の市場規模とトレンド
設備工事業界の相関図
- 電気工事業界
- 通信工事業界
- 空調工事業界
電気工事業界
電気工事業界の主要プレイヤーは、電力会社の系列会社が多くを占めています。国内の主要企業としては、関西電力の系列会社である株式会社きんでん、東京電力の系列会社である株式会社関電工などです。 また、九州電力の系列会社である株式会社九電工、中部電力の系列会社である株式会社トーエネック、東北電力の系列会社である株式会社ユアテックも大手企業として知られています。これに加えて、鉄道会社の系列会社も存在し、日本電設工業株式会社はJR東日本の系列会社、西日本電気システム株式会社はJR西日本の系列会社です。通信工事業界/h3>
通信工事業界には、コムシスホールディングス株式会社、エクシオグループ株式会社、株式会社ミライト・ワンの三大グループが存在します。各グループは再編を進めており、例えばコムシスホールディングスは2010年に札幌に本社を持つ株式会社つうけんを完全子会社化しました。 エクシオグループは2011年に池野通建を完全子会社化し、その後、和興エンジニアリングと池野通建を合併して株式会社エクシオテックに改名。ミライト・ワンは、東電通、大明、コミューチュアの3社が経営統合して設立されたもので、2012年にコミューチュアはミライト・テクノロジーズに改名し、東電通と大明は合併してミライトに改名しました。 2018年にはソルコムとの経営統合を行い、2022年にはミライト・ホールディングス、ミライト、ミライト・テクノロジーズの3社が統合してミライト・ワンが発足しました。電気工事業界のプレイヤーも通信工事市場に参入し、競争が激化しています。空調工事業界
空調工事業界は、専業のプレイヤーと総合系のプレイヤーに分かれており、専業のトップ企業には、高砂熱学工業株式会社、株式会社大気社、新日本空調株式会社があります。これらの企業は、空調技術に特化し、高度な専門知識と豊富な経験を持っており、大規模なビルや工場、病院などで信頼性の高いサービスを提供しています。 高砂熱学工業は特にエネルギー効率の高いシステムの導入で知られ、大気社と新日本空調も特殊な施設の空調工事を得意としている企業として有名です。 一方、総合系のプレイヤーには、三機工業株式会社やダイダン株式会社があり、空調工事だけでなく電気工事や給排水工事なども手掛けています。これらの企業は複数の工事を一括で請け負う能力があり、大規模なプロジェクトに対応できますが、空調工事の専門性では専業プレイヤーに劣ることが多いです。 三機工業は総合設備管理での効率的な運用を、ダイダンはトータルソリューションを提供することで、それぞれの強みを活かしています。設備工事業界の主要企業の財務指標分析
設備工事業界の主要プレイヤーの動向
- 業績推移と利益率の変動
- 九電工の収益性と中期経営計画
- コムシスホールディングスの事業展開と収益性
- 中小企業のM&A動向と多角化
業績推移と利益率の変動
過去10年間の設備工事業界の主要プレイヤーの動向を見ると、売上高は横ばいですが、営業利益率は上昇傾向にあります。2008年の世界的不況以降、利益率は低下していましたが、2012年から回復し、2008年以前の水準を上回る企業も増えています。 2020年度は新型コロナウイルス感染拡大の影響で一部企業の業績が低下。しかしながら、九電工とコムシスホールディングスは高い利益率を維持しています。九電工の収益性と中期経営計画
九電工は営業利益率が8.1%と業界内でも高い水準を維持しています。コロナ禍で一部の大型案件が遅延し、民間企業からの売上が落ち込みましたが、九州電力や官公庁からの受注は前年並みを確保し、高収益を維持しました。 2020年度から2024年度までの中期経営計画では、大型プロジェクトの受注強化、再生可能エネルギー事業の拡充、業務効率化を目指しています。コムシスホールディングスの事業展開と収益性
コムシスホールディングスは、通信建設業界トップの日本コムシスを中心に、幅広いNTTグループの工事を手がける企業です。近年はIT市場の拡大、無電柱化事業、防災・減災施策、データセンタ事業など社会インフラの構築に注力しています。 コロナ禍でも通信設備工事やIT環境整備の需要が高まり、2020年度も堅調に売上を拡大しました。2022年度は原材料価格の高騰や供給制約で営業利益率が低下しましたが、藤木鉄工のM&A効果が増収に寄与しています。中期経営計画では、文教・公共・スマートシティ・医療分野にフォーカスし、成長基盤の強化を目指しています。中小企業のM&A動向と多角化
中小企業では、専門分野の強化と多角化を目的としたM&Aが活発化。新築工事はゼネコンからの発注が多い一方、リニューアル工事は施主からの直接発注が多く、他分野への対応が求められています。 この多角化戦略により、工事の受注機会が増え、施主のニーズに一元的に対応できるようになります。また、同じ現場で複数の工事を一括して行うことで、工期短縮やコスト削減が可能となり、企業の競争力が高まるでしょう。 さらに、技術革新や環境意識の高まりに対応するため、中小企業は再生可能エネルギーや省エネ技術の導入を進めています。設備工事業界の今後の業界展望
設備工事業界の今後の展望について、注目すべき以下の4点について詳しく解説します。- コロナ禍の影響
- 人手不足の懸念
- リニューアル需要の増加
- 技術進歩と生産性向上
コロナ禍の影響
新型コロナウイルスの拡大により、2020年度は多くの設備工事業者が業績を落としました。新規工事の依頼が減少し、中断するケースが相次いだためです。しかし、感染対策を講じて公共案件を含む多くの工事が再開され、設備工事業界の業績は徐々に回復しています。 ただし、感染予防のための資材費用の増加や追加行程による人件費増加、建築資材や設備機器の供給減少など、影響の長期化が見込まれます。人手不足の懸念
国内の生産年齢人口の減少に伴い、設備工事業界でも人手不足がますます深刻化することが予測されます。2050年には国内人口が1億人を下回り、生産年齢人口は現在の3分の2に減少するとされているのです。 さらに、建設業界全体で従業員の高齢化が進み、現役世代の引退による技術力の低下も懸念されています。今後は賃金や労働条件の見直し、若年層の確保と技術の伝達が重要です。リニューアル需要の増加
人口減少と住宅ストックの増加により、住宅着工件数は減少し、新設工事の需要は低下する見込みです。しかし、ビルや工場の老朽化に伴うリニューアル工事の需要は増加すると予測されます。 特に通信やエネルギー関連では、技術進歩が早く、最新設備への需要が高まっています。これにより、既存のプレイヤーが隣接する設備工事業界へ参入するケースが増え、業界内での垣根は低くなると予想されます。技術進歩と生産性向上
通信やエネルギー分野では5Gや再生エネルギーが注目され、政府もこれらの導入に注力しています。設備投資の増加が期待される一方で、技術力を持った人材の確保と生産性向上が求められます。 現場のIT管理やタブレットを使った指示など、技術導入が進められ、生産性を高める取り組みが重要となるでしょう。さらに、これらの技術を活用したスマートシティやグリーンインフラの推進も、今後の成長分野として期待されています。設備工事業界で競争率を高めよう

「場所や時間にとらわれない自由な働き方」がモットーの転勤族ママライターです。読み手に寄り添った分かりやすい文章を心がけています。転職・副業・旅行ジャンルなどが得意。旅行とカメラと甘いもの(とくにチーズケーキ)が大好きで、毎日のお茶タイムは欠かせません。元気すぎる2人の子どもを育てながらのんびりと活動しています。
ブログ:https://miwaalog.com/
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