一色 みわ 0 Comments
設備工事業界は、建築物に付随する様々な設備工事を専門に行う事業者を対象とする産業分野です。設備工事業者は、建築物の新築や改修、リノベーションなどの際に、専門的な知識と技術を活かして工事を行います。 本記事では、設備工事業界の定義をはじめ、市場規模や主要プレイヤーの動向などを解説します。これらの情報を利用することで、業界の今後の動向を把握することができるでしょう。 なお、BIZMAPSでは設備工事業界に関連する企業の情報を掲載中です。各企業の詳細は、以下からご確認いただけます!是非合わせてご覧ください。

設備工事業界の定義

設備工事業界とは、電気、衛生、通信、空調といった設備の工事を専門に行う事業者を対象とする産業分野です。設備工事業界には、多岐にわたる技術と専門知識が求められ、公共施設や商業ビル、住宅など、さまざまな建物や施設において、重要な役割を果たしています。 建設業法では、建設工事は大きく2種類の一式工事と27種類の専門工事の計29業種に分類されており、それぞれの工事を請け負うためには該当する許可を取得しなければなりません。 この許可制度は、各工事の質を確保し、施工の安全性と適正な管理を図るために設けられています。 一式工事には、土木一式工事と建築一式工事があります。これらの許可を持っている事業者であっても、特定の専門工事の許可を持っていない場合は、500万円以上の規模の専門工事を単独で請け負うことができません。これは、専門性の高い工事に対しては、専用の技術と知識を持った事業者による施工が求められるためです。 国土交通省が発行する「建設工事施工統計調査報告」によれば、29業種のうち、以下の7種類が設備工事業として分類されています。
  1. 電気工事業

建物や施設の電力供給システム、照明設備、電気機器の設置とメンテナンスを行います。電気工事は安全性が特に重視される分野であり、高度な技術と厳格な基準が求められます。

  1. 電気通信工事業

インターネットや電話回線、LAN配線、情報通信ネットワークの構築と維持を担当します。高速かつ安定した通信環境を提供するためには、最新の技術と知識が必要です。

  1. 管工事業

給排水やガス供給システムの設計・施工・保守を行います。適切な配管とシステムの管理は、建物の衛生環境と安全性を維持するために不可欠です。

  1. さく井工事業

地下水の供給を目的とした井戸の掘削や、地下資源の開発を行います。この工事は、地下構造や水質の調査、適切な設備の設置が求められます。

  1. 熱絶縁工事業

熱の伝導を防ぐための断熱材の施工を行います。エネルギー効率の向上や、快適な室内環境の維持に寄与します。

  1. 機械器具設置工事業

工場やプラント、ビル内の機械設備の設置を行います。精密な機械の取り扱いには、高度な技術と経験が求められます。

  1. 消防施設工事業

火災時に人命と財産を守るための消火設備や警報システムの設置・保守を行います。消防法に基づく厳格な基準に従って施工が行われます。

設備工事業界の構造

設備工事業界は、発注者からの依頼を受けて施工を行い、電気、衛生、通信、空調などの設備を完成させる役割を担っています。設備工事業界における発注形態は、「一括発注方式」と「分離発注方式」の二つがあります。 一括発注方式では、ゼネコンや元請と呼ばれる総合建設会社に全ての工事を一括で依頼します。この方式の主なメリットは、発注先を一本に絞ることで責任体制を明確にできることです。また、工事期間中の各種業務や対応についても窓口を一本化できるため、管理が容易になる利点があります。 一方、分離発注方式は、各種専門の工事会社へ個別に発注する方法です。この方式では、工事の総括をする人物がいないため、責任の所在が不明確になる場合があります。また、施主の自己責任で費用負担が発生することもあります。しかし、コスト面では中間にゼネコンが介在しないため、経費負担を軽減でき、発注者にとって有利になることが多いです。 発注方法には、競争的な方法と非競争的な方法があります。競争的な方法には「見積もり合わせ」と「入札」があり、見積もり合わせは、施工業者を数社に絞り込み、見積もりを提出させ、その中から条件の良い発注先を決定する方法です。入札は、工事の内容を公開し、応札企業が提示する請負金額を基に、最も低い金額を提示した企業が落札する仕組みです。 非競争的な方法には「特命」があります。特命は、1社のみに見積りを依頼し契約する方法で、業者の選択の手間を省ける利点がありますが、受発注者間の馴れ合いから工事の質が低下するリスクもあります。 設備工事業界では、これらの発注形態や方法により、様々なメリットとデメリットが生じます。発注者はプロジェクトの規模や内容、予算に応じて最適な方法を選択することが重要です。各方式の特徴を理解し、適切な発注方法を選ぶことで、工事の効率化と品質の確保を図ることが求められます。

設備工事業界の市場規模とトレンド

設備工事業界の市場規模は、国土交通省の「建設工事施工統計調査報告」によると31兆6,192億円に達しています。これは設備工事業全体の完成工事高の総額であり、その内訳は電気工事業が35.1%、機械器具設置工事業が23.2%、管工事業が26.2%、電気通信工事業が10.4%を占めています。 設備工事業界の市場の推移を振り返ると、2008年の世界的不況による建設投資の減少で設備工事市場も縮小しました。しかし、2011年の東日本大震災の復興需要により徐々に回復し、2014年には不況以前の水準にまで戻りました。 その後、東京オリンピック関連の特需による建設業界の好調に支えられ市場は拡大し、コロナ禍でもインフラ整備に伴う電気通信工事業や管工事業は堅調に推移しました。特に機械器具設置工事業は製造業の投資マインドに左右されやすく、需要の落ち込みが見られましたが、設備工事業界全体としては、建設業界に比べコロナ禍の影響は軽微でした。 また、完成工事高に対する元請比率(元請完成工事高/完成工事高)は、2021年度に53.4%となり、前年比で微増し改善傾向にあります。設備工事業界は建設業界と比較して元請比率が高いものの、元請・下請取引の適正化や重層下請構造の改善による生産性向上が設備工事業界の全体の課題となっています。 このように、設備工事業界は市場規模が大きく、電気工事や管工事などの各分野が堅調に推移する中で、元請比率の向上や取引構造の改善などが今後の成長に向けた重要なポイントとなっています。

設備工事業界の相関図

設備工事業界には、主に以下の業界が存在します。
  • 電気工事業界
  • 通信工事業界
  • 空調工事業界
これらの分野はそれぞれ専門的な技術と知識を必要とし、建物やインフラの安全性と快適性を支える重要な役割を果たしています。

電気工事業界

電気工事業界の主要プレイヤーは、電力会社の系列会社が多くを占めています。国内の主要企業としては、関西電力の系列会社である株式会社きんでん、東京電力の系列会社である株式会社関電工などです。 また、九州電力の系列会社である株式会社九電工、中部電力の系列会社である株式会社トーエネック、東北電力の系列会社である株式会社ユアテックも大手企業として知られています。これに加えて、鉄道会社の系列会社も存在し、日本電設工業株式会社はJR東日本の系列会社、西日本電気システム株式会社はJR西日本の系列会社です。

通信工事業界/h3>

通信工事業界には、コムシスホールディングス株式会社エクシオグループ株式会社株式会社ミライト・ワンの三大グループが存在します。各グループは再編を進めており、例えばコムシスホールディングスは2010年に札幌に本社を持つ株式会社つうけんを完全子会社化しました。 エクシオグループは2011年に池野通建を完全子会社化し、その後、和興エンジニアリングと池野通建を合併して株式会社エクシオテックに改名。ミライト・ワンは、東電通、大明、コミューチュアの3社が経営統合して設立されたもので、2012年にコミューチュアはミライト・テクノロジーズに改名し、東電通と大明は合併してミライトに改名しました。 2018年にはソルコムとの経営統合を行い、2022年にはミライト・ホールディングス、ミライト、ミライト・テクノロジーズの3社が統合してミライト・ワンが発足しました。電気工事業界のプレイヤーも通信工事市場に参入し、競争が激化しています。

空調工事業界

空調工事業界は、専業のプレイヤーと総合系のプレイヤーに分かれており、専業のトップ企業には、高砂熱学工業株式会社株式会社大気社新日本空調株式会社があります。これらの企業は、空調技術に特化し、高度な専門知識と豊富な経験を持っており、大規模なビルや工場、病院などで信頼性の高いサービスを提供しています。 高砂熱学工業は特にエネルギー効率の高いシステムの導入で知られ、大気社と新日本空調も特殊な施設の空調工事を得意としている企業として有名です。 一方、総合系のプレイヤーには、三機工業株式会社ダイダン株式会社があり、空調工事だけでなく電気工事や給排水工事なども手掛けています。これらの企業は複数の工事を一括で請け負う能力があり、大規模なプロジェクトに対応できますが、空調工事の専門性では専業プレイヤーに劣ることが多いです。 三機工業は総合設備管理での効率的な運用を、ダイダンはトータルソリューションを提供することで、それぞれの強みを活かしています。

設備工事業界の主要企業の財務指標分析

設備工事業界の主要企業として、電気工事のきんでん、通信工事のコムシスホールディングス、空調工事の高砂熱学工業を取り上げます。各社の収益性の推移を見ると、売上高は増加傾向にあるものの、利益率は低下しているのが現状です。 コロナ禍でもIT投資需要が堅調だったため、きんでんとコムシスホールディングスは増収基調を維持していますが、材料費の高騰などの影響で営業利益率は約6%まで低下しました。 高砂熱学工業は、コロナ禍で大幅に収益を落としましたが、2022年にはコロナ禍前の水準まで回復しています。設備工事業は、建設業界の中でも高収益な体質を持ち、建設業界やプラント業界と比べても営業利益率が高いです。 生産性を示す一人当たり売上高は、2022年度で、きんでんが4800万円、コムシスホールディングスが3200万円、高砂熱学工業が5800万円となっており、近年大きな変動はありません。安全性を示す自己資本比率は、各社とも比較的高い水準にあり、財務基盤は安定しています。

設備工事業界の主要プレイヤーの動向

設備工事業界の主要プレイヤーの動向について、以下の4点について詳しく説明します。
  • 業績推移と利益率の変動
  • 九電工の収益性と中期経営計画
  • コムシスホールディングスの事業展開と収益性
  • 中小企業のM&A動向と多角化

業績推移と利益率の変動

過去10年間の設備工事業界の主要プレイヤーの動向を見ると、売上高は横ばいですが、営業利益率は上昇傾向にあります。2008年の世界的不況以降、利益率は低下していましたが、2012年から回復し、2008年以前の水準を上回る企業も増えています。 2020年度は新型コロナウイルス感染拡大の影響で一部企業の業績が低下。しかしながら、九電工とコムシスホールディングスは高い利益率を維持しています。

九電工の収益性と中期経営計画

九電工は営業利益率が8.1%と業界内でも高い水準を維持しています。コロナ禍で一部の大型案件が遅延し、民間企業からの売上が落ち込みましたが、九州電力や官公庁からの受注は前年並みを確保し、高収益を維持しました。 2020年度から2024年度までの中期経営計画では、大型プロジェクトの受注強化、再生可能エネルギー事業の拡充、業務効率化を目指しています。

コムシスホールディングスの事業展開と収益性

コムシスホールディングスは、通信建設業界トップの日本コムシスを中心に、幅広いNTTグループの工事を手がける企業です。近年はIT市場の拡大、無電柱化事業、防災・減災施策、データセンタ事業など社会インフラの構築に注力しています。 コロナ禍でも通信設備工事やIT環境整備の需要が高まり、2020年度も堅調に売上を拡大しました。2022年度は原材料価格の高騰や供給制約で営業利益率が低下しましたが、藤木鉄工のM&A効果が増収に寄与しています。中期経営計画では、文教・公共・スマートシティ・医療分野にフォーカスし、成長基盤の強化を目指しています。

中小企業のM&A動向と多角化

中小企業では、専門分野の強化と多角化を目的としたM&Aが活発化。新築工事はゼネコンからの発注が多い一方、リニューアル工事は施主からの直接発注が多く、他分野への対応が求められています。 この多角化戦略により、工事の受注機会が増え、施主のニーズに一元的に対応できるようになります。また、同じ現場で複数の工事を一括して行うことで、工期短縮やコスト削減が可能となり、企業の競争力が高まるでしょう。 さらに、技術革新や環境意識の高まりに対応するため、中小企業は再生可能エネルギーや省エネ技術の導入を進めています。

設備工事業界の今後の業界展望

設備工事業界の今後の展望について、注目すべき以下の4点について詳しく解説します。
  • コロナ禍の影響
  • 人手不足の懸念
  • リニューアル需要の増加
  • 技術進歩と生産性向上

コロナ禍の影響

新型コロナウイルスの拡大により、2020年度は多くの設備工事業者が業績を落としました。新規工事の依頼が減少し、中断するケースが相次いだためです。しかし、感染対策を講じて公共案件を含む多くの工事が再開され、設備工事業界の業績は徐々に回復しています。 ただし、感染予防のための資材費用の増加や追加行程による人件費増加、建築資材や設備機器の供給減少など、影響の長期化が見込まれます。

人手不足の懸念

国内の生産年齢人口の減少に伴い、設備工事業界でも人手不足がますます深刻化することが予測されます。2050年には国内人口が1億人を下回り、生産年齢人口は現在の3分の2に減少するとされているのです。 さらに、建設業界全体で従業員の高齢化が進み、現役世代の引退による技術力の低下も懸念されています。今後は賃金や労働条件の見直し、若年層の確保と技術の伝達が重要です。

リニューアル需要の増加

人口減少と住宅ストックの増加により、住宅着工件数は減少し、新設工事の需要は低下する見込みです。しかし、ビルや工場の老朽化に伴うリニューアル工事の需要は増加すると予測されます。 特に通信やエネルギー関連では、技術進歩が早く、最新設備への需要が高まっています。これにより、既存のプレイヤーが隣接する設備工事業界へ参入するケースが増え、業界内での垣根は低くなると予想されます。

技術進歩と生産性向上

通信やエネルギー分野では5Gや再生エネルギーが注目され、政府もこれらの導入に注力しています。設備投資の増加が期待される一方で、技術力を持った人材の確保と生産性向上が求められます。 現場のIT管理やタブレットを使った指示など、技術導入が進められ、生産性を高める取り組みが重要となるでしょう。さらに、これらの技術を活用したスマートシティやグリーンインフラの推進も、今後の成長分野として期待されています。

設備工事業界で競争率を高めよう

設備工事業界は、技術革新とデジタル化が進む中で、5Gの普及や再生可能エネルギーの導入、スマートシティやグリーンインフラの推進が期待されています。これにより、通信設備やエネルギー関連の設備投資が増加し、最新技術の導入が進むでしょう。 このような変化の中で、設備工事業界での新たなビジネスチャンスを見逃さず、最新技術の導入や効率的な工事管理システムを積極的に取り入れることで、競争力を高めましょう。 なおBIZMAPSでは、オリジナルタグを用いて多様なアプローチで企業情報を検索できます。国内200万社以上の企業の基本情報が無料で閲覧でき、売上や従業員数などの情報を基にターゲット企業を絞り込むことが可能です。 ▼その他の業界特集はこちら! 教育業界とは?最新の動向を踏まえ徹底的に解説します! 旅行業界とは? 今後の動向から徹底的に解説します! 医療・介護業界の全貌を解明!最新トレンドや今後の重要ポイントを解説 広告業界を徹底解説!市場規模や最新動向、売上ランキング上位の主要企業一覧も 不動産業界の今後はどうなる?業界動向を左右するポイントを解説 運輸業界とは?現状や最新動向を紹介!TOP5企業もチェック! 生活用品業界の研究情報を解説! 建設工事は建設業の中でも競争率の高い業界!最新の情報を公開します

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