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「フォロワーシップ」という言葉をご存知でしょうか。近年ビジネスの場で注目されている概念ですが、リーダーシップとは異なりあまり馴染みがないという方も多いかもしれません。しかしこのフォロワーシップは、特に中堅社員向けの研修において高い割合でテーマとなっているものなのです。
そこで本記事では、フォロワーシップとは一体どのようなものなのか、その意味やリーダーシップとの関係性についてご紹介します。部下を抱える管理職の方は、ぜひ参考にしてください。
フォロワーシップの意味とは
まずフォロワーとは、リーダーシップを発揮する中心人物(リーダー・上司)を補佐する役割を持つ人(部下など)を指します。そしてフォロワーシップとは「組織・集団の目的達成のために、リーダーを補佐する能力」です。
つまりリーダー以外の人が、チームの成果を最大化させることを目的としてリーダーや他のメンバーに主体的に働きかけたりサポートしたりすることをフォロワーシップと呼びます。
ただ与えられた役割を遂行して会社や組織のために力を尽くす「メンバーシップ」とは異なり、ときにはリーダーの行動や意思決定に対して建設的な反対意見を述べるなど、リーダーをサポートする役割があります。
なぜフォロワーシップが注目されているのか
リーダーシップだけでなくフォロワーシップが注目されるようになったのは、ビジネスを取り巻く環境が非常に早いペースで変化するようになったためです。さまざまな状況の変化をいち早く察知してスピーディーな対応が求められる時代において、リーダーが強力なリーダーシップを持っていることだけでは追いつかなくなってきました。
そしてひとりのリーダーだけの意思決定が、必ずしも顧客のニーズに合っているとは限りません。さまざまな角度から物事を判断するためにも、フォロワーシップを持ったメンバーが周りにいることが重要なのです。
さらに、いくら強いリーダーシップを発揮したとしても、リーダーが組織の成果に対して及ぼす影響力は1割から2割程度と言われています。つまり組織の成果のほとんどが、フォロワーの力に左右されるというわけです。それぞれがフォロワーシップを発揮して組織を活性化できれば、安定して成果を上げられるでしょう。
フォロワーシップとリーダーシップの関係性とは
それでは、フォロワーシップとリーダーシップはどのような関係なのでしょうか。
フォロワーシップとリーダーシップはお互いに足りない部分を補い合いながら相乗効果を生み出す関係にあります。それぞれを両輪として、組織という車を動かしていくイメージです。
リーダーがリーダーシップを発揮して示したビジョンや方向性に対して、具体的な行動計画を立てて実行して行くのがフォロワーの役割になります。その中でフォロワーは、リーダーの決定事項や行動に対して健全な批判をしながら、組織を活性化させてより良い方向へと向かうサポートをするのです。
フォロワーシップによるメリット
フォロワーシップを発揮することで、具体的にどのようなメリットがあるのか見ていきましょう。
期待されるメリットは、次の3つです。
1.部下の自発的な行動が促される
2.部下がリーダーのサポートをすることができる
3.信頼関係とチームワークが育まれる
ひとつずつ解説していきます。
1.部下の自発的な行動が促される
リーダーから指示されたことをただ実行するのみでは、フォロワーシップは発揮できません。その指示を自分でしっかりと嚙み砕き、問題点などがないかを精査する必要があります。そのためには、幅広い視野で物事を考えてリーダーと自発的にコミュニケーションを取ることが不可欠です。
これを繰り返すうちに、部下はリーダーからの指示を待たず能動的に行動できるようになってきます。そうすれば、管理職の負担も大きく軽減されるでしょう。
2.部下がリーダーのサポートをすることができる
フォロワーシップは、単にリーダーに対して建設的な批判をすることだけではありません。リーダーに足りない部分があれば、それを補うのも役目です。
どれだけ社会経験を積んでも、すべてを完璧にこなせる人はいません。さらにリーダーは担うべき役割が多く多忙なため、ときにはチーム全体を見通して一人ひとりのサポートをするのが難しい状況になるケースもあります。
そのようなときに部下がフォロワーシップを発揮できれば、リーダーの状況を他のメンバーに共有して、リーダーに足りない部分を補うことができるでしょう。
3.信頼関係とチームワークが育まれる
チーム内にフォロワーシップが浸透すれば、組織が活性化して一人ひとりのモチベーション維持にも役立ちます。
リーダーが周りの意見を積極的に聞き入れるようになれば、自分も組織の一員であるという自覚がフォロワーにも芽生え、組織に貢献しようと努力します。リーダーシップとフォロワーシップが相乗効果を生み出すことで、組織、リーダー、フォロワーの信頼関係が構築されてチームワークが育まれるのです。
フォロワーのタイプ
ここからは、フォロワーの分類について解説していきます。部下のフォロワーシップを引き出すには、フォロワーごとの特徴を正しく理解することが重要です。
フォロワーは、「貢献力」と「批判的思考力」という2つの分類基準に基づいて、5つのタイプに分けられます。貢献力とは自身の能力を積極的に発揮してリーダーをサポートし、目標達成に貢献する力です。批判的思考力は、感情に流されることなく客観的かつロジカルに物事が判断できる思考力を指します。
この2つの判断基準をもとに分類した5つのフォロワーのタイプは、下記の通りです。
・模範的フォロワー
・孤立型フォロワー
・順応型フォロワー
・消極的フォロワー
・実務的フォロワー
それぞれ詳細を解説していきます。
模範的フォロワー
模範的フォロワーは貢献力と批判的思考力のどちらも高く、リーダーの側近や腹心ともいえる存在です。自分の批判的思考をしっかりと持っており、リーダーや組織に関して積極的に関わっていくタイプになります。
このタイプのフォロワーはフォロワーシップだけでなくリーダーシップを持ち合わせています。リーダーへの進言だけでなく、他のメンバーをまとめて統率することも可能です。
孤立型フォロワー
孤立型フォロワーは批判的思考力は高いものの、組織に対する貢献力が低い一匹狼タイプです。組織やリーダーの決定事項に対して批判的な立場を示しがちなこのタイプは、もともとは模範的フォロワーだったケースが多いという特徴があります。不当な扱いや組織に対して嫌な思いをした場合に孤立型フォロワーに変化してしまうのです。
このようなタイプには、組織の方針や業務に対して丁寧な説明やフィードバックを実行して、納得感を持たせながら信頼関係を構築していくことが重要になるでしょう。
順応型フォロワー
組織への貢献力が高いものの、批判的思考力は低いのが順応型フォロワーの特徴です。リーダーの方針に素直に従って真面目に役割をこなしますが、自らの意見を出さないため建設的な批判や進言などは期待できません。
このタイプのフォロワーには、積極的に意見を言う機会を与えて、自分の考えを表に出すことに慣れてもらうようにしましょう。
消極的フォロワー
消極的フォロワーは、組織への貢献力と批判的思考のどちらも低いタイプです。無気力タイプともいえるため、実質的にはフォロワーと呼べない立ち位置になります。業務に対する責任感や熱意、そして積極性に欠けており、自分の役割を超えて行動するリスクは決して侵しません。
このようなタイプに対しては、やる気を高めるためのサポートが必要です。自分が将来どのようになりたいのか、そして組織や業務に対してどういった希望や目標があるのかを確認しながらフォローしていきましょう。
実務的フォロワー
実務的フォロワーはリアリストタイプで、批判的思考力と貢献力を適度に持ち合わせています。与えられた業務を高いレベルで遂行したいという気持ちはあるものの、自らの範囲を飛び越えてリスクを冒してまで組織に関わることはありません。
しかし与えられた業務に対する熱意は持ち合わせているため、目標を高めに設定すれば確実に遂行してくれます。その部分を認めて評価していきながら、信頼関係を構築していきましょう。
フォロワーシップを発揮するためのポイント
組織のメンバーにフォロワーシップを発揮させるためには、押さえておきたいポイントがあります。それが次の4つです。
1.クリティカルシンキング(批判的思考)を意識させる
2.コミュニケーション量を増やす
3.組織への貢献力を高めさせる
4.フォロワーのタイプを確認する
ひとつずつ見ていきましょう。
クリティカルシンキング(批判的思考)を意識させる
フォロワーシップで大切なのは、リーダーの意思決定や行動に対して「本当に正しいのか」「本質は何なのか」と、批判的な物の見方で考えることです。このような思考法をクリティカルシンキングといいます。
クリティカルシンキングは、ただ頭ごなしに否定することではありません。あえて疑ってみることで、物事の矛盾点や本質を探るのが目的です。このクリティカルシンキングを高めるには、さまざまな場面において「自分ならこうする」と考える癖をつけるように指導しましょう。
また「批判」という言葉はネガティブなイメージを持っているため、あくまでも批判や非難ではなく提言・提案だということを理解してもらうことも大切です。
コミュニケーションを増やす
上司であるリーダーへ進言するには、リーダーとフォロワーの信頼関係がなければなりません。信頼関係がない状態では、例え建設的な批判であったとしても意思疎通ができずに溝ができてしまう危険性があります。
まずはリーダーとフォロワーが積極的にコミュニケーションをとって、相互理解を深めることが大切です。そうして信頼関係を築いていけば、自然と活発な意見交換ができる環境になってくるでしょう。
組織への貢献力を高めさせる
フォロワーシップの重要な要素として「建設的な批判」がありますが、これはあくまでも自身の業務を確実に遂行した上でのことです。自分が果たすべき役割も果たさないままリーダーに進言しても、説得力はありません。
まずはフォロワーに自分の業務を確実に遂行してもらうことが大切です。自身の責任範囲をしっかり果たして組織の貢献力を高めることで、心にも余裕ができて周りが見えるようにもなります。そうすれば、他者や組織に対しても積極的に関わっていくようになるでしょう。
フォロワーのタイプを確認する
ご紹介したように、フォロワーには5つのタイプがあります。そのためそれぞれの特性に応じたアプローチが必要です。フォロワーのタイプによって強みや弱みが異なり、サポートすべき部分も変わってきます。
メンバーのフォロワータイプを確認するために、リーダーがフォロワーをよく観察して密なコミュニケーションを取るようにしましょう。
フォロワーシップの具体例
最後に、フォロワーシップのある行動とはどのようなものなのか、具体的な例をご紹介します。
・全体的な視点で考える
・自分の意見を臆せず発信する
・最初から完璧を求めない
それぞれ解説していきます。
全体的な視点で考える
フォロワーシップを発揮している人は、個人や自分のチームの利益だけでなく、組織全体の利益を考えています。
企業に利益をもたらすには自分の業務量を増やす必要があるなど、多くのケースで組織と自分の利害は対立してしまいます。しかしそのような場合でも、自分が組織に対してどのように貢献できるかを考え、多くの人たちの利益になるように配慮すれば視野が広がるでしょう。その結果、フォロワーシップだけでなくリーダーシップも養われます。
自身が組織に所属していること、そして自身の動きが組織全体にも影響するということを認識している人は、フォロワーシップを発揮しているといえるでしょう。
自分の意見を臆せず発信する
対立を生んだり不採用になったりするのではないかと思うと、自分の意見を伝えることに消極的になってしまう時もあるでしょう。しかしフォロワーシップのある人は全体がよりよい方向に向かうことを考えているため、良いアイディアがあれば積極的に発信します。
例え周りと意見が違ったり不採用になったりしても、それが組織全体にとって利益になると思えば素直に受け入れる点も、フォロワーシップの良い面といえます。
最初から完璧を求めない
リーダーや周りの人に最初から完璧を求めないということも、重要なフォロワーシップです。常に完璧を求めすぎると周りの人が委縮してしまい、業務や意見交換に消極的になってしまう可能性があります。
リーダー自身も人間なので、すべてを完璧にこなせるわけではありません。誰しもが見落としや失敗をするものだという前提で、自分にできるフォローをしていく姿勢が大切なのです。
まとめ
フォロワーシップは、変化が激しく先行きが不透明な現代において、リーダーシップと並んで重要な要素となります。そしてフォロワーシップはフォロワーとなる人だけが持ち合わせるものではなく、リーダーを含めたメンバー全員に求められるものです。今回ご紹介したフォロワーのタイプやポイントを参考にして、リーダーシップと共にフォロワーシップを高めていきましょう。
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